理科教育学研究
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59 巻 , 2 号
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総説論文
  • 中村 大輝, 雲財 寛, 松浦 拓也
    2018 年 59 巻 2 号 p. 183-196
    発行日: 2018/11/30
    公開日: 2018/12/05
    ジャーナル フリー

    本研究は, 理科の問題解決における仮説設定に関する国内外の研究を収集・整理し, 国内外の差に留意しつつ, 研究の動向や課題を明らかにすることを目的とした。仮説設定に関する研究を, 「仮説の定義」「実態の評価」「思考過程」「指導」の4観点から整理し, 各観点における研究の動向や課題を検討した結果, 主に次の4点が明らかになった。1)仮説の定義の多様性は, 仮説の定義を構成する要素全体に見られるものではなく, 説明する対象の違いに由来するものであること。2)仮説設定の評価方法は, 国内外で用いられる方法に傾向差が存在すること。3)思考過程に関する研究では, 実際の理科授業における仮説を設定する際の思考過程を捉えられるよう改善を図る必要があること。4)国内における指導方法研究はその具体性で国外の研究に勝るものの, 各指導方法には課題も存在すること。

原著論文
  • 中村 大輝
    2018 年 59 巻 2 号 p. 197-204
    発行日: 2018/11/30
    公開日: 2018/12/05
    ジャーナル フリー

    問題発見から仮説設定に至るまでの過程は発見の文脈と呼ばれ, 従来, その指導や評価があまり重視されてこなかった。そこで本研究は, 理科教育の「発見の文脈」における評価の必要性や, 当該過程における評価方法の問題点を明らかにすることを目的とし, 先行研究における評価方法を分析した。その結果, 発見の文脈においても評価の必要性が主張できること, 先行研究における発見の文脈の評価は, ①想起数の評価, ②論理性の評価, ③検証可能性の評価, ④能力の評価の4種類に分類できることが明らかになった。また, 各評価方法には, 指導方法に還元されない評価である(①), 思考過程を考慮していない(②), 正当化の文脈へ方向付けられた評価方法を発見の文脈に適用している(②③), 学習者が検証可能性を判断することが困難である(③), 発見の文脈において必要となる能力が明らかになっていない(④), 能力と実際のパフォーマンスの関係性が明らかになっていない(④)といった問題が存在することが明らかになった。

  • 名倉 昌巳, 松本 伸示
    2018 年 59 巻 2 号 p. 205-215
    発行日: 2018/11/30
    公開日: 2018/12/05
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は, 2つの開発した授業による中学生の科学的進化概念形成の様相を検証することである。「生物進化」に関する誤解は多く, 根強く保持される「獲得形質の遺伝」など誤概念を指摘する先行研究も多い。本研究では中学生に進化のしくみを理解させるために, 「どのようにして生物は進化するか」に着目して, 学習到達目標として3つの要素(Adaptation: 適応, Variation: 変異, Selection: 選択)を導入した。その到達目標に従って1年地学領域から2年生物領域に及ぶ, すなわち2学年2領域にわたる「逆向き設計」による授業開発を行った。さらに, その生物領域の授業計画の中心となる課題には, 「自然選択説」に基づいて進化仮説を推論する「パフォーマンス課題」を準備した。その結果, パフォーマンス課題の評価分析や2領域間を比較した質問紙調査の統計的検定から, 中学生の科学的進化概念の形成過程の一端を明らかにすることができた。

  • 内ノ倉 真吾, 北原 深志, 下古立 浩
    2018 年 59 巻 2 号 p. 217-227
    発行日: 2018/11/30
    公開日: 2018/12/05
    ジャーナル フリー

    本稿では, 小学校第6学年の児童を対象として, 理科学習における言語的表現・図的表現に関する質問紙調査を実施し, ラッシュ分析等を通じて, 小学生の図的表現に対する認識の特徴を探った。第一に, 今回開発した図的表現に関する質問紙調査(29項目)は, 多値ラッシュモデルに従うことが確認された。なお, 調査対象の男子と女子の間には, 統計的な有意差は確認されなかった。第二に, 小学生の図的表現に対する認識については, 次のような特徴が認められるのであった。図的表現に対する態度に関して, 理科学習の一つとしての図的表現の活動は, 言語的表現と比べて, 図的表現の方が好きだと感じていた。また, 言語的・図的に表現することの大切さを認めている一方で, それらの表現には有能感を感じていない傾向が認められた。図的表現のわかりやすさの評価に関して, 図的表現の構成者によらず, 図的表現はわかりやすいと評価する傾向が見られた。図的表現を通じた学習の関与に関して, 図を使って, 自然の事物・事象の仕組み・様子や自分の考えを表現することについては, 言語的に表現することと比べて, 自分が取り組んでいる学習活動としては認識されていなかった。図的表現を用いたコミュニケーションに関して, 図を用いて, グループで話し合うこと, ものごとの仕組み・様子や自分の考えを伝達すること, 他者から説明を受けることについては, 当該児童にとっては, 取り組んでいる学習活動として最も認めにくいものであった。これらのことを踏まえて, 小学校の理科学習における図的表現の活動への示唆として, 図的に表現することを学習することと, 社会的な実践として図的表現を学習し, その有用性が実感できることの必要性を指摘した。

  • 猪口 達也, 後藤 大二郎, 和田 一郎
    2018 年 59 巻 2 号 p. 229-242
    発行日: 2018/11/30
    公開日: 2018/12/05
    ジャーナル フリー

    本研究では, 主体的な学習を高める鍵となり得るメタ認知概念について, 社会性を加味した概念へと拡張し, それらの機能によって理科における資質・能力の育成に関わる問題解決活動の充実を図ることを目指した。具体的には, メタ認知概念の拡張に関して, Chiu & Kuo(2009)が提起した「社会的メタ認知(social metacognition)」の機能によってもたらされる5つの利益を援用し, 理科学習における問題解決活動の質の向上に関わる利益として捉え直した。その上で, それらの機能が問題解決活動にもたらす利益と併せて促進すると考えられる, 個人内メタ認知の活性化と科学概念構築の成立過程について, 小学校理科を事例に検討した。事例的分析の結果から, 社会的メタ認知の機能によってもたらされる5つの利益から, 問題解決活動の質の向上を捉えることが可能になった。さらに, 社会的メタ認知を通じた個人内メタ認知の機能の活性化が, 科学概念構築に寄与することが明らかになった。

  • 堀井 孝彦
    2018 年 59 巻 2 号 p. 243-251
    発行日: 2018/11/30
    公開日: 2018/12/05
    ジャーナル フリー

    近年, 高等学校や大学で, 物理授業の評価, 改善を目的とした多肢選択方式による定量的な調査問題がしばしば行われるようになった。小学校理科の物理分野においても, 日頃から簡便かつ平易に利用でき, 定量的な結果が得られる多肢選択方式による調査問題の作成が望まれる。そのためには, 問題や選択肢の妥当性を分析・評価することによって精度を向上させる必要がある。そこで本研究では, 各選択肢の回答率以上の情報を得るために, 項目特性図を用いて, 回答傾向の分析を行った。項目特性図を用いた定量的な分析は, 回答理由の記述に基づく定性的な分析と併用することによって, 小学校理科物理分野の調査問題に関する妥当性の評価と改善において, 有用であることが分かった。

  • 小池 守, 小畑 直輝, 佐藤 仁紀, 倉山 智春
    2018 年 59 巻 2 号 p. 253-264
    発行日: 2018/11/30
    公開日: 2018/12/05
    ジャーナル フリー

    本研究では, 太陽の動きを日時計の影で簡便に表示できる日時計アプリケーションを開発し, 中学校において季節が変化する原因を学ぶ授業で使用した。生徒の教材に関する理解度と教材に対する有用感, 天文学習に関する興味関心の高まりを基に, 教材としての有用性を検証した結果, 以下の3点が明らかとなった。1)生徒は, 授業を通して季節が変化する原因を理解し, 知識と知識を繋げて説明することができた。2)生徒は, 日時計アプリを役に立つ教材と考え, 予想を検証する目的で使いたいと考えていた。3)自主観測会への参加率は, 授業で日時計アプリを使用した学級が最も高く, ほぼ全生徒が最後まで継続観測することができた。以上のことから, 本研究で開発した日時計アプリケーションは, 天文学習で活用できる教材であることが示唆された。

  • 小池 守, 小畑 直輝, 木村 龍平, 桐生 徹
    2018 年 59 巻 2 号 p. 265-276
    発行日: 2018/11/30
    公開日: 2018/12/05
    ジャーナル フリー

    本研究は, 数°Cの温度変化で可逆的な形状変化が提示できる教材を開発し, 小学校4年理科「物の体積と温度」単元の発展学習で使用した。児童の学習内容と教材の原理に関する理解, 教材に対する有用感について調査した結果, 児童は学習内容と教材の原理を正しく理解し, 教材に対する有用感が高いことから, 本教材は固体の温度変化に伴う体積変化を学ぶ教材として有用であることが示唆された。

  • 仲野 純章
    2018 年 59 巻 2 号 p. 277-284
    発行日: 2018/11/30
    公開日: 2018/12/05
    ジャーナル フリー

    物理学では理論的モデルに基づいて様々な現象を説明しようとし, その理論展開の中で用いる物理概念は, 基本的に理想化されている。物理教育現場では, このように理想化された物理概念を, いかに現実の具体的事象と対応させながら学習者に理解させるかが重要な課題である。本研究では, 物理概念の代表例として質点を取り上げ, 学習者の納得性向上に寄与する指導法について, 授業実践を行いながら検討した。授業実践では, 一定質量の紙製箱型の大きさを段階的に縮小していった際の自由落下に要する時間の変化を計測, グラフ化させた。その上で, 得られたグラフから質点の落下時間を推論し, 理論値との整合性を確認させた。計測実験から推論された値の平均値は, 理論値から5%前後のずれに抑えられており, 実測データから理論値を導出できることが確認された。そして, こうした一連の活動後, 学習者全体の質点に対する納得性が有意に向上することも確認された。本研究を通して, 条件を段階的に物理概念に近づけ, それに伴い結果が理論値に向かって変化していくことを観察することで現実と物理概念の整合性を認識させる, という物理概念の新たな指導法を提起できた。

資料論文
  • 山野井 貴浩, 佐藤 綾, 古屋 康則
    2018 年 59 巻 2 号 p. 285-291
    発行日: 2018/11/30
    公開日: 2018/12/05
    ジャーナル フリー

    「種族維持」とは生物は種を維持する, あるいは仲間を増やすために繁殖するという概念であるが, 現代の進化生物学では否定されている概念である。しかしながら, 小中高の理科学習を終えた大学生であっても「種族維持」の認識を有している可能性がある。そこで本研究は, 種族維持の認識を問う質問紙を作成し, 5つの大学に通う大学生629名を対象に質問紙調査を行った。その結果, 半数以上の学生が種族維持の認識を有していること, 高等学校生物の履修や大学における進化の講義はその認識に影響していないことが示唆された。また, 高等学校生物や大学における進化の講義を履修した学生の方が, 血縁選択説や利他行動について知っていると回答した割合は高いという結果が得られた。誤概念を変容させるために, これらの用語を扱う高等学校生物や大学の進化の講義の授業方法を改善していく必要がある。

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