本研究ではデシ(Deci,E.L.)やド・シャーム(deCharms,R.)の諸論をもとに,科学概念変換に影響を与える動機づけとなる因子を整理し,それらの動機づけ因子を理科授業における動機づけ因子として解釈し直すことによって,理科学習指導で重視すべき課題と展望を明らかにした。以下に,それらの3つの指導の方策を提起した。(1)「与えられた課題に対し,自らも学習の見通しを持ち,それらをもとに実験・観察や結果の整理考察などを行い,自分で自分の学習を進めていると自覚している」という「自律性」を育むための条件である「単元構造の整理」,「その単元の柱となる課題の抽出と提示」の必要性 (2) 「自分なりにメカニズムの説明をしたり,それが出来なくても,教師の説明を聞いて理解したりすることによって,一連の授業が終わったときに,学習したことを使える知識として身につけることができていると自覚している」という「有能性」を育むための条件である「一貫性を持った考えやイメージなどの表現の要求」,「それらをもとにした科学概念の合意形成」の必要性 (3) 「自分の考えを他者に話したり,他者の考えを聞いて,自分の考えを発展させたり,質問や疑問をいつでも自由に出し合ったりすることができると自覚している」という「関係性」を育むための条件である「学習者自身による他者の考えの評価」,「グループでの考えの交流」の必要性
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