理科教育学研究
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57 巻 , 3 号
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原著論文
  • 佐々木 智謙, 佐藤 寛之, 松森 靖夫
    2017 年 57 巻 3 号 p. 213-222
    発行日: 2017/03/18
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー

    本研究では, 心臓の血流経路に関する小学校教員志望学生の認識状態の把握を試みた。具体的には, 質問紙を用いて, 心臓内の各部分の名称, 心臓に繋がる血管の名称, 及び心臓と心臓に繋がる血管内の血流経路に関する認識調査を行った。得られた主な知見は以下の通りである。(1)心臓内の各部分の名称について, 全て正しい回答を選択できた学生は約半数であったこと。(2)心臓に繋がる6つの血管の名称について, 全て正しい回答を選択できた学生は5%に満たないこと。(3)心臓及び心臓に繋がる血管内の血流経路に対する回答類型は, 計21種類に及んだこと。

  • 島田 広彦, 小倉 康
    2017 年 57 巻 3 号 p. 223-232
    発行日: 2017/03/18
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は, 自分の考えをまわりに説明したり発表したりすることができていない児童に対して, できるようにするための話し合いの手法を開発し, それによって児童の「理科がわかる」という意識を高めることである。話し合いをキャッチボールにたとえた「思考のキャッチボール」という話し合いの手法を, 小学校の第5学年の単元「流水の働き」において実施した。児童には事前と事後で質問紙調査を実施した。その結果, 「伝えるカード」を用いた「思考のキャッチボール」という話し合いの手法により, いつも教えてしまう児童には「聞いてあげる」という「受ける」姿勢を, いつも伝えることができない児童には「何がわからないのか伝える」という姿勢を身につけさせ, 説明したり発表したりできるようになることが明らかになった。また, 自分の考えを伝えることがよくできると, 理科の学習もよりわかるという意識が高まることがわかった。

  • 園山 博, 渥美 茂明
    2017 年 57 巻 3 号 p. 233-243
    発行日: 2017/03/18
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー

    高性品種と矮性品種のヒマワリ(Helianthus annuus)を播種して12日目に芽生えの草丈を比較すると, 矮性品種「小夏」の草丈は高性品種「かがやき」の草丈の約20%しかなかった。また, 矮性品種の播種後5日目の芽生えに1.0×10–4 MのGA3溶液を投与すると, 播種後12日目(投与後7日目)には, 草丈が対照の2倍以上となった。この間の平均伸長速度は, 7.6 mm/日であり, 無処理の高性品種の平均伸長速度8.0 mm/日とほぼ同じ値となった。すなわち, 矮性品種の芽生えは, 投与したジベレリンに応答し, 高性品種の伸長成長速度まで回復した。これらの結果に基づき, 高性品種と矮性品種の芽生えにジベレリンを投与し, 節間の伸長を1週間にわたり測定する生徒実験を行なった。ワークシートを用いて, 生徒たちに草丈の変化のグラフを作成させた。さらに, 草丈伸長の差異を品種や処理区の間で比較し, 草丈の違いとジベレンとの関係を考えさせた。この実践の前後に学習の理解を評価したところ, 生徒たちは品種の違いとジベレリンとの関係に関する問いに対して, 正答を選択する割合が57%から86%へと, 有意に上昇した。アンケートでは95%の生徒が, 植物の成長の仕組みに興味を持てたと回答した。また, 品種間の草丈の違いとジベレリンの関係を深く調べる方法を問うと, ジベレリン量の測定や遺伝子の操作をあげた生徒が見られ, 多くの生徒が品種別にジベレリンの生産量を測定することを考えたり, 一部にはその原因となる遺伝子について考えたりするようになった。

  • ―トゥールミン・モデルの導入と多様な質問経験を通して―
    中山 貴司, 木下 博義, 山中 真悟
    2017 年 57 巻 3 号 p. 245-259
    発行日: 2017/03/18
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー

    本研究では, 批判的思考のうち「合理的な思考」と「反省的な思考」に着目し, 小学校理科授業において, これらを育成する指導法を考案し, 実践を通してその効果を検証することを目的とした。この目的を達成するため, 自分の考えをトゥールミン・モデル(主張-根拠・事実-論拠)に沿って記述させ, それに対する多様な質問経験(①他者の質問を見たり他者の考えに質問したりする, ②他者から質問され答える, ③自分の考えに質問する)を行わせた後, 再度自分の考えをモデルに沿って記述させるという指導法を考案した。そして, 小学校6年生35名を対象に種子の発芽に必要な空気の成分を問う課題を設定し, 授業を行い, 質問紙とワークシートによる分析結果をもとに効果検証を行った。その結果, 考案した指導法は, 他者の考えに「なぜだろう」と疑問をもち質問したり, 根拠を重視してより多くの情報や知識を求め合理的に思考したり, 自分の考えを反省的に思考したりする力の育成に寄与したことが明らかとなった。

  • 村津 啓太, 稲垣 成哲, 山口 悦司, 山本 智一, 坂本 美紀, 神山 真一
    2017 年 57 巻 3 号 p. 261-271
    発行日: 2017/03/18
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は, Chin and Osborne(2010a)から根拠付き主張の発言を促進するための教授方略とデザイン要素を導き出し, それらの日本の理科授業に対する有効性を検証することであった。デザイン要素とは, 教授方略を実際の授業で反映させるための具体的なガイドを意味している。最初に, 根拠付き主張の発言を促進するための教授方略とデザイン要素について概観した。次に, 教授方略とデザイン要素の反映された実験授業を実施した。その後, 実験授業で行われたアーギュメンテーションの発言記録から, 根拠付き主張を発言できた学習者の人数変化について検討し, 教授方略とデザイン要素の有効性を検証した。評価の結果として, 根拠付き主張を発言できた学習者の人数は, 授業の序盤から終盤にかけて有意に増加した。以上より, Chin and Osborne(2010a)から導き出された教授方略とデザイン要素は, 日本の理科授業において, 学習者の根拠付き主張の発言を促進する上で有効であることが示唆された。

資料論文
  • ―小学校理科の第6学年「人の体のつくりと働き」において―
    佐伯 英人
    2017 年 57 巻 3 号 p. 273-280
    発行日: 2017/03/18
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は, 煮干しの解剖実習(煮干しの体内の器官を観察して調べる活動)を小学校の理科の授業で実践し, 解剖実習に対する児童の意識はどうであったのか, また, 児童がどのような器官を観察することができたのかを明らかにし, 解剖実習の有効性について議論することである。研究の結果, 明らかになったことは次の①~③の3点である。① 煮干しを使った解剖実習を通して「解剖に対する意識」がポジティブな方向へ変容した。② 煮干しを使った解剖実習では, 児童が各器官を概ね良好に認識することができた。③ 煮干しの解剖実習を実施した学級と生の魚の解剖実習を実施した学級を比較したところ, 児童の認識の程度に違いがみられた器官が4つ(腸, 肝臓, 腎臓, 卵巣・精巣)あった。

  • ―東京都内の研究発表会の事例から―
    松岡 雅忠
    2017 年 57 巻 3 号 p. 281-291
    発行日: 2017/03/18
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー

    中学・高等学校の理科系部活動では, テーマを設定した継続的な探究活動などが実践されており, 科学好きな生徒を育てる場として重要である。本研究の目的の一つは, 放課後や長期休業日に行われる探究活動の実態についての調査を行うことである。まず, 東京都の私立中学・高等学校の生徒が参加する「生徒理科研究発表会」を対象に, 1961年度から2015年度までの55年間に発表された, 中学759件, 高校1,349件の研究報告を整理し分析した。その結果, 近年, 物理や化学を中心に応募件数が増加していることや, 研究報告に含まれる動植物のスケッチや実験装置の見取り図の割合が減少し, 写真の割合が急増していることを見出した。もう一つの目的は, 学校ごとの設備の違いや学校周辺の自然環境によってテーマの影響を受けにくいと考えられる, 化学分野を中心に研究テーマの調査を行うことにある。化学分野を12の領域に分け, 作品ごとの概要やどのような点で人気があるかを, 学校種や時代背景を踏まえつつ分析した。化学分野では, 自然環境に関する調査が伝統的に行われているほか, 金属の変化, 染色, 色変化を伴う化学反応など, 視覚的な変化に注目する研究テーマを選択する傾向がみられた。

  • 松橋 博美, 菊地 友佳子, 伊藤 崇由, 林 昭宏
    2017 年 57 巻 3 号 p. 293-300
    発行日: 2017/03/18
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー

    エチレンの生成について高校化学の教科書では, 加熱した濃硫酸にエタノールを滴下するという実験方法が紹介されている。しかし, 濃硫酸の扱いや実験に危険が伴うため, あまり普及していない。エチレンの生成と脂肪族炭化水素の性質に関する実験について, 酸化アルミニウムやYゼオライトならびにベータゼオライトを触媒として用いる方法が報告されている。ゼオライトは一般には入手が難しいことを考慮し, これらに代わりホームセンターなどで購入可能なゼオライトの適用について検討した。その結果, 園芸用や調理用として市販されているゼオライトが使用可能であることが明らかとなった。また, 高校での実践により, 実験教材としての有効性が確認された。

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