理科教育学研究
Online ISSN : 2187-509X
Print ISSN : 1345-2614
ISSN-L : 1345-2614
最新号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
原著論文
  • ―中学校第1学年理科「密度」の発展的授業を通して―
    金井 太一, 小川 佳宏, 山田 貴之
    2022 年 62 巻 3 号 p. 577-584
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,「教科書に即した密度の理科授業」の後に,「密度の理科発展的授業」と「比例の数学授業」のどちらを先に学ばせる方が,生徒の密度概念の理解に効果があるのか,学習の順序性による影響を検証することであった。この目的を達成するために,2つのグループ(理科発展→数学,数学→理科発展)を設定し,「密度の理科発展的授業」及び「比例の数学授業」を実施するとともに,密度に関する調査問題(密度テスト)を行った。その結果,「比例の数学授業→密度の理科発展的授業」といった学習の順序により,生徒の密度概念の理解が促進されること,特に内包量概念の第3用法や保存性の理解に効果があることが示された。ここに,理科と数学の学習の順序性による内包量概念の理解への効果が明らかとなった。

  • ―初等教育教員養成課程学生を対象とした質問紙調査に基づいて―
    河本 康介, 山田 健人, 小林 辰至, 山田 貴之
    2022 年 62 巻 3 号 p. 585-598
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の第一の目的は,「理科と数学の教科等横断的な学習」が「理数の関連性の意識化」,「学習方略」および「自己効力感」を媒介し,「理数学習の有用性」に影響を及ぼすと仮定した因果モデルに基づいた質問紙を作成し,「理科と数学の教科等横断的な学習の意義」を構成している諸要因の因果モデルを明らかにすることであった。さらに,理科と数学の好き嫌いと各要因の関連性を明らかにすることが第二の目的であった。質問紙調査を行った結果,第一の目的については,「問題解決への意識」,「関数的な見方・考え方」,「理数学習の有用性」,「理科における学習方略」,「理科学習での数学の必要性」,「数式化・数値化の意識」の6つの因子が理科と数学の教科等横断的な学習の意義として抽出された。また,重回帰分析とパス解析を行った結果,「関数的な見方・考え方」が,4因子(「問題解決への意識」,「理科における学習方略」,「理科学習での数学の必要性」,「数式化・数値化の意識」)を経由しながら「理数学習の有用性」に間接的に影響を及ぼしていることが明らかになった。さらに,第二の目的については,理科と数学の好き嫌いと各因子得点の比較検討から,「数式化・数値化の意識」において,Ⅱ群(数学は好きだが,理科はあまり好きではない)とⅢ群(理科は好きだが,数学はあまり好きではない)との間で有意な差が見られた。理科学習において,「数式化・数値化の意識」を高めるために,自然の事物・現象や実験結果を数学的な知識・技能を活用しながら定量的に分析・解釈し,グラフ化したり公式や規則性を導いたりする活動の必要性が示唆された。

  • ―知識の選択とその適用に基づいて―
    佐々木 智謙, 塚原 健将, 松森 靖夫
    2022 年 62 巻 3 号 p. 599-610
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の主目的は,ヒトの血液循環に関する知識の選択とその適用に基づく学習資料を開発するとともに,小学校教員志望学生の科学的認識を図ることにある。具体的には,ヒトの血液循環に関わる計13の知識を抽出するとともに,各知識の選択と適用を支援する学習資料を開発して試行した。結果として,本学習資料によって,血液循環の科学的認識(動脈と静脈の区別に加え,動脈血と静脈血の区別に関する科学的認識)に至った者は有意に増加(約30%→約50%)した。一方で,選択し適用すべき知識について科学的に認識することや,選択した知識同士を組み合わせて問題に適用すること等が困難な学生の存在が明らかになった。さらに,得られた知見等を分析するとともに,学生による知識の選択と適用に関わる問題点や,更なる知識を導入した学習資料作成の視点等についても検討を加えた。

  • ―防災教育と連動したSTEM教材の開発と実践による教育的効果の検討―
    佐藤 真太郎, 藤岡 達也
    2022 年 62 巻 3 号 p. 611-620
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    自然災害に関連したプログラミング教育で育む資質・能力の育成をねらいとした教育プログラムの開発を行った。「レゴWeDo2.0」のソフトウェアと連動する教材を活用した授業を実施し,その実践の教育的効果を検討した。まず,学習者は水門の開閉により,水位を調節し,洪水を防ぐことを理解する。これを基に大雨時の水位の上昇と関連付け,動作に反応するセンサーを使用し,水面の上昇を感知し,水門を閉じるプログラムを作成し,実践した。その結果,自然災害に関連した「知識・技能」を踏まえ,情報を適切に活用し,災害を減らそうとするプログラミング教育のねらいとしての「思考力・判断力・表現力」や「主体的に学習に取り組む態度」を培うことが可能であることが示唆された。また,学習者は理科(Science)や算数(Mathematics)で学習した知識・技能を,技術・工学(Technology,Engineering)を用いたプログラミング教育実施時にも活用していることがわかり,STEM教育の展開例となった。

  • ―地域の自然の恵みを放射線教育へ活かす―
    中村 麻利子, 南条 真佐人
    2022 年 62 巻 3 号 p. 621-630
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    温泉水中に放射性のラドンガスが含まれていれば簡単に取り出すことができるため,そのような温泉水は放射線教育の教材として容易に活用可能である。しかし,どの温泉水に教材として利用可能なラドンガスが含まれているかを調査研究した例はない。本研究では,全国に点在している温泉の源泉を入手し,霧箱の線源として利用可能かどうかを確認した。霧箱の線源として容易に採取できる温泉の所在マップはこれまでになく,放射線教育の普及のためその作成は重要である。温泉水は採水後ただちに霧箱に活用するのが良いが,採水後数週間経ても利用可能なものも存在するため,教員にとっても取り扱いやすい線源であることが示唆される。

  • 濁川 智子, 小倉 康
    2022 年 62 巻 3 号 p. 631-641
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,小学校理科において,児童が自分の考えを見直し改善できるようになることを目指す上で,自他の考えを批判的に捉えることで科学的探究過程における「不確かさ」に敏感になることができる指導法を開発し,その有効性を実践的に検証することを目的とした。本指導法では,「不確かさ」に関する特別授業を行った後,児童の思考場面において,他者の思考に対して「不確かさ」を批判的に指摘し合う話し合い活動を行った。本指導法の効果を検証するために,第4学年「もののあたたまり方」の単元で授業実践を行い,「不確かさ」に関する児童の意識及び思考の変容について分析を行った。その結果,本研究で開発した「不確かさ」を批判的に指摘し合う指導法は,他者の考えを批判的・懐疑的に捉えて考えようとする意識を向上させ,「不確かさ」に敏感になることができる指導法であることが明らかとなった。また,本指導法は児童の思考過程に対する批判的思考としてのメタ認知能力の育成に寄与するとともに,問題を科学的に解決するための思考力を育むことができることが示唆された。

  • ―相互評価活動を用いた学習活動を通して―
    山内 慎也, 郡司 賀透, 飯田 寛志, 後藤 顕一
    2022 年 62 巻 3 号 p. 643-653
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は,相互評価活動を取り入れた中学校理科の授業を実践し,生徒の考察に関する意識の変化を明らかにすることを目的として行った。この目的を達成するために,「理科の授業に関すること」,「考察の内容」,「考察の場面」,「考察を書く上でのサポート」を問う質問紙を作成し,公立中学校3年の生徒を対象に調査を実施した。分析の結果から,相互評価活動は,考察を書く上でのサポートとして,分かりやすい考察の書き方を生徒に意識させ,また,友達と意見交換したり,修正したりする活動を含むことが授業を分かりやすくさせるため,肯定的に捉えられていること,考察の場面として,自分の考察を説明したり,他人の考察を修正したりする意識を高める効果があること,考察の内容として,「観察や実験の感想」,「観察や実験を行って大切だと思ったこと」を,考察に記述しないという意識を高める効果があることが明らかになった。

資料論文
  • ―「結果の処理」,「考察・推論」,「表現・伝達」の過程に着目して―
    齋藤 惠介, 原田 勇希, 草場 実
    2022 年 62 巻 3 号 p. 655-666
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    文部科学省は「科学技術人材等の育成を図る」ことを目的にSSH事業に取り組んでおり,SSH指定校では科学的探究活動を通して生徒の観察・実験に対する興味の育成を行っている。本研究では,SSH指定校における科学的探究活動の取り組みの探究的要素が多いSSH主対象クラスと,少ないSSH主対象クラスでない生徒の両方を対象とし,「観察・実験の実施」以降の科学的探究過程が生徒の観察・実験に対する興味に及ぼす効果を事例的に検討した。その結果,「観察・実験の実施」以降の科学的探究過程では,コースの取り組みの探究的要素に拘らず,観察・実験に対する興味をより深い興味へと変容させる可能性が示された。このことから,「観察・実験の実施」以降において,探究的要素が少ない学習過程であったとしても,観察・実験に対する深い興味を醸成する可能性が示唆された。

  • 仲野 純章
    2022 年 62 巻 3 号 p. 667-673
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    学習者が物理学的な問題を処理する際に示す作図パフォーマンスへの理解は,教育実践上も重要であり,関連する基礎的データの蓄積が望まれる。本研究では,摩擦力についての学習を経た中等教育段階の学習者を対象に,文字情報として示された物体の物理的状況から当該物体に作用する静止摩擦力を思考・導出させる問題を提示し,これを処理する際の作図パフォーマンスの状況や作図パフォーマンスと問題解決の成否の関係性を事例的に調査した。その結果,作図パフォーマンスの状況については男女共に同様の傾向が見られ,両者間での有意差は見られなかった。また,男女共に作図パフォーマンスと問題解決の成否には相関関係が認められ,問題解決の成否に作図が重要な要因として関わることが示唆された。一方で,女子の場合は,男子に比べて作図パフォーマンスが問題解決に繋がりにくい傾向が見られ,「作業として作図ができたとしても,その後の思考に発展し難い」可能性が示された。今後,本研究を踏まえて調査の大規模化や多様化が図られ,物理学的な問題の処理における作図の意義と限界についてより厳密かつ多面的に論じられることが期待される。

  • 西川 洋史
    2022 年 62 巻 3 号 p. 675-680
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    生物分類や発生生物学領域の研究で作製される透明骨格標本は,生体標本にアリザリンレッドSやアルシアンブルーなどの染色液を浸透させ,硬骨及び軟骨を染色後に内臓・筋肉の組織を透明にした標本である。透明骨格標本の作製方法は様々であるが,一般的にホルマリンや水酸化カリウムなどの危険な化学薬品を使うことが多い。脂質除去に用いるキシレンやアセトンなどの有機溶剤は,臭気が強いため,生徒によっては気分が悪くなることがある。このような安全性や快適性の問題から,授業において生徒に透明骨格標本を作製させることは難しい。タンパク質分解で用いるトリプシンや透徹に使う高純度グリセリンは高価であり,中高等学校における生徒実験としてルーチン化するにはコスト面で問題がある。また,透徹処理で使用する水酸化カリウムは,強アルカリのため生徒が扱う際には注意喚起と皮膚接触時の対応が必要であり,安全性に気をつける必要がある。しかし,透明骨格標本の製作過程では,生体をほとんど解体する必要がないため,微細な骨を紛失することがなく,骨の立体配置やバランスもほぼ完全に保存されている。従って,骨と内臓の位置関係や運動機能,発生を考えるのに適した教材と言える。例えば海洋環境教育や理科教育における持続的発展教育ESD(Education for Sustainable Development)での活用事例がある。そこで本研究では,安全性向上のために透徹用試薬を検討した。具体的にはトリプシンの代わりにパパインを使用した。また,水酸化カリウムとグリセリンの代わりに各種弱アルカリ物質と洗剤を検討した。その結果,リン酸水素ニナトリウム飽和溶液が透徹に効果的であることがわかった。

  • 西村 一洋
    2022 年 62 巻 3 号 p. 681-693
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    星座早見の使い方は,第4学年で初めて学習をする。先行研究より,星座早見の星図盤に描かれた星図と実際の星空での星座の見え方の対応を児童に対してさらに理解させるには,星座早見の基本的な使い方の一般的な技能の指導に終わらず,次の2点を児童に理解させることが重要であると認識した。①星座早見の窓(地平線)の形が場所(緯度)によって変化すること②星座早見に描かれた星座の形が,天の北極(星図盤の中心)から離れるほど歪むこと。そこでこの2点を児童に理解させるために授業実践を試みた。本研究の目的を「小学校第4学年で,『星座早見の窓』と『星座の歪み』について,児童の理解度がどのくらいあるのかを検討する。」とした。事前調査・授業での発言と行動の記録・事後調査の3つの資料を吟味し,授業実践での検証を行った結果,第4学年では,以下のことが明らかになった。①「星座早見の窓」についての理解度は,「観察する場所によって,星座早見の窓が変化をすることがわかる。」②「星座の歪み」についての理解度は,「星座早見の南の低いところにある星座は,実際の星空の形より横長になっていることがわかる。」

会告
feedback
Top