Skin Cancer
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25 巻, 3 号
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第26回日本皮膚悪性腫瘍学会
特別講演1
  • 岩月 啓氏, 河井 一浩, 菅谷 誠
    2010 年 25 巻 3 号 p. 250-262
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    菌状息肉症・Sézary症候群の治療については皮膚リンパ腫診療ガイドラインによって標準的治療が示された。しかし,同病期の症例においても必ずしも病気の活動性や進行は同じではなく画一的治療はできない。症例ごとの治療薬への反応性の違いがあり,治療薬の選択や用量や,治療抵抗例に対する次の治療法などはいまだに経験に頼るところが大きい。今日,わが国の保険診療では限られた治療薬しか承認されておらず,自由に治療を選べるほどの豊富なオプションはない。リンパ腫治療にあっては,使用可能な限られた薬剤や療法の組み合わせを工夫して治療にあたらざるを得ない。菌状息肉症・Sézary症候群の各病期における現状での治療のオプションを実際の事例を提示し,加えて新たな分子標的薬の適応について述べる。
特別講演2
  • 大西 秀樹
    2010 年 25 巻 3 号 p. 263-273
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    がん患者は治療の問題に加え,仕事,家庭そして,生きがいの問題など様々なストレス要因を抱えている。これらのストレスから精神疾患の発症へつながることも稀ではない。がん治療中に精神疾患に罹患すると,その症状に苦しむばかりではなく,治療意欲,判断力の低下にもつながるので,早急な対応が必要である。
     適応障害,うつ病,せん妄などの精神疾患の発症率が高いので常に注意することが臨床上重要である。
     看病を行う家族も心身ともに負荷を受けているので,「第2の患者」と呼ばれる状態にあり,医療とケアの対象である。
     死別は人生の中でも大きなストレスで,遺族の精神,身体,社会面に影響を及ぼすことが知られている。遺族に対するケア「後治療」は多方面からのアプローチが必要である。
教育コース1 間葉系腫瘍
  • 安齋 眞一
    2010 年 25 巻 3 号 p. 274-281
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    はじめに,皮膚軟部腫瘍の病理診断過程について概説した。そこでは,まず,上皮性と非上皮性腫瘍の鑑別の問題,良性および悪性腫瘍の鑑別の問題を述べた。次に,実際の病理診断の過程を述べた。まず,HE染色像および免疫染色所見から正常組織との類似性を判断して腫瘍細胞の分化を診断し,そして,特徴的な構築様式の有無を判定する。さらに,腫瘍細胞の形態を観察し,間質の特徴を加味して最終的に診断する,というものである。
     隆起性皮膚線維肉腫の病理診断のポイントおよび皮膚線維腫や神経線維腫との病理学的鑑別の要点,未分化多形細胞肉腫(悪性線維性組織球腫)と他の多形細胞性悪性軟部腫瘍との鑑別の方法についても述べた。
ワークショップ1 手術適応が問題となる皮膚悪性腫瘍
  • 田口 理史, 水上 晶子, 土田 哲也
    2010 年 25 巻 3 号 p. 282-287
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    血管肉腫(AS)は5年生存率が10%前後と極めて予後不良な疾患であるにもかかわらず,ASの標準的治療指針は未だ確立されていない。日本皮膚外科学会「ASグループスタディー」のアンケート調査の集計結果において,切除margin 1cm未満の群と1~2cm離した群で,有意に後者の生存期間の延長を認めており,また切除断端陰性群は陽性群と比べて有意な生存期間の延長が認められた。すなわち病理組織学的に病変を取りきることが予後の改善につながることが,このデータより示唆される。しかしながらASの病変は広範囲に存在することが多く,その発生が多中心性の性質を有する事を鑑みると完全切除の可能な症例は限られる。化学療法に関して同スタディーでは,化学療法を行った群に有意な生存期間の延長を認めている。抗腫瘍薬による感受性が高いASにおいて,初期治療としての化学療法は転移抑制という点で期待できる。予後改善のために病変を取りきることの重要性を考慮するとASに対する手術療法を効果的に行うための病期別治療指針の作成が急務であり,さらに術前・術後の補助療法の確立も必要である。
  • 並川 健二郎
    2010 年 25 巻 3 号 p. 288-292
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/30
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    皮膚悪性腫瘍の治療を行う我々が関わる転移巣には,皮膚悪性腫瘍の所属リンパ節および遠隔転移巣と,内臓悪性腫瘍からの転移性皮膚腫瘍があげられる。皮膚悪性腫瘍の遠隔転移症例では,がん薬物療法をはじめとした全身治療が原則である。しかしながら現在のところそれのみで良好な治療効果を得られることは少なく,主に悪性黒色腫において,適切な症例の選択により転移巣の切除を含めた局所治療を組み合わせることで時に良好な臨床経過が得られることがある。またそれ以外にも,脳転移巣からの出血や消化管転移による腸閉塞などに対して緊急手術が行われることもある。一方内臓悪性腫瘍からの転移性皮膚腫瘍については,原発巣のがん種に応じた全身治療が原則であるために,これまで切除を含めた局所治療という視点での議論は少なかったように思う。本稿では,主に悪性黒色腫の転移巣および内臓悪性腫瘍からの転移性皮膚腫瘍について,手術適応を考察した。
  • 寺師 浩人, 長野 徹, 錦織 千佳子
    2010 年 25 巻 3 号 p. 293-299
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    鼻部皮膚悪性腫瘍の手術適応で問題となる疾患として,日光角化症と基底細胞癌があげられる。日光角化症に対しては,原則的に辺縁1mmで全摘出手術であるが,腫瘤形成のない病変に対して,症例に応じ皮膚剥削術と非手術的療法(5-FU,PDTなど)を考慮する。基底細胞癌に対しては,原則的に全摘出手術(切除深度が重要)し再建であるが,症例に応じ二期的手術と放射線療法を考慮する。
ワークショップ2 SCC関連腫瘍の問題点を検証する
  • 江川 清文
    2010 年 25 巻 3 号 p. 300-307
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    Bowen様丘疹症(bowenoid papulosis:BP)は,臨床的には良性であるが病理組織学的にBowen病様の異型を認める,外陰・肛門部の皮膚・粘膜に生じる単発~多発性の色素斑ないし表面平滑な丘疹である。HPV16/18をはじめとするハイリスク粘膜型HPV感染症であることが確立された疾患である。
     一方疣状癌(verrucous carcinoma:VC)は,口腔粘膜,外陰部,足底などに好発する高分化型有棘細胞癌(SCC)の一亜型とされるが,特異な臨床・病理組織学像に加え,リンパ節転移や遠隔転移がほとんど無いことなどの特徴から,通常のSCCとは区別される傾向にある。またVC中,ほぼ全例にHPVが検出されるBuschuke-Loewenstein腫瘍を他のVCと区別する考えもある。本稿では,BPとVCの概念と病態について,とくにHPV感染面から論じた。
ワークショップ3 乳房外Paget病において克服すべき課題
  • 大原 國章
    2010 年 25 巻 3 号 p. 308-316
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    自験例のうちで,進行期のPaget病(癌)について検討した。3例の剖検例で肉眼所見と病理組織を提示した。転移の様式については,リンパ行性転移だけでなく血行性転移もあること,鼠径転移については両側ほぼ同程度の鼠径転移の他に,患側優位の両側転移,患側鼠径のみの多数転移もあることを示した。後療法としての化学療法や放射線治療治療が一定の延命効果があることも分かった。急速に進行して予後不良な急速伸展型の存在や,病理標本の信頼性についても述べた。
  • 吉野 公二
    2010 年 25 巻 3 号 p. 317-323
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    進行期の乳房外パジェット病に対する治療に関し,最近ではドセタキセルが有効であったとの報告がみられている。しかし,現時点ではEBMに基づいたプロトコールも,保険適応になっている薬剤も存在しない。薬剤を保険適応とするには治験が必要であり,企業の協力を得るためにはその薬剤が有効である可能性が高いことを示す必要がある。そこで,今まで用いられることの多かったフルオロウラシル系の薬剤とドセタキセルを用いた場合の奏功率,予後について進行期乳房外パジェット病19例で統計学的な調査を行った。その結果,奏功率および疾患制御率はドセタキセルで30.8%および77.0%,フルオロウラシル系で20.0%および40.0%であり,フルオロウラシルに比べ,ドセタキセルの方が有効性が高い可能性が示唆された。まだ症例数が少ないため,今後さらに集積して検討する必要がある。
第25回日本皮膚悪性腫瘍学会
CPC1
  • 豊澤 聖子, 山本 有紀, 辻岡 馨, 古川 福実
    2010 年 25 巻 3 号 p. 324-327
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    25歳,女性。生下時より背部正中に黒色斑があった。2008年春頃から,その一部より暗赤色の腫瘤が出現し,黒色斑の周辺にも黒色結節が散在してくるようになり近医を受診した。同年8月5日に暗赤色腫瘤を切除生検された。HE標本では,左右非対称な7mm大のポリープ様の病変で,異型性を伴うメラノサイトが大小の不整胞巣を形成しながら真皮に浸潤している像がみられた。病巣の辺縁基部には隣接して母斑細胞が集簇性にみられ,色素性母斑に合併した悪性黒色腫が疑われた。悪性黒色腫と思われる部分のMIB-1 indexは15%であったの対し,色素性母斑と思われる部分は5%と低値を示した。同年8月20日に拡大切除術とセンチネルリンパ節生検術を施行した。結果,周辺に散在する黒色結節の病理組織像も,Melan-A(+),HMB-45(+),S-100(+)の悪性黒色腫と診断した。また,センチネルリンパ節にも微小転移がみられた。
一般演題
  • 遠藤 雄一郎, 加藤 真弓, 是枝 哲, 宮地 良樹
    2010 年 25 巻 3 号 p. 328-330
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    63歳,男性。半年前に自覚症状に乏しい紅色の類円形のドーム状腫瘤が左背部皮膚に生じ拡大した。皮膚生検ではサイトケラチン20陽性の神経内分泌癌であった。FDG-PET/CTでは肺野に異常影はなく,左腋窩リンパ節の腫大を認めた。以上よりメルケル細胞癌,腋窩リンパ節転移と診断した。皮膚悪性腫瘍切除,菱形皮弁再建,左腋窩リンパ節郭清を施行し,術後50Gy/25回の放射線療法を追加した。通常は,メルケル細胞癌は頭頸部,四肢などの露光部に多く,本症例のように体幹部に発生するのは全症例の10%前後と比較的少数とされる。また,本症例では術後に甲状腺乳頭癌を強く疑われる腫瘍を指摘された。メルケル細胞癌罹患後の悪性腫瘍の合併で頻度が高いのは,唾液腺癌,胆管癌,非ホジキンリンパ腫が報告されている。調べ得た限りでは甲状腺癌の併発例の報告はなかった。背部が原発であることも含めて,本症例は稀な臨床経過をたどったと考える。
第26回日本皮膚悪性腫瘍学会
一般演題
  • 緒方 大, 中川 雅裕, 清原 祥夫, 永松 将吾, 茅野 修史, 小泉 拓也, 松井 貴浩, 桂木 容子, 吉川 周佐, 片岡 照貴
    2010 年 25 巻 3 号 p. 331-338
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    外鼻は鼻背・鼻尖・鼻翼・側壁の各subunitで構成され,眉間,眼瞼,頬部,口唇とのバランスにより形態が特徴づけられており,再建法に関してはさまざまな手法が用いられている。今回当院で2002年10月から2010年1月までに行った鼻部再建32例について,各unitと欠損範囲における再建法について検討した。
     疾患別内訳はbasal cell carcinoma(BCC):25例,squamous cell carcinoma(SCC):3例,malignant melanoma(MM):1例,良性腫瘍:3例で,部位別には鼻尖部5例,鼻背部9例,鼻翼・側壁14例(全層欠損3例を含む),広範囲の全層欠損4例であった。
     再建方法として,鼻尖部にaxillar front nasal flap,鼻背部にskin graft,鼻翼・側壁にnasolabial flapを多く用いる傾向にあった。外鼻の再建法に関しては個々の症例に応じた手技の選択が必要であるが,その際には各unitの解剖学的特徴と皮弁・植皮の特徴を踏まえて行うことが肝要である。
  • 菅谷 広野, 水谷 建太郎, 玉田 康彦, 渡辺 大輔, 佐藤 啓二, 原 一夫, 河村 千晴, 山崎 民千明
    2010 年 25 巻 3 号 p. 339-442
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    51歳女性。約3年前に,左耳後部の弾性軟の皮下腫瘤に気付いた。増大傾向あり,近医受診。MRIで皮下に限局する多房性腫瘤がみられた。摘出術施行し,病理組織で腫瘍細胞が疎な部分と一部束になり密に増生している部分が存在し,myxofibrosarcomaと診断された。拡大切除のため,当科紹介受診され,耳介から後頸部を含めて切除した。現在のところ全身転移はないが,局所再発傾向の強い腫瘍であり,定期的な経過観察を要する。
  • 和田 珠恵, 吉田 益喜, 大磯 直毅, 川原 繁, 川田 暁, 稲垣 侑
    2010 年 25 巻 3 号 p. 343-347
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    60歳,女性。2009年4月頃より左膝屈側に皮下結節が出現し,徐々に増大しため近医を受診した。生検で悪性リンパ腫や肺小細胞癌の皮膚転移が疑われたため精査,加療目的で当科を受診した。左膝屈側に直径22mm大の被覆表皮および下床ともに癒着した皮下結節を認めた。病理組織学的には真皮下層から皮下脂肪組織にかけて核異型のある小型の円形細胞が密に増殖していた。免疫組織化学的に腫瘍細胞はCD99,ビメンチン,CD56,シナプトフィジンが陽性で,EMA,CAM5.2,デスミン,LCAは陰性であった。染色体検査で第22染色体q12領域の転座を認めた。以上の結果から,自験例を未分化神経外胚葉性腫瘍(primitive neuroectodermal tumor:PNET)と診断した。治療は辺縁から2cm離して拡大切除を行った。術後1年を経過したが再発,転移はみられていない。
  • 山田 南穂, 神谷 崇文, 柳澤 健二, 肥田 時征, 米田 明弘, 廣崎 邦紀, 山下 利春, 嵯峨 賢次, 神保 孝一
    2010 年 25 巻 3 号 p. 348-352
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    進行期悪性黒色腫に対しCDDP,DTIC,IFN-β併用療法(以下CD-Feron療法)の臨床効果について検討した。投与方法は第1日CDDP(100mg/m2),第1~3日(150mg/m2),第4~8日IFN-β(600×104/IU)を点滴静注であった。症例は計10例,臨床効果はCR 1例,PR 2例であり奏功率は30%であった。重篤な有害反応には骨髄抑制,悪心嘔吐を約半数に認めた。
  • 木庭 幸子, 芦田 敦子, 高沢 裕子, 大橋 敦子, 後藤 康文, 礒部 研一, 奥山 隆平
    2010 年 25 巻 3 号 p. 353-357
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    69歳,男性。2007年に背部軟部腫瘍を近医で切除され,原発巣不明の転移性腫瘍と診断された。翌年1月には右側胸部に皮下転移が生じ,さらに右腋窩リンパ節と右鎖骨動脈周囲リンパ節,背部皮下と右上腕皮下にも転移が出現した。当院整形外科で軟部肉腫に準じた化学療法が行われ,2009年1月に広汎腫瘍切除術とリンパ節郭清術が施行された。病理組織学的に類上皮様の大型の腫瘍細胞が密に増殖し,S-100陽性,CK AE1/AE3陰性,EMA陰性,HMB-45陰性,MART-1陰性であることから,類上皮型の悪性末梢神経鞘腫瘍と診断された。術後に化学療法と放射線療法が行われたが,副腎転移が出現し両側副腎摘出が行われた。さらに皮下転移が出現したため,同年11月に当科を紹介された。当科紹介時に血清5-S-CDが高値を示したので,過去の組織を用いて免疫染色を行った。腫瘍細胞はMITFとHMW-MAAが陽性であることから,本性例を悪性黒色腫と確定診断を下すに至った。
  • 三宅 宗晴, 島影 達也, 笠井 千尋, 黒川 憲史, 久徳 茂雄
    2010 年 25 巻 3 号 p. 358-362
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    78歳,男性。約10年前より臀部に腫瘤を自覚していたが放置していた。外傷で入院となった近医で,左臀部の腫瘤を指摘され生検の結果,有棘細胞癌であったため紹介により当科を受診した。左臀部に12×10cm大の巨大なドーム状に隆起した腫瘤を認め,中心部は潰瘍化していた。右臀部にも鶏卵大の皮下腫瘤を触知した。病理組織像より左臀部は嚢腫様構造を呈し,嚢腫壁は顆粒層を有する正常な表皮様構造の部分と,それに連続して異型性を有する有棘細胞様細胞が嚢腫内に増殖している部分が認められ,表皮嚢腫より生じた有棘細胞癌と診断した。右臀部は表皮嚢腫と診断した。画像上明らかなリンパ節転移,遠隔転移を認めなかった。3cm離して大臀筋筋膜を含めて切除し,上臀動脈の穿通枝を茎とする筋膜皮弁で再建した。術後6ヵ月経過したが,局所再発,遠隔転移を認めていない。
投稿論文
  • 岸本 英樹, 喜多川 千恵, 寺石 美香, 山本 真有子, 佐野 栄紀
    2010 年 25 巻 3 号 p. 363-366
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    76歳,男性。左頬部に4年前より出現した2cm大の弾性硬で可動性良好な多房性の皮下腫瘤を認めた。表面は毛細血管拡張を伴い,一部水疱様外観を呈し,下床との可動性は良好であった。組織学的に,真皮から皮下に線維性隔壁で境される粘液を背景に,異型性のある腫瘍細胞塊が浮遊する像を認めた。粘液はアルシアンブルー染色pH2.5陽性で,腫瘍細胞はPAS染色陽性であった。免疫染色で腫瘍細胞はEMAとCK7で陽性だが,CK20は陰性で,CEAはごく少数に陽性であった。全身検索を行ったが皮膚以外に粘液癌の原発巣を示唆する所見はなく,皮膚粘液癌と診断した。術後1年を経過した現在,再発や転移はみられていない。
  • 柳下 有理香, 前川 武雄
    2010 年 25 巻 3 号 p. 367-371
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    76歳女性。2年前に外陰部の紅斑を自覚,半年前から急速に増大した。初診時,中央部に結節を伴う紅色局面が左大陰唇から肛門にかけて存在し,両側鼠径リンパ節を触知した。生検にてPaget細胞が真皮全層に浸潤していることを確認した。CT上,両側鼠径から大動脈周囲リンパ節までのリンパ節転移がみられ,stage IV(T4N2M1)と診断した。特殊染色にてHER2強陽性であったため,原発巣切除後,weekly docetaxel,trastuzumabによる化学療法を行った。7クール終了時点から8週後の評価でCRと判定した。経過中みられた副作用はいずれもgrade1の軽度のものであり,QOLを保ちながら,非常に奏効した。Trastuzumabとdocetaxelの併用療法は,HER2陽性乳房外Paget病において,少ない副作用と高い治療効果を併せ持った,非常に有用な治療法になり得ると考え報告する。
  • 野口 佳恵, 羽尾 貴子, 鎌田 英明, 照井 正
    2010 年 25 巻 3 号 p. 372-375
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    81歳女。初診の約1年前に左前腕に天ぷら油で熱傷を受傷し,潰瘍を形成した。近医にて外用療法を継続していたが,水疱形成と潰瘍化を繰り返して,徐々に拡大した。骨折で当院整形外科に入院したため,当科を受診した。初診時現症では左前腕屈側に径2cm大の境界明瞭な円形の軽度隆起する紅色肉芽面を認めた。当科にて熱傷治療中の過剰肉芽と判断し,治療を行ったが,上皮化しないため皮膚生検を施行し,Bowen病と診断した。腫瘍辺縁1cm外方で切除し,有茎皮弁形成術を行った。術後,半年経過しているが,再発は認めていない。熱傷後,受傷部位が一度も治癒せず,また,短期間でBowen病を発症した症例は稀であり,報告する。
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