Skin Cancer
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31 巻, 3 号
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第32回日本皮膚悪性腫瘍学会
シンポジウム2
一般演題
  • 岩下 宣彦, 佐藤 有規奈, 加藤 徳子, 渡辺 大輔, 岡本 啓希
    2017 年 31 巻 3 号 p. 216-221
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/03
    ジャーナル 認証あり

    進行期悪性黒色腫(MM)の治療として抗PD-1抗体(Nivolumab™)が使用できるようになったが,その効果は個人差があり奏効率もいまだ十分なものではない。抗CTLA-4抗体(Ipilimumab™)との併用療法も副作用の増大に較べて効果は低く,その他脳転移例に対して放射線療法後の連続投与の有効性も報告されているが,確かな根拠に乏しい。今回,67歳男性に生じた後頭部MMの術後再発転移に対して,Peg IFN-α皮下注療法後,連続して抗PD-1抗体を投与することで速やかな腫瘍縮小が認められた症例を経験した。両薬剤の連続投与による抗PD-1抗体投与後の免疫関連有害事象(ir-AE)の発現は認められなかった。以上により,peg IFN-α療法に連続した抗PD-1抗体療法は,臨床的に有効で忍容性がある可能性が示されたため,若干の文献的考察を加えて報告する。

  • 田中 文, 種村 篤, 生長 久仁子, 中川 幸延, 清原 英司, 金田 眞理, 片山 一朗
    2017 年 31 巻 3 号 p. 222-226
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/03
    ジャーナル 認証あり

    46歳,男性。右腋窩の腫脹を自覚したため前医を受診し,画像検査で悪性リンパ腫を疑われ,前医初診2ヵ月後に当院血液内科を紹介され受診した。部分生検にて原発不明のamelanotic melanomaが疑われ,さらに画像検査で多発性肺病変を認めたため,当院整形外科にてDAV-Feron,DAC-Tam療法を施行されたが病勢は進行した。その後V600E BRAF遺伝子変異を確認し,当院初診3ヵ月後より当科にてvemuafenib投与を開始すると速やかに腫瘍の劇的な縮小がみられた。しかし投与4ヵ月目に腫瘍は再度増大したためnivolumab治療に変更したが治療効果は得られず,さらなる多発転移を生じたためipilimumab治療に変更した。放射線照射も併用したが腫瘍はさらに進展し,当院での治療開始後1年で永眠された。自験例は当初診断が困難であり,かつ腫瘍が急速な増大進展を来したため治療選択に難渋した。自験例の分子標的薬および免疫チェックポイント阻害剤治療を含めた治療経過につき考察をふまえて報告する。

  • 国本 佳代, 三木田 直哉, 古川 福実, 藤本 正数, 村田 晋一, 山本 有紀
    2017 年 31 巻 3 号 p. 227-232
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/03
    ジャーナル 認証あり

    隆起性皮膚線維肉腫(dermatofibrosarcoma protuberans:DFSP)は,転移は稀であるが局所再発の多い皮膚間葉系腫瘍として知られている。病理組織像は真皮から皮下組織にかけて,異型の乏しい紡錘形細胞がstoriform patternを呈しながら増殖し,CD34が陽性であることが特徴である。DFSPには上記の組織型以外に様々な組織亜型が存在し,典型的なstoriform patternが混在すれば診断は比較的容易であるが,ほぼすべてを亜型が占めている場合は診断に苦慮する。今回我々は,68歳,男性に生じた右大腿部の新生児頭大の有茎性の腫瘍で,組織学的にmyxoid typeを示したDFSPの症例を経験した。診断にはCOL1A1-PDGFB融合遺伝子の検出が有用であった。

  • 北川 敬之, 野村 正, 橋川 和信, 藤原 進, 田島 翔子, 錦織 千佳子, 寺師 浩人
    2017 年 31 巻 3 号 p. 233-237
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/03
    ジャーナル 認証あり

    67歳,男性。初診より約1年前から左母趾爪甲に黒色斑を自覚した。その後,病変が拡大し,爪破壊も生じたため当院皮膚科を受診した。臨床所見で左母趾悪性黒色腫,PET-CTで膝窩ならびに鼠径リンパ節転移を疑われ,当科を紹介受診した。原発巣切除と同時にセンチネルリンパ節生検術,膝窩リンパ節郭清術を施行した。原発巣はtumor thickness 11mmで骨膜に浸潤していた。鼠径リンパ節生検は1/3(浅鼠径リンパ節への転移),膝窩リンパ節郭清は1/2(深膝窩リンパ節への転移)陽性で,後日鼠径リンパ節郭清を施行しリンパ節転移は認められなかった。原発巣が母趾骨膜まで浸潤していたため,骨膜から深部リンパ管を介し深膝窩リンパ節へ転移した可能性が示唆された。原発巣が深部組織に及ぶ場合は,深在リンパ管への流れも考慮することが大切であると思われる。

  • 廣瀬 寮二, 武石 恵美子
    2017 年 31 巻 3 号 p. 238-243
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/03
    ジャーナル 認証あり

    日光角化症に対するイミキモド療法の効果判定法は,視診上の消失を有効とするが,未消失の中には「不変」,「少し軽減」,「著しく軽減」が含まれる。今回イミキモド治療前・後に皮膚生検を施行した15症例で視診と組織診を比較検討した結果,視診で未消失14例中「著しく軽減」の9例全例と「少し軽減」4例中1例は組織診で完全消失しており,有効と判定した。つまり視診で未消失の14例中10例が組織学的には有効で,判定には組織診を必要とした。さらに無効例のうち,視診で「少し軽減」し,局所皮膚反応を呈した3例は,追加治療なしで8~20週後にはいずれも「著しく軽減」,組織診では完全消失し,イミキモドの遅発効果と考えた。最終的に15例中14例(93.3%)を有効と判定した。効果判定時期は,治験に基づき塗布終了後8週時を基準とし,症例によっては組織診による効果判定を前提に経過観察期間のさらなる延長を考慮してよいと考えた。

  • 嶋 智子, 古川 福実, 山本 有紀
    2017 年 31 巻 3 号 p. 244-248
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/03
    ジャーナル 認証あり

    52歳,女性。以前より右下腿外側に皮膚腫瘍を自覚していたが放置していた。徐々に増大してきたため2015年5月当科を初診した。右下腿に5×8cm大の潰瘍,悪臭を伴う易出血性の隆起性皮膚腫瘍を認めた。生検で悪性黒色腫の診断であり,PET-CTで肝・肺・リンパ節・皮下・筋肉内に転移ありStage IVの悪性黒色腫と診断した。血清5-S-CDは138 nmol/L(正常値1.5~8nmol/L)と上昇していた。ニボルマブ投与開始し,局所はMoh’sペーストを外用し縮小した。生検組織でBRAF遺伝子変異を認めニボルマブ1回投与後ベムラフェニブに変更したところ,8月のPET-CTで原発の集積は消失し,遠隔転移巣の集積もほぼ消失した。5-S-CDは18.3 nmol/Lまで低下したがLDHの上昇と右鼠径リンパ節増大のためprogressive diseaseと判断し,11月よりイピリムマブに変更した。頸部痛増強,口腔内腫瘍,右鼠径転移巣の増大のためイピリムマブ3コース終了後にベムラフェニブを再開した。再開後より速やかに口腔内腫瘍の縮小を認めた。

  • 松山 かなこ, 周 円, 加納 宏行, 田中 勝, 清島 真理子
    2017 年 31 巻 3 号 p. 249-254
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/03
    ジャーナル 認証あり

    症例は25歳,女性。16歳時から右環指爪に茶色の色調変化があった。19歳で初診,色素線条は右環指中央から小指寄りに幅5 mmで,爪表面は平滑で変形もなし。明らかな染み出しはないが,micro-Hutchinson signあり。爪部母斑と考えられたが,ごく初期のmalignant melanoma(MM)in situの可能性も否定できず,定期観察を開始。1年後,線条の一部分が濃くなり,幅6 mmと太くなったが,その後1年の経過で薄くなった。3年半の経過中,常に爪の表面は平滑。一時通院を自己中断していたが,出産後から線条が濃くなり,先端に亀裂を生じたため再受診。経過,ダーモスコピー所見から,MM in situと臨床診断し,切除術を施行。病理組織学的にもMM in situであった。経過を通じ,爪部の色調の変化を観察できたMM in situの1例をダーモスコピー所見とともに文献的考察を加え報告する。

  • 遠藤 恵, 種子島 智彦, 和田 秀文, 町田 大輔, 澤住 知枝, 立石 陽子, 古屋 充子, 相原 道子
    2017 年 31 巻 3 号 p. 255-260
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/03
    ジャーナル 認証あり

    63歳,男性。初診の3年前に右背部に色素斑が出現し,結節を形成した。3年後全切除し悪性黒色腫の診断となった。術後DAV−Feron療法を2コース施行したが,同年右腋窩リンパ節転移を認め,リンパ節郭清術を施行した。その後DAC−Tam療法を3コース施行し,IFN−β局注を2週間に一度継続した。半年毎の画像評価で,再発なく経過していた。術後9年目に呼吸困難が出現し,救急搬送先で右房内腫瘍を指摘された。開胸腫瘍摘出術が施行された際,小結節が心臓に多発しており術中迅速病理組織検査で悪性黒色腫心臓転移の診断となった。悪性黒色腫の心転移は全身転移の一部として比較的多くみられるとされているが,自験例のように心転移のみでの再発例は極めて稀である。当院の過去15年間の悪性黒色腫患者で剖検が施行された9例のうち,心臓転移は5例でみられたが,すべて多臓器への転移であった。

  • 丹羽 宏文, 高橋 智子, 松山 かなこ, 周 円, 平川 明弘, 川島 啓佑, 宮崎 龍彦, 清島 真理子
    2017 年 31 巻 3 号 p. 261-267
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/03
    ジャーナル 認証あり

    65歳,男性。2007年左示指MP関節背面に紅色小結節が出現。2013年11月近医で全摘出,全層植皮術を受け,病理でBowen病と診断された。2015年5月に再発したため再受診。液体窒素療法を受けたが急激に拡大するため,8月当科紹介受診。生検の病理所見で紅斑部はBowen病,腫瘤部は肉腫様の所見であったため,2 cmマージンで筋膜を含め全摘出術,前腕橈側皮弁および分層植皮術を行った。全摘標本の病理検査で,紅斑部では表皮全層に異型ケラチノサイトがみられ,核分裂像,clumping cellが散見される。真皮内にも異型細胞が胞巣状に浸潤。腫瘤の充実部では表皮に異型細胞はなく,真皮全層に紡錘形の異型細胞が孤立性または小胞巣状に浸潤し,核分裂像や脂肪細胞様細胞,類骨様の好酸性基質を混じる。上皮成分と肉腫様成分から成ることからmetaplastic carcinoma(carcinosarcoma)と診断した。皮膚原発の本症は稀であるため文献的考察を加え報告する。

  • 大矢 和正, 田口 詩路麻, 梶 有貴, 丸山 浩, 藤澤 康弘, 中村 泰大
    2017 年 31 巻 3 号 p. 268-271
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/03
    ジャーナル 認証あり

    58歳,女性。30年間給油所に従事し,日常的に素手で給油ノズルに付着したガソリンを拭き取る作業を左手で行っていた。当時より両手指の紅斑や水疱形成を繰り返していた。初診1年前から左環指全体に腫瘤が生じ徐々に増大,爪甲の変形を伴った。左母指に落屑を伴う紅斑が散在し,中指では紅色局面が掌側に拡大,環指に糜爛と結節を伴う浮腫性紅斑と爪甲剥離症を認めた。左腋窩に腫大したリンパ節を2個触知した。左環指腹側から採取した生検組織の病理組織所見からSCC(squamous cell carcinoma)と診断した。自験例は,日光角化症や熱傷の既往がなく,砒素やコールタール,農薬を触れる機会もないことから,ガソリンによる慢性炎症が発症に関与したのではないかと考えられた。両手指の紅斑や水疱を伴い徐々に増大する腫瘤ではSCCを疑いにくい。慢性炎症では悪性化することを考慮し,問診で早めにガソリンのような化学物質の暴露を特定することでSCC発症に留意する必要があると考えた。

  • 山口 由佳, 飯野 志郎, 宇都宮 慧, 尾山 徳孝, 徳力 篤, 長谷川 稔
    2017 年 31 巻 3 号 p. 272-275
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/03
    ジャーナル 認証あり

    92歳,女性。5年前に左腰部の黒褐色局面から皮膚生検を施行され,脂漏性角化症と診断された。その後,腫瘤は緩徐に増大して出血を伴ってきたため当科を受診した。左腰部に,辺縁に褐色斑を伴う黒褐色局面があり,その内部に紅色腫瘤を認めた。病理組織学的に,紅色腫瘤の部分は有棘細胞癌であり,黒褐色局面の部分はクローン型の脂漏性角化症,褐色斑の部分は日光黒子であった。脂漏性角化症と日光黒子は同一スペクトラム上の疾患であり,自験例は,脂漏性角化症に合併した有棘細胞癌である可能性が高いと考えられた。

  • 朝長 絵理子, 永瀬 浩太郎, 木村 裕美, 井上 卓也, 成澤 寛
    2017 年 31 巻 3 号 p. 276-279
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/03
    ジャーナル 認証あり

    46歳,男性。下口唇の慢性円板状エリテマトーデス(DLE)の瘢痕部に急激に増大する腫瘤が出現し,病理組織学的に有棘細胞癌と診断した。選択的シスプラチン動注と放射線治療を行い,腫瘤は著明に縮小したが,その後右頸部リンパ節転移を認め,頸部リンパ節郭清術を行った。しかしその後,両側頸部,正中下顎リンパ節転移が出現し,S-1+シスプラチン投与,放射線治療を行うも両側腋窩リンパ節転移が出現した。腫瘍細胞が上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)強陽性であり,セツキシマブおよびパクリタキセルの併用療法を行ったところ,転移性病変は著明に縮小した。

第31回日本皮膚悪性腫瘍学会
  • 米倉 直美, 井上 卓也, 三砂 範幸, 新井 貴之, 横山 庫一郎, 成澤 寛
    2017 年 31 巻 3 号 p. 280-284
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/03
    ジャーナル 認証あり

    20歳代,女性。初診の1年前より背部の皮下腫瘤を自覚し,近医で表皮囊腫を疑われ経過観察していた。背部正中に5 cm大でドーム状に隆起する皮下腫瘤を認め,生検すると内部よりムチン様物質が排出された。病理組織学的所見で,小円形の腫瘍細胞が胞巣状に増殖し,腫瘍細胞はvimentinおよびCD99(MIC2)に陽性であった。細胞遺伝子学的検査で,染色体相互転座t(22;11)(q24;q12)を認め,融合遺伝子EWS/FLI-1の発現が証明された。他臓器に病変を認めず,皮膚原発骨外性Ewing肉腫と診断した。4 cmマージンを取り腫瘍切除術を行い,術後化学療法を施行した。治療終了後3年経過するも,再発転移を認めない。過去の報告と自験例より,皮膚原発骨外性Ewing肉腫は予後が良好であることが示唆された。

投稿論文
  • 野々垣 香織, 吉池 高志, 竹下 芳裕
    2017 年 31 巻 3 号 p. 285-289
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/03
    ジャーナル 認証あり

    69歳,男性。約20年前から腰痛等のため適宜,ときには連日鍼治療を受けていた。約10年前から背中に内出血のような痕があった。半年前から同部に腫瘤を形成し出血がみられ,近医での生検の結果有棘細胞癌と診断,当科を紹介された。初診時背部中央に50×50×7mm大,有茎広基性腫瘤を認めた。表面にはびらん,出血がみられた。切除のうえ,中間層植皮術を行った。腫瘤部基部すなわちL2-L3の正中部ならびに脊柱起立筋外縁に沿って鍼治療痕が無数に存在していた。当該部では苔癬様反応とそれに伴うメラニン顆粒の滴落を認めた。標準鍼治療を超えた回数・深さの打ち込みといった過大な物理刺激だけでなく,2次的な苔癬様反応も発癌に与っているのではないかと考えた。

  • 菅原 基史, 上原 治朗, 土井 春樹, 大石 泰史, 本間 大, 山本 明美
    2017 年 31 巻 3 号 p. 290-293
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/03
    ジャーナル 認証あり

    眉毛は表情表出に大きな役割を担っており,外傷や悪性腫瘍切除などにより生じた眉毛欠損は患者にとって精神的な負担が大きい。一方,悪性腫瘍の治療では根治性,再発防止のために十分なマージンをとっての切除が必要となるため,広範な眉毛部欠損を避け得ない症例が存在する。今回,我々は眉毛部の有棘細胞癌の切除術によって眉毛が欠損した2症例に対して,耳後部生え際から採皮した頭毛を含んだ全層植皮術により眉毛再建を施行した。再建された眉毛は自然な眉毛に近い毛流や毛の軟らかさをもち,整容的に満足できる結果が得られた。耳後部生え際の頭毛は眉毛と太さ,毛の柔らかさなどの性状が近く,手術痕は髪の中へ隠すことができるため優れた再建方法と考えた。

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