理科教育学研究
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44 巻, 1 号
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原著論文
  • 丹沢 哲郎, 熊野 善介, 土田 理, 片平 克弘, 今村 哲史, 長洲 南海男
    2003 年 44 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2003/09/01
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究では, 日本人の科学観・技術観の特徴を明らかにすると同時に,子どもたちの科学観・技術観に直接的な影響をもつ理科教師の科学観・技術観の特徴を示し,理科授業と子どもの科学観・技術観との関連について考察を行った。したがって調査対象は高校生,大学生,中・高の教師,そして一般社会人とし,調査の結果以下の7点が明らかになった。1) 科学知識の発展プロセスの連続性と転換性について,多くの一般社会人が両者を併存的に捉えていたが,科学知識の転換を肯定する理科教師の割合は低かった。2) 観察の理論負荷性については,回答者の半数以上が認めているが,同時に,分析方法や実験方法など方法に関する要因によって異なる結論が得られるとするものが多く見られた。3) 多くの回答者は,たとえ思いつきであっても,論理的に正しければ科学理論の正当性を認めた。4) 回答者の全体的な傾向としては,理論の一形態であるモデルの役割に関しての理解度は低いが,理科教師の理解度は高かった。5) 科学を没価値的で真理追究の学問であるとするものが,理科教師の約7割はこの考えを肯定した。6) 科学と技術の密接な関連性を認識している者は回答者全体に多く見られたが, この点に関する高校生の認識割合は圧倒的に低かった。7) 理科教師の科学観・技術観と,高校生のそれとの間には大きな違いが何点か見られた。すなわち,理科教師の捉え方が授業を通して高校生に直接影響を与えているとは考えにくかった。

  • 森 一夫, 大塚 淳子
    2003 年 44 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 2003/09/01
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    指導要録に示された学力の一つである「関心・意欲・態度」は,本来的に外発的動機づけというよりも,内発的動機づけによるものとしてとらえるべきであるとされている。問題は,どうすれば内発的動機づけが可能か, という点である。いろんな方法があると思われるが,今回は, 自然の妙趣を感得できるような問題解決学習によっても内発的動機づけが誘発できると考えた。本研究の目的は,そうした内発的動機づけにより子どもが興味をもって容易に自然認識に至れる等の効果を実証的に明らかにすることにある。今回の調査の結果から,次のことが明らかになった。(1) 「自然の仕組みの面白さや有用性」に気づくように,問題解決に取り組ませる学習の回数を重ねることによって,子どもの内発的動機づけも高まる。(2) 内発的動機づけが高まると, 自然認識,すなわち「自然事象についての知識・理解」も深まる。(3) 上記のような学習を繰り返すことによって,内的統制型の人間形成が可能となる。

  • 西 康隆, 庭瀬 敬右
    2003 年 44 巻 1 号 p. 21-28
    発行日: 2003/09/01
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    創造性の育成は理科教育における重要課題の一つである。本研究は,豊島・庭瀬(2000) によって中学生に対して抽出された「努カ・持続性」,「自主・独自性」の創造的態度の2つ主要因子が,前段階の小学校でどのように形作られているかを明らかにし,創造的態度を育成する理科教育のあり方を探ることを目的とする。創造的態度調査票は,中学生に対して行った自己評価調査と同様に恩田彰が述べている24項目の創造的行動傾向をもとに作成された。調査は, 2001 年3月に小学校1年生から6年生の合計612 名を対象として実施し,以下の知見を得た。(1) 創造的態度の合計得点は, 2年生から4年生にかけて急激に減少する。(2) 恩田の示す8項目の創造的態度特性の中で「独自性]は,全ての学年において極端に低い。(3) 中学生で見出された「努カ・持続性」,「自主・独自性」の創造的態度の主要因子は,低学年では因子として未分化であるが中学年で分化しはじめて,高学年では主要因子として明瞭化し,中学生へとつながる。

  • 手塚 基子, 片平 克弘
    2003 年 44 巻 1 号 p. 29-37
    発行日: 2003/09/01
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    近年,子ども一人一人に,問題解決のプロセス全体を見通す力や把握する力となるメタ認知能力の育成が注目されている。このメタ認知能力は科学概念獲得の際に影響を及ぼしているのだが,その実体をとらえることは難しい。本研究では,質問紙とインタビューによる調査を中心に,理科学習におけるメタ認知能力とイオン概念獲得の関係を具体的に探った。中学生を対象とした実態調査の結果,以下の点が明らかとなった。1. 学習において適切なメタ認知能力をもっている生徒は,理解したことを把握しながら次の目標を決め,一つ一つ着実に理解し, イオン概念を獲得していった。2. 自分の学習状況について理解できていても,「次に何をすべきか」という認知についてのコントロールが慟かなかった生徒は, イオンの学習内容の理解も中途半端であった。3. 学習過程を振り返ることができなかった生徒は,学習におけるメタ認知がほとんど働いていないだけでなく, イオン概念を獲得することができず,曖昧な理解のままだった。

資料
  • 高垣 マユミ
    2003 年 44 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2003/09/01
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究では,ニュートンカ学の法則を既習の大学生が,いかなる「力と連動」の概念を形成しているのかを調査することを目的とした。教員養成クラスの88名の大学生を対象に,力と運動に関する各々の知識,力と運動の関係を定性的な表現で問う課題を与えた。プロトコル分析の結果,被験者の半数以上は,「原因物に授けられる力」,「動きをもたらす力」といった素朴概念を構成していることが明らかにされた。こうした素朴概念の生成には, a. 「力と運動に関する断片的知識」, b.「力と運動の知識間の相互関連」, c.「力と運動の説明的枠組み」の3の要因が関与していることが推測された。また,動力学の定性的な課題が提示された場合には, 「力」を「モノ」に見立てる説明的枠組みが,素朴概念の生成のプロセスに制約を及ぼす可能性が示唆された。

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