理科教育学研究
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61 巻 , 3 号
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原著論文
  • 河原井 俊丞, 宮本 直樹
    2021 年 61 巻 3 号 p. 403-416
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,中学生を対象とした理科授業において,個人が事象の観察から科学的探究可能な「問い」を生成するまでのプロセス内で明らかとなっていない思考の有無を検討し,それらが「問い」の生成プロセス内のどこに見られるのかを明らかにすることを目的とした。その結果,生徒にとって,「何かに気付いた→何か疑問に思った→『問い』を生成した」という「問い」の生成プロセスを辿りやすい一方で,原因性,規則性,相互関係性,類似性・差異性といった科学的探究可能性の要素は,生徒の「問い」の生成プロセス内の「問い」への推移において多く内包されることが明らかとなった。

  • ―中学校2年理科「電流とその利用」を通して―
    木内 裕佑, 藤田 剛志
    2021 年 61 巻 3 号 p. 417-428
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,エンジニアリング・デザインに基づくものづくり活動を取り入れた理科授業を設計し,実践を通して,その教育的効果を検証することである。この目的を達成するために,まず米国で展開されているエンジニアリング・デザインを導入した理科授業の実践例を調査した。次に,中学校理科「電流とその利用」単元において,エンジニアリング・デザインに基づくものづくり活動を取り入れた授業を設計し,実践した。そして,質問紙調査によって,エンジニアリング・デザインに基づくものづくり活動が生徒の興味・関心などの情意的側面にどのような教育的効果を及ぼすのかを分析した。また,授業の感想文について計量テキスト分析を行い,ものづくり活動を取り入れた授業でどのような学びが展開されたかを考察した。その結果,エンジニアリング・デザインに基づくものづくり活動が,従来のものづくり活動と同様に,生徒の理科に対する興味・関心を高めること,生徒に理科学習の意義を実感させること,さらに従来のものづくりと比較して,生徒の創造的で主体的な学習活動を促す効果があることが明らかにされた。

  • 久保田 善彦, 中野 博幸, 小松 祐貴
    2021 年 61 巻 3 号 p. 429-442
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    月の満ち欠けの理解には,空間認識の中でも空間的視点取得が必要になる。本研究は,第一に,月の満ち欠けに関する空間的視点取得能力を検討した。本調査を回答するには,空間的視点取得の前提として【平面図の円から立体の球をイメージする能力】が必要になる。その上で,【仮想的身体移動をイメージする能力】をベースとし,移動先の仮想的身体から見える月の形状を推測する以下の能力が必要になる。仮想的身体の回転角が45°および135°は【球形の月にできる陰の形状を推測する能力】と【月の陰の左右を推測する能力】,90°は【月の陰の有無を推測する能力】,180°は【月の陰の左右を推測する能力】になる。なお,【月の陰の有無を推測する能力】,【月の陰の左右を推測する能力】,【球形の月にできる陰の形状を推測する能力】の順に認知負荷が高くなる。第二に,AR教材活用による空間的視点取得能力の変容から仮想的身体移動とその他の認知的情報処理,特に見えの推測の特徴を考察した。平面図に立体モデルを重畳表示することで,【平面図の円から立体の球をイメージする能力】が高まることが明らかになった。また,アバタの移動やその視野の提示,アバタの動きの追体験は,【仮想的身体移動をイメージする能力】を向上させた。それによって,認知負荷の高い【球形の月にできる陰の形状を推測する能力】が向上したと考えられる。一方で,180°や90°のように,認知負荷の高くない課題は,仮想的身体移動イメージの明瞭・不明瞭は関係ないと考えられる。

  • ―回収箱モデルを用いた教員と生徒によるルーブリックの作成―
    竹田 大樹, 鈴木 一成
    2021 年 61 巻 3 号 p. 443-456
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    学習指導要領が目指す主体的・対話的で深い学びの実現に向けて,中学校理科においては探究の過程を踏まえた生徒の目的的な学習活動が肝要であることが先行研究から指摘されている。この経緯から,問題解決的な学習の枠組みにおいてルーブリックを用いたパフォーマンス評価が有用であることが既にわかっている。この学びの十全な実施には,教員と生徒の間で共有化されたルーブリックの構築が必要である。本研究では,中学校理科において,回収箱モデルを用いて教員と生徒がルーブリックの作成に取り組むことで,目的的な学習活動の実現可能性に焦点を当て,検証を行った。具体的には,鈴木(2014)の問題解決的な学習の枠組みにおいてルーブリック作成を取り入れた問題解決的学習の実践とその分析を行うことにより,教員と生徒によるルーブリック作成に関する視点の構築と目的的な学習活動の具現化に関する考察を行った。実践では,回収箱モデルを用いて教員と生徒でルーブリック作成に双方向的に取り組み,これをパフォーマンス評価のために運用することで,生徒の主体的・対話的で深い学びが具現化された。回収箱モデルを用いたルーブリックの作成は,主体的・対話的で深い学びの実現に寄与する評価のひとつのモデルケースとなり得ると考えられる。

  • ―教師による生徒の話し合い活動への支援の視点について―
    竹田 大樹, 鈴木 一成
    2021 年 61 巻 3 号 p. 457-466
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,学習指導要領が目指す主体的・対話的で深い学びを十全に実践するために,生徒の話し合い活動に焦点を当て,教師による生徒の話し合い活動への支援の視点の検討を目的とした。生徒の話し合い活動を,教師がどのように支援して活性化を図るかは重要な視点であり,マーフィーが提唱した教授法の枠組みの知見は傾聴に値する。問題解決的な学習の枠組みには,鈴木(2014)の理科授業デザインを用いた。実践は,高等学校地学において大気の安定度を題材とした問題解決的な学習の授業実践を行った。また,実践においては,マーフィーの教授法の枠組みにおける,話し合い活動の教師による支援の視点を援用した。研究では,生徒のポートフォリオや発言を分析することで,教師が生徒のグループの話し合いに対してどのように支援しているかの詳細を明らかにした。その結果,教師による積極的な生徒の話し合いの支援により,生徒の話し合い活動の活性化が実現されたため,IIFの視点が主体的・対話的で深い学びを精緻化する知見の一つとして有用であることが示唆された。

  • 中込 泰規, 加藤 圭司
    2021 年 61 巻 3 号 p. 467-478
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は,近年注目されている「深い学び」の実現に向けて,知識や技能を相互に関連づけて考え理解していくその思考過程の具体を明らかにすることを目的に,Linn(2000)の提唱する知識統合の理論を援用し,中学校理科における対話を基軸とした問題解決過程における生徒の思考の事例的分析を行った。結果として,生徒は,直近の問題を解決することを意図した「小さな統合(本研究では,これをMicro Integration:MIと称する)」を繰り返し生じさせる姿を見出すことができた。生徒は,問題解決に向けて「小さな統合」を通じて少しずつ知識や考えの抽象度を高め,その結果,科学的な知識や理論に到達していくという,知識統合が実現する実態を明らかにした。

  • 西山 宜孝, 山下 修一
    2021 年 61 巻 3 号 p. 479-488
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    歴代の小中学校の学習指導要領および同解説において,電流量がどのように表現されているのかを調査した。平成29年の学習指導要領改訂により,電流量の表現は小学校・中学校ともに「電流が大きい(小さい)」と初めて統一された。そこで中学生76名に電流量の表現についてアンケート調査を行い比較分析した。また,小学校8校,中学校5校の教員156名にも同様のアンケート調査を行い比較分析した。その結果以下の3点が明らかになった。(1)平成20年改訂版学習指導要領下で理科を学んだ中学生は教員の指導により「電流が大きい(小さい)」という表現を支持するようになるが,同様に「電流が強い(弱い)」という表現も支持する傾向が見られた。(2)令和2年5月の時点で小学校教員と中学校教員には,電流量の表現に大きな相違があった。(3)令和元年度までの小学校理科教科書における電流量の表現は,主要5社のうち4社が「強い(弱い)」としていた。

  • ―東日本大震災以降の放射線教育実践に向けての試みから―
    堀 道雄, 藤岡 達也
    2021 年 61 巻 3 号 p. 489-496
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    東日本大震災から9年経ち,学校現場における放射線教育はエネルギー,環境など持続可能な社会の構築という観点からも,今後の取扱いを検討する必要がある。現代的な諸課題に関する教科横断的な教育内容として,初等教育段階から身近な放射線を取扱うためには,指導にあたる小学校教員の資質・能力の育成やそのための研修の設定も重要な意味がある。本研究では,文部科学省や福島県,また全国的な放射線教育の取扱いの動向を整理し,それを踏まえ,緊急時防護措置準備区域(UPZ)圏内を含んだ滋賀県内において放射線教育を主題とした小学校教員研修プログラムの開発を検討した。教員研修プログラムの目的を ①放射線教育の意義を認識する ②実験・観察を通して教師自身の基礎的知識を習得する ③福島だけでなくUPZ圏内など地域の実態に照らし合わせて考える と設定し,外部講師と連携して実験・観察を取り入れた研修を小学校教職員対象に実施した。その結果,研修受講者は地域の実態に合わせた放射線教育実践への意義を見いだし,放射線に関する知識・技能を習得することの必要性を認識することができた。

  • ─内的表象の書換えに着目して─
    宮本 直樹
    2021 年 61 巻 3 号 p. 497-513
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,てこのつり合いの等式導出を促進する教材を開発し,その教材の使用を通して,生成・形成した内的表象を書換え,外的表象としてのてこのつり合いの等式(数式化)を導出させることを目的とした。その結果,まず,「マス目表現」を使用したことで,データ解釈時に,面積表象が生成・形成された。次に,「ブロック表現」「面積表現」を使用したことで,面積表象が生成・形成されたことは言うまでもないが,面積表象が書換え(変換・統合)られ,てこの左腕に対する右腕のつり合いを外的表象として表現することができた。これらの「マス目表現」「ブロック表現」「面積表現」の使用を通して,内的表象間の移動が可能となり,児童は面積表象を生成・形成,変換・統合,つまり,生成・形成した内的表象を書換え,そして,外的表象としての「おもりの重さ×目盛りの数=一定」というデータ解釈を行うことができた。

  • 向井 大喜, 松本 伸示
    2021 年 61 巻 3 号 p. 515-526
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,主体的な探究活動における仮説の検証段階において,学習者に見られる演繹的推論過程の課題を明らかにすることを目的とする。そのために,大学生を対象とした自由度の高い探究活動において,仮説検証と考察過程を記述させ,論理学的観点から分析した。その結果,状況Aにおける現象Bを生じさせる要因Xについて,三段論法における小前提に当たる「AならばX」,もしくは大前提にあたる「XならばB」のどちらか,あるいは両方を妥当に推論できていない学生が相当数存在することが明らかになった。

資料論文
  • ―マイクロスケール電気分解実験を想定して―
    仲野 純章
    2021 年 61 巻 3 号 p. 527-532
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,理科教育における電気化学実験に供する新たな溶液撹拌手段として,ローレンツ力による流体的効果(以下,磁界効果)を利用した方法の可能性を検証した。検証はマイクロスケール電気分解実験を想定した形態で実施し,セルプレートの1セル内において,鉛直方向の磁界をかけた状態の下,横並びに対向配置させたアルミニウム電極を用いて塩化カリウム水溶液の電気分解を行った。その結果,通電に伴って一定方向の旋回流が発生し,電解質水溶液全体に撹拌作用がもたらされることが確認された。これにより,磁界効果を利用したマイクロスケール電気分解実験への撹拌作用導入の可能性が示された。

  • 中山 雅茂
    2021 年 61 巻 3 号 p. 533-542
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    小学校理科第4学年で学習する「水の三態変化」では,水を加熱する実験を行い,水は温度によって水蒸気に変わることを捉える。実際に水を加熱しその温度変化を捉え記録する実験を通して,水の温度と状態の変化を関係付けることによって水の性質を理解する。水の沸点は気圧や不純物の混入によって変化するが,広く一般的に100°Cという値で捉えられている。一方,教科書で紹介される実験方法の中でも,水を入れる容器としてビーカーを使用した場合は,この温度が97~98°Cになることが示されている。これは,使用する棒温度計の仕様上の問題によるが,十分に小学校教員には理解されていない状況にある。そこで本研究では,このビーカーと棒温度計を使った実験について,棒温度計の仕様上の特性を踏まえ次の2点の改善を行い,実際に小学校における授業実践を通して児童実験で100±1°Cの測定結果が得られることを確認した。1)ビーカーをアルミニウム箔の蓋で覆う際,あらかじめ棒温度計の太さよりも大きな穴をアルミニウム箔にあける。2)測定範囲0~200°Cの棒温度計を使用する。また,授業実践の際に,実験によって温められた空気が実験室にある換気口から廊下に流れ出したことに起因すると考えられる実験室内の空気の流れによって,換気口近くの実験台で実施した実験が空調環境の影響を受けている可能性が示唆された。

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