Skin Cancer
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27 巻, 2 号
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第28回日本皮膚悪性腫瘍学会
一般演題
  • 齋藤 亮, 皆川 英彦, 齋藤 典子, 舟山 恵美, 野崎 愛, 高橋 依子, 加藤 直子
    2012 年 27 巻 2 号 p. 137-142
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/15
    ジャーナル 認証あり
     2001年から2011年までに,形成外科単独あるいは皮膚科を主とする他科との共同で手術治療を行った皮膚悪性腫瘍症例300例の統計的観察を行った。性別は男143例,女157例,年齢は平均71.5歳であった。年平均症例数は27.2例であり,近年漸減傾向にあった。疾患別頻度では基底細胞癌101例(34%),有棘細胞癌73例(24%)などであった。部位別頻度は頭頸部が64%,上肢10%,下肢14%,体幹8%,外陰部5%であった。当科受診の際に,他科もしくは他院から紹介があった症例は285例(95%)であり,そのうち当院・他院を合わせた皮膚科からの紹介が83%であった。当科が治療に携わった症例数は漸減傾向にあり,当院皮膚科常勤医の減少が主な理由と考えられた。皮膚悪性腫瘍患者が直接,形成外科を受診することは稀であり同施設あるいは他施設皮膚科との協力体制は必要不可欠であると考えられた。
  • 坂本 淳, 平澤 祐輔, 高木 敦, 池田 志斈, 荒川 敦
    2012 年 27 巻 2 号 p. 143-147
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/15
    ジャーナル 認証あり
     71歳,男性。約1年前より左腋窩に30×25 mm大の浸潤触れる紅色局面あり,ステロイド外用するも改善しないため当科紹介受診。生検の結果,真皮に好酸性の細胞質を有し核小体の目立つ大型類円形腫瘍細胞が小型腺管構造を形成しながら増殖していた。免疫組織学的に腫瘍細胞はCAM5.2陽性,CK7陽性,GCDFP-15陽性,PAS陽性,ジアスターゼ消化性PAS陽性,エストロゲン・プロゲステロンレセプター陰性,CK20陰性,ベルリンブルー染色陰性,MiB-1/Ki67 index 9%であった。全身検索で他臓器病変はなく,腋窩原発のアポクリン腺癌と診断した。病変部の拡大切除術施行し,術後6ヵ月経過したが再発・転移を疑う所見はない。
  • 大塚 壽, 中岡 啓喜, 戸澤 麻美, 森 秀樹
    2012 年 27 巻 2 号 p. 148-151
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/15
    ジャーナル 認証あり
     82歳,女性の鼻部から右内眼角に及ぶmorpheaformの基底細胞癌(BCC)を報告した。病巣部切除後,全層植皮術を行った。術後2年4ヵ月以後は来院がなく,97歳,14年半ぶりの再診時には,再発腫瘍が眼瞼ならびに眼窩に浸潤していた。CT画像上,眼窩脂肪織や周囲骨組織への浸潤所見を認めた。軽度認知症を伴う超高齢者故に,眼窩内容除去術を行わずに,姑息的治療で経過を追っているが,最近のCT,MRI画像上では,脳硬膜,右海綿静脈洞,斜台,ほかへの浸潤所見を認めている。
     眼周囲のBCCでは,再発が少なからず起こるので,密な間隔で,長期的な追跡が必要である。
  • 前田 拓, 櫻井 圭祐, 古川 洋志, 大芦 孝平, 村中 徹人, 高橋 達郎
    2012 年 27 巻 2 号 p. 152-157
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/15
    ジャーナル 認証あり
     78歳,女性。初診3ヵ月前に,左下腹部皮下の腫瘤を自覚した。部分生検にて転移性卵巣癌が疑われた。婦人科で精査を行ったものの,原発巣は発見できず,CT,MRI,PET-CTなどの全身検索でも,腹壁皮下の病変以外に原発を示唆する病変は特定できなかった。原発不明の腹壁腺癌として摘出術を施行した。病理組織学的診断は卵巣外腹膜漿液性乳頭腺癌(extraovarian peritoneal serous papillary carcinoma:EPSPC)であった。皮下の腫瘤を主訴に皮膚科,形成外科を受診する患者は多いが,本症例のような原発不明腺癌(carcinomas of an unknown primary:CUP)の場合もある。CUPの1つであるEPSPCはその疾患の特徴から産婦人科領域での報告が多いが,軟部腫瘍の診療に携わる皮膚腫瘍外科医もまた,本疾患を十分に理解する必要がある。
第27回日本皮膚悪性腫瘍学会
一般演題
  • 加茂 真理子, 白樫 祐介, 藤本 篤嗣, 杉浦 丹, 望月 康弘, 田口 淳
    2012 年 27 巻 2 号 p. 158-161
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/15
    ジャーナル 認証あり
     61歳,男性。右手第2指PIP関節背側に出現した自覚症状の伴わない紅色結節が約3週間で急激に増大しDIP関節からMP関節にかけて全周性に腫瘤を形成した。腫瘤表面には壊死組織が付着し,腫脹,疼痛を伴った。末梢血中の単球の著明な増加,骨髄中の異型性の強い単球系細胞を認め,第2指潰瘍辺縁部の病理組織ではCD68陽性の単球系異型細胞の浸潤がみられた。これらの検査結果より特異疹を伴う慢性骨髄単球性白血病(CMML)と診断した。自験例では特異疹出現後約3ヵ月で急性骨髄性白血病への急性転化を認めた。CMMLでは特異疹の出現は比較的稀とされ,特異疹が出現した場合の予後は不良で,急性転化の前兆ともいわれている。そのため,早期診断は重要である。
  • 鈴村 多美, 加藤 正幸, 赤坂 江美子, 生駒 憲広, 馬渕 智生, 田宮 紫穂, 松山 孝, 小澤 明, 渡邊 拓也, 横川 茂樹
    2012 年 27 巻 2 号 p. 162-165
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/15
    ジャーナル 認証あり
     22歳,男性。2004年頃より右臀部に皮下腫瘤を認め,その後腫瘍は徐々に拡大した。2010年7月に近医を受診。皮下腫瘤摘出術を施行した。病理所見よりmyxofibrosarcomaと診断され,断端陽性のため追加切除目的に当科へ紹介された。紹介医で切除した病理組織像は,粘液基質を背景に核異型が軽度な線維芽細胞様細胞が疎に増殖していた。免疫染色ではビメンチン陽性,MIB-1 indexは5%陽性を示した。当科にて,前回手術痕より5 cm離して筋層内まで追加切除施行した。術後6ヵ月,再発,転移は認めていない。
     Myxofibrosarcomaは組織学的にlow grade fibromyxoid sarcomaとの鑑別が必要になる。そこで,myxofibrosarcomaとlow grade fibromyxoid sarcomaとの差異について臨床的,組織学的に検討した。
  • 森 暁, 熊谷 綾子, 日景 聡子, 高橋 依子, 菅 裕司, 柳澤 健二, 米田 明弘, 山下 利春, 中田 健生
    2012 年 27 巻 2 号 p. 166-170
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/15
    ジャーナル 認証あり
     89歳,男性。2ヵ月前より左耳前部に生じた2 cm大の紅色結節を主訴に前医受診。生検し病理組織学的に淡明な泡沫状胞体の脂腺分化を示す腫瘍細胞が胞巣を形成し間質に浸潤・増殖していた。脂腺癌と診断され当科紹介受診。切除術を予定するも肺炎を合併したため延期した。5ヵ月後には5 cm大に増大し易出血性となったため入院の上,放射線治療を施行した。照射中およびその後5ヵ月間の経過中に腫瘍は徐々に縮小した。
  • 安田 聖人, 佐藤 英, 石田 智一, 清原 隆宏, 熊切 正信
    2012 年 27 巻 2 号 p. 171-178
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/15
    ジャーナル 認証あり
     センチネルリンパ節の同定にはRI法,色素法など様々な方法が報告されており,その精度を高めるため,いくつかの方法を併用するのが一般的である。我々はRI法と色素法に加えて,CT-lymphographyを併用してセンチネルリンパ節生検を施行している。CT-lymphographyは当院倫理委員会で承認を得たのち,同意の得られた28症例(男性12例,女性16例,平均年齢65歳)に対して行った。そのうち17例で造影効果を認め,頭頸部領域で腫瘍近傍のセンチネルリンパ節を正確に描出することができた。また,リンパ管の走行も詳細に把握できるため,複数のリンパ節が描出された場合,それが2次リンパ節なのか,別channelからのリンパ節なのかの判断が可能であった。さらに,症例に応じたより適切な廓清範囲の決定や,subtotal integmentectomyの際の切除範囲の検討などにも有用であると考えられた。
  • 藤田 有理香, 前川 武雄, 小宮根 真弓, 村田 哲, 大槻 マミ太郎
    2012 年 27 巻 2 号 p. 179-185
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/15
    ジャーナル 認証あり
     過去20年間に,当科で経験した乳房外Paget病82例について統計的に検討した。平均年齢71.4歳,男女比が1.8対1。初診時,病変が外陰部に存在していたのは70例(89.7%),腋窩に存在していたのは6例(7.7%),下腹部,肛囲ではそれぞれ2例(2.6%)であった。そのうち,3例がいわゆる多発例であった。リンパ節転移は8.5%にみられ,全てT2以上の症例であった。局所再発は4.1%で全てT1症例であった。5年生存率は,所属リンパ節転移のない群で100%,片側リンパ節転移群で65%,両側リンパ節転移群で0%であった。病期別5年生存率は,病期Ⅰ,Ⅱは100%,病期Ⅲでは75%,病期Ⅳでは0%であった。生存曲線は,病期分類別とN分類別とで類似しており,所属リンパ節転移の有無が予後に大きく影響していることが示された。
第26回日本皮膚悪性腫瘍学会
一般演題
  • 大崎 健夫, 野村 正, 時吉 貴宏
    2012 年 27 巻 2 号 p. 186-190
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/15
    ジャーナル 認証あり
     皮膚悪性腫瘍切除後などの外鼻の全層欠損の再建において,永続性のある良好な形態と適度な鼻腔を保つためには,血行の安定した薄く十分量の鼻腔側裏打ちが必要となる。今回我々は,皮膚悪性腫瘍切除後の再建および再建後の瘢痕拘縮の解除において,nasolabial flapにより鼻腔裏打ちの再建を行った2症例を経験した。症例1:78歳,男性。基底細胞癌切除後,median forehead flap,鼻中隔軟骨,nasolabial flapで外鼻を再建した。症例2:76歳,女性。遊離前腕皮弁による外鼻再建後の瘢痕拘縮を,nasolabial flapを裏打ちとして用いて解除した。いずれも皮弁は生着し,良好な結果を得た。同皮弁は厚さが問題とされるが,我々の経験からは安全に裏打ちとして許容できる薄さを得ることができ,有力な選択肢となると考えられた。
  • 森 暁, 水柿 典子, 日景 聡子, 高橋 依子, 神谷 崇文, 柳澤 健二, 米田 明弘, 兼古 理恵, 小野 一郎, 山下 利春, 富永 ...
    2012 年 27 巻 2 号 p. 191-194
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/15
    ジャーナル 認証あり
     75歳女性の左上腕に生じたStewart-Treves症候群の1例を経験した。左乳癌切除およびリンパ節郭清術,化学療法,放射線療法を施行され,以後,左上肢にリンパ浮腫が持続していた。7年後に1 cm大の紫斑を認め,隆起し赤色腫瘤となり,生検にて脈管肉腫と診断した。臨床および画像所見より単発病変と判断できたため腫瘍を切除し,術後補助療法として放射線治療60 Gyを行った。術後再発,転移なく経過している。
投稿論文
  • 藤澤 康弘, 大塚 藤男, 山本 明史, 山﨑 直也, 斎田 俊明, 石原 和之
    2012 年 27 巻 2 号 p. 195-204
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/15
    ジャーナル 認証あり
     2005,2006年度の全国定点調査と2005~2010年度の全国追跡調査で収集された3,179例の悪性黒色腫症例の集計を行った。本集計ではその発生状況,術後補助療法の選択状況のほかに多変量解析を用いてリンパ節転移を起こしやすい因子を検討した。症例の内訳は,男女比:1,501対1,674,平均年齢:62.5歳,病型:ALM 44%/SSM 19%/NM 14%/LMM 8%/粘膜 5%/不明・その他 10%,UICC(2002)TNM病期:Tis 18%/Ⅰ期 22%/Ⅱ期 28%/Ⅲ期 21%/Ⅳ期 11%であった。術後補助療法としてDAVFeron療法はステージⅠ,Ⅱ,Ⅲでそれぞれ10%,50%,65%の症例に行われていた。そのほか,フェロン療法がそれぞれ16%,15%,17%でありフェロン維持療法がそれぞれ16%,29%,32%であった。予後に直接影響するリンパ節転移について多変量解析によるリスク因子の検討を行ったところ,統計学的有意なリスク因子であったものは体幹原発(オッズ比2.30),下肢原発(オッズ比1.72),自然消退(オッズ比2.05),T分類(オッズ比2.19)であり,逆に起こしにくい因子はLMM(オッズ比0.39)であった。このような統計調査は悪性黒色腫の現状を把握し,治療指針を考える上で役立つと考えられる。
  • 吉原 渚, 種田 研一, 和田 了, 吉池 高志
    2012 年 27 巻 2 号 p. 205-210
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/15
    ジャーナル 認証あり
     59歳の女性にみられた,右側頭部の多様な分化を示した脂腺母斑の1例を報告する。この患者は,出生時より右側頭部に皮疹を自覚していた。約2年前より,右側頭部皮疹部は掻破と出血を繰り返し,徐々に増大傾向となったため,2010年4月9日当科を受診した。初診時,同部位に列序性黄色,疣状局面があり,一部に灰青色の硬い不正形隆起や紫紅色の境界明瞭なドーム状隆起がみられた。2次性腫瘍の発生を疑い,同部位を全切除した。免疫組織学染色を含む病理組織学的検査の結果,脂腺母斑から基底細胞癌および外毛根鞘腫様にみえる腫瘍が生じたものと判明した。近年,脂腺母斑に生じた基底細胞癌の多くは毛芽腫であるとの報告が多くされている。多様な分化を示した脂腺母斑の1例に文献的考察を加えて報告する。
  • 中原 とも子, 小川 尊資, 高木 敦, 塚田 信弘, 小松 則夫, 細根 勝, 池田 志斈
    2012 年 27 巻 2 号 p. 211-214
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/15
    ジャーナル 認証あり
     45歳,男性。2年前頃より,前額部および胸背部に母指頭大までの軽度浸潤を触れる赤褐色斑が多発した。ステロイド外用にて改善がみられず,次第に頸部リンパ節腫大が多数出現した。悪性リンパ腫やCastleman病を疑い,血液検査を施行した。その結果,軽度の貧血,CRP上昇,多クローン性γグロブリン血症およびIL-6値上昇がみられた。次に左頬部の赤褐色斑と頸部の腫大リンパ節より生検を施行したところ,皮膚・リンパ節ともに異型性のない形質細胞が多クローン性に増生していた。以上より,本症例をmulticentric Castleman’s diseaseと診断した。
  • 堤田 新, 山﨑 直也, 並川 健二郎, 加藤 潤史, 田中 亮多
    2012 年 27 巻 2 号 p. 215-217
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/15
    ジャーナル 認証あり
     メラノーマにおいて腋窩センチネルリンパ節(以下SLN)転移陽性例に対する郭清範囲については詳細な検討はなされていない。今回,当科における単施設後ろ向き研究を行った。
     SLNは全例腋窩のみでレベルⅠに同定された。腋窩郭清範囲はレベルⅠのみが4例,レベルⅠとⅡ(小胸筋温存)が18例であった。郭清側の腋窩リンパ節再発率は4.5%であり,レベルⅢの明らかなリンパ節再発はなかった。また,レベルⅡのリンパ節転移の可能性は9%でありレベルⅠのみの郭清はややリスクが高いと思われた。
     今回の検討で,メラノーマにおけるSLN転移陽性例に対する腋窩郭清範囲はレベルⅠとⅡが適当と考えられたが,単施設少数例の検討であり,今後多施設共同研究にて多数例での検証が必要と考える。
  • 岩田 洋平, 臼田 俊和, 大城 宏治, 豊田 徳子, 小寺 雅也, 馬場 二三八, 松永 佳世子
    2012 年 27 巻 2 号 p. 218-225
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/15
    ジャーナル 認証あり
     80歳,女性。初診の半年前より下着に血液が付着するようになり受診した。外陰部の広範囲に浸潤性紅斑と腫瘤を認め,右鼠径リンパ節腫張も伴っていた。原発巣切除・植皮術,右鼠径リンパ節廓清術と化学療法を行ったが,術後半年頃から多発肺転移と臍部への皮膚転移を生じた。皮膚転移巣は急速に増大・潰瘍化し,滲出液も著しく,患者のQOLを著しく低下していった。局所コントロール目的で電子線照射を行ったところ,照射約5ヵ月で臍部の皮膚転移巣はほぼ消失した。肺,肝,骨への多発転移巣は次々に出現・増大していったが,電子線照射部は永眠するまでの1年3ヵ月の間良好な局所コントロールを得ることが可能であった。現在までのところ乳房外Paget病に対する放射線治療の効果についてのエビデンスは確立されていないが,転移巣の局所コントロールのための一つの選択肢として有用と考えられたので報告した。
  • 佐々木 良輔, 岩田 洋平, 有馬 豪, 矢上 晶子, 菅谷 直樹, 鈴木 加余子, 松永 佳世子
    2012 年 27 巻 2 号 p. 226-230
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/15
    ジャーナル 認証あり
     74歳,男性。初診6ヵ月前より下口唇にびらんを伴う扁平隆起性局面を認め,当院を受診した。扁平苔癬や日光口唇炎などとの鑑別のため2度にわたり部分生検を行ったが,明らかな悪性像は認められず,確定診断には至らなかったが,腫瘍は初診から約5ヵ月間で直径15 mmから45 mmにまで急激に増大していった。臨床像と病理組織所見から最終的に口唇部有棘細胞癌と診断し,皮膚側から粘膜側までの全層を含めて腫瘍を全摘しAbbe’s flapを用いて再建した。全摘標本の病理組織所見では筋層への浸潤を認める高分化型の有棘細胞癌であった。口唇部有棘細胞癌は初期の段階や高分化型の組織型では細胞異型が軽度であり部分生検で確定診断がつきにくい場合があるので注意が必要と考えた。
  • 福田 桂太郎, 緒方 大, 片岡 照貴, 中浦 淳, 吉川 周佐, 清原 祥夫
    2012 年 27 巻 2 号 p. 231-236
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/15
    ジャーナル 認証あり
     原発不明悪性黒色腫臨床的リンパ節転移では,その転移巣が所属リンパ節(stage Ⅲ)または遠隔転移(stage Ⅳ)に該当する2つの可能性が考えられる。当科では,stage Ⅳの可能性を考慮し,原発不明悪性黒色腫臨床的リンパ節転移の3例(N1b 1例,N2b 1例,N3 1例)に対して,ネオアジュバント療法の効果を確認した後に,手術を行う方針とした。DAC-Tam-Feron療法にてN1b,N2bの2例がCR,N3の1例はPRに至り,N1bとN3の症例にはリンパ節郭清術を追加した。N3の症例は治療開始後12ヵ月で他臓器転移をきたしたが,N1b,N2bの2例はdisease freeの状態を44ヵ月以上維持している。原発不明悪性黒色腫でリンパ節転移のみ認める症例では,化学療法の反応もよく,手術可能な状態であれば積極的にリンパ節郭清を行うことで,良好な予後が期待できることが示唆された。
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