コンピテンシー概念の普及に伴い, コンピテンシー指向の科学カリキュラム編成の在り方が様々に問われている。本稿では, 既にその具現化を達成しているドイツ諸州の科学カリキュラムについて, 化学のコンピテンシー領域を中心に, 目的・目標の設定並びに教授内容の選択に関する観点から分析を行い, 以下の特質を明らかにした。
目的・目標の設定に関する観点からは, 第一に, 「科学そのもの(in Science)」の面に加え, 「科学について(about Science)」の面も科学教育の重要な側面として捉えられ, それに基づいて4つのコンピテンシー領域が設定されている。第二に, とりわけ化学の「コミュニケーション」領域では, 化学に固有な側面と教科横断的な側面双方からコミュニケーション様式の理解や能力の育成が, 「評価」領域では, 化学の多面的な理解に加え, 意思決定能力のような社会参加の基盤をなす能力の育成がそれぞれ目指されている。
教授内容の選択に関する観点からは, 第一に, 学問体系に基軸を置いた内容選択が行われつつも, 専門の内容を取り扱う文脈が併せて設定されている。第二に, その際, 日常的, 社会的, 並びに歴史的文脈といった様々な文脈が採用され, それにより「コミュニケーション」や「評価」領域のコンピテンシーを獲得・育成することにも対応が図られている。
抄録全体を表示