理科教育学研究
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58 巻 , 3 号
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原著論文
  • ―仮説フレームを視点にアブダクティブな示唆を形成することに主眼をおいて―
    安部 洋一郎, 山本 智一, 松本 伸示
    2018 年 58 巻 3 号 p. 211-220
    発行日: 2018/03/19
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は, 小学校理科授業における問題解決場面において, 仮説の形成を促す指導方略の開発と授業実践を通したその評価である。Peirceは仮説の形成に関する推論をアブダクションと名付け, 科学的推論の過程に位置づけた。アブダクションは, アブダクティブな示唆を得る段階とそれを吟味し仮説として採択する段階の2段階で説明されている。本研究では児童がアブダクティブな示唆を形成することを促すために仮説フレームに注目した。仮説フレームは視点を共有する仮説のまとまりである。先行研究では一つの仮説フレームの仮説に固着してしまうと, 他の仮説フレームの仮説を形成することが困難となることが報告されている。本研究では他の仮説フレームの視点に気づかせるために実験素材の提示と実験方法の検討を行う活動を組み込んだ指導方略を導入した。授業実践を通した検証の結果, 実験班で話し合い実験方法を検討する活動を通してアブダクティブな示唆が吟味され, 実験を通して検証するための仮説が採択された。また, 指導者によって実験素材が提示され実験方法の検討が促された以降には, それぞれの実験班が形成したアブダクティブな示唆の数は増加した。このことは導入した指導方略が, 生徒の仮説形成の思考において他の仮説フレームへの気づきを促進したことを表していると考えられる。

  • ―小学校第5学年「ふりこのきまり」の学習を事例として―
    岡田 啓吾, 稲田 結美
    2018 年 58 巻 3 号 p. 221-230
    発行日: 2018/03/19
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー

    本研究では, 変数が明確な実験における考察を記述する能力を育成するための指導方策を開発し, その効果を実践的に検証することを目的とした。「独立変数」, 「独立変数の変化」, 「従属変数」, 「従属変数の変化」の4種類の要素を, 変数が明確な実験の考察を記述する際に, 児童が満たせるようになることを目指した。具体的には, 問題文と実験結果の表と共に, 考察の記述例を五つ提示し, それぞれの記述例が4種類の要素を満たしているかどうかを児童自身に評価させる。この方策を小学校5年「ふりこのきまり」単元に導入したところ, 4種類の要素を含めて考察を記述できた児童が増えたことから, 開発した指導方策の有効性が明らかとなった。

  • ―小学校理科の第4学年「金属, 水, 空気と温度」において―
    佐伯 英人, 木村 ひろみ
    2018 年 58 巻 3 号 p. 231-238
    発行日: 2018/03/19
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は, 市販の洗濯用合成洗剤を使って教材研究を行い, また, 授業実践を通して, 水の温まり方を調べる実験の有効性を議論することであった。研究の結果, 明らかになったことは次の①~④の4点である。①多くの児童が実験をして(観察をして), 水の温まり方の正しい概念を身に付けることができた。②多くの児童が授業を受けて「よく分かった」という意識をもつことができた。その要因の1つとして実験があった。③多くの児童が実験をして(観察をして)「よく分かった」という意識をもつことができた。④教員の授業に対する意識は「良好」であった。その要因の1つとして実験があった。

  • 佐々木 智謙, 佐藤 寛之, 松森 靖夫
    2018 年 58 巻 3 号 p. 239-249
    発行日: 2018/03/19
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー

    本研究の主な目的は, 心臓の構造に関する小学校教員志望学生の認識状態を明らかにすることにある。具体的には, 心臓の内部構造及び心臓に繋がる血管の様子を, 質問紙法によって調査した。得られた主な知見は以下の通りである。(1)心臓の構造について科学的に正しい認識を有する学生は皆無であり, 学生の回答は計44の模式図に分類できたこと。(2)心臓内部に閉鎖的空間をもつ構造, 及び心臓内部の左右の心室間に血流経路を示した学生は各10%以上存在したこと。(3)心臓内部の構造に弁を示した回答は43.3%であり, 計4の弁(僧帽弁, 大動脈弁, 三尖弁, 及び肺動脈弁)を科学的に正しい位置と向きに示すことができた学生は1人のみであったこと。(4)心臓内部の各部屋に連結する計6の血管の位置を正しく回答できた学生は1人のみであったこと。上記(1)~(4)の学生の実態に基づきながら, 更に学習指導を要する心臓の構造についての知識・思考等を抽出した。

  • 佐藤 陽子, 太田 尚孝
    2018 年 58 巻 3 号 p. 251-259
    発行日: 2018/03/19
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー

    現在, 小・中学校の授業や科学イベントなどで, 生花の解剖実験が行われている。本研究では, 現時点で報告されていない乾物状態の百合花茶の解剖を試みた。ここでは, 筆者が開発した飲用可能な桜花の塩漬けの解剖教材と, 食用可能な生花状態のエディブルフラワーの解剖教材を参考にして研究を推進した。結果として, 乾燥した花が吸水すると生花とほぼ同様のつくりに戻せることや, 食材としての花を「飲用可能な教材」に出来ることが明らかになった。本教材の価値は, 生き物を大切にする心情を慮りながら花の解剖ができることだと考えられる。本研究によって, 次の結論が判明した。①乾物状態の百合花茶では, 外花被, 内花被, おしべ, 葯, 花粉, めしべ, 柱頭, 花柱, 子房の観察が可能であった。だが, 外花被と内花被は割れやすい傾向が見受けられた。②熱湯を浸潤させた百合花茶では, 外花被, 内花被, おしべ, 葯, めしべ, 柱頭, 花柱, 子房の観察が可能であった。特に, この実験は, 外花被と内花被の観察に適していた。③百合花茶の解剖を実験群, 生花の百合の解剖を対照群としてアンケート調査を実施した。両群間では, 観察可能な花の部位, これらの数, めしべとおしべの構造に対する理解度に有意差は見られなかった。また, 実験群では, めしべの柱頭がべたべたしていることや, めしべの柱頭に花粉がつくと子孫ができることを理解できた来場者は有意に少なかった。

  • 長沼 武志, 森本 信也
    2018 年 58 巻 3 号 p. 261-269
    発行日: 2018/03/19
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー

    本研究は, 主体的・対話的で深い学びを具現化するための教授・学習方略として, フィードバック機能に基づく評価と指導を主軸とした理科授業デザインを構想し, その有用性を検証することを目的とした。足場作りを目論む評価として, タスクレベル, プロセスレベル, 自己調整レベル, 自己レベルの四つのフィードバック機能を視点に形成的アセスメントを実施した。そして, 子どもの学習状況に応じてフィードバックを実行し, 学力育成を図った。その結果, 子どもは問題を明確にし, 結果とその要因を関連づけながら学習を調整する等, 対話を通して物の溶け方に関する科学概念を構築した。同時に, 学習における主体性が育まれた。すなわち, フィードバック機能に基づく評価と指導を主軸とした理科授業デザインが, 主体的・対話的で深い学びを具現化し, 科学概念の構築に寄与することが明らかとなった。

  • ―切り紙構造の力学応答を一例として―
    仲野 純章
    2018 年 58 巻 3 号 p. 271-278
    発行日: 2018/03/19
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー

    近年, 生徒が主体的に課題設定し, 問題解決活動を展開する「探究活動」の教育効果が注目され, 理科においても積極的に導入されつつある。限りある取り組み時間の中で探究活動をスムーズに展開していくためには, 日常的に問題解決能力を高める指導を取り入れていくことが望ましい。問題解決能力を高めるには, 物事の本質を理解し, 幅・深さ両面でより豊かな知識を持つという知識面の能力を高めることも当然必要であるが, 一方で, 情報や数値データをどう解釈し, 処理するかという思考面の能力を高めることも必要である。思考面の能力を高めるにあたっては, 公式等の数式によるアプローチで解を求める能力に加え, 必ずしも数式に頼らないアプローチで解を見いだす能力も育成していかねばならない。今回, 切り紙構造の力学応答を題材にした授業実践を通して, 数式に基づかない解追究プロセスの指導の有効性を検証した。その結果, 変数の多い切り紙構造の変形挙動を考えるにあたり, 三角グラフによる図解化アプローチを指導することで, データ解釈・処理パフォーマンスの向上が見られた。また, 活動後の意識調査においても, 習得アプローチの積極的な利用意思に繋がることも示された。こうした授業実践でのパフォーマンスと意識調査の両面から, 数式に基づかない解追究プロセスの指導の有効性が確認された。

  • 中村 大輝, 松浦 拓也
    2018 年 58 巻 3 号 p. 279-292
    発行日: 2018/03/19
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー

    理科における問題解決や探究の入り口として, 学習者自身に仮説を立てさせることの重要性が指摘されている。一方, 仮説設定に関する先行研究においては, 学習者が仮説を設定する際の思考過程の実態が明らかにされてこなかった。そこで本研究では, 仮説設定を求める調査問題を6問作成するとともに, 大学生・大学院生を対象とした面接調査を実施した。結果の分析に際しては, まず, 発話プロトコルから思考過程を推定し, その内容によって6つのカテゴリーに分類した。次に, それらのカテゴリー間の推移を集計し, 仮説設定には共通した思考過程が存在することを明らかにした。また, 思考過程の合理性を得点化し, 思考過程との関係性を検討した結果, 変数の同定過程においては複数の変数の吟味が, 因果関係の認識過程においては因果関係の慎重な検討が合理性に正の影響を及ぼすことが明らかになった。

  • 野原 博人, 和田 一郎, 森本 信也
    2018 年 58 巻 3 号 p. 293-309
    発行日: 2018/03/19
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー

    本研究では, Engeström, Y.による「拡張的学習(Expansive Learning)」を理科授業デザインの視点として援用し, 主体的・対話的で深い学びを通した子どもの科学概念構築に関わる変化の様態について, 形成的アセスメントの要素とその関連性を視点として分析した。その内実と関連づけた上で, 主体的・対話的で深い学びの評価について, Sawyer, R.K.による「深い理解」を規準とした。科学概念の構築を図るための「道具」の変換過程をⅠ〜Ⅴと措定し, 小学校第4学年の水の温まり方についての授業デザインの分析を行った。分析した結果, 以下の諸点が明らかとなった。(1)「拡張的学習による理科授業デザイン」が具現されていくことで, 知識としての「道具」が主体的・対話的で深い学びによって構築されていった。(2)主体的・対話的で深い学びによって構築された知識としての「道具」は, Ⅰ〜Ⅴの段階を通して, 「深い理解」の具現化として, 質的変換が図られた。(3)「深い学び」と「学習における主体性・協働性」は表裏一体化して機能する。

資料論文
  • ―高校生, 大学生の実態調査の分析に基づいて―
    相場 博明
    2018 年 58 巻 3 号 p. 311-318
    発行日: 2018/03/19
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー

    相場(2016)は, 中学校における「月の満ち欠け」指導の問題点として, 教科書で示されている「月の満ち欠け」の模式図において多くの情報が不足していることを原因に挙げ, その指導が十分になされていない可能性を指摘した。本研究は中学生のときにすでに「月の満ち欠け」を学習してきた高校生と大学生の実態調査を行い, その理解とつまずいている要因を考察した。その結果, ほとんどの高校生と大学生が「月の満ち欠け」を科学的に理解しておらず, また, そのつまずいている要因として, 宇宙視点で月の満ち欠けの原理を考える図が書けないこと, 地球視点で考えた場合も月の日周運動が理解できていないなどの原因が示された。このことは, 相場(2016)の分析結果を裏付けるものであり, 今後の「月の満ち欠け」の指導法の指針のための資料となる。

  • ―期待-価値理論に基づいた基礎的研究―
    原田 勇希, 坂本 一真, 鈴木 誠
    2018 年 58 巻 3 号 p. 319-330
    発行日: 2018/03/19
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー

    本研究は, 中学生はいつ理科を好きでなくなるのか, 理科の好嫌の性差はいつ生じるのかを検討し, さらになぜ理科を好きでなくなるのかを期待-価値理論の枠組みから分析することを目的とした。本研究では, 期待の指標として各単元に対する統制感を, 課題価値認知の指標として各単元の学習内容に対する興味価値を測定した。分析の結果, (1)男女ともに中学校1年生で理科の好嫌が減退する。その後, 男子には明確な減退傾向はないものの, 女子では2年生でも顕著に減退すること, (2)理科の好嫌における性差は2年生から出現し, 3年生ではさらに拡大すること, (3)どの学年においても統制感と興味価値の両方が理科の好嫌に影響するが, 関連の様相は学年と単元によって異なること, (4)物理分野に該当する単元は他の単元と比較して統制感が低いことの4点が明らかになった。

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