理科教育学研究
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総説論文
  • 亀田 直記, 今井 泉, 今井 章人, 都築 功
    2024 年 65 巻 2 号 p. 249-262
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

    これまで教科「理科」関連学会協議会(CSERS)が高等学校必修理科総合科目の設定を提言してきた。それにもかかわらず,現行の「科学と人間生活」を除いて学習指導要領の改訂の度に毎回異なる名称・内容の総合科目が設置されてきた。しかし,近年,必修理科総合科目に関する議論がまとめられた形跡がない。そこで,本研究では,「なぜ必修総合科目が実現しないのか。また,実現しても定着しないのか。その理由はCSERS関連論文などを探ることで明らかになるのではないか」という研究課題から,これまでにCSERSを構成する各学会の学術雑誌に掲載された提言を調査・整理し,考察した。その結果,(1)CSERSが目指した「必修と総合化」の理念が時間を経てあいまいになっていたこと,(2)意見を集約し必修理科総合科目設置を提言した学会があった一方で,CSERS全体の継続した動きにはならなかったこと,(3)本理科教育学会においては,高校理科総合科目はもとより,「科学と人間生活」の学術的背景が議論されていないこと,(4)総合科目が必修科目として定着しなかった理由の一端として目的・目標に関する議論が十分でなかったことなど,(5)必修理科総合科目に関係する大学入試に関する議論は個人レベルの提案に留まり,組織としての提言にできなかったこと,が課題であることがわかった。これらの課題の解決に向けて,必修理科総合科目に関するカリキュラム研究が必要であることが明らかになった。

  • 中山 貴司, 中村 大輝, 山中 真悟, 川崎 弘作, 木下 博義
    2024 年 65 巻 2 号 p. 263-277
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

    日本の初等中等理科教育における批判的思考力の重要性については比較的早い段階から指摘されており,今後もその育成が求められている。これまでにも批判的思考力の育成を図った研究は数多く行われている。しかし,それらを総括的に把握し,成果と課題を明らかにしたものはない。そこで本研究では,日本の初等中等教育の理科授業における批判的思考力の育成を図った研究の動向を明らかにするためにレビューを行った。その結果,小学校を中心に様々な校種で実践されており,多くの授業実践が,「練り直し系」「スキル系」といった観点から指導を行っていること,「合理性」「反省性」といった批判的思考力の構成要素を育成できていることが明らかになった。一方で,小学校中学年や第2分野での授業実践は少なく,今後,研究を蓄積していくことで批判的思考力の発達段階を明らかにしたり,領域固有性の特徴を踏まえて批判的に思考する力を育成したりすることが望まれる。また,「導入アプローチ」も視野にいれながら「懐疑性」など批判的思考力の多様な構成要素を育成する指導方法の開発も望まれる。そして,批判的思考力を測定する平行テストもいまだ作成されておらず,その作成が今後期待される。

  • ―『日本理科教育学会研究紀要』を概観して―
    吉田 はるか, 吉田 安規良
    2024 年 65 巻 2 号 p. 279-308
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

    今後の理科を教える教師教育を展望するための一助とすべく,昭和時代の日本理科教育学会における理科を教える教師教育研究を概観するために,昭和時代に刊行された『日本理科教育学会研究紀要』に掲載された理科を教える教師教育に関する論考を整理した。通読した48冊中,理科を教える教師教育に関する情報が記載された論文が55編掲載されており,1977年以降は毎年採録されていた。この55編を,①教員志望学生の現状に関する調査研究(26編),②現職教員の現状や実際に行われていた理科授業の実態に関する調査研究(12編),③教員志望学生への実践に関する研究(10編),④現職教員への実践に関する研究(2編),⑤諸外国に関する調査研究(14編),⑥その他(2編)に区分した(同一論文で複数の内容を含む場合は重複計数)。掲載論文以外の特徴として,第21巻~第27巻の各第3号に「理科教育文献抄録集」が収録され,その中に理科を教える教師教育に関する文献情報もあった。昭和時代の理科を教える教師教育研究の特徴として,平成時代と同様に,その大半が教員志望学生や現職教員の実状を研究したものであり,小学校が関係する論文が合計34編と相対的に多かった点がある。その一方で,内容的には物理に関するものが14編と目立つ点が平成時代とは異なる。この他に,第二次世界大戦前の状況に関する研究があったこと,諸外国に関する研究ではアメリカが関係するものが相対的に多く,特別支援教育や才能児教育,ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)の活用に繋がる研究も確認できた。昭和時代の研究成果に理科を教える教師教育が今後解決すべき問題への魁となる報告が確認できたことから,「その後」の研究が期待される。

原著論文
  • ―小学校第5年「ものの溶け方」を事例に―
    猪口 達也, 和田 一郎
    2024 年 65 巻 2 号 p. 309-322
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

    本研究では,小学校理科におけるモデリングとメタ認知機能の関連付けを高め,科学的な問題解決活動を促進する理科授業デザイン方略の開発を目指した。具体的には,Halloun(2006)が指摘するモデリング学習サイクルと小学校理科における問題解決活動との関連を精査した。さらに,モデリングに関わる認知機能として,猪口ら(2018)の個人内メタ認知と社会的メタ認知におけるモニタリングとコントロール機能に着目し,モデルの変容過程を詳細に分析することで,科学的な問題解決を促進する授業デザイン方略の具体化を試みた。事例的分析の結果,モデリング学習サイクルにおいて,子どもがメタ認知を機能することで,モデルを科学的に変容することと連動して,溶解概念を構築することが明らかとなった。さらに,そのサイクルでモデルの理解やメタ認知が促進することも明らかとなり,モデリング学習サイクルとメタ認知機能の関連付けに基づく授業デザインフレームワークを開発することが可能となった。

  • ―自ら粉砕した岩石の室内での溶融実験やそのマグマを用いた粘性の観察の一連の効果―
    鬼木 哲人, 山田 貴之
    2024 年 65 巻 2 号 p. 323-334
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

    本研究では,中学校における火山の形の違いとマグマの粘性との関係について,理解の向上を目的に室内でマグマを生成する実験方法を開発した。開発した方法は,室内で行える他に加熱時間が10分と短く,授業に取り入れやすい方法となった。そして,塩基性岩と酸性岩をマグマにし,斜面や平らな面に垂らして様子を観察することでマグマの粘性の違いを観察することができた。また,粘性の違いだけでなく,マグマが急冷されて固まってできた岩石を観察することで,急に冷えて固まった岩石は,ガラス質になることも観察することができた。教育的効果については,生徒自らが粉砕した岩石を室内で溶融し,生成したマグマの性質を観察することで生徒のマグマの理解が深まることがわかった。

  • 鎌倉 正和, 桐生 徹, 大島 崇行, 阿部 雅也
    2024 年 65 巻 2 号 p. 335-344
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

    本研究では,鎌倉ら(2023)の分類した授業ビデオタイプを基に授業ビデオを作成し,それらの視聴と対面授業参観における授業検討会の現職者と学卒者の発話を検証し,両者の発話を比較することを目的とした。分析の結果,現職者と学卒者の両者ともに,対面授業参観では学習者を含む知識領域の発話が有意に多くなり,定点カメラタイプの授業ビデオにおいては学習者を含まない知識領域での発話が有意に多くなることが共通していた。一方,学習者主体タイプの授業ビデオでは現職者は学習者を含む知識領域の発話が有意に多くなるが,学卒者は学習者を含む知識領域が学習者を含まない知識領域よりも発話が多くなるものの,有意な差が生じなかった。

  • ―小学校6年生「月の満ち欠け」における身体写真のスライドから―
    久保田 善彦, 栃堀 亮, 市原 猛
    2024 年 65 巻 2 号 p. 345-358
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

    身体化認知とは,身体と環境との相互作用に根ざした認知を取り扱う理論であり,オンラインとオフラインの区別がある。理科の実験・観察の考察は,オフラインの身体化認知と深く関わる。本研究は,考察の身体化認知を支援するオフラインの身体化デザインを開発し,その効果を明らかにすることを目的とした。対象とした学習は,小学校6年生の月の満ち欠けである。身体化デザインの手法として,身体写真のスライドを作成した。具体的には,角距離を示す身体行為の写真と,天体に関する視覚情報を時系列にプレゼンテーションソフトに蓄積した。その結果,以下が明らかになった。第一に,身体写真のスライドの活用は,写真内の感覚運動情報を想起した考察を促進させる可能性が示唆される。第二に,身体写真のスライドの活用は,学習者による考察と学習内容の定着に正の影響を与えることが示唆される。今回の手法と対象において,感覚運動情報をオフラインの考察に利用することは,一定の効果が期待できる。なお,空間スキルの高い児童に,別事象の推測と学習の定着に関する効果が示されが,その詳細は今後の課題になる。

  • ―火山観測機器の理解を目指したSTEAM教材の開発と実践による教育的効果の検討―
    佐藤 真太郎
    2024 年 65 巻 2 号 p. 359-369
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

    伊豆諸島北部に位置する伊豆大島の第6学年児童を対象に,火山防災に関わるSTEAM教育プログラムの下,火山噴火現象を踏まえた火山観測機器を理解するプログラミング教材を開発し,実践した。そして,ポップコーンの噴出で火山噴火を表現した噴火モデル上に,振動や温度を感知するMESHブロックを用いた火山観測機器を設置し,噴出前の震動や温度の変化,ポップコーンの噴出を感知するプログラミング教育を行い,その教育的効果を検討した。その結果,学習者が,火山の特徴に関連した知識と,火山観測機器についての知識を結び付けて考えることができることなどが示された。また,それらの知識を噴火の被害を減らすプログラムについて思考,判断,表現する場面に活用することがわかった。さらに,LEDやボタンなど,情報を受信する機能を持つMESHブロックの設置場所を検討する場面で,火山の情報を正しく伝えることで,災害からの被害を減らす方法を考えようとする学びに向かう力,人間性等を育むことができる可能性を示すことができた。

  • 中込 泰規, 加藤 圭司, 小倉 康
    2024 年 65 巻 2 号 p. 371-387
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,生徒が独自の視点から「科学の本質(Nature of Science,以下,NOSと略記)」の要素に関する考えを構築して,理解に導くことを重視した「科学の時間」を設定し,その実践の中で見られる生徒の思考過程に注目して,効果を事例的に検証したものである。科学の時間は,グループや学級での議論を中心として,科学的な探究の過程を内省することから,「探究を行う上で重要なこと」についてコンセンサスのとれた考えを創り出す活動である。科学の時間を通して,科学的な探究の過程を内省する視点を獲得し,その視点から,自他のNOSの要素に関する考えについて評価を行い,少しずつ考えを構築していく効果が見られた。生徒はより妥当な考えを創り出すために,①他者との議論や教師の手立てから,内省を行うための新たな視点を獲得し,②これまで用いていた視点との比較を行い,③どちらが内省を行う上で効果的な視点かを判断,決定して,④再び内省を実施する,一連の思考過程を辿っていた。科学の時間は,この思考を促すだけでなく,繰り返し生じさせる効果が見られた。さらに,科学的な探究の過程を繰り返し内省することや,生徒独自の視点からNOSの要素に関する考えを構築することに重点を置いた効果として,NOSの要素を柔軟に関連付けて,統合的な理解に導く効果も確認できた。

  • ―理科模擬授業における評価尺度のカテゴリ化と活用―
    仲野 利昭, 伊佐 公男
    2024 年 65 巻 2 号 p. 389-404
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

    小学校教員養成課程に在籍している学生の成人前期という発達段階,就職するという発達課題を考慮して,成人学習の特徴を踏まえた理科の模擬授業を導入した養成プログラムを実践した。2年生,持ち上がりの3年生35名が実践的な指導・支援の技能・能力を習得するため,学生が教師役,児童役の両方の立場から理科学習に関する技能・能力の状況を把握できる評価尺度を活用し,2年間にわたり自己評価,相互評価を行った。指導者,研究協力者は評価尺度,授業づくりのカテゴリ,学習指導要領のカテゴリ,教授能力のカテゴリに注目して集計・分析した。分析においては,目標が達成されたかどうかの判断基準を設定することにより,評価点を通して達成困難な技能・能力,達成が容易な技能・能力が明らかとなった。また,模擬授業の回数を重ねることで評価尺度の技能・能力,総合的な技能・能力,自信の向上がうかがえ,小学校理科の指導・支援に関する技能・能力養成プログラムが有効であることが示唆された。

  • ―小学校第6学年「植物の水の通り道」の学習単元を事例に―
    中野 未優, 奥平 直子, 神山 真一, 山本 智一, 和田 一郎
    2024 年 65 巻 2 号 p. 405-419
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

    本研究では,小学校第6学年「植物の水の通り道」に関する学習を事例に,科学的モデリングと科学的な説明との関連について明らかにすることを目的とした。科学的モデリングについては,Zangori(2018)が指摘した構造に着目した。児童が記述した科学的な説明を分類した上で,科学的モデルへの科学的な説明の証拠や主張の反映の実態を捉えた。さらに,科学的モデリングにおける自己評価の内容とモデルの変容との関連についても検討した。事例的分析の結果から,科学的な説明のタイプごとの証拠及び主張のモデルへの反映の実態が明らかとなった。また,科学的モデリングにおける自己評価の内容を分類し,科学的モデリングのプロセスの中で,開発したモデルにおいて現象を説明するために不足している要素を分析し,評価できた児童が主張を反映したモデルへと修正できることが明らかとなった。

  • 林 康成, 興治 文子, 島田 英昭
    2024 年 65 巻 2 号 p. 421-431
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,小学校理科第5学年「ものの溶け方」の相互教授において,共感的配慮行動の促進が成績下位層の学習成績に与える効果を検討することを目的とした。小学校第5学年の2クラス(65人)において,共感的配慮行動の促進の有無を操作し,理科の相互教授を同一教諭が実践した。その結果,共感的配慮行動の促進があるクラスの成績下位層は,ないクラスよりもテスト得点が向上し,共感的配慮行動を受ける回数が多く,授業中に成績向上に有効な発話が多く現れた。これらの結果から,授業における質問役の共感的配慮行動の促進により成績下位層が共感的配慮行動を受け,成績向上に有効な発話を促し,成績を向上させることが示唆された。

  • 保刈 栄紀, 和田 一郎
    2024 年 65 巻 2 号 p. 433-446
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

    子どもの多様化,Society5.0とポストコロナ時代の新たな学び,教員不足などを背景に教員の資質・能力が再定義され,教員研修に関する仕組みの構築が求められている(中央教育審議会,2022)。理科教育において,こうした理科教員の資質・能力に関する研究を含む教師教育についての先行研究は多くない。そこで,本研究は,学習指導に関する理科教員の資質・能力を包括的に調査することを目的とした。Naumescu(2008)の提唱する「優れた実践につながる理科教員の資質・能力」の28項目が東京都で理科を学習指導する教員にとって,理科教員の資質・能力として認識されるかどうかを意識調査から明らかにし,その上で東京都の理科教員の意識と意識を形成する教職経験との関連性の分析を行った。その結果,以下の諸点が明らかとなった。1)Naumescuの提唱する「優れた実践につながる理科教員の資質・能力」は,調査に回答した東京都で理科を学習指導する教員にとって,理科教員の資質・能力として受け入れられた。2)東京都の理科教員の資質・能力の捉え方においては,第2の軸である「教授・学習プロセスの軸(T-S)」への意識が1つの鍵になっているという特色が明らかになった。3)「授業実践や教育に対する考え方に影響や変化を及ぼすと考えられる事柄」及び「教職経歴」の経験と「優れた実践につながる理科教員の資質・能力」には,一定の関連性があることが明らかになった。

  • ―TIPSを用いた中学生の実態調査と,「主体的に学習に取り組む態度」と「批判的思考」に着目して―
    和平 匡将, 山田 貴之
    2024 年 65 巻 2 号 p. 447-461
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,統合的プロセス・スキルズの視点から,中学生の「科学的に探究する力」の実態を明らかにすることを第一の目的とした。さらに,「主体的に学習に取り組む態度」と「批判的思考」が「科学的に探究する力」に影響を及ぼす要因であると仮定して,諸要因の因果モデルを明らかにすることを第二の目的とした。調査は,新潟県内の公立中学校2校の生徒345人を対象に,TIPS(Test of integrated Process Skills)を基に作成した調査問題と質問紙調査を行った。調査の結果,「仮説」や「変数の制御」,「変数の特定」,「グラフ化」の正答率が全体の正答率の平均値よりも低いことが明らかになり,共通する内容として変数を認識することに課題があることが明らかになった。また,変数の認識が十分に発揮されないことによって,他の「科学的に探究する力」に影響を及ぼす可能性があるという示唆を得た。さらに「科学的に探究する力」に及ぼす諸要因の構造は,「主体的に学習に取り組む態度」が初発に位置し,直接的または,「批判的思考」を媒介して間接的に影響することが明らかになった。

資料論文
  • 粟田 高明
    2024 年 65 巻 2 号 p. 463-471
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

    綿棒を用いた炎色反応を観察する簡便で安全な方法を検討した。金属元素を含む試薬に市販の燃料用アルコールを混合し,綿球の大きな綿棒を用いることで炎色反応の持続時間を約20秒と長くし,観察を行うことができる。綿棒を用いた炎色反応の実験は簡便で,1つの試料を短時間で行うことが可能で,容易に1時間の授業に組み込むことができる。炎色の比較が簡単に行えるなど,本実験手法を用いれば探究的な活動を行うことが可能となる。

  • ―参加型手法を活用した理科教材の簡略化に関する一事例―
    宇都宮 俊星
    2024 年 65 巻 2 号 p. 473-481
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

    社会的課題に対して社会での対話を促す手法として市民参加型手法が開発されている。この市民参加型手法を用いた理科教材はいくつか存在している。一方で,作成コストや情報の鮮度などによって現場実践には,課題が残る。そこで,本研究では,市民参加型手法を大幅に簡略化し,理科教材にした際の実践と課題を明らかにすることを目的とする。本研究では,教材導入コストや情報の鮮度に依存しないように構成したコンセンサス会議を簡略化したプロセスによって,議論や話合いの過程に一定の効果があると判定した。また,本実践ではすべてを紙媒体の資料を用いず,ICTの利用で補った。実践についての課題に対しては,改善の余地が明らかになった。

  • 高橋 多美子, 田中 伸一
    2024 年 65 巻 2 号 p. 483-493
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,児童が土と関わり,生活科を核として国語科や図画工作科,食育と関連させると共に,中学年以降の理科や社会科の接続を考慮した授業を展開し,児童の能動的な学びを促すカリキュラム・デザインを提示することである。授業実践後の児童を対象とした調査の結果,土遊びが「大好き」あるいは「少し好き」を回答した児童は,96.7%であり,土を身近に感じ,土に親しむことができた。さらに,児童の様子や保護者の調査結果から授業を通して,思考力や表現力等の能力が高まったことが示唆された。

  • 瀧本 家康, 亀田 直記
    2024 年 65 巻 2 号 p. 495-502
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

    理科教員志望の学生に対して小学校から中学校で学習する「地球の内部と地表面の変動」に関する5つの地学現象の時間スケールの獲得状況を調査した。その結果,正答率は概ね20%以下であり,回答の時間スケールも大きくばらついていた。「台地や段丘の形成」については正答にピークが見られたが,「地層の堆積速度」については,現実よりも大幅に遅いと捉えている傾向が見られた。活断層の活動周期については,100年以下の回答割合の累積が43.2%であり,海溝型地震と混同している可能性が示唆された.「地層の堆積」以外は日本の現象を想定したが,1億年を超える回答が約10~20%あり,日本列島の形成よりも長い時間を要する現象であると捉えていたことが課題である。

  • 瀧本 家康, 亀田 直記
    2024 年 65 巻 2 号 p. 503-510
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

    浮力に関する理解度調査を行った結果,概ね50%が物体の体積が浮力を決めることを掴んでおり,空中から水中に没していく物体に働く浮力の大きさの変化は60%程度が正しく認識していた。ほとんどの大学生が水中に沈んでいく物体にも浮力がはたらいていることを理解していたが,40%程度は浮力が水中部分の物体の体積によって決まることを理解できておらず,浮力が深度に比例する,物体の底面が水面に接した瞬間に浮力の最大値が生じると誤って考えていた。その理由として,高等学校「物理」非履修者は「水深に比例して浮力が大きくなる」,履修者は「物体の浸水の有無にかかわらず浮力は常に一定である」と考えている大学生が多い傾向が見られた。

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