理科教育学研究
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47 巻, 3 号
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原著論文
  • 後藤 正英, 久保田 善彦, 水落 芳明, 西川 純
    2007 年 47 巻 3 号 p. 1-7
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    理科離れ,理科嫌いの原因の一つに,形骸化した「探究の形式」の導入が挙げられる。本研究では,「探究の過程」を強制しない学習を行った場合,子どもたちはどのような課題解決を組織するのかを事例から調査した。特に予想に注目して分析した。分析の結果,以下が明らかになった。(1)課題解決にあたって,予想をする行為が重要でないと判断するならば,予想のないままに次の活動に進む。(2)子どもは,予想から検証法(実験方法)を考えるのではなく,既存の検証法をいかに当てはめるかを考える。(3)子どもは課題解決の十分な見通しを持っていないことが多い。しかし,適宜,局所的な見通しを持つことで,課題を解決している。(4)「探究の過程」を示さない学習においても,学習のねらいはおおむね達成している。以上の結果から,理科のすべての学習活動に対し,一般化した「探究の過程」を当てはめるのは強引と考える。予想の必要ない場面を見極め,予想の活動をなくすことで,その時間を子どもの探究活動の充実に充てることができよう。

  • 清水 誠, 山浦 麻紀
    2007 年 47 巻 3 号 p. 9-14
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,生徒が観察時に背景知識をもとに仮説を立て,自らの理論を持って学習することの有効性を検討することを目的とする。手続きとして,花のつくりを観察する際に演繹的に学習する群と帰納的に学習する群を設定した。演繹的に学習する群では,学習の主体である生徒自身に仮説を設定させ,そのように考える理由を説明させた上で花を観察し,結論を導き出す授業を行った。帰納的に学習する群では,いろいろな花を観察し,観察を通してつくりの共通性を発見させた。結果は,演繹的に学習させた群が帰納的に学習した群に比べ花のつくりについての概念をより多くの生徒が形成でき,その有効性をうかがうことができた。

  • 多賀 優, 西川 純, 久保田 善彦, 草地 功
    2007 年 47 巻 3 号 p. 15-22
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    結晶分化作用は高等学校地学Iにおいて扱われ,火成岩の多様性とその成因を理解させる点で重要な学習内容である。しかし結晶分化作用は生徒にとって理解に困難を伴う場合が多い。そこで結晶分化作用の理解を深めるために正累帯深成岩体における火成岩標本の観察に加えて.先輩のコンセプトマップ(本論では「一人のコンセプトマップ」と呼ぶ。)を提示し,話し合う活動を導入した。「一人のコンセプトマップ」を使った実験群と統制群に分け,その有効性を検証した。その結呆.実験群において5%の危険率で「分類の概念」が有意に減少し「成因の概念」が有意に増加することから,結晶分化作用の理解を進めるために有効な教材であることが明らかになった。また,生徒の会話のプロトコルから観察における生徒どうしの会話が概念形成に影響することが示唆された。

  • 宮下 治
    2007 年 47 巻 3 号 p. 23-29
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    理科学習教材が有効なものかどうかを評価することは,教材を改善し,授業を改善・発展させていく点からも重要なことである。本論では,理科学習教材の一例として地学野外学習教材を取り上げ,学習教材とはどのようなものか,そして学習教材を評価するとはどのようなことかについてまず論述した。その上で,地学野外学習教材の評価に関する現状と課題について,先行研究をもとに議論を行った。また,地学野外学習教材を評価するには,①学習地,②学習テキスト,③学習指導計画を評価することが必要であり,④学習者への学習効果があったかどうかが最も重要なことであることを論述した。さらに,地学野外学習教材を評価する方向性として,①野外学習教材を総合的に評価すること,②野外学習中の児童・生徒の科学的思考の過程を評価することの2点を指摘した。

  • 宮田 斉
    2007 年 47 巻 3 号 p. 31-38
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    現代は地球温暖化や廃棄物等による影響が論議されており,よりより環境を改善するためには地球環境に配慮した科学技術の開発とより一層の人材育成が必要である。理科教育においても児童・生徒が科学技術に関する知識や技能を獲得するだけではなく,教師は自然と陸上・水中の自然環境を主体的に調べる活動を指導し,児童・生徒が科学技術と地球環境の関わりを考え,それらを適合させる態度を育成することが重要である。この態度の重要な要素の1つとして行動意欲がある、しかし,これまで水中の生物の体のしくみやその生態を調べる行動意欲を規定する要因とその規定力については明らかにされていない。小学5年生343名,中学2年生276名,高校2年生191名を対象とした質問紙調査の結果,次の点が見い出された。(1)小学5年生,中学2年生,高校2年生ともに,水中の生物の体のしくみやその生態を調べる行動意欲を規定する最も大きな要因は,水中の生物の体のしくみやその生態に関する知的欲求である。他に小学5年生においては解剖方法に関する知的欲求,水族館での観察体験水中の生物の体のしくみやその生態に関する知識・理解の意識の3つがあり,中学2年生においては,水中の生物やその生態に閏する家族や地域の人々による意図的・無意図的教育,自然体験の2つがある。(2)水中の生物の体のしくみやその生態を調べる行動意欲の規定要因は,学年上昇とともに水中の生物の体のしくみやその生態に関する知的欲求へ収斂される。(3)水中の生物の体のしくみやその生態を調べる行動意欲は,学年上昇とともに減退する。その原因は,学年上昇とともに低下する水中の生物の体のしくみやその生態に関する知的欲求にある。

Reports of the 2006 International Symposium on Science Education in Japan
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