理科教育学研究
Online ISSN : 2187-509X
Print ISSN : 1345-2614
ISSN-L : 1345-2614
最新号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
総説論文
  • ―McNeillらの研究に着目して―
    神山 真一
    2020 年 61 巻 2 号 p. 193-205
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/11/26
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,アーギュメントを理科授業に導入することに対する教師の信念を研究しているMcNeillらの論文を分析してアーギュメント指導に対する信念に影響する要因を検討し,国内の理科教育におけるアーギュメント教師教育に生かす知見を見出すことである。検討した論文は,Pimentel & McNeill(2013),Katsh-Singer, McNeill, & Loper(2016),McNeill, Katsh-Singer, González-Howard, & Loper(2016)の3本であった。本研究におけるアーギュメント指導に対する教師の信念は,Katsh-Singer et al.(2016)の研究で見出した7つのカテゴリーを援用して議論する。また,本研究における信念に影響する要因とは,Katsh-Singer et al.(2016)の研究で見出した7つのカテゴリーに基づく信念を強くもつ要因,あるいは,信念を強くもてない要因を指す。各論文に記された対象者への質問紙調査,インタビュー結果,考察を分析して検討した結果,①生徒の経験,学力,意識,家庭環境を含めた背景 ②教師の授業,指導,評価に関する価値観 ③教師のアーギュメントを指導する経験が,アーギュメント指導に対する教師の信念に影響を与えていることが明らかになった。今後の課題は,日本の理科教育にアーギュメントを導入するための教師教育研究を発展させていくことである。そのために,研究の対象を小学校教員や教員志望の大学生に広げて,本研究で見出した信念に影響を与える要因と比較して調査する必要がある。

原著論文
  • ―SDGs実施に向けたネクサスの視点に着目して―
    石川 美穂, 片平 克弘
    2020 年 61 巻 2 号 p. 207-217
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/11/26
    ジャーナル フリー

    近年,持続可能な社会に向けた問題に対応するためには,従来にはない新たな知の創造を行うという活動が望まれている。その1つに,SDGsを通じ,トランス・ディシプリナリー的な見方の実践活動があげられる。これは,持続可能な社会づくりに向けた活動と同時に,科学の進展を目指すことを目的としている。そこで,本研究ではこのトランス・ディシプリナリー的見方の獲得に向け,持続可能な社会と,科学の進展を関連づけさせるための授業を,中学校第2学年を対象に行った。ここでは,SDGsに関する複数の問題間にある関連性(ネクサス)に着目し,科学的知見を用いてネクサスの評価を行った。この授業を通して,持続可能な社会と科学の進展の関連性を認識できた生徒がいた反面,科学の進展の必要性には結びつかない見方に留まってしまう生徒も確認できた。

  • ―中学校第一学年「力の大きさとばねののび」を事例として―
    大嶌 竜午
    2020 年 61 巻 2 号 p. 219-228
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/11/26
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,実験方法の妥当性に関わる判断を伴う実験計画,及びそれに基づく実験活動に取り組んだ生徒の意識を明らかにすることである。中学校第一学年「力の大きさとばねののび」において,実験課題や実験器具についての説明以外,教師からの支援がほとんどない中で,生徒に実験活動に取り組ませ,質問紙によって生徒の意識を調査した。その結果明らかになったことは以下の2点である。実験方法の妥当性に関わる判断を伴う実験計画に取り組むことによって,(1)実験活動に対する満足という肯定的な意識と,実験計画は困難で不安だという否定的な意識の両方が,生徒に保持されたこと,(2)実験活動の目的や方法の理解,及び実験計画の意義の理解が深まったと生徒が感じたこと。

  • ~科学的リテラシーの認識の変化が理科学力にもたらす影響~
    小倉 康
    2020 年 61 巻 2 号 p. 229-240
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/11/26
    ジャーナル フリー

    学校で教えられる理科は他教科よりも生きていくうえで重要でない学習と認識されている。科学的リテラシーは今日の社会ですべての人が身につけておくべき科学的な知識,能力,態度であるが,子どもたちにとって理科は科学的リテラシーを身につける学習とは認識されていない。本研究は,中核的理科教員を活用して,学校全体の理科授業を改善するシステミックリフォームに継続的に取り組むことで,学校全体で子どもたちの理科に対する科学的リテラシーとしての認識を改善するとともに,それが子どもたちの理科学力にどう影響するかを明らかにすることを目的とした。埼玉県内の12の公立小中学校で平成28~30年度に継続して取り組んだ結果,児童生徒の科学的リテラシーの認識が学校全体で改善されるとともに,認識の変化が理科学力の変化に及ぼす影響,およびその性差が明らかになった。学校における科学的リテラシーの認識を高める理科授業を実践し普及させるために,中核的理科教員の養成と活用が有効であることが示唆された。

  • ―「理論」の構築過程に基づく学習指導に着目して―
    川崎 弘作, 雲財 寛, 中村 大輝, 石川 雄大
    2020 年 61 巻 2 号 p. 241-249
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/11/26
    ジャーナル フリー

    本研究では,「理論」の構築過程に基づく学習指導が認知欲求の育成に有効か否かを明らかにすることを目的とした。このために,小学校第5学年「もののとけ方」において「理論」の構築過程に基づく学習指導による授業実践を行った。その結果,多くの児童が学習の中で,自然事象を説明したり,予測したり,自らが設定した仮説を検証したりする活動を楽しんだと判断できる記述をしていたこと,質問紙調査において認知欲求得点の平均値が向上していたと判断できることから,「理論」の構築過程に基づく学習指導が認知欲求の育成に有効であると判断した。

  • ―小学校第3学年「音の性質」の実践を事例として―
    後藤 大二郎, 和田 一郎
    2020 年 61 巻 2 号 p. 251-262
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/11/26
    ジャーナル フリー

    本研究では,共同体で構築した文化的人工物と科学概念との齟齬の解消にいたるプロセスの解明とその促進のための理科授業デザインフレームワークの開発を目的とした。Garrison(2016)が措定した探究の共同体(CoI)フレームワークは,認知的側面,社会的側面,教授的側面からなる,目的的学習環境における共同体理論である。実践した授業は小学校第3学年「音の性質」の単元である。事例分析により,教授的側面における実践の原則が機能し,社会的側面及び認知的側面に働きかけることにより,文化的人工物と科学概念との齟齬の解消にいたるプロセスとして,次の3点が明らかになった。(1)教授的側面における実践の原則が社会的側面に機能することで,思考の表出が促進され,合意形成が図られ,文化的人工物が構築されること,(2)教授的側面における実践の原則が認知的側面に機能することで,概念の精緻化が図られ,根拠に基づく科学的な概念が構築されること,(3)文化的人工物と科学概念との齟齬に対してアセスメントが行なわれることにより,ファシリテーション原則及び直接指導の原則が機能し,その齟齬の解消に向けて科学的に妥当な文化的人工物が構築されることである。これにより,CoIフレームワークに基づく理科授業デザインによって,実践ベースで機能する授業デザインフレームワークを開発できた。

  • ―小学校理科「物の溶け方」の単元を事例に―
    齊藤 徳明, 遠藤 寛, 和田 一郎
    2020 年 61 巻 2 号 p. 263-275
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/11/26
    ジャーナル フリー

    本研究では,他者との学び合いにおいて鍵となる「アプロプリエーション」について,メタ認知の機能による認知・情意の相互関連の観点から,その実態を明らかにすることを目的とした。具体的には,メタ認知,認知,情意の関連を指摘するMcCombs(1988)の指摘,および,学習における目的や信念などのアプロプリエーションに寄与すると考えられる情意的要素をWigfield & Eccles(1992)が指摘する期待-価値理論により具体化し,アプロプリエーションにおける認知,期待,価値の相互関連について,小学校理科授業を事例的に検討した。事例的分析の結果から,小学校理科学習における期待と価値は,4つのパターンで分類されることが明らかとなった。また,理科学習において,子どもが認知,期待,価値の状態をメタ認知することによって,他者の考えを取り入れる動機が生まれ,アプロプリエーションが生起する実態が明らかとなった。一方,認知,および,期待と価値の相互関連が不十分な場合,適切なアプロプリエーションが生じないことが明らかとなった。

  • ―フィリピンサイエンスハイスクールにおける試行授業による授業評価―
    榊原 保志, 前野 十行, 喜多 雅一
    2020 年 61 巻 2 号 p. 277-286
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/11/26
    ジャーナル フリー

    電流,磁界,力の向きの関係の理解度は低く,モーターの回る仕組みを理解できている生徒も多くない。教科書では電気ブランコという教材が電流,磁界,力の向きの関係を再現する実験が用いられている。そして,ものづくり教材としてコイル(クリップ)モーターが紹介されている。この教材はコイルが回転することで生徒の関心を高めるが,コイル部分がエナメル線を何度も巻いているため電流の流れが視覚的にわかりにくい。そのため,モーターが回転する科学的原理や法則について実感を伴った理解の向上を促しにくい教材であった。本研究では,電気ブランコ型モーターの教材を開発した。実験観察を通した探究的学習に課題があるフィリピンの中等学校において,本教材と爪楊枝と粘土を利用した電流,磁界,力の向きのモデルを利用した授業を通して,本教材の有効性を調べた。その結果,以下の4点が明らかになった。1)本授業は電流の向きや磁界の向きの理解に有効であった。2)授業は生徒にとって楽しい授業であり,授業の難度は不適切ではなく,考えさせるタイプの授業であった。3)本教材は磁界の中の電流に働く力の向きの理解に有効であった。4)本教材はモーターが回転し続ける理由を理解させるのに役立った。

  • ―単元「流れる水の働きと土地の変化」での「大雨による災害に対する危険予測や適切な避難行動」の取扱い―
    佐藤 真太郎, 藤岡 達也
    2020 年 61 巻 2 号 p. 287-297
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/11/26
    ジャーナル フリー

    学校安全には「自らの安全の状況を適切に評価するとともに,必要な情報を収集し,安全な生活を実現するために何が必要かを考え,適切に意思決定し,行動するために必要な力を身に付けていること(思考力・判断力・表現力)」というねらいがある。本研究では,理科の授業の中で,学校安全との総合化を目指し,このねらいに沿った教材開発及び実践を行った。具体的には大雨による災害を想定して開発した教材を小学校第5学年「B(3)流れる水の働きと土地の変化」で実施し,その教育効果を検討した。その結果,教材を活用した話し合い活動によって,子どもたちは,授業で習得した自然災害に関連する「知識・技能」を基に,自分たちの安全の状況について適切に評価したり,自らの行動を選択するために必要な情報を整理・確認したりできることがわかった。また,行動選択のための適切な合意形成には,知識を基にした状況判断や話し合いが不可欠であるなどの示唆を得ることができた。

  • 仲野 純章
    2020 年 61 巻 2 号 p. 299-307
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/11/26
    ジャーナル フリー

    磁界が存在する状態の下,電解質溶液中の電極で電気化学反応を起こすと溶液流が生起する。当該現象は電気化学反応に関与するイオンにローレンツ力が作用して起こるものであり,その特性から,ローレンツ力可視化教材への転用を狙った種々の教材化研究がなされてきた。しかしながら,汎用性や簡便性の面で課題も多く,教材として確立・普及するに至っていない。今回,汎用性と簡便性を重視した新教材を検討し,予備実験と検証授業を通じて教材としての可能性を検証した。その結果,電極にアルミニウム,電解質溶液に塩化ナトリウム水溶液を採用することで汎用性と簡便性に優れた新教材が成立し,これを用いることで,ローレンツ力に関する理解を深めさせる授業を効果的に展開できることが確認された。

  • ―レーダーチャートによる目標設定と自己評価活動を通して―
    中山 貴司, 桃原 研斗, 木下 博義
    2020 年 61 巻 2 号 p. 309-320
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/11/26
    ジャーナル フリー

    本研究では,理科の学習において,児童自ら目標として設定した批判的思考力の働きを主体的に高めることができる指導法を考案し,授業実践を通してその効果を検証することを目的とした。そこで,第6学年30名の児童を対象に,「燃焼の仕組み」(全11時間)の学習において,まずはレーダーチャートを用いて自己の批判的思考力の現状を把握させ,目標及び具体的な取り組みを自己決定させた。その後,児童が見出した疑問を基に実験課題を設定し,実験を行いながら自己評価させる活動を繰り返し行った。また,学習の途中で,教師との個別ミーティングを1回実施した。そして,効果検証を行った結果,考案した指導法は,個々の児童が目標として設定した反省的な思考や目標志向的な思考などを中心に,児童が主体的に批判的思考力を高めることに寄与したことが明らかとなった。

  • ―小学校第5学年「電流がつくる磁力」を事例として―
    比樂 憲一, 遠西 昭寿
    2020 年 61 巻 2 号 p. 321-328
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/11/26
    ジャーナル フリー

    学習者が明確な目的を持ち,仮説を立てて観察・実験が行われるには,その実験で確かめようとする理論だけでなく,その理論が含まれる理論体系全体が観察・実験に先だって概観されている必要がある(遠西・福田・佐野,2018)。本研究はこの視点に立って,このような「先行的了解」を保証し,明確な目的を持ち仮説を設定して実験に臨ませる小学校第5学年「電流がつくる磁力」の実践的研究である。本実践では,短文や教科書の先読みによる「テクストの通読」とより基本的な「基礎実験」の導入による「先行的了解」の形成によって,探究活動過程全体と探究活動を構成する個々の観察・実験を見通すことができた。その結果,児童は解決すべき問題を科学的な文脈の中に発見して目的を明確にし,さらに実験に方法的根拠を与えている理論を生成して仮説を設定することができた。仮説は実験を有意味なものにし,児童自身による実験の成否の評価を可能にして理解を確かなものにした。この確かな理解はそれを可能にした基礎実験に対するコミットメントを強化し,「短文」や教科書の記述の理解をさらに深めるという循環的理解を生じて,電磁石理論の体系全体への深い理解を可能にした。

  • ―論述式問題を導入して―
    宮本 直樹
    2020 年 61 巻 2 号 p. 329-348
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/11/26
    ジャーナル フリー

    本研究では,生徒のデータ解釈能力の現状と課題を明らかにし,この現状を踏まえて,データ解釈能力の育成指導を課題として示唆することを目的とした。その結果,選択式問題において,「グラフから独立変数や従属変数を区別し,理解してパターンや傾向を読み取り推論する」,記述式問題において,「図表から独立変数や従属変数を区別し,理解してパターンや傾向を読み取り推論する」「グラフから独立変数や従属変数を区別し,理解してパターンや傾向を読み取り推論する」「図表データを数式化し一般化する」問題に困難を有している現状が明らかとなった。そして,課題として,「データ解釈した際のパターンや傾向には原因があるので,その原因を根拠として推論させること」「変則データを含んで読み取るといったデータ解釈観をメタ理解させること」「同一グラフ上にある2つのパターンや傾向が存在するグラフを使用し,合わせて推論させること」「データ解釈時に用いる『一般的』という表現の意味内容を理解させること」「表データをグラフに変換し,関係式を導出といったデータ解釈のプロセス,換言すれば,データ解釈のプロセス観,これをメタ理解させること」が挙げられた。

  • ―高等学校物理基礎「作用・反作用の法則」に焦点化して―
    山岡 武邦, 沖野 信一, 松本 伸示
    2020 年 61 巻 2 号 p. 349-359
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/11/26
    ジャーナル フリー

    本研究は,沖野・松本(2011)のメタ認知的支援に従い「素朴概念の明確化」「素朴概念の獲得過程の明確化」に関わる二つの発問を中心とした授業実践を行った。授業実践は,愛媛県内の高等学校総合学科第2学年の物理基礎履修者29名(便宜的に「クラスA:N=14」「クラスB:N=15」)を対象に,2019年1月から2月にかけて行った。クラスAは,「素朴概念の獲得過程の明確化」の過程で,新たな疑問が生じたかを考えさせる手続きをとるため,TPSQ“Think-Pair-Share-Question”ワークシートを用いた。クラスBは,新たな疑問の生成に関する話合いをしないTPS“Think-Pair-Share”ワークシートを用いた。その結果,(1)新たな疑問の生成に関する話合いをしたクラスAの方が,記憶の保持時間が長くなる傾向があったこと,(2)新たな疑問が生じたかを考えさせる方が,実験結果を考慮した視点からの記述をする傾向がみられたことが明らかとなった。

  • ―中学校第3学年を対象とした質問紙調査に基づいて―
    山田 貴之, 大谷 昌弘, 小川 佳宏
    2020 年 61 巻 2 号 p. 361-371
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/11/26
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,“理科を学ぶ有用性の認識”が,“理科に対する興味”や“科学的な探究活動への意識”を媒介し,“科学的知識の理解に対する自信”に影響を及ぼすという因果モデルを仮定し,その妥当性について検討することであった。そのために,まず,草場(2011)や刀川(2013)を参考に,計30項目から成る質問紙を作成した。次に,中学校第3学年生徒36名を対象として質問紙調査を実施した。そして,得られた回答の集計データを基に,因子分析を行った結果,因子1「実験の意味理解(R)」,因子2「実験方法の検証」,因子3「実験結果の可視化」,因子4「理科を学ぶ有用性の認識」,因子5「理科に対する興味」,因子6「科学的知識の理解に対する自信」が抽出された。さらに,重回帰分析とパス解析を行った結果,因子1「実験の意味理解(R)」,因子3「実験結果の可視化」および因子5「理科に対する興味」は,それぞれ共変動の関係にあり,本因果モデルの初発の段階に位置していることが示された。これら3因子は有機的に関連しているだけでなく,1つの因子を強化すると他の因子も向上するという相互依存の可能性を示唆するものであると考えられる。併せて,これら3因子は,因子4「理科を学ぶ有用性の認識」を媒介し,因子6「科学的知識の理解に対する自信」に直接的,間接的な影響を及ぼしていることが明らかとなった。以上のことから,生徒に「科学的知識の理解に対する自信」を持たせるには,理科授業の導入段階において,「理科に対する興味」を喚起したり,「実験の意味理解(R)」と「実験結果の可視化」を重視したりするとともに,「理科を学ぶ有用性の認識」を深めさせるといった指導の可能性を裏付ける根拠と示唆を得ることができた。

資料論文
  • 永沢 亜矢子, 郡司 晴元, 伊藤 孝
    2020 年 61 巻 2 号 p. 373-381
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/11/26
    ジャーナル フリー

    小学校第4学年理科「人の体のつくりと運動」では,内容の理解を促すために,ヒトの骨や筋肉を模した各種教材が市販され,教員や研究者による手作り教材も多数公表されている。これらのなかには,骨・関節・筋肉の再現度に課題があるものが含まれる。また,肘関節を動かすことで筋肉が収縮するしくみのものも多数見られ,これらは本来の因果関係とは逆である。さらに,活用方法が限定的で,児童の創意工夫や主体的活動に対応できないものもある。そこで筆者らは,腕のつくりの再現度,つくりと運動の因果関係,模型活用の柔軟性の3つに重点を置いて,従来の問題点を改善した教材の作製を試み,この教材を活用する授業プランを考案した。作製した模型では,ヒトの腕の上腕骨・尺骨・橈骨を3本の木材で表現し,木材の繋ぎ方の工夫により,肘関節の再現度を高めた。筋肉にはおもちゃの「ミラクルロケット」を用い,その内部に入れたテグスを引くことによって,筋肉が中心部に向かって縮むことを再現した。これを先の肘関節の模型に取り付けることで,筋肉の収縮によって肘関節が動くという因果関係に適うものとなった。さらに,骨と筋肉の着脱の容易さから,児童がペアやグループで主体的に問題解決に取り組め,1単位時間だけでなく,単元を通した段階的な学びが可能である。

  • ―小学校教員と中学校理科教員の認識実態とその比較検討―
    平田 豊誠, 多賀 優, 吉川 武憲, 小川 博士
    2020 年 61 巻 2 号 p. 383-389
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/11/26
    ジャーナル フリー

    深成岩が「ゆっくり冷えて固まる」とは一体どれくらいの時間なのか?という問いかけを小学校教員・中学校理科教員を対象に行った。本研究の目的は,深成岩の冷却固結の時間についての認識調査を小学校教員および中学校理科教員に行い,認識の比較検討を行い,冷却固結の時間に関する時間的スケールを獲得している状況を考察することである。調査は小学校教員41名,中学校理科教員155名を対象に認識調査・分析を行った。その結果,深成岩の冷却固結の時間の地質学的時間スケールにおいて,妥当な回答を行った小学校教員は7.3%,中学校理科教員は11.6%だった。中学校理科教員と小学校教員間での比較検討を行った結果,妥当な回答について有意差は認められなかった。また,中学校理科教員間での比較分析の結果,学生時代における地学専門だったかそれ以外だったか,および教員の使用している教科書会社の違いそれぞれについての有意差は認められなかった。

  • ―理科基本4科目の成績動向概略及び出題構成の素点方式による統計的総括―
    守口 良毅
    2020 年 61 巻 2 号 p. 391-402
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/11/26
    ジャーナル フリー

    本報は「平成2年~26年の25回にわたる大学入試センター試験(以下セ試)本試の理科基本4科目の成績動向」に関する報告(守口,2016)に引き続き,以下を補完したものである。具体的には,セ試25か年における科目平均点,設問構成,配点構成などの出題構成の動向を素点方式による統計的手法により調べ,新しく定義した得点占有率,利得点などの統計値の併用により,公平性が問われるマーク式テストによる公的統一試験での科目間較差の問題点を考察した。設問解答箱数,配点構成において特に物理に科目間較差がみられるものの,その許容範囲と科目間の得点調整には個別入試でのセ試全受験者の合格率など困難な事後調査が必要であることから,少なくとも,解答箱数,配点構成での科目間較差をできるだけ小さくするなどの調整が必要で,記述式の導入が争点となっている共通テストで継続されるマーク式への今後の課題となろう。

feedback
Top