皮膚の科学
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15 巻, 3 号
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治療
  • 国本 佳代, 古川 福実, 山本 有紀
    2016 年 15 巻 3 号 p. 101-106
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル 認証あり
    非固着性ガーゼは様々な種類のものがあるが,おもにその使用目的はガーゼ交換の際の出血や疼痛緩和,および組織損傷の軽減である。今回我々は非固着性創傷被覆・保護材(ウルゴチュール®,日東メディカル株式会社,大阪,日本)を糖尿病性潰瘍や下腿潰瘍,悪性腫瘍などに使用し,疼痛緩和,上皮化や浸出液の二次ドレッシング材への吸収などにつき良好な経過を得た。また,皮膚欠損創20例に対するメッシュスキングラフトなどの植皮術を行う際に植皮の母床および植皮片とガーゼとの固着を防ぐ目的で非固着性創傷被覆・保護材(ウルゴチュール®)を使用したところ,生着率は75%から100%であった。全例に植皮前後で創部培養検査を行い,細菌叢の検索を行ったがウルゴチュール使用後の創部において菌が検出された症例のほとんどが常在菌であり,非固着性創傷被覆・保護材(ウルゴチュール®)使用下において,感染リスクの上昇は示唆されなかった。(皮膚の科学,15: 101-106, 2016)
症例
  • 山口 明彦, 藤本 徳毅, 南 志乃, 本田 真一朗, 加藤 威, 鵜飼 佳子, 堤 泰彦, 田中 俊宏
    2016 年 15 巻 3 号 p. 107-111
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル 認証あり
    70歳代,女性。2011年頃に左外眼角部に小結節が出現し,徐々に増大してきた。皮膚生検で基底細胞癌と診断されたが,外科的切除は希望しなかった。舌癌(pT2N2M0 stage III)のリンパ節節外浸潤に対し放射線療法と Cetuximab 投与を開始されたところ,基底細胞癌は縮小した。Cetuximab の副作用により投与を終了してからは,基底細胞癌は再び増大してきた。本人の同意が得られたため外科的切除を行い,その後基底細胞癌の再発は認めていない。Cetuximab は上皮成長因子受容体(EGFR)に対する分子標的治療薬であり,本邦では EGFR 陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌に加えて頭頸部癌に対する適応が承認されている。海外では切除不能の有棘細胞癌に対して第II相試験で有効性が示されており,本邦での臨床応用が期待される。基底細胞癌の発癌機序には Hedgehog 経路の関与が重要とされているが,EGFR により活性化される mitogen-activated protein kinase 経路は Hedgehog 経路と共同して細胞の癌化に関与するといわれている。Cetuximab は RAS 遺伝子の変異があると治療効果がないため,EGFR 陽性で RAS 遺伝子に変異がないことを確認できれば基底細胞癌においても Cetuximab の効果が期待できるものと思われる。(皮膚の科学,15: 107-111, 2016)
  • 殿岡 永里加, 渡辺 秀晃, TARIKCI Nagihan, 末木 博彦
    2016 年 15 巻 3 号 p. 112-118
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル 認証あり
    30歳代,女性。急性痘瘡状苔癬状粃糠疹(PLEVA)に対しジアフェニルスルホン(DDS)50mg/日内服を開始38日後に全身の紅斑,発熱,リンパ節腫脹が出現した。DDS による薬剤性過敏症症候群(DIHS)の可能性を考え薬剤を中止し,ステロイド全身投与を開始した。経過中白血球増多,肝機能障害,human herpesvirus(HHV)-6 の再活性化を認めた。紅斑は3週間ほど遷延したが,徐々に白血球数,肝機能障害ともに改善し,当初から続いていた PLEVA の皮疹も改善した。DDS の DLST は陽性であった。本症例を DIHS と診断した。DDS による本症本邦報告例および自験例でも認められた HLA-B*13:01 と DDS による DIHS の関連について考察した。(皮膚の科学,15: 112-118, 2016)
  • 森田 玲子, 内田 修輔, 高田 文香, 松田 洋昌, 大磯 直毅, 川田 暁
    2016 年 15 巻 3 号 p. 119-124
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル 認証あり
    60歳代,女性。3ヶ月前から口腔内にびらんが生じ,体幹にも紅斑が出現した。初診時,口唇,口腔粘膜,舌にびらん,背部に紅斑を認めた。血清抗デスモグレイン1抗体と抗デスモグレイン3抗体陽性,病理組織で基底層直上での水疱形成と水疱内棘融解細胞,蛍光抗体直接法で表皮角化細胞間に IgG の沈着を認め尋常性天疱瘡と診断した。ステロイド全身療法に抵抗性で,シクロスポリン全身投与と免疫グロブリン大量療法(intravenous immunoglobulin; IVIG)を併用して寛解した。経過中にステロイド性糖尿病,白内障,ミオパシーが発症し,切除困難な膵腫瘍が確認された。IVIG を反復投与し,ステロイドとシクロスポリン全身投与をできるだけ減量した。多臓器不全で死亡するまでの3年間に17クールの IVIG 療法を施行し,おおむね良好な寛解状態を維持できた。合併症や併発疾患のためにステロイドやシクロスポリンの減量を図りたい尋常性天疱瘡症例に対し,IVIG 反復投与が有用である可能性が示唆された。(皮膚の科学,15: 119-124, 2016)
  • 羽田 孝司, 夏秋 優, 山西 清文
    2016 年 15 巻 3 号 p. 125-129
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル 認証あり
    症例は40歳代,男性。嘔気と発熱に対してパブロン®Sゴールドを内服した翌日より全身にそう痒を伴う浸潤性紅斑が出現し,口唇のびらん,眼球結膜および眼瞼結膜の充血,角膜びらんを伴った。生検組織では強い表皮細胞の好酸性壊死と液状変性,表皮下水疱を認め,Stevens-Johnson 症候群(SJS)と診断した。ステロイドパルス療法で皮膚症状および眼症状は改善した。パッチテストの結果パブロン®Sゴールドとジヒドロコデインリン酸塩で陽性であり,ジヒドロコデインリン酸塩による drug-induced lymphocyte stimulation test(DLST)で stimulation index が319%であったため,自験例をパブロン®Sゴールドに含まれるジヒドロコデインリン酸塩による SJS と診断した。感冒薬には多数の薬剤が配合されていることがあるため,薬疹が疑われた場合には原因検索をしっかりと実施して,避けるべき薬剤を明確にしておくことが望ましい。(皮膚の科学,15: 125-129, 2016)
  • 藤原 碧, 中島 武之, 伏見 博彰
    2016 年 15 巻 3 号 p. 130-134
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル 認証あり
    20歳代,男性。約1年前からのそう痒などの自覚症状を伴わない頸部と上腕の紅斑を主訴に当科を受診した。初診時,前頸部と右上背部では不整形の,右上腕では Blaschko 線に沿った線状の,皮膚萎縮と周辺の脱色素斑を伴う赤褐色の紅斑を認めた。皮疹出現部位に外傷などの既往はなかった。血液検査所見では特記すべき異常所見はなかった。病理組織像で,角層肥厚と表皮の委縮を認め,真皮浅層の浮腫,中層での血管周囲性の炎症細胞浸潤と膠原線維の肥厚を認め,Lichen sclerosus et atrophicus(LSA)と診断した。LSA は閉経期前後の女性の外陰部から肛門周囲の白色局面として発症することが多く,Blaschko 線に沿って体幹や四肢に生じることは稀である。Blaschko 線に沿って LSA が生じた要因として,Blaschko 線上の表皮細胞あるいは線維芽細胞のモザイクが発症に関与している可能性があると考えた。(皮膚の科学,15: 130-134, 2016)
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