近年の理科教育において, 子どもの科学的な思考・表現の活性化を志向した理科授業の開発が喫緊の課題となっている。理科学習における子どもの思考・表現は, 言葉のみならず, 表やグラフ, 図や数式など, 極めて多様な表象の要素が相互に関連し合うことによって具体化される。本研究では, こうした思考の内実である様々な形式の表象の移行を促進するための方略を策定し, 授業実践を通じて検証することによって, 子どもの科学的な思考・表現を促進させるための知見の導出を志向した。
結果として, Gilbert(2008)が指摘する表象の次元に関わる要素, すなわち実体モデルなどの3次元の要素, イメージやグラフなどの2次元の要素, そして記号や数式などの1次元の要素が, 子どもに内化されて機能する様態を表象ネットワークと関連付けることによって思考の内実を捉えるモデルの構築が可能となった。また, 有意味な表象を形成する方略, すなわちイメージ化, 組織化, スキーマの活性化および精緻化の各方略を問題解決過程において, 教師が適宜, 講じることによって, 種々の形式の表象の移行が促進された。
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