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澤 祥幸
2008 年 23 巻 3 号 p.
258-266
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
我国では, 腫瘍医のもとで標準的化学療法が実施される機会が十分でなかった。このため日本臨床腫瘍学会 (JSMO) が設立され, がん診療を包括する幅広い知識と技術を有する専門医の育成をめざした。平成18年から「がん薬物療法専門医」試験を開始し, 現在全国で205名が専門医を標榜している。本学会では, がん診療従事者に“お墨付き”を与えるのではなく, 患者の立場に立ってがん診療を行える人材の養成であるため, カリキュラムはASCO/ESMOに準拠し, さらに面接試験で倫理観や人間性も評価される。専門医は, 標準治療の確立など臨床研究に従事するとともに, 適切な標準治療を国民に提供できるよう, 患者に応じた治療計画が求められる。専門医会では専門医同士が情報交換する場を提供し, がん専門医を目指す臓器別がん診療医や臨床医が円滑に受験できるようセミナーの開催を行っている。ぜひ, 皮膚悪性腫瘍診療医にも資格認定に挑戦されたい。
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藤澤 康弘, 高橋 毅法, 山本 明史, 山崎 直也, 斎田 俊明, 石原 和之, 大塚 藤男
2008 年 23 巻 3 号 p.
267-279
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
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日本皮膚悪性腫瘍学会に設置された皮膚悪性腫瘍予後統計調査委員会は定期的に全国約160施設にアンケートを行い, 本邦における横断的な悪性黒色腫の発生状況の調査を行っている。2006, 2007年度の全国アンケートにより収集された1053例の悪性黒色腫症例の発生状況は, 男女比: 520対532, 年齢: 5歳から98歳で平均62.1歳, 病型: ALM 51.2%/NM 21.2%/SSM 16.2%/LMM 7.9%, TNM病期: Tis 19.5%/I期24.6%/II期26.7%/III期20.5%/IV期8.8%であった。本アンケートで得られた患者情報を様々な項目で分類し, 直接予後に関係してくる原発巣の厚さやリンパ節への進展との関連についてどのような傾向が見られるか, 統計学的な手法を用いながら検討を加えた。これらの分析は悪性黒色腫の現状を把握し, 治療指針を考える上で役立つと考えられる。
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岩月 啓氏
2008 年 23 巻 3 号 p.
280-286
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
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皮膚リンパ腫WHO-EORTC分類 (Blood, 2005年) が発表され, 病型診断についてはほぼコンセンサスが得られ, 臨床医にとって理解しやすい分類になった。さらに2007年, 菌状息肉症・Sézary症候群に関する新病期分類 (Blood) と, 菌状息肉症以外の皮膚リンパ腫のAnn Arbor分類に代わる病期分類 (Blood) が相次いで発表された。我々は, 日本皮膚悪性腫瘍学会および日本皮膚科学会の共同事業として, 本邦の実情に合わせた皮膚リンパ腫ガイドラインを作成し, 2008年春に暫定版を発表した。また, 皮膚リンパ腫の全国調査を永続的に実施し, 前向き調査によって予後, 治療効果を追跡するリンパ腫登録システムを構築した。皮膚リンパ腫診療の標準化に加えて, アウトカム評価が期待される。
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河井 一浩
2008 年 23 巻 3 号 p.
287-293
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
日本皮膚科学会と日本皮膚悪性腫瘍学会による皮膚リンパ腫診療ガイドラインが公開された。皮膚リンパ腫患者の治療選択のためには正確な病型診断と病期分類が重要であり, 菌状息肉症・Sézary症候群の病期分類には2007年に発表された新TNMB分類を用いる。菌状息肉症・Sézary症候群の治療に関しては, 13問のClinical Question (CQ) を設定して文献を検索しエビデンスレベルの評価を行ったが, 各CQに対する推奨度・推奨文は本邦における医療の実情も考慮した上で決定・作成した。各推奨文には解説を加え, それぞれの文献にはエビデンスレベルを付記したが, 菌状息肉症・Sézary症候群の治療に関するエビデンスレベルの高い臨床研究は少ない。また各病期ごとに推奨される治療を診療アルゴリズムとして示した。早期菌状息肉症に対する第一選択の治療は局所療法であり, 化学療法の適応は局所療法およびBRM療法に抵抗性の場合と皮膚外病変を伴う進行期菌状息肉症・Sézary症候群である。
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大塚 幹夫
2008 年 23 巻 3 号 p.
294-301
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
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菌状息肉症/セザリー症候群以外の皮膚T/NK細胞リンパ腫に関するガイドライン作成の背景を解説した。WHO-EORTC分類では生命予後良好な病型 (indolent group) と, 予後不良である病型 (aggressive group) に大別される。Indolent groupは病型ごとに特徴的な臨床所見, 経過を示すためそれぞれ個別にCQを設定した。Aggressive groupは組織型および腫瘍細胞のphenotypeに差異が見られるものの, 類似の皮膚病変を形成し, 臨床経過はほぼ同一であるため一括してCQを設定した。ガイドライン作成にあたっては, 2007年にISCLおよびEORTC共同で提唱されたTNM分類案に準拠した。この分類の妥当性はまだ検証されていないが, 今後のガイドライン改訂に際しては共通の病期分類に立脚した臨床情報の集積が重要であるため, ここではこのTNM分類案を採用した。
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八木 宏明
2008 年 23 巻 3 号 p.
302-307
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
成人T細胞白血病・リンパ腫 (ATLL) ガイドライン作成における問題点は, 皮膚科でどの範囲までを扱うかという点である。ATLL全般に関するガイドラインを作成するということになると血液内科を含めた他科ガイドラインとの協調性や整合性を持たせることが必須であり, 皮膚科単独で作成することは不可能である。そこで, 皮膚科ガイドラインでは, 患者が皮膚科を最初に受診するであろう「皮膚のみに病変を有する例」のみを対象とした。すなわち今回のガイドラインでは, ATLLに伴う皮膚症状に関して, skin-directed therapyが主となる例を扱い, 化学療法や移植などの全身療法の必要な症例は扱わない。
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大野 貴司
2008 年 23 巻 3 号 p.
308-314
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
2005年WHO-EORTC分類による原発性皮膚B細胞リンパ腫分類と, 日本皮膚科学会および日本皮膚悪性腫瘍学会から要請を受け作成された皮膚悪性腫瘍ガイドラインII: 皮膚リンパ腫 (代表; 岩月啓氏教授, 岡山大学) (2008, 暫定版) のB細胞リンパ腫の内容について紹介した。原発性皮膚B細胞リンパ腫では, 病期分類のほか, 病型分類が治療方針の決定に重要である。
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神谷 秀喜
2008 年 23 巻 3 号 p.
315-319
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
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(1) TNM病期分類 (案) に基づく予後調査, (2) 手術における切除範囲とリンパ節郭清適応の見直し, (3) 進行例の予後改善のための治療手段の3点を目的に調査を行ってきた。 (1) 病期別生存曲線では, 各群間の有意差が認められたが1A, 1B, 2の曲線が重なり合う。本分類案が予後を反映しているのかどうかは, 組織学的microinvasionについて確認する必要がある。 (2) リンパ節の扱いについては, センチネルリンパ節転移陽性群と陰性群とで生存に有意差はあるが, 陽性例に予防的郭清を行うかどうかの検討は加えていない。各病期の郭清の有無による生存曲線は, いずれも有意差が認められなかった。 (3) の再発・転移の治療に関しては, 再発巣は切除する場合が多い。転移巣に対する化学療法は, Low dose療法が12例, FPFECOM6例, アルカロイド系13例であった。Stage3, 4で併用療法を行った症例は, いずれも予後の改善には寄与していない。
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泉 美貴
2008 年 23 巻 3 号 p.
320-331
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
病理医の立場から乳房外Paget病について述べる。乳房外Paget病の本質は腺癌であり, 組織学的に腺系細胞への分化は, 1) 腺管の形成と, 2) 細胞質内の粘液の産生によって表される。腺腔内に粘液を分泌するために核が基底膜側に偏在し, 細胞質は淡明ないしやや紫色を示す。さらに, 3) クロマチンの濃縮や, 4) 核小体が明瞭であることなどが腺上皮系細胞の特徴と言える。Paget細胞は, 細胞質内にメラニンを有することが稀ならずあり, 悪性黒色腫と誤認しないことが重要である。
Paget細胞を検出するためには特殊染色よりも, 免疫組織化学的に低分子ケラチン (CAM5.2) やCEAが有用である。
浸潤の判断については, 単なる標本の斜め切れや, 毛嚢や汗管に沿う (
in situの) 進展を誤認してはならない。真皮内の高度な炎症反応は, むしろ非浸潤性病変であることが多い。Paget細胞は浸潤すると乳癌に酷似する形態を示し, リンパ管侵襲を来して予後が著しく低下する。
細胞の起源については諸説あるが, 本稿ではTbker cellについて概説する。
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大原 國章
2008 年 23 巻 3 号 p.
332-337
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
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Paget病は表皮内癌として発症した後, 長い時期を経て転移能のある浸潤癌に発展する。患者の予後を予測し, 最適な治療方法を選ぶためには, 浸潤癌か否かの病理判定が重要である。臨床的, 病理的に結節を形成する浸潤癌であれば判定は比較的容易であるが, 早期の浸潤例では, 病理判定が困難であり, またそのような病期についての認識が一般にはまだ低い。Paget癌の浸潤は表皮からの個別細胞あるいは小胞巣の直接浸潤として始まり, 表皮直下に限局する。このような浸潤を, 病理切片の作成過程における表皮や付属器の斜め切れと鑑別するには, 基底細胞で取り囲まれているか, 細胞の染色性, 胞巣周囲の結合織の態度, 配列の仕方, 孤立性かどうか, などに注目する。今のところ, 組織学的なmicro invasionと対応する臨床的な症状は明確でなく, 臨床像から病理的なmicro invasionを予測することは難しい。
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八田 尚人
2008 年 23 巻 3 号 p.
338-340
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
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乳房外パジェット病においてリンパ節転移の有無は予後を規定する重要な因子となる。自験例の解析により原発巣の浸潤レベルがリンパ節転移の程度や予後と相関することが示唆された。今後は多施設共同研究によりリンパ節転移と予後の関連をさらに細かく解析し, 転移陽性例における治療指針を示すことが必要であろう。
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山崎 直也
2008 年 23 巻 3 号 p.
341-346
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
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乳房外パジェット病の根治切除不能なリンパ節転移例および遠隔転移例に対する治療は原則として全身化学療法である。ただし, この腫瘍が本来は進行の緩やかな性質を持っているため, 全身化学療法の対象となる症例数は乳房外Paget病全体から考えれば少数であり, 欧米を含め, 有効な化学療法に関しての報告は非常に少ない。症例報告程度のものが散見されるのみである。これらをまとめていくと, 化学療法の方法には5-FUと白金化合物 (cisplatinやcarboPlatin) の組み合わせを中心とした多剤併用療法とタキサン系薬剤 (特にdocetaxel) 単剤投与が大きな柱となるようである。今後は外来化学療法の普及に伴った治療法の進歩も念頭に入れ, より優れた治療法の開発が必要である。
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吉野 公二
2008 年 23 巻 3 号 p.
347-354
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
進行期乳房外Paget病に対する化学療法は未だ確立されておらず, 2006年に発足した乳房外Paget病研究会で多施設共同研究を行い化学療法の確立を目指している。現段階ではドセタキセルを用いて臨床統計解析をすすめており, 進行期乳房外Paget病の化学療法にドセタキセルを選択した経緯や使用法, 副作用などについて述べた。ただし, ドセタキセルは乳房外Paget病の適応疾患ではなく, 効果もまだ不明である。あくまで調査段階であり, 最終的な結果が待たれる。
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貴志 知生, 豊澤 聖子, 池田 高治, 山本 有紀, 古川 福実
2008 年 23 巻 3 号 p.
355-358
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
71歳, 男性。初診の1年4ヵ月前, 径約5cm大の肝細胞癌に対してラジオ波焼灼療法を施行された。約1ヵ月前から, ラジオ波焼灼療法時の皮膚穿刺部位に一致した疹痛を伴った皮下硬結が出現し, 当科紹介受診となった。皮下硬結部の病理組織学検索を施行したところ, 深部真皮, 結合組織内に, 細索状から偽腺管構造増生を示すEdmondson II型の肝細胞癌の結節集籏増生と血管浸潤が認められた。本症例を肝細胞癌のneedle tract implantationと診断した。内科領域において, 肝細胞癌の治療に対しラジオ波焼灼療法やエタノール注入療法などの経皮的治療は現在, 広く行われている方法であるが, 合併症としてneedle tract implantationがあることを念頭におくことが重要と考えた。
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関 智子, 堀田 健人, 佐々木 一, 萩原 正則, 本田 まりこ, 中川 秀己
2008 年 23 巻 3 号 p.
359-363
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
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フリー
54歳, 女。生下時から存在する右足背の褐色斑が, 徐々に拡大。初診7年前から褐色斑辺縁に正常皮膚色の腫瘤を認めた。右足背に17×15mm大の不整形褐色局面を認め, 局面内に点状黒色斑が散在し, 右辺縁に1cm大のドーム状に隆起する表面平滑な正常皮膚色腫瘤を認めた。褐色局面の組織像はintradermal nevusの像を示し, 腫瘤部は真皮中層から深層にかけて明るい細胞の集籏が島嶼像にみられた。細胞の形態は類円形から多角形で, 好酸性の胞体を有するものと明るいballon cell様の細胞がみられ, 一部にメラニンを有する細胞や空胞化を伴った。多核巨細胞も散見された。核は小型から大型のものまであり, 多形性がみられた。核分裂像は目立たなかった。HMB-45は陰性だったが, MITF, melan-A, S-100蛋白は陽性を示し, MIB-1は約1%陽性であった。以上から先天性色素性母斑上に生じたproliferative noduleと診断した。
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千葉 由幸, 小川 徹, 清水 調
2008 年 23 巻 3 号 p.
364-366
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
62歳, 男性。包茎あり。平成17年4月頃, 亀頭部に点状皮疹を認めるようになった。徐々に増大してきたため某皮膚科受診。扁平苔癬が疑われステロイド外用を行っていたが, その後も皮疹は消褪しなかった。11月25日皮膚生検施行, erythroplasia of Queyrat (EQ) と診断され12月6日当科紹介受診となった。初診時現症では亀頭部を中心に粟粒大から小豆大, 軽い浸潤を触れる紅斑局面を散在性に認めた。平成18年1月11日, 腫瘍辺縁から10mm離し, 全亀頭粘膜切除, 余剰陰茎包皮を用い全層植皮とした。EQは粘膜に生じたBowen病と理解されているが, Bowen病との異同については未だ見解の統一をみていない。病因として包茎者に多いことから局所の慢性刺激や, またHPVとの関連も報告されている。治療は抗癌剤外用や冷凍凝固療法など保存的治療の報告もあるが再発が少なくないため, 外科的切除が確実とされる。
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横井 郁美, 宮本 泉, 藤田 名都子, 中井 浩三, 森上 徹也, 森上 純子, 米田 耕造, 板東 健次, 串田 吉生, 羽場 礼次, ...
2008 年 23 巻 3 号 p.
367-370
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
68歳男性。数年前より外陰部の紅斑と掻痒に気付く。近医皮膚科より乳房外Paget疑いにて当科紹介。外陰部・右腋窩に境界不明な紅斑脱色素斑が多発するも, 左腋窩は異常なかった。生検で外陰部・左右腋窩の3ヵ所ともPaget細胞を認めた。左腋窩は肉眼的に異常なかったが, 組織学的にPaget細胞が存在したOccult Paget's diseaseだった。画像上, 転移・内蔵病変はなく, 血中CEA値も正常。RI法, 色素法による両側鼠径センチネルリンパ節生検は陰性。外陰部・右腋窩は2cmマージンで, 左腋窩はPaget細胞陽性部位より3cm離し, 筋膜上で切除・分層植皮を施行。外陰部は一部腫瘍断端陽性で追加切除を行った。術後9ヵ月経過する現在, 再発・転移なし。今回, occut病変のPaget細胞同定に, Cytokeratin 18染色が有用だった。
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大橋 則夫, 荻原 護久, 陳 怡如, 遠藤 真沙子, 関東 裕美, 伊藤 正俊, 林 健
2008 年 23 巻 3 号 p.
371-374
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
80歳, 男性。脂漏性湿疹, 爪甲白癬にて当院皮膚科外来通院中であったが, 2007年8月右腋窩に紅斑が出現しているのに気付き, 8月30日の受診時にその旨を訴えた。受診時右腋窩に自覚症状を欠く鶏卵大くらいの境界不鮮明な浸潤を触れない紅斑がみられた。外用薬による治療を2ヵ月間続けたが皮膚症状は変化しなかった。皮膚生検の結果, 表皮内に明るい胞体を有する異型細胞が多数みられた。陰茎包皮と陰嚢皮膚に淡い紅斑を認めたため, 数個所より生検を行ったが, 異型細胞はみられなかった。左腋窩, 臍部, 肛門周囲には肉眼的に明らかな皮膚病変はみられなかった。以上より右腋窩のみの乳房外Paget病と診断し, 健常部を3cm含め, 筋膜直上で切除し, 分層植皮を行った。所属リンパ節や他臓器への転移はみられなかった。腋窩のみに病変を有する乳房外Paget病は稀と思われ, 報告する。
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渋谷 佳直, 荒川 智佳子, 鈴木 智子, 清島 真理子
2008 年 23 巻 3 号 p.
375-378
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
64歳, 男性。4, 5年前より外陰部の紅斑を自覚していたが放置していた。検診で骨盤内リンパ節腫脹を指摘され消化器内科受診。全身検索を行ったところ左鎖骨, 左鼠径, 腹部傍大動脈リンパ節の腫大あり。外陰部皮疹について当科を紹介受診。初診時, 恥骨部から陰茎, 陰嚢に紅斑と脱色素斑がみられ一部は硬結を触れた。皮膚生検で表皮内および真皮内にパジェット細胞がみられた。以上より乳房外パジェット病stage IVと診断。原発巣拡大切除術を行い, 術後よりLow dose FP (5-FU+CDDP) 療法を3コース施行した。治療3ヵ月後に原発巣の再発はなく, 腹部CTで明らかな傍大動脈リンパ節の縮小を確認でき, PRと判定された。現在, 進行期乳房外パジェット病に対して確実に有効性を示す化学療法はないが, 今回患者のQOLを考慮し,副作用が少なく抗腫瘍効果の期待できるとされるLow dose FP療法を選択し良好な結果が得られたので報告する。
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權藤 寿喜, 竹井 賢二郎, 千葉 貴人, 内 博史, 高原 正和, 師井 洋一, 古江 増隆, 吉武 忠正, 藪内 英剛, 坂井 修二, ...
2008 年 23 巻 3 号 p.
379-383
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
57歳, 男性。10歳時に交通事故のため右大腿部より切断し, 左大腿外側には広範な皮膚欠損があり, 瘢痕治癒していた。約1年前より同部位に潰瘍が出現し, しだいに腫瘤を形成したが, ガーゼ保護のみで放置していた。その後, 徐々に増大し, 疼痛や出血が出現してきたため近医を受診した。生検で有棘細胞癌と診断され, 当科紹介となった。左大腿外側に20×13cmの辺縁が堤防状に隆起した潰瘍局面を認めた。各種検査で, 明らかなリンパ節転移や多臓器への転移は認められずT4N0M0, Stage IIIと診断した。巨大な腫瘍に対し, 術前に動注化学療法 (CDDP+ADR) と放射線療法 (total 67Gy) を行った。腫瘍は著明に縮小し, 根治的手術を実施することができた。
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小川 晴生, 野村 正, 岩山 隆憲, 江尻 浩隆, 田原 真也
2008 年 23 巻 3 号 p.
384-389
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
有棘細胞癌は耳介原発の皮膚悪性腫瘍の約半数を占め, 腫瘍の切除により生じた欠損に対しては, しばしば組織移植による耳介皮膚, 軟骨再建を要する。我々は, 耳介後面に発生した有棘細胞癌の切除により耳介後面の1/2の皮膚および軟骨の欠損を生じた症例に対して耳介再建を行った。耳介軟骨の欠損が広範囲に及んでいたため, 肋軟骨移植が必要と考えたが, 患者が肋軟骨移植を希望しなかった。そのため, 耳介を縮小した上で軟骨形成を行う方針とした。耳前部皮膚の楔状切除, chondrocutaneous advancement flapを用いて耳介を縮小し, 健側の耳甲介軟骨移植, 側頭頭頂筋膜弁移植および分層植皮術を用いて耳介を再建した。術後1年で腫瘍の再発・転移を認めていない。また, 再建された耳介は健側耳介に比べて小さく変形を残すが, 眼鏡を装用することが可能である。
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馬場 義博, 河合 正博, 半田 芳浩
2008 年 23 巻 3 号 p.
390-393
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
58歳女性。1ヵ月前に少量の出血を伴った陰部の皮疹に気付いた。近医産婦人科を受診し, 細胞診にてclass III (疑陽性) であったため, 当科を紹介された。当院初診時, 右大陰唇中央に4×15mmの黒褐色結節を認めた。潰瘍, 出血はなかった。生検組織では表皮から連続して真皮に向かって大小の腫瘍胞巣が増殖していた。腫瘍細胞は基底細胞様細胞で, 腫瘍胞巣の辺縁は核が柵状に配列し, 胞巣と間質の間には裂隙が存在した。以上より臨床型は結節型, 組織型は充実型の基底細胞癌 (BCC) と診断した。腫瘍は局所麻酔下にて全摘出した。当院における過去9年間のBCC58例中, 外陰部に発症した例は3例 (5%) であった。BCCは顔面を主とした露光部に好発し, 外陰部などの非露光部での発症は比較的稀である。
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小池 雅人, 濱崎 洋一郎, 小川 恩, 嶋岡 弥生, 古谷野 さとみ, 堀江 正樹, 鈴木 利宏, 籏持 淳, 山崎 雙次, 泉 美貴
2008 年 23 巻 3 号 p.
394-399
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
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51歳, 男性。約7年前, 右足踵部内側に褐色の結節が出現し, 近医で切除した。2007年1月より同部位に紅色の結節が出現。急速に増大したため同年9月18日当科を受診した。初診時, 右足踵部内側に40×35×15mmの有茎性, 紅色腫瘤を認めた。腫瘤表面は潰瘍, 壊死を伴っていた。胸腹部CT, Gaシンチで転移を示唆する所見はなかった。10月1日に腫瘍辺縁より1cm離して, 一部筋膜を含め切除した。なお, 右鼠径部リンパ節を生検したが, 転移の所見はみられなかった。病理組織所見で, 真皮内に胞巣を形成して増殖する腫瘍細胞は, 全体に淡明な細胞質を有し, 核異型を認めた。細胞質内や細胞間に小空胞の形成, 小皮縁細胞への分化を示した。腫瘍細胞は, 免疫染色でCEA, EMA, S-100などに陽性であった。術後1年の現在まで腫瘍の再発, 転移を認めていない。
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宮本 真由美, 加藤 雪彦, 岸田 功典, 荒井 佳恵, 泉 美貴, 堀江 康治, 坪井 良治, 三橋 善比古
2008 年 23 巻 3 号 p.
400-404
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
58歳男性。1年前, 右肩に硬結が出現し, 半年前より急激に増大。初診時, 右肩に手拳大の弾性硬, 表面びらんを伴うパトカーランプ様円柱状紅色腫瘤(6.5×7×5cm)を認めた。生検組織で紡錐形細胞がstoriform patternを呈し, CD34陽性であったことなどから隆起性皮膚線維肉腫 (DFSP) と診断した。入院後, 腫瘍辺縁より2cm離し, 下床は僧帽筋の一部を含めて全摘し, 分層植皮術を施行した。全摘組織の病理はDFSPの所見に加え, 一部に紡錐形細胞の高密度増殖巣がみられた。これらの領域ではinterlacing bundleやherringbone patternを呈し, 細胞分裂像も多く, CD34の染色性も低下していた。このような所見は従来DFSP with fibrosarcomatous changeの名称で報告されてきたものと同一のものと考えた。これまでの本邦報告17例と海外報告例を検討し, DFSPとの違いを考察した。
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新保 慶輔, 吉岡 伸高, 寺師 浩人
2008 年 23 巻 3 号 p.
405-409
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
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75歳男性。数年前より前頭部の腫瘤を指摘されていた。2007年6月中旬頃より急速に増大してきたため, 同年7月上旬, 済生会中津病院形成外科を受診した。初診時, 前頭部に4×3cmの可動性良好で表面凹凸不整な暗赤色腫瘤を認めた。腫瘤右前方に接して, 2×2cmの弾性硬で可動性良好な皮下結節を認めた。治療は, 腫瘍および皮下結節辺縁より1.5cm離して切開し, 骨膜上で切除した。病理組織学的には, storiform patternを示す紡錘型細胞の増生がみられ, 免疫組織染色では, CD34が陽性であったため, 隆起性皮膚線維肉腫と診断した。切除標本内の断端に腫瘍細胞は認められなかったが, 術後7ヵ月後に植皮部辺縁から再発した。腫瘍辺縁より3cm, 前回の植皮部辺縁より1.5cm離して切開し, 腫瘍直下は骨膜を切除し, その周囲は骨膜上で切除した。術後8ヵ月を経過して再発・転移は認めていない。
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木藤 健治, 鶴田 恭子, 生垣 英之, 塩原 順子, 木庭 幸子, 高沢 裕子, 村田 浩, 太田 桂子, 高田 実, 斎田 俊明, 中澤 ...
2008 年 23 巻 3 号 p.
410-415
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
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63歳, 男性。初診の4ヵ月前, 腰部に硬結が出現し近医を受診して, 悪性リンパ腫を疑われ, 当科へ紹介された。組織学的には小型~中型の異型リンパ球のび漫性増殖がみられ, cCD3 (+) , CD4 (+) , CD20 (+) の所見よりperipheral T-cell lymphoma, unspecifiedと診断した。CHOP療法6クールにて完全寛解 (CR) となったが, 約11ヵ月後に体幹・四肢に再発してきた。組織学的に初診時に比べて単調な異型リンパ球の増殖であり, CD4 (+) , CD79a (-) , CD56 (+) , CD123 (+) , TdT (-) , MPO (-) , EBV-ISH (-) の所見よりCD4+/CD56+ hematodermic neoplasm (blastic NK cell lymphoma) と診断した。CHOP療法2クールとhyper CVAD療法を1クール施行後, 同種末梢血幹細胞移植を実施し, 約半年間CRを維持している。
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三野 奈津子, 志賀 建夫, 中島 喜美子, 池田 光徳, 佐野 栄紀, 中川 宏治, 黒田 直人
2008 年 23 巻 3 号 p.
416-419
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
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6歳, 女児。4歳頃より右側腹部に腫瘤が出現し徐々に増大した。やがて中央が潰瘍化したため当科を受診した。中央が潰瘍化した直径18mmのドーム状に隆起する淡紅色腫瘤が右側腹部に単発性に認められ, 診断目的に単純摘出術を施行した。病理組織では胞体内に好酸性の顆粒を持つ細胞が真皮内に密に浸潤し, 被膜に取り囲まれた腫瘤を形成していた。腫瘍細胞はS-100蛋白, vimentin陽性で, 顆粒がPAS陽性であったことより, 顆粒細胞腫と診断した。臨床的に潰瘍がみられ, 紡錘形腫瘍細胞を混じていたこと, 一部に被膜外浸潤を認めたことから追加拡大切除を行った。再切除標本では腫瘍細胞の残存はなく, 1年後の現在まで再発を認めていない。本疾患は小児には稀な疾患であり, また臨床的および病理組織学的に悪性顆粒細胞腫との鑑別を要したので報告する。
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新 康憲, 小林 睦, 北田 徳昭, 竹本 聖, 森田 聡子, 峯垣 哲也, 吉岡 睦展, 辻 隆志, 渡 雅克, 坂口 正展, 林 一弘
2008 年 23 巻 3 号 p.
420-423
発行日: 2009/02/28
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
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75歳, 男性。1995年に左足縁原発の悪性黒色腫に対して腫瘍切除術および左鼠径リンパ節郭清術施行後, 術後補助化学療法を行った。しかし, 1999年, 左大腿部にIn-transit転移が生じ, 集学的治療を開始した。その後, 左大腿部の転移病巣は増大傾向を示すものの, 内臓転移は認めなかった。しかし, 2006年9月から左大腿部の転移病巣は急速に拡大し, 同部からの出血 (Hbの低下: 13.0→6.3g/d
l)により輸血を要するまでになった。そこで, 院内製剤モーズ軟膏を使用したところ, 出血, 滲出液の漏出が著明に減少するとともに, 転移病巣の縮小および悪臭が抑制され, 患者のQOLの改善が得られた。
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