理科教育学研究
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最新号
特集号  理科授業による資質・能力の育成
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巻頭言
原著論文
  • 猪口 達也, 後藤 大二郎, 和田 一郎
    2019 年 60 巻 1 号 p. 3-13
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2019/08/29
    ジャーナル フリー

    本研究では,社会的文脈を考慮した科学概念構築に関わるメタ認知概念と,応答的教授(responsive teaching)との関連について検討した。具体的には,猪口・後藤・和田(2018)が指摘する,理科学習における社会的文脈を考慮した,個人内および社会的メタ認知の機能とその相互作用に着目した。加えて,Wood(2018)が提起する「応答的教授」を援用して,2つのメタ認知機能よって生起する動的な学習過程をアセスメントする視点と,それに呼応した教授としてのフィードバック機能を具体的に構想した。その上で,応答的教授と個人内および社会的メタ認知の機能の連関過程について,小学校理科を事例に検討した。結果として,応答的教授は,個人内および社会的メタ認知の機能を促進し,その連関過程を通じて,電磁石に関わる科学概念が構築されることが明らかとなった。それと連動して,根拠に基づき,より妥当な考えへと矛盾点を解消し,自己や教室全体の認知の再調整を繰り返す様態を捉えることが可能となった。

  • 金本 吉泰, 大貫 麻美, 手代木 英明, 鈴木 誠
    2019 年 60 巻 1 号 p. 15-25
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2019/08/29
    ジャーナル フリー

    初等中等教育における生命領域の教育を,コンピテンス基盤型に再構成することを目的として研究を行ってきた。生命科学領域では,近年分子生物学をはじめとする新たな知見の増加や工学などの他領域との融合が進行し,取り巻く様相が変化している。学習指導要領においても生命領域で扱うコンテンツは変化し,高等学校生物では,新たな判断基準を求められるバイオテクノロジーなどの内容が含まれるようになっている。本研究においてはこのような変化を踏まえながら,医学教育における基本形を参考に,幼稚園,小学校,中学校,高等学校での生命科学教育において育成すべき資質・能力を抽出した。さらに理科の他領域で同様に抽出された資質・能力と統合・整理を行い,初等中等理科教育において児童生徒に育む4つのドメイン・オブ・コンピテンスに集約した。さらにここで整理されたドメイン・オブ・コンピテンスに基づき,生命科学教育が担うべきコンピテンス育成のための高等学校生物基礎における学習活動を考案するとともに,その実践を行った。

  • 後藤 大二郎, 和田 一郎
    2019 年 60 巻 1 号 p. 27-38
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2019/08/29
    ジャーナル フリー

    本研究では,協働的知識構築モデルにおける授業デザインの教授方略を見出すことを目的とした。対話的な学びの教授方略として,Gillies(2014)が指摘した対話的会話(Dialogic Talk),根拠に基づく説明的会話(Accountable Talk),探求的会話(Exploratory Talk),対話的教授(Dialogic Teaching)を小学校理科授業に援用し,協働的知識構築モデル(Stahl, 2000)におけるフェーズ移行との関連ついて検証した。実践した授業は小学校第3学年「光の性質」の単元である。協働的知識構築モデルのフェーズの成立及び移行に対話的な学びの教授方略が取られており,協働的知識構築のために対話的な学びの教授方略が有効であることが明らかになった。

  • 佐々木 智謙, 佐藤 寛之, 塚原 健将, 松森 靖夫
    2019 年 60 巻 1 号 p. 39-51
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2019/08/29
    ジャーナル フリー

    本研究の主目的は,腹面から描いた昆虫の体のつくりに対する小学校第2・3学年の認識状態を分析し,その結果に基づき,育成すべき子どもの資質・能力について検討を加えることにある。得られた知見は,以下の4点である。1)腹面から描いた計9種類の生き物を,昆虫とその他の生き物とに分類できた小2は約60%以上,小3は80%以上であったこと。2)腹面から描いた計6種類全ての昆虫の体を三つの部分(頭部・胸部・腹部)に正しく分けることができた小2は皆無であり,小3でも約20%であったこと。かつ,各昆虫の正答率は小2で10%未満,小3でも65%未満であったこと。3)昆虫の体のつくりに対する回答は多様であり,頭部で4類型,胸部で9類型,及び腹部で3類型が存在したこと。4)得られた結果をもとに,昆虫概念の育成を志向した学習指導方策について提案した。

  • 大黒 孝文, 山本 智一, 黒田 秀子, 竹中 真希子, 出口 明子, 舟生 日出男
    2019 年 60 巻 1 号 p. 53-69
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2019/08/29
    ジャーナル フリー

    新しい世代の教員に求められる資質・能力の一つとしてアクティブラーニングの指導力がある。本研究は,教員の研修及び養成課程において使用する協同学習の指導力を育成するためのマンガケースメソッド学習プログラムを開発し評価を行った。小学校教員志望大学生86名を対象に,学習プログラムの学習効果と学習状況について以下の5つの項目について評価を行った。学習効果については,(1)主体的で対話的な授業に対する自信や興味に関する質問紙調査,(2)協同学習に対する判断力を測るマンガテスト,(3)協同学習の必要性の認識に関する質問紙調査と自由記述。学習状況については,(4)学習プログラムの参加状況や使用感に関する質問紙調査,(5)予習・復習教材の利用状況に関する質問紙調査と利用の実際である。評価の結果,復習教材の利用の実際について課題はあるものの,他の項目すべてにおいては有意に肯定的な評価を得た。以上から本プログラムの有効性が示唆された。

  • 山本 智一, 柳澤 真, 神山 真一
    2019 年 60 巻 1 号 p. 71-84
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2019/08/29
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,理科を初めて学習する小学校第3学年に主張−証拠−理由付けを含むアーギュメントを導入した授業を開発し,その効果を検証することである。「風やゴムのはたらき」の単元において,俣野・神山(2017)や俣野・神山・山本(2018)を援用し,準備段階に4つ,実施段階に6つの教授方略を設定して授業をデザインした。単元中,児童は3回アーギュメントを記述した。1回目はワークシートにリード文を挿入し,全員で主張,証拠,理由付けの各構成要素を確認しながら記入し,2回目はリード文を挿入しつつも,理由付けの部分に関してのみ,何を指すのかを全員で確認しながら記入した。3回目については,リード文を外し,構成要素ごとに自由に記述させた。3回のアーギュメントについて,主張,証拠,理由付けといった構成要素に着目し,それぞれを「記述の有無」と「内容の正しさ」の二つの観点で得点化した。その結果,「記述の有無」については,2回目における6人,3回目における1人を除き,28人すべての児童が満点であった。「内容の正しさ」についても,回数を重ねるにつれて徐々にリード文や教師による確認を減らしていったにも関わらず,3回目には概ね70%の児童がアーギュメントを正しく記述することができるようになった。よって,主張−証拠−理由付けを含むアーギュメントを構成することは達成され,本実践における授業の有効性が明らかになった。

  • 渡辺 理文, 杉野 さち子, 森本 信也
    2019 年 60 巻 1 号 p. 85-96
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2019/08/29
    ジャーナル フリー

    本研究では,資質・能力の育成に寄与する学習評価を実現するために「形成的アセスメント」の実践を行った。実践した単元は,小学校第6学年「植物の養分と水の通り道」である。形成的アセスメントの方略は,FAST(2008)の提案を基にした。FASTは,効果的に形成的アセスメントを行うための五つの枠組みを提案している。それは,(1)ラーニング・プログレッションズ,(2)学習のゴールと成功規準,(3)記述的なフィードバック,(4)自己評価と相互評価,(5)コラボレーションである。この五つの枠組みを援用した授業を分析した結果,教師はラーニング・プログレッションズと学習のゴールに基づいてフィードバックを行い,子どもの学習を支援していた。また,子どもは教師や仲間とコラボレーションしながら,自己評価と相互評価を行い,学習のゴールへ到達を図り,植物に関する知識を構築していた。FASTの提案する形成的アセスメントの五つの枠組みを機能させることは有効であり,日本の理科教育に援用可能であることが明らかになった。

資料論文
  • 中澤 怜子, 寺田 光宏
    2019 年 60 巻 1 号 p. 97-105
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2019/08/29
    ジャーナル フリー

    諸外国においても「コンピテンシー」育成を指向したカリキュラムや授業が注目されている。日本において,資質・能力を育成する具体的な授業実施のためには,カリキュラムマネージメントや授業デザインなどの具体的な方略が必要であり,喫緊の課題である。本研究は資質・能力を指向し,文脈的アプローチを基盤とするドイツの総合理科NaWiプロジェクトの基礎的資料としての特質を明らかにした。これからの日本の理科授業における資質・能力育成を目指す授業のカリキュラムマネージメントや教育目標,内容,方法などを考察する基本情報を提示した。特に,資質・能力を育成するために基本概念を規定し,それに関係する資質・能力を整理する必要があることが明らかになった。また,それを授業デザインするには,カリキュラムマネージメントが必要であり,文脈を基盤とした授業が望まれる。

総説論文
  • 荒川 悦雄, フォグリ ヴォルフガング, 小杉 聡, 小林 晋平, 鴨川 仁
    2019 年 60 巻 1 号 p. 107-117
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2019/08/29
    ジャーナル フリー

    重さ,重量,重力の大きさ,及び質量についての最近の法的な単位規制を紹介し,重力単位系時代からの慣例も踏まえて,現行の小学校の理科及び算数で取り扱われている重さの意味及び単位について調べた。義務教育諸学校は計量法に則した計量単位及びその記号に国際単位系(SI)を教科書採用している。小学校第3学年の理科及び算数に於いては重さを質量の意味とともに重力の大きさの意味で導入し,定量の際の単位には質量のグラムあるいはキログラムを使用している。小学校第6学年の算数では重さという用語はそのままで,質量という用語は導入されず国際キログラム原器による質量の定義の説明がなされている。学習指導要領によって小学校の重さという用語にグラムあるいはキログラムという単位を使用することは,教育上の観点から教育段階に配慮した対応と考え,発達段階に応じた概念の分化とされている。この状況はSIに代わる前の重力単位系による記述に似る。中学校以降ではSIの定義の通りに重さは単位をニュートンに変更して重力の大きさの意味に限定するとともに,新たに単位をキログラムとする質量の概念が導入され,重さと質量の違いを概念の違いとして区別する。現行カリキュラムでは重さの意味と単位は小学校から中学校に進学すると変わる。これらが変わる事は科学的な知識を連続的に積み上げていく学習の観点からは改善の余地がある。これに対して本稿は二通りの解決策を提案する。解決策の一案は,小学校にて重さを計測するための感覚表現と学術用語とを分けることにし,質量の用語を導入することである。解決策の別案は,小学校卒業以降も重さは質量の意味に留め,現在は重さと同義語とされる重量の方を重力の大きさの意味に限定することである。これらいずれかの提案によって,義務教育諸学校にて一貫した用語と単位を使い続けることができる。

原著論文
  • 小池 守, 永冨 敬之, 江原 弘, 小畑 直輝, 桐生 徹
    2019 年 60 巻 1 号 p. 119-131
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2019/08/29
    ジャーナル フリー

    本研究は,密度と濃度の概念の違いを提示できる浮子教材を開発し,中学校第1学年理科「身の回りの物質」単元の発展学習において,密度と濃度の概念の違いを理解する目的で使用した。生徒の概念に関する理解状況と教材に対する有用感を基に,教材としての有用性を検討した。その結果,生徒の理解に質量だけでなく体積という視点が加わり教材に対する有用感も高かった。以上のことから,本研究で開発した浮子教材は密度と濃度の概念の違いを理解するために有用な教材であることが示唆された。

  • 志田 正訓, 野添 生, 磯﨑 哲夫
    2019 年 60 巻 1 号 p. 133-142
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2019/08/29
    ジャーナル フリー

    本研究では,わが国の小学校理科カリキュラムに,新しい科学観を学習内容とする「科学の本質」を取り入れる際の具体的な手立てや示唆について明らかにすることを目的とした。まず,イギリスの先行研究から,「科学の本質」に関する検討を行い,本研究における「科学の本質」の概念を規定した。次に,その概念を踏まえ,イギリスのナショナル・カリキュラム科学に「科学の本質」が具体的にどのように取り入れられているのかを分析した。最後に,わが国の理科教育が抱える問題を踏まえ,「科学の本質」を導入するための具体的な手立てについて論究した。分析の結果,わが国の小学校理科に対して以下のような提案ができた。①西洋諸国とは異なる文脈を有するわが国の理科教育の性格を熟慮した上で,「科学の本質」に関する概念領域を明確に規定・分類し,カリキュラム編成においては,それらの異なる領域に合わせながら,記述の仕方に違いをもたせる必要があること。②わが国の小学生でも理解可能な科学者の業績を取り扱うといった科学史の視座に基づく新たな授業方略を導入することにより,「科学の本質」,とりわけ,社会的な営為としての科学(科学と社会との関係や科学・技術が発展してきた経緯)について,より深く学ぶことが期待できること。

  • 仲野 純章
    2019 年 60 巻 1 号 p. 143-152
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2019/08/29
    ジャーナル フリー

    構成主義的学習観に立つと,教授者には,学習者が有する既有概念を把握することが求められる。物理分野においても,これまで様々な既有概念が調査されてきたが,摩擦角に関する報告例は見られない。そこで,本研究では,摩擦角について学習する直前段階の学習者が,どのような既有概念を持ち合せて当該学習に向かうのかを調査した。具体的には,粗い板の上に置かれた木片がある傾斜角で滑り出す時,その木片上におもりを固定して質量を増加させると滑り出す傾斜角は変化するかを問う概念調査を実施した。その結果,科学的に誤った回答をする者は過半数に上り,その回答根拠には経験由来の素朴概念は少なく,教育現場で学習したことに関連した誤った科学的理論が目立つという特徴が見られた。また,こうした学習者にメタ認知的活動を促す事実確認実験や班内討議を組み込んだ指導を施したところ,大幅な概念変容とその効果持続が確認され,摩擦角に関する概念の再構成にもメタ認知的支援が有効であることが示唆された。

  • 野村 真司, 小倉 康
    2019 年 60 巻 1 号 p. 153-161
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2019/08/29
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,小学校段階で実験レポートの書き方を身につけさせる指導法を開発し,授業実践することで児童の科学的表現力の育成に有効であるかを検証することである。実験レポートの書き方をメタ認知的知識として捉え,足場づくりを活用したワークシートを作成し,足場を徐々に外しながら繰り返しレポート作成に取り組む単元展開を設計し,検証授業を行った。事前と事後で問題調査と意識調査を実施し,また児童が作成したレポートを分析した。その結果,問題調査において,開発した指導法を実践した群では実践しなかった群に比べ統計的に有意な効果が見られた。また,レポートの記述においても質的・量的な向上が見られた。足場づくりを活用したワークシートを用いて実験内容を繰り返しレポートに書き表す指導法は,小学校の第4学年の児童の科学的な記述方法の理解を促し,科学的な表現力の育成に有効であることが示唆された。

  • 林 康成, 島田 英昭, 三崎 隆, 西川 純
    2019 年 60 巻 1 号 p. 163-171
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2019/08/29
    ジャーナル フリー

    本研究は,小学校理科の個別実験授業において全体的協働と小規模協働を比較し,成績下位層1)に対する成績向上の効果と学習プロセスを明らかにすることを目的とした。各クラス30人の学習者からなる第4学年の2クラスにおいて,全体的協働と小規模協働の授業を同一教諭が実践した。事前テストと事後テストの得点,授業中の立ち歩き回数,会話内容と回数を分析した結果,全体的協働の授業を受けた成績下位層は小規模協働よりテスト得点が上昇し,授業中の立ち歩き回数が多く,全体的協働において成績向上に有効な会話が多く現れた。さらに,会話内容の質的な分析と事後インタビューの分析を行った。これらの結果から,小学校理科の個別実験授業における全体的協働は成績下位層の協働的な関わり合いを促し,成績を向上させることが示唆された。

  • 廣 直哉, 内ノ倉 真吾
    2019 年 60 巻 1 号 p. 173-184
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2019/08/29
    ジャーナル フリー

    本稿では,中学校第3学年の生徒122名を対象として,問いの種類という観点から,教職課程の大学生134名との比較を通じて,中学生による科学的に探究可能な問いの判断と生成に見られる特徴を探った。第一に,大学生は,基本的には適切に探究可能性を判断できていたのに対して,中学生は,道徳的な判断や個人的な好みに係わる問題が科学的に探究できないと判断できたものの,それ以外の事物・事象については,適切に判断できなかった。また,中学生と大学生ともに,探究可能であると判断できた事物・事象であっても,適切な問いが生成できていたのは,半数程度であった。第二に,問いの種類によって,中学生による科学的に探究可能な問いの判断と生成の正答率には差が見られた。中学生にとって,関係的な問いとしての分類や比較に関する問いが相対的に難しく,記述的な問いとしてのパターン探索や予測が相対的に易しいという傾向が見られた。第三に,中学生が生成した問いには,はい・いいえで答えられるような「閉じられた質問」が多く,比較・参照の基準の意識化が十分に認められなかった。また,着目した事物・事象の主要な概念に対して,測定可能な数量(変数)とその手続きを対応付ける操作的な定義の導入が見られなかった。加えて,「なぜ」のような疑問詞を使って,存在や行動の意義・意味を探る問いが多く,科学的な探究につながるような,事物・事象の状態や仕組みを記述・説明する問いを生成できていなかった。

  • 吉田 美穂, 川崎 弘作
    2019 年 60 巻 1 号 p. 185-194
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2019/08/29
    ジャーナル フリー

    小学校の理科授業の多くは「なぜ」という疑問を見いだす場面から学習が開始される。しかしながら,「なぜ」という抽象的な疑問のままではその後の探究活動につながりにくく,このような疑問を,探究の方向性を意味づけるより具体的な問いに変換する思考力が学習者には求められる。本研究では,このような疑問から問いへ変換する際の思考力の育成を目指すにあたって,疑問から問いへの変換過程における思考の順序性を明らかにするための調査および分析を行った。その結果,疑問から問いへ変換する際の思考の順序性(主として「問題状況の確認→既有知識の想起→要因の検討→仮説の形成→問いの設定」)が明らかになった。さらに,この過程を仮説を形成するまでの問題解決過程として整理すると,先行研究における問題解決過程「疑問の認識→問いの設定→仮説の形成」とは異なり,「疑問の認識→仮説の形成→問いの設定」と整理することができた。

資料論文
  • 相場 博明
    2019 年 60 巻 1 号 p. 195-203
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2019/08/29
    ジャーナル フリー

    本校(慶應義塾幼稚舎)は明治7(1874)年創立の私立小学校であり,古い教材が残されている。その中に,昭和6(1931)年頃に採集された東京都立井の頭恩賜公園産の昆虫標本が102種保管されている。現在の東京都では,絶滅あるいは絶滅危惧種と指定されているものが多数含まれている。そこで,小学校4~6年生にそれらの昆虫の名前を知っているか,また,現在はなぜ減少してしまったのか,その理由を問う調査を実施した。その結果,多くの児童はそれらの昆虫の名前を知らず,またその減少の原因についてもさまざまな意見を持っていることがわかった。なお,比較のために大学生70名にも同じ調査を行ったところ,小学生と同様な認識率であった。そこで,これらの標本を用いて,小学校4年生139名を対象に環境の変化と昆虫のかかわりについて考えさせる授業実践を試みた。その結果,児童は昆虫の生態や特徴を調べて議論を重ねることで,環境の変化が昆虫に及ぼす影響について活発な議論のある授業を構築させることができた。このことから,戦前の昆虫標本は理科教材として有用な教材であることがわかった。さらに新学習指導要領(文部科学省,2017)で新たに追加された第6学年の「人と環境」においても,この教材は利用可能であることが示唆された。

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