Skin Cancer
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28 巻, 1 号
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第28回日本皮膚悪性腫瘍学会
一般演題
  • 宮本 秀明, 和田 秀文
    2013 年 28 巻 1 号 p. 13-15
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/02
    ジャーナル 認証あり
    61歳,男性。初診:2011年8月12日。5年前から頭頂部に結節あったが大きさは変化しなかった。結節は径10mm,半球状で頂部にびらんを伴っていた。患者の希望により初診の10日後に頭頂部の結節を切除した。病理組織像では真皮の浅層から深層にかけて,何箇所かに分葉状の腫瘍塊を認め,深部の切除断端で腫瘍細胞は陽性であった。真皮上層の腫瘍塊では,細胞質が大型で淡明な脂腺分化細胞が多数みられ,表皮との境界部には小型の基底細胞様細胞の集簇もみられた。深部断端部では大型の泡沫状の細胞と小型の基底細胞様細胞の集簇が混じており,血管の増生も認められた。横浜市立大学附属病院皮膚科に紹介し,2011年10月12日(最初の切除の40日後)に拡大手術を施行。手術瘢痕から20mm離して,帽状腱膜下の深さで切除した。オペ切片には残存腫瘍はなく,拡大手術から15ヵ月を経た現在,再発も転移も認めていない。
  • 大橋 苑子, 爲政 大幾, 太田 馨, 岡本 祐之
    2013 年 28 巻 1 号 p. 16-19
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/02
    ジャーナル 認証あり
    症例は99歳,女性。10数年前に生じた左鼻翼付近の色素斑を主訴に受診。初診時,鼻背の両側にびらんと痂皮を伴う角化性紅斑を認めた。左側の紅斑は鼻翼側に10×6mmの不整形な青黒色腫瘤を伴い,ダーモスコピーでは微小潰瘍が混在した青灰色の類円形胞巣と樹枝状血管を認めた。また右内眼角下方から頬部にかけての皺に沿って,20×2mmの線状黒色斑を認め,ダーモスコピーでは出血を伴う青灰色小球構造を呈していた。生検病理組織像では,どちらの病変も表皮と連続性に基底細胞様細胞が柵状配列を伴う胞巣を真皮内に形成しており,基底細胞癌(BCC)と診断した。局所麻酔下に5mmのマージンで切除し,右頬部は単純縫縮した。左鼻背には含皮下血管網遊離植皮を行った。線状基底細胞癌は多くがrelaxed skin tension lines(RSTL)に沿って生じており,顔面では下眼瞼や頬部に好発していた。
  • 菅 崇暢, 栁瀬 哲至, 河合 幹雄, 秀 道広
    2013 年 28 巻 1 号 p. 20-23
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/02
    ジャーナル 認証あり
    血管肉腫は手術療法,化学療法,放射線療法,免疫療法を組み合わせて治療するが,高齢者では全身状態や合併症のため治療法の選択に苦慮することが多い。我々は,低用量docetaxel(DTX)による化学療法と放射線療法(RT)の併用(以下DTX+RT)で加療した80歳以上の血管肉腫患者4例を経験したため,治療効果や合併症,予後などを報告する。DTXを低用量で投与したが,腫瘍は縮小し,4例の平均生存期間は17.1ヵ月であった。副作用として骨髄抑制は生じなかったが,食欲不振や胸水貯留がみられた。副作用に注意が必要であるが,低用量DTX+RTでの治療は高齢者にとってQuality of Life(QOL)を維持しつつ効果が期待できる治療法と考えられた。
  • 羽田 孝司, 伊藤 孝明, 山西 清文, 福本 隆也
    2013 年 28 巻 1 号 p. 24-28
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/02
    ジャーナル 認証あり
    43歳,女性。後頸部に疼痛を伴わない腫瘤を自覚し,徐々に増大した。単純CTでは後頸部ほぼ正中皮下に脂肪濃度と不均一な軟部組織濃度からなる皮下腫瘤を認めた。MRIでは腫瘍の大部分はT1強調像で高信号を呈したが,脂肪抑制T1強調像で低信号化した。内部に筋肉と同程度の信号を呈する領域も認めた。画像所見よりliposarcomaを疑い,局所麻酔下に皮膚および周囲脂肪組織を含めて摘出した。病理組織検査からatypical lipomatous tumor/well differentiated liposarcomaと診断した。2ヵ月後,1cmマージンをとり,拡大摘出を行った。術後1.5年の時点では単純CT上再発を認めない。
  • 東儀 那津子, 高須 博, 勝岡 憲生, 鴻池 奈津子, 根本 充, 武田 啓
    2013 年 28 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/02
    ジャーナル 認証あり
    症例1:58歳,男性。57歳頃より,左上腕に拇指頭大の結節を自覚し,数ヵ月前より増大して痛みを伴うようになった。当科初診時,左上腕に4.5cm大の常色,やや扁平に隆起した,可動性良好な弾性硬の皮下結節を認めた。結節の病理組織所見では表皮と連続性のない分葉状の腫瘍塊を認めた。腫瘍細胞は小型で円形を呈し,細胞質は乏しく,濃染する核を有していた。免疫染色で腫瘍細胞はNSE,Synaptophysin,CK20で陽性であった。症例2:79歳,男性。77歳頃より左大腿に赤色の結節が出現し,徐々に増大した。左大腿遠位部外側に33×25mm大のドーム状に隆起する鮮紅色,弾性軟の結節を認めた。HE染色,免疫染色は症例1と類似した所見だった。また,近年メルケル細胞癌からメルケル細胞ポリオーマウイルスが同定されているが,自験例2症例でも免疫染色でメルケル細胞ポリオーマウイルス抗原陽性であった。
  • 濵岡 大, 尾藤 利憲, 坂口 正展, 池田 哲哉, 小野 竜輔, 中林 幸士, 錦織 千佳子
    2013 年 28 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/02
    ジャーナル 認証あり
    68歳,女性。約2ヵ月前より臍部の硬結を自覚した。皮膚生検の病理組織学的検討では角化傾向を有する異型性の強い腫瘍細胞が表皮と連続性に真皮深層まで浸潤する像がみられたことより皮膚有棘細胞癌と考えた。術前のMRI検査で,腹腔内膀胱上方に10.5×13.5×17cm大の表面平滑で周囲組織と境界明瞭な腫瘤がみられ,良性卵巣嚢腫が疑われた。しかし,臍部の腫瘤とともに行った嚢腫の摘出術で術中に悪性と診断,腸間膜を含め拡大切除した。最終的に,自験例は右卵巣成熟嚢胞奇形腫の悪性転化とそれに伴うSister Mary Joseph’s Noduleと診断した。術後維持化学療法としてTC(Paclitaxel・Carboplatin)療法を施行し,約1年6ヵ月寛解を維持している。卵巣成熟嚢胞奇形腫は稀に悪性化し,その場合,扁平上皮癌の組織像を呈することが多い。臍部に転移すると皮膚有棘細胞癌と鑑別が困難となる。自験例は皮膚科医にとって重要な知見と考えられた。
  • 廣瀬 寮二, 武石 恵美子, 神尾 芳幸, 野村 昌代
    2013 年 28 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/02
    ジャーナル 認証あり
    長崎市立市民病院において,2004年から2011年のボーエン病患者は年間平均15例,総数119例で,ボーエン病患者総数対皮膚科新患患者総数は0.94%と高く,全皮膚悪性腫瘍に占める割合も25%と高かった。原因として1945年に投下された原爆の影響を考えた。被爆者と非被爆者のボーエン病を比較すると被爆者は多発する傾向があり(15%),他の皮膚癌合併が高頻度であった(12%)。しかしボーエン病患者中被爆者の割合(31.1%)は,長崎市の総人口に占める被爆者の割合(35.6%)とほぼ一致しており,被爆者に多く発生してはいなかった。つまりボーエン病は非被爆者も含めた長崎市住民全体に多いことになり,外部被曝以外に内部被曝による発がんリスクも考えられた。また約10年前の当院ボーエン病の頻度は年間平均5例と低く,被爆した皮膚は遺伝子異常により発がんリスクを有しており,高齢化に伴いボーエン病発症が増加してきたと推論した。
  • 桑原 広昌, 内山 英祐, 石山 誠一郎, 本田 耕一
    2013 年 28 巻 1 号 p. 46-49
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/02
    ジャーナル 認証あり
    73歳,男性。初診の約30年前から右膝部に腫瘤があり,時々滲出液が出ていた。滲出液の臭いを主訴に近医皮膚科を受診し,当科を紹介された。初診時,右膝部に直径約3cmの皮下腫瘤を触知した。表層の皮膚には潰瘍を伴った小さな瘻孔を認め,圧迫により排膿がみられた。全身麻酔下に皮膚を含めて腫瘤を切除し,分層植皮にて再建した。病理組織学的所見では,異型上皮で被覆された嚢胞性病変がみられた。嚢胞壁の一部には周囲への浸潤を伴う異型角化細胞による胞巣を認め,異型に乏しい部位には顆粒層が残存しており,表皮嚢腫から発生した有棘細胞癌と診断した。術後約1年間の経過観察中に,再発や転移は認めていない。
  • 小熊 孝, 岩谷 博篤, 寺師 浩人
    2013 年 28 巻 1 号 p. 50-54
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/02
    ジャーナル 認証あり
    症例は66歳の男性である。5年前より右耳介後面に腫瘤を自覚するも放置していた。今回,耳介腫瘤からの出血を訴え受診した。耳介皮膚に腐敗臭を伴う隆起した腫瘤を認め,腫瘤内に数匹の蛆虫を認めた。生検では有棘細胞癌が疑われた。手術は耳垂を一部残し,耳介を切除した。腫瘍の全摘標本では,核の異型性は目立たないが疣状構造を形成して外方向に増殖する扁平上皮性の腫瘍であり,疣状癌と診断した。術後3年を経過したが,再発やリンパ節転移はみられない。疣状癌はリンパ節転移や遠隔転移は稀であり,適切な切除により治癒すると考えられている。
  • 佐久間 智子, 木村 中, 川副 尚史, 塩谷 隆太, 池田 仁
    2013 年 28 巻 1 号 p. 55-58
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/02
    ジャーナル 認証あり
    若年性糖尿病患者の糖尿病性潰瘍に発生したVerrucous Carcinomaの1例を報告した。保存的治療に抵抗する難治性潰瘍で,生検ではpseudocarcinomatous hyperplasiaであったがveruccous carcinomaの可能性も否定できず,腫瘍切除を行った。欠損部はstep-ladder advancement plantar flapで再建を行い,良好な治癒を得られた。組織病理所見では表皮の乳頭状増殖を認め,核異型,多核細胞,Mitosisの増加などを認め,verrucous carcinomaの診断を得た。リンパ節転移はなく,術後13ヵ月の現在,再発の兆候は認めていない。
第27回日本皮膚悪性腫瘍学会
一般演題
  • 加藤 円香, 山田 和哉, 岡田 悦子, 田村 敦志, 石川 治
    2013 年 28 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/02
    ジャーナル 認証あり
    81歳,男性。初診1ヵ月前に左鼻翼の皮疹に気付いた。初診時,左鼻翼から左頬部にかけて17×14mm,中央が潰瘍化し,辺縁が堤防状に隆起した淡紅色結節を認めた。病理組織像では,真皮全層から皮下にかけて核異型の高度な紡錘形細胞が束状ないしは錯綜して増殖していた。腫瘍細胞は免疫組織化学的に,vimentin,α-smooth muscle actin陽性であり,皮膚平滑筋肉腫と診断。腫瘍辺縁より1cm離し,鼻翼の全層を含めて切除後,頭皮額皮弁を用いて再建した。術後2年6ヵ月を経過した現在まで再発・転移はみられない。
  • 横見 明典, 種村 篤, 田中 文, 谷 守, 片山 一朗, 金澤 成行, 波多 祐紀, 菊池 守, 冨田 興一, 細川 亙
    2013 年 28 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/02
    ジャーナル 認証あり
    大阪大学にて2000年から2011年に乳房外Paget病と診断された69例を対象とした疫学的検討を行った。経過観察期間は1~72ヵ月(平均観察期間35ヵ月),初診時年齢は49~97歳,平均年齢は72.4歳,男女比は2.5:1であった。発生部位は外陰部63例,肛門周囲4例,腋窩2例であった。病期分類は皮膚悪性腫瘍取扱いガイドラインに準じて行った。病期IAは38例,病期IBは17例,病期Ⅱは3例,病期Ⅲは3例,病期Ⅳは8例であった。治療は手術が60例,化学療法が9例,放射線療法が5例であった(重複あり)。5年生存率は病期Ⅰ,Ⅱ,Ⅲが100%,病期Ⅳが0%であった。
第26回日本皮膚悪性腫瘍学会
教育コース
  • 大黒 奈津子, 福本 隆也, 浅田 秀夫
    2013 年 28 巻 1 号 p. 68-73
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/02
    ジャーナル 認証あり
    症例1:82歳,男性。急激な意識障害の原因として血管内大細胞Bリンパ腫が疑われ当科を紹介受診。下腹部を中心に毛細血管拡張と淡い紅斑を認め,側胸部には老人性血管腫を認めた。紅斑と老人性血管腫からの皮膚生検で血管腫の血管内や脂肪層の血管内に異形単核球を確認した。
    症例2:72歳,女性。意識障害とMRI所見から血管内大細胞Bリンパ腫が疑われ当科を紹介受診。側頸部の老人性血管腫2箇所を生検したところ2箇所ともに血管腫の血管内にのみ異形単核球を認め,血管内大細胞Bリンパ腫と診断した。
    近年血管内大細胞Bリンパ腫のランダム皮膚生検の有用性が提唱されているが,ランダム皮膚生検施行の際には老人性血管腫からの生検も有用であると考え,文献的考察を加えて報告する。
一般演題
  • 飯岡 弘至, 小川 浩平, 桑原 理充, 福本 隆也, 浅田 秀夫
    2013 年 28 巻 1 号 p. 74-78
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/02
    ジャーナル 認証あり
    神経線維腫症1型(以下NF1)は約3000出生に1人の割合で生じる。約2%に悪性末梢神経鞘腫瘍(Malignant Peripheral Nerve Sheath Tumor,以下MPNST)が発生する。今回我々はNF1に併発したMPNST症例を経験した。
    69歳,女性。既往にNF1を認める。2003年に腹部の皮下腫瘤を他院にて切除,神経線維腫と診断された。2007年に再発し切除されたが,2009年同瘢痕下に腫瘤が再度出現し,手拳大程度になり当科に紹介された。同年10月に切除した結果,low grade MPNSTと診断し,さらに辺縁5cm離し拡大切除,皮膚移植を行った。術後補助療法は施行しなかったが,3年後の現在も再発,転移はない。自験例では,2度の外科的侵襲が引き金となりMPNSTを発症した可能性が考えられた。
投稿論文
  • 横井 郁美, 小浦 綾子, 石川 絵美子, 宗廣 明日香, 森上 純子, 今滝 修, 窪田 泰夫
    2013 年 28 巻 1 号 p. 79-83
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/02
    ジャーナル 認証あり
    84歳,女性。初診の2年前に発症した躯幹の遠心性環状紅斑と,初診6ヵ月より出現した径6cmの右腋窩腫瘤を主訴に2011年11月10日に来院した。腫瘤の組織検査では,異型リンパ球が真皮から皮下組織にかけて密に浸潤し,腫瘍細胞周囲には,好酸球と組織球を混じた激しい炎症細胞浸潤を伴っていた。異型リンパ球は免疫組織学的にCD30,CD3,CD45RO,TIA-1,Granzyme Bに陽性,CD20,CD79,ALKに陰性だった。一方,環状紅斑部では,真皮浅層の血管周囲にリンパ球が浸潤していた。PET-CTで両側腋窩リンパ節に多発して集積があり,リンパ節生検で組織学的にCD30陽性の異型リンパ球と好酸球を証明した。以上より,原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫,遠心性環状紅斑の併発例と診断した。他院にてCHOP療法が8クール施行され,リンパ腫は完全寛解した。遠心性環状紅斑は化学療法に伴い改善した。
  • 楠谷 尚, 吉川 周佐, 加藤 元一, 嵩 眞佐子, 庭川 要, 高橋 伸卓, 清原 祥夫
    2013 年 28 巻 1 号 p. 84-88
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/02
    ジャーナル 認証あり
    56歳,女性。2005年頃から外陰部の掻痒,紅斑を自覚した。2007年に近医での生検にて外陰部Paget病と診断され,当科紹介受診となった。病変は恥丘部から肛門部にかけて存在しており,同年12月に腫瘍切除,植皮術を施行した。2011年8月に頻尿,排尿時痛が出現し,近医泌尿器科にてPaget病再発の可能性を指摘された。外尿道口周囲から膣口にびらんを伴う紅斑があり,膀胱鏡検査では膀胱頸部に紅斑が認められた。膣~子宮頸部と膀胱頸部の生検を行いほぼ全ての標本にPaget細胞が認められたため,膣,子宮・付属器,尿道,膀胱を合併切除する前方骨盤除臓術,回腸導管造設術を施行した。手術検体の病理検査では,尿道,膀胱,膀胱筋層内尿管,膣,子宮頸部にPaget細胞の進展が認められた。特に女性外陰部に発生したPaget病の場合には,腫瘍の進展範囲を評価した上で個々の症例によって治療方針を決定することが必要である。
  • 神谷 由紀, 吉池 高志, 山秋 孝子
    2013 年 28 巻 1 号 p. 89-93
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/02
    ジャーナル 認証あり
    80歳,女性。50年前に顔面太田母斑に対するβ線外面照射療法をうけた。その後治療部位に潰瘍を生じ,外用療法をうけたが軽快せず,腫瘤も生じ徐々に増大したため当科初診となった。初診時,左顔面は慢性放射線皮膚障害の像を呈し,左外眼角から上外方にかけては不整形で硬く隆起する疣状角化腫瘤を認めた。病理組織学的に有棘細胞癌と診断し,腫瘍切除・植皮術を施行した。統計から本邦のβ線照射療法による皮膚癌発生例はあまり多くなかった。それはβ線照射が行われた症例が少ないためと考えられた。また放射線療法全体による皮膚癌発生について,今後は少ない照射量で長期間の潜伏期を経て発癌する基底細部癌の発生が増加する可能性が示唆された。
  • 小原 佐惠子, 中村 泰大, 藤澤 康弘, 中村 貴之, 川内 康弘, 大塚 藤男
    2013 年 28 巻 1 号 p. 94-97
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/02
    ジャーナル 認証あり
    当科で行った有棘細胞癌原発巣に対する放射線療法の効果につきretrospectiveに検討した。症例数は10例(男性7例,女性3例)で,原発巣は頭頸部が7例と大半をしめ,そのうち4例は下口唇であった。腫瘍径が2 cm以下では全例でcomplete responseが得られた。化学放射線療法を行った3例は腫瘍径が5 cm以上であったが2例でcomplete responseが得られた。手術により整容面ならびに機能面で障害を起こしやすい部位に発生した場合や高齢で手術が困難な例には初回治療より放射線療法を積極的に用いてもよいと考えた。
  • 藤井 のり子, 長谷 哲男, 谷 守
    2013 年 28 巻 1 号 p. 98-102
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/02
    ジャーナル 認証あり
    19歳,男性。11歳頃から全身に自覚症状のない点状出血を伴う紅斑が出現し,1年前より拡大。病理組織所見では,表皮内に小型リンパ球の浸潤,真皮には血管周囲性に核に切れ込みのある小型リンパ球や大型異型リンパ球,組織球など多彩な細胞浸潤がみられた。赤血球の血管外漏出もあり。免疫組織化学では,CD3,CD4,CLA陽性細胞が多く,CD30,granzymeB陽性細胞も散在性にあり。TIA-1,ALK陰性。単クローン性は検出されず。Mycosis fungoides(MF)やそのlarge cell transformationとするには,Pautrier微小膿瘍やmycosis細胞はみられず,真皮浸潤細胞は小型リンパ球,異型大型細胞,組織球など多彩で,免疫組織化学も多彩。Cutaneous anaplastic large cell lymphomaとするにはCD30の陽性率が低く,lymphomatoid papulosisは臨床像が当てはまらなかった。MFやCD30+primary cutaneous CD30+T-cell lymphoproliferative disordersとは診断できない点状出血斑を伴う皮膚T細胞性リンパ腫と診断した。
  • 小原 佐惠子, 中村 泰大, 斉藤 明允, 中村 貴之, 藤澤 康弘, 川内 康弘, 大塚 藤男
    2013 年 28 巻 1 号 p. 103-107
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/02
    ジャーナル 認証あり
    メシル酸イマチニブ(グリベック®)はPDGFRを標的としたチロシンキナーゼ阻害剤であり,隆起性皮膚線維肉腫の増殖を抑制する。今回,隆起性皮膚線維肉腫転移巣の治療としてイマチニブを投与した2例を経験した。症例1:43歳,女性。腹部原発の隆起性皮膚線維肉腫に対して拡大切除術後5年で腹腔内転移巣が出現した。全摘後3ヵ月で腹腔内に多発転移巣が出現したため,イマチニブ400mg/日を投与したところ,3ヵ月後には16%の縮小し,600mg/日まで増量し,現在まで増大なく経過している。症例2:46歳,男性。腹部原発隆起性皮膚線維肉腫に対して拡大切除術後3年で肺,皮膚転移巣が出現した。全摘出したが,7ヵ月後には縦隔転移巣が出現した。イマチニブ400mg/日を開始し,800mg/日まで増量したところ,投与20ヵ月後には縦隔転移巣は消失した。
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