皮膚の科学
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11 巻, 1 号
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研究
  • ―画像解析および免疫組織化学法による細胞外マトリックスの評価―
    樋上 敦, 湊 はる香, 政次 朝子, 若狭 朋子, 戸田 憲一, 堀口 裕治
    2012 年 11 巻 1 号 p. 68-74
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/25
    ジャーナル 認証あり
    Pasini-Pierini 型進行性特発性皮膚萎縮症の10歳,女性患者にて,画像解析を含む病理組織学的評価を行った。真皮の萎縮した病変部皮膚の画像解析による膠原線維の推定量では,正常部皮膚との間に有意な差を認めなかった。また組織化学的検査では,ヒアルロン酸結合蛋白の病変部での発現が,正常部と比べて膠原線維の周囲に多く認められ,フィブロネクチンの局在が正常組織では線維芽細胞内であるのに対し,病変部皮膚では線維芽細胞外に多くみられた。以上より本疾患における皮膚萎縮は,斑状強皮症など他の皮膚硬化性疾患と違い,膠原線維量の減少によるものではなく,膠原線維以外の細胞外マトリックスの代謝異常がその原因である可能性が示唆された。(皮膚の科学,11: 68-74, 2012)
症例
  • 巽 一啓, 亀井 利沙, 中井 大介, 馬渕 恵理子, 池上 隆太, 福田 俊平, 橋本 隆
    2012 年 11 巻 1 号 p. 75-81
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/25
    ジャーナル 認証あり
    62歳,男性。42歳頃に尋常性乾癬と診断。2010年8月頃に尋常性乾癬が増悪するとともに水疱が出現。同年11月2日当院紹介受診。初診時,全身に痂皮,緊満性水疱を伴う浮腫性紅斑が多発していた。抗 BP180 抗体陰性。病理組織学的には表皮下水疱を認め,浸潤している細胞はおもに好中球とリンパ球であった。蛍光抗体直接法は基底膜部に IgG,C3 の線状沈着を認めた。免疫ブロット法はヒトラミニン γ1 のC末端部位リコビナント蛋白で IgG が陽性。以上より尋常性乾癬に合併した抗ラミニン γ1 類天疱瘡と診断した。プレドニゾロン 60mg/day の投与にて水疱は消退し,20mg/day まで漸減後も再燃を認めていない。(皮膚の科学,11: 75-81, 2012)
  • 片山 智恵子, 渡会 晃, 前島 英樹, 勝岡 憲生
    2012 年 11 巻 1 号 p. 82-86
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/25
    ジャーナル 認証あり
    72歳,男性。特発性間質性肺炎の治療としてプレドニゾロン 15mg/日を3年間内服していたところ,体幹に紅斑が出現したため当科を受診した。尋常性乾癬と診断し外用療法で一旦軽快したが,1ヶ月後に発熱とともに全身に膿疱を伴った紅斑が急速に拡大し,汎発性膿疱性乾癬と診断した。エトレチナート内服により軽快したが,その後も少数の膿疱が出没し,エトレチナート内服に加えナローバンド UVB の照射を施行したところ膿疱は消失した。汎発性膿疱性乾癬の慢性期においてナローバンド UVB が奏効した報告例はあるが少なく,更なる症例の集積を要すると考える。自験例ではステロイド内服を含めた様々な誘因が疑われ鑑別を要した。(皮膚の科学,11: 82-86, 2012)
  • 奥山 歩美, 南 祥一郎
    2012 年 11 巻 1 号 p. 87-91
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/25
    ジャーナル 認証あり
    70歳代,男性。15年前より重症筋無力症に対しプレドニゾロンおよびタクロリムス水和物の投与を受けていた。右下腿内側に疼痛を伴う発赤と腫脹が出現したため当科を受診した。蜂窩織炎と考え抗菌薬の全身投与を行ったところ右下腿の症状は軽快したが,右大腿内側に帯状の紅斑が出現した。抗菌薬を変更したが改善せず,右大腿の広範囲に板状の硬結を伴う境界明瞭な紅斑が出現して一部は壊死し,拡大した。皮下脂肪組織および血液の微生物培養同定検査で酵母様真菌が検出され,墨汁染色では莢膜をもつ胞子が確認された。病理組織学的検査では真皮から皮下脂肪組織に多数の胞子様構造物を認め,PAS 染色は陽性であり,皮膚クリプトコッカス症と診断した。免疫抑制患者において蜂窩織炎様症状を診察した場合は日和見感染症である皮膚クリプトコッカス症を念頭に置かなければならない。(皮膚の科学,11: 87-91, 2012)
  • 高橋 聡文, 中西 元, 藤本 徳毅, 田中 俊宏, 重田 雅代
    2012 年 11 巻 1 号 p. 92-95
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/25
    ジャーナル 認証あり
    26歳,男性。顔面に 3×1cm の波動を伴うなだらかに隆起する嚢腫状の病変を認めた。発赤,腫脹はみられたが,局所熱感はなかった。皮膚生検ではリンパ球を伴う肉芽腫様の炎症反応を認め,膿の細菌培養からは Runyon 分類IV群の迅速発育抗酸菌のコロニーを認めた。DNA-DNA ハイブリダイゼーション法では反応する菌種を同定できなかったが,抗酸菌特異的配列を標的とするプライマーを用いたシークエンス法で確定された塩基配列は,BLAST 検索で Mycobacterium fortuitum の配列に一致した。レボフロキサシンとミノサイクリンの内服を2ヶ月継続し,皮下の嚢腫状の病変は消失し,局面のみとなった。その後2年半再発はない。DNA-DNA ハイブリダイゼーション法のみでは,抗酸菌の菌種によっては偽陰性を示すことがあるため注意を要する。(皮膚の科学,11: 92-95, 2012)
  • 眞鍋 泰明, 生駒 憲広, 加藤 正幸, 赤坂 江美子, 田宮 紫穂, 松山 孝, 小澤 明, 中村 英子, 宮坂 宗男, 若林 孝幸
    2012 年 11 巻 1 号 p. 96-102
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/25
    ジャーナル 認証あり
    症例1:20歳代,男性。5年前に皮膚筋炎と診断され,ステロイドおよびアザチオプリンにより加療されていた。右上肢に皮下膿瘍が出現し,膿汁より Mycobacterium chelonae(以下,M. chelonae) を同定した。切開排膿およびデブリードマンと洗浄,8週間の CAM(クラリスロマイシン)内服で5ヶ月後に治癒した。症例2:50歳代,男性。尋常性天疱瘡に対し,5年来のステロイド内服に加え,血漿交換療法,各種免疫抑制療法を施行していた。転倒で右足背を受傷し,その6ヶ月後,受傷部位に皮下硬結が出現した。皮膚生検を施行し,組織より M. chelonae を同定した。CAM 内服を27週間継続したが,皮下結節の増数あり,PUFX(プルリフロキサシン)内服を追加,その後,1年2ヶ月増悪なく経過している。症例1,2ともに,原疾患に対する治療による免疫抑制状態に生じており,病変は皮膚に限局していた。症例2では完治に至っておらず,抗菌薬治療には限界があると考えた。M. chelonae 感染症の本邦既報告例の治療法をまとめ,薬剤感受性試験についても考察を加えた。(皮膚の科学,11: 96-102, 2012)
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