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大塚 藤男, 渡辺 亮治, 石橋 康正, 池 亨仁
1992 年 7 巻 1 号 p.
8-11
発行日: 1992/05/20
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
DAPI-DNA顕微蛍光測光を用いて細胞核DNA量の観点から, 悪性黒色腫における radial and vertical growth phaseで悪性度の異なる細胞群が存在すること, 高発癌性疾患である汗孔角化症の皮疹部表皮の腫瘍性クローンが増殖, 発達し悪性化する過程を明らかにした。いずれも皮膚悪性腫瘍の多段階発展過程の一端を示すものと考えた。
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斎田 俊明
1992 年 7 巻 1 号 p.
12-22
発行日: 1992/05/20
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
悪性黒色腫の前駆病変としては, 色素細胞母斑が重視されており, 良性の母斑が dysplastic nevusなどの境界病変を経て悪性黒色腫へ進展すると考えられている。これに対し, 悪性黒色腫が
de novoに, すなわち良性の母斑類とは無関係に初めからmalignant melanoma
in situとして発生してくるという考え方もある。本稿では, 悪性黒色腫と色素細胞母斑の関係を詳しく検討した上で, 悪性黒色腫の大多数が
de novoに生じてくるという筆者らの考え方を記載した。
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林部 一人, 市橋 正光, 三島 豊, Soldano FERRONE
1992 年 7 巻 1 号 p.
23-25
発行日: 1992/05/20
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
黒色腫患者が,その経過中に認識し, 応答しうる黒色腫関連抗原の同定を, 培養黒色腫細胞より作成したcDNAライブラリーの患者血清によるスクリーニングで行った。同定されたcDNA clone (D-1) がコードするポリペプチドは, 約40Kdの分子量を有し, アミノ酸配列の解析によると既報告の蛋白とは相同性を示さず,新しいヒト悪性黒色腫関連抗原と思われる。
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済木 育夫
1992 年 7 巻 1 号 p.
26-32
発行日: 1992/05/20
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
癌の転移形成過程は癌細胞相互あるいは癌細胞と宿主の細胞 (特に血管内皮細胞, 免疫系細胞や血小板など) あるいは細胞外マトリックスなどの種々の生体成分との間の複雑な反応カスケードから成り立っており, これらの相互作用は癌細胞の転移形質の発現に重要な役割を果たしていると考えられる。最近, 多くの細胞接着に関与する分子およびその受容体が明らかにされつつあり, その制御ならびに分子機構が注目されている。従来, 細胞外マトリックスを構成する接着分子としてフィプロネクチンおよびラミニンなどが癌の転移と深く関係していることが示唆されてきた。私共は癌の転移とその形成過程における細胞接着分子およびその分子との相互作用に着目し, いくつかの接着ポリペプチド (特にフィプロネクチン由来の細胞認識配列RGD関連ペプチド) を用いて癌細胞の機能 (接着性・運動性・浸潤能など) を制御することにより, 癌転移の抑止とその機序を解明しようとする試みを行ってきた。本研究はさらに癌転移の防止あるいは治療に有効な薬剤開発の手がかりを与えるものと思われる。
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影下 登志郎, 山田 雅信, 吉井 章, 木村 達, 小野 友道, 荒尾 龍喜
1992 年 7 巻 1 号 p.
33-37
発行日: 1992/05/20
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
培養メラノーマ細胞表面上のICAM-1発現に対するIFNの影響を単クローン抗体を用いた間接結合試験で検討した。さらに培養液中に遊離したICAM-1分子をdouble determinant immunoassayで検討した。IFNは細胞表面上のICAM-1発現を30~200%増強したが, IFN-γが最もその作用が強力であった。遊離ICAM-1も同様に増加し, 数十倍にも上がった。このように大量のICAM-1がメラノーマ細胞表面から遊離することは, ICAM-1発現と患者の予後との関連上極めて重要である。
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市橋 正光
1992 年 7 巻 1 号 p.
38-44
発行日: 1992/05/20
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
紫外線発癌研究の現状と問題点を概説した。
歴史的にみれば紫外線発癌研究はまず太陽光線曝露と皮膚発癌の関連を明らかにする疫学調査からはじまった。次いで人工光源を動物皮膚に照射し皮膚癌誘発に成功した。1968年には太陽光曝露部皮膚高発癌の色素性乾皮症由来細胞がDNA損傷修復に欠損を持つことが明らかにされ, DNA修復と発癌の関連が注目された。1980年代に入ると, protooncogeneの活性化や突然変異およびsuppressor-oncogeneの欠落が化学発癌物質やイオン化放射線照射で次々と見出され,UVでも同様のデーターが出はじめている。
一方, 紫外線照射マウスは同系の紫外線誘発皮膚癌を拒絶できない。従って, UVによりヒト皮膚でも同様, 免疫監視機構の抑制が示唆される。
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二階堂 修
1992 年 7 巻 1 号 p.
45-49
発行日: 1992/05/20
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
254nmの紫外線はヒト細胞の遺伝子にcyclobutane型pyrimidine dimerと (6-4) 光産物を誘起する。一方, 300~320nmの紫外線は (6-4) 光産物をDewar型損傷に光異性化するため, 太陽光紫外線による損傷はpyrimidine dimerとDewar型損傷が主なものである。ヒト細胞に備わっているDNA修復能は皮膚がんの発生を抑制し, 発がんに必要な紫外線線量のしきい値を決定する。これら紫外線によるDNA損傷の生成が, がん遺伝子の活性化, がん抑制遺伝子の不活性化を惹起し, 発がんに至ると考えられる。
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ヒト唾液腺癌細胞
佐藤 光信
1992 年 7 巻 1 号 p.
50-57
発行日: 1992/05/20
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
癌細胞の分化誘導療法は, 白血病の治療法として最初開発され, その有用性が示唆されている。一方, 固形癌の分化誘導療法では神経芽腫, 消化器癌, 唾液腺癌において臨床試験あるいは前臨床試験の報告がなされている。
本稿においては, ヒト唾液腺癌細胞を用いて従来我々が行っている唾液腺における細胞分化の制御機構と唾液腺癌の分化誘導療法に関する研究について概括する。
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二瓶 義道, 金子 史男
1992 年 7 巻 1 号 p.
58-63
発行日: 1992/05/20
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
有棘細胞癌22例の炎症性浸潤細胞の状態を各種抗体を用いて, 免疫組織学的に検討した。その組織学的特徴からlichenoid reaction (LR) の存在の有無を指標としたところ, 全体にLR陰性群で各抗体による陽性細胞数が減少していた。浸潤細胞の分布パターンから, 5つの類型に分けられた。全体に浸潤細胞が減少しているパターンと, T細胞のみの浸潤が多く, 他の細胞は減少しているパターンとを示すものがLR陰性群に多かった。
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佐藤 俊宏, 寺師 浩人, 片桐 一元, 高安 進, 影下 登志
1992 年 7 巻 1 号 p.
64-68
発行日: 1992/05/20
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
今回我々は, 以下の特徴を有する悪性黒色腫の1例を経験した。
1) リンパ節転移を初発症状とし, 剖検によっても原発巣を確認できなかったこと。
2) メラニン含有細胞を認めないこと。
3) ドーパ反応, マッソン-フォンタナ染色HMB-45: 陰性; 電顕でメラノゾームを認めないこと。
4) 12種のヒトメラノーマ関連抗原に対する抗体に陽性であること。
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山本 信二, 磯部 智子, 高岩 堯
1992 年 7 巻 1 号 p.
69-72
発行日: 1992/05/20
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
89歳女性。右頬部の鶏卵大の紫紅色ドーム状腫瘤と右頚部リンパ節転移を認めた。遠隔転移は認めなかった。組織学的にはtravecular patternを示し, 免疫組織化学的にはNSE陽性で, 血清NSE値も高値であった。電顕的にはdense core granuleを認めた。電子線照射にてほぼ瘢痕治癒するも, DIC併発し初診より2ヵ月後に死亡した。死亡直前に, 逆側の左耳下腺部と左下顎部に転移性皮下腫瘤が出現した。
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柳川 茂, 大隅 正義
1992 年 7 巻 1 号 p.
73-77
発行日: 1992/05/20
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
メラノーマ大量DAV療法によると思われた死亡2例につき報告した。症例1; 52歳, 男性。鼻腔メラノーマ, 頚部転移, DAV-P, 3クール (DTIC 4000mg, ACNU 1000mg, VDS 4mg, peplomycin 120mg) 投与にて著効も, 肺炎にて死亡。症例2; 46歳, 男性。結節性メラノーマ, 腋窩転移, 自家骨髄移植を併用した大量療法 (DTIC 3600mg, ACNU 400mg, VDS 4mg) を施行したが, 肺出血にて死亡。大量DAV療法の副作用や今後の投与法などにつき若干の検討を加えた。
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谷口 章, 能川 昭夫, 高田 実, 橋本 猛彦, 木村 悟, 広根 孝衛, 池田 清延, 山下 純宏
1992 年 7 巻 1 号 p.
78-83
発行日: 1992/05/20
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
レックリングハウゼン病に合併した悪性神経鞘腫の2例を報告した。症例1は28歳の女性で, 悪性神経鞘腫は頚部右側の深部に存在していた。症例2は16歳の女性で, 腫瘍は骨盤腔内に存在していた。2例とも初回摘出術の3ヵ月後に再発した。なお, 1912年より1989年までの本邦報告例276例 (男性156例, 女性112例) について統計的観察を行った。KaplanMeier推定法による1年生存率は39.6%, 5年生存率は12.8%であった。
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高橋 和宏, 加藤 泰三
1992 年 7 巻 1 号 p.
84-86
発行日: 1992/05/20
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
症例は80歳男性, および75歳女性であり, おのおのに右足底, 左足背の結節を主訴に当科を受診した。いずれも疣贅状結節であり, 臨床的にverrucous carcinomaを考えたが, 病理組織学的にはボーエン病であった。PCR法により, 腫瘍組織からHPV-DNAの存在を検索したところ, 症例1においてHPV-16, 症例2ではHPV-18に特異的なDNAフラグメントが証明された。
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原 一夫, 久野 正博, 新田 悠紀子, 池谷 敏彦, 横尾 和久
1992 年 7 巻 1 号 p.
87-89
発行日: 1992/05/20
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
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湯浅 徹也, 大柳 聡, 橋本 健治, 中村 保夫, 谷口 芳記, 清水 正之
1992 年 7 巻 1 号 p.
90-93
発行日: 1992/05/20
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
腎腫瘍内への腫瘍内腫瘍転移を伴った, 鼻部に発生したMerkel cell tumorの1例を経験した。鼻部皮膚腫瘍は, 転移性腫瘍の可能性を考え全身検索を施行したところ, 無症候性に経過していた潜在性腎腫瘍が明らかとなり, 切除術を受けた。光顕的に, 腎腫瘍は大部分Grawitz腫瘍であったが, 一部には鼻部腫瘍と同じ好塩基性に強く染まる小型の腫瘍細胞塊を認めた。鼻部腫瘍は, 電顕にて腫瘍細胞内にfilamemtの集塊像, dense core granule, desmosome様構造を認め, 免疫組織学的にNeuron-specific enolase (NSE) 弱陽性, クロモグラニン, 抗ケラチン抗体陽性であったことから, Merkel cell tumorと考えた。
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白井 洋司, 百束 比古, 文入 正敏, 青木 見佳子, 梅田 敏彦
1992 年 7 巻 1 号 p.
94-96
発行日: 1992/05/20
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
症例は74歳, 女性。戦時中空襲により左眼球破裂。その後義眼を装着していたが義眼床の狭小化を生じたためMedian forehead flapおよびSubcutaneous flapで義眼床を形成した。術後1年4カ月で義眼床上壁に有棘細胞癌を生じたため腫瘍を摘出し前額島状皮弁にて再建した。
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坂村 律生, 石川 隆夫, 吉田 哲憲
1992 年 7 巻 1 号 p.
97-101
発行日: 1992/05/20
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
58歳男性。腎部慢性膿皮症より生じた, 直腸へ浸潤した有棘細胞癌の治療を経験したので報告した。腫瘍辺縁より3cm離して皮切し直腸切断術を施行した。術後, 放射線療法, 化学療法を施行した。術後5カ月経過したが再発等は認めていない。
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龍野 佐知子, 藤岡 彰, 浅井 俊弥, 衛藤 光, 内沼 栄樹
1992 年 7 巻 1 号 p.
102-105
発行日: 1992/05/20
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
87歳男性, 昭和56年に左第5足趾を有棘細胞癌の診断の下に切断。約10年の経過にて右第5足趾にも有棘細胞癌の発生をみる。臨床・経過・病理組織所見よりverrucous carcimomaと考えられた。
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橋爪 鈴男, 佐藤 光浩, 徳橋 至, 田所 衛, 木下 誠司, 原本 泉, 大倉 光裕, 溝口 昌子
1992 年 7 巻 1 号 p.
106-109
発行日: 1992/05/20
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
76歳, 男性。 右腋窩皮下腫瘤の一部およびリンパ節を他院にて切除した。1カ月後に同部を中心として紅斑が出現。さらに1カ月半後の入院時には右胸背部から右上肢にかけて浸潤性紅斑を認めた。組織性学的に真皮内に類円形から多形性で核の偏在する腫瘍細胞が集簇し, 細胞質内に封入体を認めた。免疫組織学的, 電顕的検討も加え, 腋窩皮下に原発し, 皮膚浸潤を呈したMalignant rhabdoid tumorと診断した。肺転移も認めた。
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佐々木 了, 吉田 哲憲, 杉原 平樹, 大浦 武彦, 深谷 徹, 古屋 和彦, 熊切 正信, 井上 和秋
1992 年 7 巻 1 号 p.
110-113
発行日: 1992/05/20
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
Epithelioid angiosarcoma (EA) は, 診断が難しく, しばしば他のcarcinomaやmelanomaとの鑑別が困難な疾患である。EAの本邦報告例はほとんどなく, また海外においてもEAの長期観察についての報告は非常に少ない。今回我々は, 26歳時に初発し, 左頬部皮膚の原発巣の切除後約15年 (腫瘍初発時から約26年) という長い経過の後に肋骨転移を来し, その1年後に死の転帰をとったEAの1例を経験したので報告する。
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末武 茂樹, 高橋 和宏, 松永 純, 熊坂 久美子, 谷田 泰男, 加藤 泰三
1992 年 7 巻 1 号 p.
114-116
発行日: 1992/05/20
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
症例は64歳, 男性。 喉頭癌, 下咽頭扁平上皮癌を合併した外陰部Paget病を報告した。外陰部Paget病と他の悪性腫瘍の合併はしばしば報告されているが, 扁平上皮癌との合併は比較的稀であり, 本症例は重複癌の定義を満たしていた。本症例はStageIIの外陰部Paget病であり, 両鼠径リンパ節の郭清と化学療法を施行した。外陰部Paget病の治療の際, 浸潤, 転移を伴う皮膚悪性腫瘍として対処していく必要性を感じた。
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石原 和之, 山崎 直也
1992 年 7 巻 1 号 p.
117-128
発行日: 1992/05/20
公開日: 2010/08/05
ジャーナル
フリー
The extravasation of cancer chemotherapeutic drugs is different from that of common drugs and causes the skin disorders. The skin disorders and vein damage caused by the extravasation bring sometimes serious problem for patients as anticancer drugs gain wider use. The main skin symptoms are erythema, swelling blister, erosion, ulcer, necrosis. These symptoms continue long-term and accompany with strong pain, which cause sleepless and mental suffering. Furthermore, it is impossible to use the anticancer drugs again by vein damage.
We devised the therapy of toxicities caused by the extravasation of anticancer drugs immediately after the extravasation or after the occurrence of skin symptoms, and favorable results were obtained in many patients.
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