Skin Cancer
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26 巻, 1 号
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第26回皮膚悪性腫瘍学会学術大会
教育コース2 メラノーマ
  • 紺田 衣里, 平澤 祐輔, 長谷川 敏男, 池田 志斈, 高橋 玄, 坂本 一博
    2011 年 26 巻 1 号 p. 11-14
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル 認証あり
    72歳,男。初診の約6ヵ月前から肛門部に腫瘍が出現し徐々に増大したため,2009年1月6日,当科を受診した。初診時,肛門部9時~11時方向に15×20mm大,不整形で扁平隆起性の黒色結節がみられた。悪性黒色腫を疑い局所麻酔下で肛門部皮膚腫瘍切除生検術を施行し,病理組織学的に悪性黒色腫と診断した。肛門管側の断端が陽性であったため,腹会陰式直腸切断術(Miles手術)ならびに右鼠径リンパ節生検術を施行した。リンパ節転移は陰性であり,画像診断で遠隔転移を示唆する所見は得られなかったので,悪性黒色腫stage IIB(pT4aN0M0)と診断した。術後補助療法としてDAV-feron療法3コースならびにIFN-β局注療法5回を行い,術後約1年6ヵ月経過した時点で明らかな再発・転移はみられていない。
教育コース3 リンパ腫
  • 遠藤 雄一郎, 林 雄二郎, 道上 幹子, 瀧 玲子, 谷岡 未樹, 是枝 哲, 十一 英子, 門脇 則光, 松村 由美, 宮地 良樹
    2011 年 26 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル 認証あり
    原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫は,予後良好であり,2008年のWHO分類でも5年生存率は95%以上とされる。しかし,我々は,急速に進行し,放射線療法あるいは多剤化学療法に抵抗性を示し死の転帰をとった原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫の2症例を経験した。症例1:61歳女性。左前胸部および,左腋窩に皮膚・皮下腫瘤を生じた。放射線照射を行い完全寛解に至ったが,間もなく再発し急速に増大した。メトトレキサート単独療法,用量調整EPOCH療法,DeVIC 療法,放射線追加照射にも反応せず,発症から18ヵ月,治療開始後11ヵ月で死亡した。症例2:93歳女性。右足底に皮膚潰瘍を生じた。原発巣の姑息的切除後に放射線照射を開始した。発症から11ヵ月,治療開始後2ヵ月で肺転移を来して死亡した。いずれの症例も発症初期に皮下の深部に腫瘍性病変が存在したと推測され,初期の不十分な皮膚生検のために検体に腫瘍細胞が含まれなかったために,診断が遅れた。しかし,単純に診断の遅れが予後不良に至ったのではなく,自験例は当初から致死的な型であった可能性も残る。実際,本邦では予後不良な原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫の報告が散見される。
ワークショップ3 乳房外Paget 病において克服すべき課題
  • 清水 道生
    2011 年 26 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル 認証あり
    乳房Paget病におけるPaget細胞の由来としては,1)Toker細胞(背景に乳管癌が認められない場合)と2)乳管癌細胞の乳頭・乳輪部の表皮内へのmigrationの2つが考えられる。一方,乳房外Paget病は,primary(乳頭におけるToker細胞由来のapocrine adenocarcinoma in situ)とsecondary(背景にある直腸癌,肛門癌などが表皮内にmigration)に分類され,Paget細胞の由来としては,1)Toker細胞(primaryの乳房外Paget病),2)肛門,直腸などの癌の表皮へのmigration(secondaryの乳房外Paget病),3)anogenital mammary-like gland carcinomaの表皮へのmigration(secondaryの乳房外Paget病)の3つが考えられる。
投稿論文
  • 千葉 由幸, 石田 修一, 日野 頼真, 堀内 義仁, 北澤 義彦, 片平 次郎
    2011 年 26 巻 1 号 p. 28-30
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル 認証あり
    65歳,女性。平成11年以前より頭頂部左側に腫瘤を認め,徐々に増大。平成21年2月10日,当科受診となった。初診時現症では頭頂部左側に直径8cm,高さ5cm,わずかに黄色を帯びた紅色腫瘤を認めた。同日,皮膚生検施行,病理所見で腫瘍は大きく,泡沫状細胞と好塩基性細胞の2種類で構成されていた。以上より自験例を脂腺癌と診断,各種画像検査で転移を認めなかったため3月3日に根治的切除術を施行した。脂腺癌は稀な上皮性悪性腫瘍で,眼瞼に生じるタイプと眼瞼以外の皮膚に生じるタイプに大別される。本邦における脂腺癌全体の正確な臨床病理学的データは不明である。安齋らの報告によると,発生部位は眼瞼が35.2%,眼瞼以外が63.0%であった。以前は眼瞼外脂腺癌の方が眼瞼脂腺癌より予後良好とされてきたが,最近,これに反する報告が相次いでおり楽観視はできない。自験例は長期経過にもかかわらず転移を起こさなかったが今後の注意深い観察は必要である。
  • 宮下 梓, 藤澤 明彦, 井上 雄二, 尹 浩信
    2011 年 26 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
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    77歳,男性。平成19年9月頃より左頬部に浸潤を触れる紅色局面が出現し前医受診。同年12月に当科紹介受診。一部生検し,組織では真皮上層から下層にかけ大型の核を持つ異型な単核球がびまん性,島状に増殖しており,異型細胞の表皮内への浸潤は認めずgrenz zoneを形成していた。免疫染色にて腫瘍細胞はCD4,CD56,CD123陽性であった。CD4+/CD56+ hematodermic neoplasmの診断にて全身精査の結果,病変は皮膚に限局していたため,平成20年1月に電子線照射施行したところ皮疹は消失した。以後,経過観察中に皮疹の再燃を認め,平成20年10月,平成21年11月に再度電子線照射施行し,皮疹は著明に改善した。CD4+/CD56+ hematodermic neoplasmは一般的に急速進行し多剤併用化学療法に抵抗性で予後不良な疾患である。皮膚病変に対する電子線照射は有効かつ安全な治療法であると考える。
  • 石井 貴之, 平野 貴士, 竹原 和彦
    2011 年 26 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル 認証あり
    有棘細胞癌72例(男性38例,女性34例:平均76.7歳)を対象に再発転移リスクについて評価した。腫瘍径に関しては,5cmを超える症例の28%で再発転移を生じた。一方で,2cm以下の症例でも8%で再発転移を認め,これらの症例では神経周囲浸潤を認めた。Tumor thicknessについての検討では,2mm以下の症例では再発転移は認めなかったが,4mmを超える症例では27%に再発転移を認めた。遠隔転移を生じた症例では全例でリンパ節転移を伴っていた。再発転移リスクとしては性別・tumor thickness・腫瘍径が有意であり,TMN分類第7版における危険因子項目は腫瘍径の小さな症例における再発転移リスクを的確に評価していた。有棘細胞癌におけるセンチネルリンパ節生検はstage II以上かつ2mmを超えるtumor thicknessが適応の可能性があると考えた。
  • 藤平 尚弘, 鈴木 利宏, 大江 有希, 小関 邦彦, 嶋岡 弥生, 濱崎 洋一郎, 籏持 淳, 山﨑 雙次
    2011 年 26 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル 認証あり
    73歳,女性。2009年5月頃より下口唇に角化を伴うびらん局面が出現。その後,拡大し潰瘍を形成,一部に隆起性病変を生じた。同部位の皮膚生検を施行し,有棘細胞癌と診断。既に多発転移を認めていたが,今後経口摂取が困難となることを考え,腫瘍切除および下口唇形成術を施行した。
  • 兪 明寿, 日浦 結衣, 大津 詩子, 黒川 晃夫, 森脇 真一
    2011 年 26 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル 認証あり
    64歳,女性。41歳時に右乳癌に対し,近医外科にて乳房切除術が施行された。術後,抗がん剤などの補助療法は行われず,近医にて定期的に経過観察が行われていたが再発は認めていなかった。初診の半年前より右前胸部に紅斑が出現し,同部に皮膚潰瘍を生じてきたため,精査加療目的で当科を紹介された。初診時,右胸部に25×5mm,浸潤を伴う暗赤色の局面上に存在する皮膚潰瘍がみられた。乳癌の皮膚転移を疑い皮膚生検を施行したところ,病理組織学的に真皮全層にわたり,柵状パターンをとりながら増殖浸潤する腫瘍細胞が認められた。腫瘍細胞はエストロゲンレセプター陽性,プロゲステロンレセプター陽性,HER2陰性であった。以上より本症例を術後23年で皮膚へ局所再発した乳癌と診断した。当院乳腺外科にてエキセメスタン内服(25mg/日)によるホルモン療法と放射線療法を開始した。同治療10ヵ月後の現在,腫瘍は縮小傾向にある。
  • 廣瀨 寮二, 富村 沙織
    2011 年 26 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル 認証あり
    母斑細胞母斑や日光角化症に対して,cryosurgeryおよびshave excisionはしばしば行われていると思われる。しかし,これらの治療後に再発し,しかも悪性が疑われる症例があると,その治療法の適応の是非は再検討されるべきと考える。これらの再発腫瘍につき,その病理組織像を比較した結果,母斑細胞母斑の再発腫瘍は,いずれの治療法でも表皮に異型メラノサイトを認め,臨床症状も修飾されており,悪性黒色腫との鑑別が困難であった。したがっていずれの治療法も適応はないと考えた。日光角化症では,cryosurgery後の再発腫瘍に有棘細胞癌の像を認めた。治療により浸潤癌に進行したと考えたが,処置前から浸潤癌であった可能性がある。一方,shave excision後再発は日光角化症にとどまっていた。したがってcryosurgeryは処置前に皮膚生検を施行し,浸潤癌でないことを確認後なら適応があるが,未施行なら適応はなく,shave excisionは生検を兼ねているため,適応ありと考えた。
  • 桑原 広昌, 古川 洋志, 北村 孝, 川副 尚志, 前田 拓
    2011 年 26 巻 1 号 p. 55-58
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル 認証あり
    センチネルリンパ節生検はアイソトープと色素の併用が標準法とされている。しかしわが国では管理区域の制約があり,当院をはじめ多くの施設でアイソトープが使用できない。近年アイソトープを使用しないセンチネルリンパ節生検の方法として,ICG蛍光法が特に乳癌の手術で多用されつつある。当科では2006年9月から2009年7月までの約3年間に,6例の悪性黒色腫に対してICG蛍光法によるセンチネルリンパ節生検を行った。6例中5例でセンチネルリンパ節が同定された。そのうち2例に転移を認め,郭清が行われた。観察期間は10ヵ月から3年8ヵ月で,全症例で再発や転移を認めていない。本法は術中にリンパ流を視覚的に確認することが可能であり,特にin-transit転移例でsubtotal integumentectomyを行う際などには,色素法単独よりも有用であると考える。
  • 小川 徹, 千葉 由幸, 宮本 秀明, 南出 純二, 青山 法夫, 横瀬 智之, 亀田 陽一
    2011 年 26 巻 1 号 p. 59-61
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル 認証あり
    58歳,男性。平成11年8月19日,食道腫瘍の精査・加療目的で,当院消化器外科を初診。術前検査において,食道中部に,潰瘍を伴う65×38mm大の杯様の隆起が認められた。生検では扁平上皮癌と診断され,またCTにて左傍気管,胃小弯,左胃動脈幹にリンパ節腫大がみられたため,術前化学療法(5-FU/CDDP)を1コース施行後,同年10月4日,食道亜全摘胃噴門部切除・胸骨後亜胃再建術を行った。全摘時の病理にて悪性黒色腫と診断され,同年11月19日,当科併診となった。DAVフェロン療法を5クール施行したが,平成12年9月のCTにて気管周囲への再発が疑われたため,さらにDAC Tam療法を1クール施行した。その9ヵ月後,疑い病変は消失。平成17年4月までインターフェロンβによる免疫療法を定期的に継続した。術後10年10ヵ月経過した現在,明らかな再発は認めていない。
  • 緒方 大, 中浦 淳, 片岡 照貴, 吉川 周佐, 清原 祥夫, 中川 雅裕, 永松 将吾, 茅野 修史, 小泉 卓也, 松井 貴浩, 桂木 ...
    2011 年 26 巻 1 号 p. 62-68
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル 認証あり
    慢性創傷に続発する有棘細胞癌(以下:SCC)は緩徐に進行するため,癌の発見が遅れ,そのため発見時にはすでに進行期にあることが多いとされる。我々はこれまで慢性創傷から発生し,深部組織に浸潤したSCCを8例経験した。今回それらについての治療成績をまとめ,根治性と機能温存の可能性を検討する。
     対象は2002年9月から2009年12月まで当施設で手術を行った症例8例で,男性5例,女性3例で,年齢は平均65.5歳であった。
     発生部位は大腿部3例,下腿3例,手指2例であった。前駆病変は小児期の骨髄炎,褥瘡,熱傷瘢痕によるものがみられ,8例中4例は患肢温存可能で,残りの4例は患肢切断術を選択した。SCCの潰瘍部には高率に感染・炎症の波及を認めるが,切除範囲の正確な評価と,年齢・PSを考慮した治療により根治的治療とQOLの維持を計ることができると考える。また過去の瘢痕に難治性の潰瘍をみたら病期が進行する前に悪性化を疑い生検を行うことが必要である。
  • 岸本 英樹, 喜多川 千恵, 寺石 美香, 山本 真有子, 松田 和美, 中島 英貴, 横川 真紀, 樽谷 勝仁, 佐野 栄紀
    2011 年 26 巻 1 号 p. 69-72
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル 認証あり
    62歳,男性。初診3ヵ月前から,右頬部に皮下結節が出現し,徐々に増大した。核出した標本の病理組織からアポクリン腺癌と診断した。深部断端が陽性であったため,下床を含め辺縁5mm離して追加切除を行ったが腫瘍の残存はなかった。2年後に同部位に皮下腫瘤が再発したため,腫瘍辺縁から1cm離し頬骨骨膜上までの拡大切除術を施行した。病理組織では初発病変と同様のアポクリン腺癌であった。現在まで再発や転移は認められていない。
  • 小泉 秀華, 小泉 裕子, 角田 孝彦, 松田 幹夫
    2011 年 26 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル 認証あり
    症例1:78歳,男性。左鼻腔,左頸部原発のdiffuse large B cell lymphoma(DLBL)(stage IV)に対し,当院内科で化学療法,放射線療法を施行され,左鼻腔,左頸部の腫瘤は縮小したが残存している状態であった。2009年11月9日,右前胸部~背部に帯状疱疹を発症し,アシクロビルの点滴により皮疹は改善した。帯状疱疹発症から約3週間後,罹患部位に一致し,新たな皮疹が出現。生検の結果,CD79a陽性,DLBLの皮膚浸潤と診断した。症例2:76歳,男性。右側腹部から背部の帯状疱疹に対して,バルトレックス内服(3000mg/日)で加療し初診から約2週間で略治した。その2週後,帯状疱疹が治癒した部位に皮疹を認め,皮膚生検の結果,CD3,CD4,CD5陽性,CTCLと診断した。全身検索で他病変はなかった。
  • 藤田 宗純, 堀内 勝己, 川嶋 邦裕, 吉田 哲憲, 池田 光, 深澤 雄一郎
    2011 年 26 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル 認証あり
    乳房外Paget病の治療では外科的切除が第一選択となるが,肛門周囲や外尿道口,膣粘膜などに発症した場合には機能温存が困難となる症例も存在する。このような場合には放射線治療も選択され得る。また,放射線治療後の再発に対しては,再発を早期に発見し,切除することにより,機能を温存しつつ治癒させることも可能である。
     今回我々は放射線治療を第一選択とした症例で,一旦寛解したがその後局所再発し,これに対する外科的治療を行い,機能を温存しつつ根治が可能であった乳房外Paget病の2例を経験し,報告した。
  • 柳澤 健二, 高田 知明, 肥田 時征, 米田 明弘, 廣崎 邦紀, 小野 一郎, 山下 利春
    2011 年 26 巻 1 号 p. 85-88
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル 認証あり
    札幌医科大学皮膚科では悪性黒色腫の患者に対して2001年より色素法単独にて,2005年より色素法とRI法併用によるセンチネルリンパ節生検を実施している。今回2005年1月より2010年1月までに当科で色素法とRI法併用によるセンチネルリンパ節生検を施行した悪性黒色腫44例について検討した。44例中41例でセンチネルリンパ節を同定し,41例中9例でセンチネルリンパ節に転移を認めた。転移陽性例のうち,T4症例が7例,組織型ではnodular melanomaが5例であった。
  • 増澤 真実子, 桑原 慎治, 増澤 幹男, 斉藤 典充, 勝岡 憲生, 松岡 晃弘
    2011 年 26 巻 1 号 p. 89-93
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル 認証あり
    57歳,男。薄壁空洞型の多発性肺転移から気胸を生じた頭部血管肉腫の1例を報告する。初診時,前額部に紫斑を伴う暗紫色結節を認めた。所属リンパ節および遠隔転移はなく,病変の単純切除と化学療法(ドセタキセル40mg/w)で病変は消退したが,化学療法継続中の初診から1年後に原発巣付近に紫斑が再燃した。電子線70Gy照射により再発病変は消失したが,胸部CTにて両肺野に多発性の薄壁空洞を認め肺転移と診断した。肺転移は化学療法に抵抗性で肺転移を認めてから4ヵ月後に両側の血気胸を合併した。ドレナージを施行したが気胸は再発性で,急激に呼吸状態が悪化し気胸発症から3ヵ月で死亡した。剖検で転移は主に肺と胸膜に限局し,致命的な他臓器病変はなかった。肺の病理像では薄壁空洞周囲に腫瘍細胞浸潤を認めた。頭部血管肉腫でしばしばみられる薄壁空洞型の肺転移例ではほぼ全例で再発性の気胸を合併し,極めて予後不良である。
  • 奥谷 悠, 中村 厚, 永岡 隆, 清原 祥夫, 宗田 孝之
    2011 年 26 巻 1 号 p. 94-97
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル 認証あり
    我々はメラノーマの非侵襲的診断法としてハイパースペクトルイメージャ(HSI)を用いた新しい診断法の開発を進めている。HSIにより得られるハイパースペクトルデータ(HSD)は,病変の位置情報とスペクトル情報からなる。前にHSDに基づく鑑別指標を提案したが,今回新しい概念による指標を提案し,その有用性を示す。メラノーマ5例,脂漏性角化症12例,母斑細胞性母斑7例を解析した。病変毎に異なる部位のHSDを複数計測した。HSD毎,各画素のスペクトルに対応するスペクトル角度を求め,その角度の出現確率から計算されるエントロピー指標を新指標とした。新指標がメラノーマとそれ以外の病変を区別できる鑑別性能は非常に高く,感度,特異度はともに90%を超えた。単一で高い鑑別性能を示す新指標は,有用であると考えられた。なお,新旧指標のROC曲線下面積による比較では,新0.96 vs旧0.77となり,新指標の有用性が示された。
  • 中村 元泰, 大橋 則夫, 関東 裕美, 吉澤 定子, 石河 晃
    2011 年 26 巻 1 号 p. 98-102
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル 認証あり
    右足底に生じたエイズ関連型カポジ肉腫に対し,Doxil®投与と,HAART療法が著効した症例を経験した。症例は39歳,男性。ギニア出身。既往歴,家族歴に特記すべきものなし。初診の1ヵ月前,アンゴラに滞在中から右足底に発赤と腫脹が出現。アンゴラの病院で切開を受け投薬を受けたが改善なく,同部位に隆起性の皮膚病変を生じたため日本に帰国後当科を受診した。初診時,右足底に径32×31mmの弾性硬の腫瘤がみられた。腫瘤は不整に隆起し,隆起部は紅色を呈していた。周囲には紫褐色の色素沈着がみられた。病理組織学的には赤血球を容れた不整な脈管腔と血管内皮細胞様の紡錐形細胞の増殖がみられた。腫瘍細胞は免疫組織学的にvimentin,CD31,CD34,第VIII因子,D2-40陽性であった。また,HHV8の潜伏蛋白が陽性であり,HHV8の感染が確認された。血液検査では,WB法でHIV-1陽性。以上より,エイズ関連型カポジ肉腫と診断した。2009年8月よりDoxil®投与を開始し,その後9月よりHAART療法を開始。腫瘍の平坦化,縮小が得られ,CD4の回復,HIVウイルスRNAの陰性化が得られている。
  • 宿輪 哲生, 三根 義和, 山本 雅一
    2011 年 26 巻 1 号 p. 103-107
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル 認証あり
    69歳,男性。2006年7月恥丘部に紅斑が出現した。2007年4月13日当科初診時,恥丘部右に35×30mmの紅斑を認めた。皮膚生検で乳房外Paget病と診断,胸部および腹部骨盤腔CT上転移はみられず,2007年7月12日腫瘍辺縁より2cm離して拡大切除および植皮術を施行した。2009年3月陰嚢下面左右に長径16mmまでの脱色素斑と右鼠径リンパ節腫大に気づき,生検したところ,共にPaget細胞を認めた。全身検索で右鼠径リンパ節以外に転移巣はみられず,2009年6月9日拡大切除および両鼠径リンパ節郭清を行った。
第25回皮膚悪性腫瘍学会学術大会
一般演題
  • 八杉 悠, 黒川 正人, 佐藤 誠, 中山 真紀
    2011 年 26 巻 1 号 p. 108-113
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル 認証あり
    症例は7歳,女児。5歳時より左耳垂に小腫瘍が出現したために,近医皮膚科で疣贅の診断にて液体窒素治療を数回施行された。その後,腫瘍が徐々に増大し当科を受診した。初診時,左耳垂に直径5mmの疼痛を伴わない淡紅色結節を認めた。当科フォロー中の2ヵ月で腫瘍径は8mmに増大し,発赤も増強した。家族と相談の結果,全身麻酔下に全摘出し,局所皮弁にて耳垂再建を行った。当初の病理組織学的診断は悪性黒色腫であり,某大学皮膚科教室にも診断を依頼したが,悪性黒色腫の診断であった。術後,左頸部に2ヵ所リンパ節腫脹を触知したが,頸部・胸部CT,頭部MRI,Gaシンチによる全身検索では明らかな遠隔転移は認めなかった。再度,他施設での病理組織学的診断を依頼し,Spitz母斑の確定診断に至った。術後1年で腫瘍の再発は認めていないが,経過観察中である。
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