理科教育学研究
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57 巻 , 1 号
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原著論文
  • ―大学生との比較を中心として―
    雲財 寛, 松浦 拓也
    2016 年 57 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2016/07/12
    公開日: 2016/08/09
    ジャーナル フリー

    本研究は, 中学生の科学的モデルに対するメタ的な認識に着目し, その実態を明らかにすることを目的とした。このため, 公立中学校の第3学年227名, 国立大学の理系学生200名を対象に, 20項目からなる質問紙調査を実施し, 理系学生との比較を通して中学生の実態を顕在化させることを意図した。その結果, 中学生は, 大学生と比べて科学的モデルに対するメタ的な認識が確立していないことが明らかになった。また, 中学生の傾向としては, モデルを, 目に見えにくい現象を可視化させたり, 複雑な現象を単純化させたりするものとして捉える一方で, モデルは現象の説明や予測に使われるものであることや, 暫定的なものであることについての認識が十分に確立していないことが明らかになった。特に, モデルが現象の説明や予測に使われるという, モデルの目的に関する認識は大学生においても相対的に低くなっており, 課題となりうることも明らかになった。これらの実態を踏まえ, 科学的モデルを用いた推論(モデルベース推論)を促進させるためには, 様々な学習場面においてモデルを用いて推論させ, モデルが役に立つことを実感させる必要があることを指摘した。

  • 春日 光, 森本 弘一
    2016 年 57 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2016/07/12
    公開日: 2016/08/09
    ジャーナル フリー

    理科の授業において, 「観察・実験」は必要不可欠である。しかし, 小学校では必ずしも理科が得意な教員が授業をしているとは限らず, 多くの危険が潜んでいるといえる。本論文は, 過去の小学校理科実験の事故から明らかになった傾向を報告するものである。得られた知見は下記の通りである。(1)「金属, 水, 空気と温度」(第4学年), 「燃焼の仕組み」, 「水溶液の性質」(以上, 第6学年)の単元で事故が多く発生しており, 重大な事故につながりやすい。(2)現職の小学校教員に行った質問紙調査においても上記の単元の学習中に, 「危ない」と感じた経験があると回答する人が多い。(3)基本統計の傷害種別の事故件数の調査によると, 火傷よりも擦り傷, 切り傷等の傷害が多いことから, 日常的には実験中だけでなく観察活動中に負傷する事例も多いと考えられる。(4)児童1人あたりの年間事故件数の割合は, 偶然として無視できる確率(10–6)よりも高く, 事故件数をさらに減少させる必要がある。(5)過去30年を通して, 男子の方が女子に比べ負傷しやすい。以上のように, 本研究で明らかになった傾向は, 今後の理科実験における安全対策を考える上で貴重な情報を提供していると考えられる。

  • ―中学校第3学年「月の満ち欠け」と「金星の満ち欠け」の学習を事例として―
    栗原 淳一, 益田 裕充, 濤崎 智佳, 小林 辰至
    2016 年 57 巻 1 号 p. 19-34
    発行日: 2016/07/12
    公開日: 2016/08/09
    ジャーナル フリー

    本研究は, 中学校第3学年の「月の満ち欠け」と「金星の満ち欠け」の学習において, 地球と天体の位置関係を作図によって位相角でとらえさせる指導が, 満ち欠けの空間認識的な理解と満ち欠けを科学的に説明する能力の育成に与える効果について明らかにすることを目的とした。そこで, 実験群では地球と天体の位置関係を作図によって位相角でとらえた後に, 満ち欠けの現象を説明する仮説を立てさせて, モデル実験で検証させた。一方, 統制群では作図を行わせないで, 同様の学習に取り組ませた。そして, それぞれの群の満ち欠けの空間認識的な理解度と科学的に説明する能力を質問紙調査によって比較検討した。その結果, 統制群に比べ, 実験群の方が満ち欠けの空間認識的な理解度が有意に高かった。また, 満ち欠けを科学的に説明できる生徒も有意に多かった。このことから, 作図によって地球と天体の位置関係を位相角でとらえさせる指導は, 満ち欠けの現象を空間認識的に理解させたり科学的に説明したりする能力の育成に有効であることが示唆された。

  • 出口 明子, 山口 悦司, 舟生 日出男, 稲垣 成哲
    2016 年 57 巻 1 号 p. 35-44
    発行日: 2016/07/12
    公開日: 2016/08/09
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は, コンセプトマップ研究において提案されている「ノード圧縮」(齋藤・遠西, 2008)という手法に着目し, それを支援する機能を実装したコンセプトマップ作成ソフトウェアを開発し, 評価することであった. 具体的には, 稲垣ら(2001)のソフトウェア「あんどう君」に「ノード圧縮機能」を新たに実装し, それを導入した理科授業を実施することを通して, 実践的な評価を行った. 実践的な評価では, コンセプトマップのノード圧縮機能を実装したソフトウェアを利用するクラス, 及び紙ベースのコンセプトマップを利用してノード圧縮を行うクラスを設定して比較・検討を行った. その結果, ノード圧縮機能を新たに実装したコンセプトマップ作成ソフトウェアは, 紙ベースのコンセプトマップに比べ, ノード圧縮の操作性を向上させるものであり, 学習者のメタ認知の活性化を促し, またノード圧縮という学習活動そのものの理解を支援するものであったと結論付けられた.

  • ―社会的相互過程として見る概念転換―
    福田 恒康, 遠西 昭寿
    2016 年 57 巻 1 号 p. 45-52
    発行日: 2016/07/12
    公開日: 2016/08/09
    ジャーナル フリー

    概念転換は, 新しい理論を受容し古い理論を放棄することであるが, 古い理論の放棄は忘却ではなく, 保持する理論に対するコミットメントの順位の入れ替わりである(ストライク・ポスナー, 1994)。理解は, 理論に対するコミットメントの形成であり(ヘッド・サットン, 1994), 概念や理論に対して自信や信念を持つことである。概念転換は, 理論の切り換えと新しい理論に対するコミットメントの強化からなる(遠西・久保田, 2004)。本研究では授業をとおして概念転換の詳細な過程を, 運勢ライン法(White and Gunstone, 1992; ホワイト・ガンストン, 1995)を用いて調査した。授業では, 高等学校物理における「力のモーメント」の課題が実施された。その結果, 学習者によって概念転換が極めて多様な認知的過程を経て生じるにもかかわらず, 既有の理論に対するコミットメントの弱化, 理論切り換えによる新しい理論の受容, 新しい理論へのコミットメントの強化という共通のパターンが存在することが明らかになった。さらにこの過程は「既有の理論に対するコミットメントの弱化とそれに続く理論切り換えによる新しい理論の受容」と「新しい理論へのコミットメントの強化」という独立した2段階の構造を持つことが明らかになった。理論切り換えは, 理論の競合とコミットメントの弱化を前提とするので, 生徒どうし・生徒と教師による社会的相互過程において生じる。これに対して実験は, 理論からの予測と結果との一致・不一致によってコミットメントを変化させる。実験は, 理論を創造したり理論を変えることはないが, コミットメントを変える。これらは, 遠西・久保田(2004)が中学校において行った概念(理論)転換の実践的研究の正当性を強く支持するものであった。

  • 山本 智一, 神山 真一
    2016 年 57 巻 1 号 p. 53-62
    発行日: 2016/07/12
    公開日: 2016/08/09
    ジャーナル フリー

    アーギュメントは, Toulmin(1958)が提唱する論証の構造であり, 近年, これを応用したものとして, 「主張」と「証拠」及び, それらを結びつける「理由付け」から成るアーギュメントが, 理科教育に導入されている。アーギュメント構成能力は, 児童生徒を指導する教師自身にも必要であるにも関わらず, 現職教員による理科の内容についてのアーギュメント構成能力は, その実態すら未だ示されていない。本研究の目的は, 現職教員を対象に, 理科におけるアーギュメント構成能力の実態を明らかにして, 小学生の実態調査と比較することである。小・中・高等学校の現職教員76名を対象として, 坂本ら(2012)の課題を援用した調査を行い, 回路と豆電球の明るさに関して記述したアーギュメントを得点化した。その結果, 主張に関しては高い点数が得られており, 質問に正確に答えることができているが, 証拠や理由付けに関しては, 記述が不十分であることが明らかになった。特に, 証拠を省略せずに記述したり, 理由付けに科学的原理を用いたりすることには, 小学生の児童と同様の課題が見られた。また, 現職教員のアーギュメント構成能力は, 学校種, 性別, 中学校または高等学校理科免許の有無, 教職経験年数, 担任や専科等としての指導の形態を問わず, 不十分であることが推察された。今後の課題として, さらにサンプリングを整理・拡大して, 本研究で示唆された傾向を詳細に検討することや, 理科において現職教員のアーギュメント構成能力を育成するプログラムの開発が必要である。

資料論文
  • 谷津 潤, 山野井 貴浩
    2016 年 57 巻 1 号 p. 63-70
    発行日: 2016/07/12
    公開日: 2016/08/09
    ジャーナル フリー

    近年, 生物の授業において, DNA抽出実験が, 頻繁に実施されるようになった. しかし, 現在実施されている実験形式では, 抽出物がDNAである(DNAを含んでいる)ことを納得できない生徒がいると指摘されており, 試薬を用いて抽出物がDNAであることを確かめる過程を導入することが必要と言える. そこで, 本研究では, 従来のDNA抽出実験の操作に, 対照実験を伴う検証過程を導入し, その導入が抽出物はDNAであると納得することに繋がるかどうかを明らかにすることを目的とした. 質問紙調査の結果, 検証前では抽出物がDNAであると納得できなかった生徒が全体の約1/3を占めたが, 検証後では, それらの生徒も, 抽出物がDNAであると納得したことから, DNA抽出実験における試薬を用いた検出の重要性が明らかになった. その際, 特に対照実験を伴う方がより生徒の納得につながることが明らかになった.

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