日本での放射線教育は福島第一原子力発電所の事故以来その重要さが高まっている。物理分野ではいくつかの放射線教育の教材が報告されているが,生物に対する影響を学ぶ教材は知見に乏しい。クルックス管は真空放電を学ぶ教材としてよく知られている。このクルックス管からは電圧を印加することでX線が漏洩することも知られている。そのため,クルックス管は放射線源として用いることができる可能性が考えられる。そこで本研究では冷陰極クルックス管を用いた植物種子への照射を行い,教材としてのデータの収集を行った。クルックス管は7,000 Vの印加により陰極線が見られるようになったが,放射線の漏洩は見られなかった。クルックス管は15,000 Vおよび29,000 Vを印加することで,クルックス管から約20 cmの位置でそれぞれ18および40 μGy/hの線量率が計測された。5種の植物の種に対して,29,000 Vの電圧を印加した状態で,30分間および150分間照射することで,それぞれ20および100 μGyの線量の照射を行った。照射の影響が見られたのはタマネギの種子のみ,発芽後の根の伸長の促進が観察された。さらに,根端分裂組織の細胞を観察すると,細胞分裂の促進と,核が長円状になっていたことが観察された。これらのことから,クルックス管は生徒実験で放射線を扱う際の線源として用いる事ができる可能性が示された。
抄録全体を表示