理科教育学研究
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56 巻 , 2 号
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原著論文
  • 相場 博明
    2015 年 56 巻 2 号 p. 129-139
    発行日: 2015/07/24
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    「月の満ち欠け」は, 平成10年小学校理科学習指導要領において削除されたが, 現行小学校理科学習指導要領では第6学年の内容として取り上げられている。ここでは,地球視点から月の満ち欠けの原理を学習することになっている。そして, 中学校3年では宇宙視点から再度月の満ち欠けを学習することになっている。
    しかし, 「月の満ち欠け」の指導に関しては, 多くの先行研究により, 教える側は指導困難であり, また学習する側にとっては理解困難であることが指摘されている。また, 指導する立場の教師自身も十分な理解が得られていないという現状が指摘されている。
    本研究は, 現行小学校理科教科書の内容を分析し, それらの理由を考察した。その結果, 地球視点で行った月の観察とモデル実験との整合性をとることが困難であり, 地球から見た月と太陽との位置関係と月の満ち欠けの現象の論理的説明が不十分であることがその原因ではないかと考えた。そこで, 地球視点から月の満ち欠けを論理的に説明する指導法と, またそれを補足する「月の満ち欠け説明器」の教材を開発しその実践を行った。その結果, 十分な教育効果が得られ, 小学生でも無理なく「月の満ち欠け」の原理を理解できることがわかった。
  • 大山 光晴
    2015 年 56 巻 2 号 p. 141-149
    発行日: 2015/07/24
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    本研究は, 生徒が取り組む理科の自由研究に対する教員による事前指導の効果を調べた論文である。調べ学習が多い傾向を持つ中学校の1年生に対して, 夏休み前に自由研究の指導をおこなう過程で, 実験において測定に取り組ませる演習をおこない, その効果が生徒の研究手法にどのように反映されるかについて検証をおこなった。3つの簡単な研究課題と実験材料を与えて4人グループで実験をおこなわせて, その結果について全体でまとめる指導をおこなった。この結果, 夏休みの自由研究で何らかの測定をおこなった生徒が6割以上と, これまでの学年に比べて大幅に増加し, 測定を自分なりに工夫する生徒が増え, 実験の種類も多様化することが分かった。さらに報告書の提出から2ヶ月後に, 理科の観察・実験や自由研究について意識調査をおこなったところ, 指導をおこなった学年は他学年や他中学の生徒に比して高い学習意欲を保持していることを確認することができた。
  • ―小学5,6年生・大学1年生の比較を通して―
    川﨑 弘作, 角屋 重樹, 木下 博義, 石井 雅幸, 後藤 顕一
    2015 年 56 巻 2 号 p. 151-159
    発行日: 2015/07/24
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は初等教育教員養成課程の学生の問題解決能力の実態を明らかにすることである。このため, 本研究では, 小学5, 6年生と初等教育教員養成課程の大学1年生の問題解決能力を比較した。まず, 問題解決能力の中でも「仮説設定力」「実験方法立案力」「結果の予想設定力」を測定できる評価問題として「植物に関する問題」「電磁石に関する問題」の計2問を開発した。そして, 小学5, 6年生301名, 大学1年生388名を対象に, 評価問題を実施したところ調査結果は次のようになった。「植物に関する問題」では全ての能力の得点が, 「電磁石に関する問題」では「結果の予想設定力」を除いた能力の得点が小学生に比べ大学生の方が有意に低かった。このことから, 初等教育教員養成課程の大学1年生は, 将来指導対象となる小学5, 6年生よりも問題解決能力が低いことが明らかになった。
  • 高阪 将人
    2015 年 56 巻 2 号 p. 161-171
    発行日: 2015/07/24
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, ザンビア共和国の中等教育において, 理科と数学の関連付けの実態を明らかにし, 指導上の示唆を得ることである。本稿では, 南部州の公立女子中等学校に協力を依頼し, 第12学年の生徒51名を対象に, 概念地図法を用いて, 関数領域における理科と数学の関連付けを調査した。調査の結果, 理科と数学の各単元の学習内容に基づき概念系が形成されていることが明らかとなった。また「ばねの伸びと重り」と「比例」, 「等加速度運動」と「グラフ」のつながりが強いこと, 「ばねの伸びと重り」と「グラフ」, 「等加速度運動」と「比例」のつながりが弱いことが浮かび上がった。さらにリンクのパターンの類似性から, 生徒は大きく3つのグループに分類された。特に2つのグループの生徒にとって, 「ばねの伸びと重り」と「比例」の関連付けが障壁となっていることが明らかとなった。さらにリンクの意味分析から, これらの生徒に対して, フックの法則の概念を形成する指導の工夫と, 公式間の共通性を見出す働きかけが必要であるという示唆が得られた。
  • ―「観察と推論の相違」の内容に着目して―
    鈴木 宏昭
    2015 年 56 巻 2 号 p. 173-181
    発行日: 2015/07/24
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    本研究は, 米国の中等前期教育段階の理科教科書における“Nature of Science”の内容と, その教授展開を分析した。その結果, 次の4点が明らかになった。
    (1)理科教科書における“Nature of Science”の内容は, 独立した一つの単元を構成していた。
    (2)理科教科書における“Nature of Science”に関する単元では, 6つの“Nature of Science”の内容が導入されていた。
    (3)理科教科書における「観察と推論の相違」の教授展開は, 「観察」と「推論」それぞれについての理解を基礎としながら, 「観察と推論の相違」の理解へ接続していた。
    (4)理科教科書における「観察と推論の相違」を理解するための話題は, 科学者の活動及び日常生活の場面であった。
  • 那須 悦代, 喜多 雅一
    2015 年 56 巻 2 号 p. 183-190
    発行日: 2015/07/24
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    2011年以降の高校化学教科書には発展的内容として標準電極電位が導入されたが, 高校教員自身が大学で電気化学を選択履修していないケースも多く, 電極反応の条件を高校生に指導するには実験教材の開発と指導法の工夫が必要である。しかし, 1950年代から現在までの高校化学の教科書の電極反応に関する記述を調査したところ, 電気分解実験で扱われる溶液は水や塩化銅(Ⅱ)溶液に限られており, それぞれの電極で気体発生のみか金属析出のみを観察することになる。
    今回開発したペットボトルとプラスチック注射器等の簡便な実験装置は, 金属析出量と気体発生量を同時に測定可能で, ニッケルめっき(電気分解)の陰極は水素発生とニッケル析出が競合して起こる。得られた結果から. 電極反応の起こりやすさが標準電極電位と溶液濃度によって大きく変化する活用例となり, および水素発生量を減らしニッケル析出量を多くするニッケルイオン濃度を明らかにした。
  • 東 照晃
    2015 年 56 巻 2 号 p. 191-202
    発行日: 2015/07/24
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    本稿の主題は, 理科の学校設定科目「生命科学」(2単位)から得られた「生命」に関する集団内の意識の変容・発達に関する考察である。教科学習では, 教師から子どもに一斉授業という方法で, 設定された目標に向かって, 知識や技能を効率的に伝えることを目標として行われてきた。そこでは, 生命観や倫理観が問われる生殖医療などの問題群に応えることは難しかった。このような問題群は, 「科学によって問うことはできるが, 科学によって答えることのできない問題群からなる領域」というトランス・サイエンスであり, 文化・歴史と深くかかわるためである。そこで, 学校設定科目「生命科学」では, 進化史をナラティブアプローチし, 様々な実験・実習を取り入れ, 専門家との協働的学習やテーマ別発表を行った。「命の選択」という生殖医療の問いに関する回答を分析することによって, 生命誌の学習や専門家との協働的学習, テーマ別発表が, 生徒たちの生命観を豊かにし, 総合する力を育むことが示された。
  • ―経験と理論を統合するコンセプトマップの「ラベル展開」手法の提案―
    福田 恒康, 遠西 昭寿
    2015 年 56 巻 2 号 p. 203-211
    発行日: 2015/07/24
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    生徒たちは小学校の学習で水が沸騰しているときと水と氷が共存しているときには, 加熱を続けても温度が変化しないことを知っている。本研究の被験者は, 中学受験の知識としてこのとき熱が状態変化に使われているため, 温度が変化しないことも知っている。しかし, 生徒たちにとっての状態変化は水の視覚的な変化であって, 粒子運動の様態の違いではない。生徒の理解はあくまでも現象的・感覚的な理解であって, 理論的な理解ではない。物質の粒子概念は不可視な概念であるから, 観察や実験では粒子の存在やその運動を確認できないため, 観察事実だけを根拠とした学習では中学校での学習が小学校の理解を超えず, 粒子概念による説明は暗記される。
    そこで本研究では, コンセプトマップ(Novak and Gowin, 1984)を使って, 生徒たちに積極的に理論どうしの関係性を認識させ, クワインのホーリズムの科学観(クワイン, 1992)を授業に適応して, 構成される理論体系全体と経験の全体が粒子の熱運動で説明されるとき, 生徒たちが粒子概念を強く確信できると考えた。このために, 本研究ではコンセプトマップにおける「ラベル展開」という手法を用いた。この結果, 生徒たちにホーリスティックな理解やプラグマティックな理解を促すことができた。
  • ―酢酸エチルの合成実験を用いた実践を例として―
    宮本 樹, 木下 博義, 網本 貴一
    2015 年 56 巻 2 号 p. 213-224
    発行日: 2015/07/24
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    本研究では, 高等学校化学において, 実験中のメタ認知を育成するための実験教材およびそれを用いた指導法を考案し, その効果を検証することを目的とした。
    この目的を達成するため, ①生徒が必然的に自らの学習を振り返ることのできる実験教材を用意し, 生徒にモニタリングを行うことを経験させるとともに, その必要性を認識させ, ②次時の実験においては, 即時的にモニタリングを行わせるという一連の指導法を考案した。併せて, この指導を具現化するための実験教材として, 「酢酸エチルの合成実験」も考案した。考案した指導法の効果を検証するため, 広島県内の国立大学附属高等学校第3学年の生徒71名を対象に, 「酸素を含む脂肪族化合物」の単元において授業実践を行い, 質問紙およびワークシートの分析による効果の検証を行った。
    その結果, 考案した指導法は, 実験中のメタ認知のうち, 実験方法を理解したりその方法を点検したりするモニタリングの育成に寄与することが示唆された。
  • 山田 貴之, 小林 辰至
    2015 年 56 巻 2 号 p. 225-234
    発行日: 2015/07/24
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    本研究では, 小学校高学年の児童を対象に, 日常生活での因果関係のある事象に関与する経験及び意識の傾向の類型化を行い, その実態を明らかにするとともに, 類型化された群に適した指導方法の例について検討することを目的とした。
    分析には, まず, 平方ユークリッド距離を指標とした変数(質問項目)間の非類似度データに基づいて, 多次元尺度法を用いた。次に, 平方ユークリッド距離を指標とした個体(被験者)間の非類似度データに基づいて, 非階層的クラスター分析を行い, そこで得られた各クラスターを2次元空間上に反映させた。
    その結果, 小学校高学年では因果関係のある事象に関与する経験及び意識の傾向によって, 4群(「経験・意識の下位群」, 「経験不足中位群」, 「意識不足中位群」, 「経験・意識上位群」)に類型化されることが明らかとなった。さらに, 4群に適した指導方法の例を考察することができた。
  • 和田 一郎, 長沼 武志, 森本 信也
    2015 年 56 巻 2 号 p. 235-247
    発行日: 2015/07/24
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    近年の理科教育において, 子どもの科学的な思考・表現の活性化を志向した理科授業の開発が喫緊の課題となっている。理科学習における子どもの思考・表現は, 言葉のみならず, 表やグラフ, 図や数式など, 極めて多様な表象の要素が相互に関連し合うことによって具体化される。本研究では, こうした思考の内実である様々な形式の表象の移行を促進するための方略を策定し, 授業実践を通じて検証することによって, 子どもの科学的な思考・表現を促進させるための知見の導出を志向した。
    結果として, Gilbert(2008)が指摘する表象の次元に関わる要素, すなわち実体モデルなどの3次元の要素, イメージやグラフなどの2次元の要素, そして記号や数式などの1次元の要素が, 子どもに内化されて機能する様態を表象ネットワークと関連付けることによって思考の内実を捉えるモデルの構築が可能となった。また, 有意味な表象を形成する方略, すなわちイメージ化, 組織化, スキーマの活性化および精緻化の各方略を問題解決過程において, 教師が適宜, 講じることによって, 種々の形式の表象の移行が促進された。
資料論文
  • 中城 満, 伊谷 行, 邊見 由美, 赤松 直, 道法 浩孝, 岡谷 英明, 竹内 日登美, 原田 哲夫
    2015 年 56 巻 2 号 p. 249-259
    発行日: 2015/07/24
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 青少年のための科学の祭典高知大会2011–2013に参加した子ども達と保護者について, 理科や科学への意識と理科・科学技術のどの分野に興味を示すのか, との間の関係を明らかにすることにある。質問紙は, 37–39の出典のうち, 「どの出典が興味深かったか。」「どの出典が為になったか。」「どの出典から新知識が得られたか。」の項目を含み, いずれも3出典まで選択できた。学校で理科が得意な(だった)参加者は, 得意ではない(なかった)参加者より, 「新発見があった」「為になる」と感じた出典数が多かった。化学分野の出展を“面白かった”“新しい発見があった”と評価した回答者たちに, さほど理科好きではない人たちが他分野より多く含まれていた。物理分野を“ためになった”と評価した回答群に理科が好きか得意な人達の割合が他分野より有意に高かった。技術・工学分野を“新しい発見があった”と評価した回答群の中に, “理科がとても得意”“得意”な人たちの割合が他分野より多く含まれていた。これらの結果を総合すると, 理科好きか得意な子ども達は“物理・工学系”に興味を持ち, 理科嫌いな子ども達でも“化学領域”なら興味が持てることを暗示している。
  • ―沖縄県立高校入試と琉球大学を例に―
    福元(呉屋) 美咲, 吉田 はるか, 吉田 安規良
    2015 年 56 巻 2 号 p. 261-270
    発行日: 2015/07/24
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    中学校理科教員養成の在り方を検討するため, 琉球大学で中学校理科教員免許の取得を希望する「理科教育法A」の受講学生32名に, 平成26年度沖縄県高等学校入学者選抜学力検査(県立高校入試)の理科の問題(60点満点)を解答させ, 解答状況や比較的正答率の低い問題の誤答傾向等を分析した。
    その結果, 彼らの平均点は41.1点で, 各問題別正答率の平均は69.0%だった。この結果をMann-WhitneyのU検定を用いて所属学部別, 性別, 出身中学校所在地別でそれぞれ比較したが, いずれも平均点に有意差は見られなかった。受講学生と受検生との問題別正答率には中程度の正の相関があった。「生徒が苦手な問題は教員の卵も苦手」であり, その部分の生徒の学力向上には教員の学力向上も必要だと言える。「低得点学生が全員不正解の問題」や「受講学生の正答率が受検生を下回った問題」の大部分は知識・理解を評価する問題で, 受講学生の正答率が予想正答率を大きく下回った問題の上位3問は思考・判断・表現を評価する問題だった。無解答者が4人以上の問題は3問で, 1問は漢字で解答する知識・理解を評価する問題で, 2問は地学領域の計算問題で技能を評価する問題だった。この結果に対して7名の受講学生から「これまでの理科の授業は受験対策が主であり学習は暗記に頼っていた」という回答があった。彼らの多くは, 暗記に頼った学習によって知識の定着が弱く, 問題の解き方や科学的な現象についても論理的に理解せずに丸暗記してきたと考えられる。
  • ―月の見かけの位置と観測可能な時刻を中心にして―
    松森 靖夫, 一瀬 絢子
    2015 年 56 巻 2 号 p. 271-277
    発行日: 2015/07/24
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    本研究では, 計121人の小学校教員志望学生を対象に, 月の見かけの位置と観測時刻に関する認識調査を行った。具体的には, 計7種類の月の見かけの形(三日月, 上弦の月, 十二日月, 満月, 十八日月, 下弦の月, 及び二十六日月)を取り上げ, 夜間の肉眼観測によって見えはじめる位置と時刻, 及び見えなくなる位置と時刻について問うものであり, 質問紙法を用いて実施した。
    調査の結果, 科学的に認識できていた小学校教員志望学生は, 満月において約5%であり, 他の6種類の形においては皆無であった。また, 月の見かけの位置と観測時刻に対する小学校教員志望学生のプリコンセプションも認められた。
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