皮膚の科学
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19 巻, 2 号
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Dr.村田の Clinico-pathological notes
  • ― 点と線 ―
    村田 洋三
    2020 年 19 巻 2 号 p. 65-89
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/03
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    爪器官の構造に沿って色素性病変を理解するためには,教科書的記載の範囲では不十分である。 2 次元的には,爪床・遠位爪母の縦列するアーケード様構造,近位爪母の樹木状構造の理解が必須である。 爪母で産生される爪甲は,より近位の爪母からはより表層の爪甲が,より遠位の爪母からはより深層の爪甲が産生される。このため,爪甲の異常,特に色素性病変は 3 次元的に把握する必要がある。 さらに,継続的な爪甲産生によって数ヶ月単位の変化を総括的に観察できる。また,胎生期から乳幼児期にかけての爪母の拡大形式を考慮に入れることも必要である。つまり,時間軸を加味した 4 次元的理解が求められる。 (皮膚の科学,19 : 65-89, 2020)

研究
  • 石黒 暁寛 , 大嶋 雄一郎 , 竹尾 友宏 , 岩下 宣彦, 柳下 武士 , 高間 寛之 , 安藤 与里子 , 佐藤 有規奈 , 柴田 知 ...
    2020 年 19 巻 2 号 p. 90-96
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/03
    ジャーナル 認証あり

    ビラスチンは 1 1 回空腹時内服の非鎮静性の抗ヒスタミン薬であり,臨床的有用性および安全性が報告されている。空腹時内服の薬剤は他に少なく,患者の服薬コンプライアンスが懸念される。そこで,痒みを伴う皮膚疾患の患者67例に対してビラスチン内服前と内服 4 週後で評価し,服薬のタイミングやコンプラインス遵守状況によってビラスチンの効果に影響を与えるかどうかを痒み VAS および DLQI を用いて統計学的に評価を行った。就寝前に内服した群とそれ以外の群では両群とも痒み VAS の有意な改善を認めた(Wilcoxon 符号付順位検定)。コンプライアンス遵守群(食前 1 時間以上もしくは食後 2 時間以上での服用)と非遵守群のいずれの群も痒み VAS および DLQI の有意な改善を認めた(Wilcoxon 符号付順位検定)。また,コンプライアンス遵守群と非遵守群において,痒み VAS および DLQI の改善効果に差はなかった(Student t 検定)。ビラスチンは薬物動態の観点から食後よりも空腹時内服が適切とされている。本研究により,薬物動態に関わらず,臨床的には食事と内服の間隔を気にしすぎなくてよい可能性が示唆された。 (皮膚の科学,19 : 90-96, 2020)

  • 大嶋 雄一郎 , 石黒 暁寛 , 柴田 知之 , 内田 理美, 佐藤 有規奈 , 安藤 与里子 , 高間 寛之 , 岩下 宣彦 , 柳下 武 ...
    2020 年 19 巻 2 号 p. 97-105
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/03
    ジャーナル 認証あり

    ビラスチンは抗ヒスタミン薬としては馴染みのない空腹時投与が用法で規定された薬剤である。治験時には空腹時を食前 1 時間以上かつ食後 2 時間以上の間隔として規定していた。本研究では,ビラスチンの有効性を食事摂取量(多い順に食べ過ぎ,普通,腹八分,少し食べたと規定)と食事と服薬の時間差に注目して検討を行った。食事摂取量が普通群と腹八分群において日中・夜間の痒み VAS が有意に改善した。食べ過ぎ群と少し食べた群においても,ほぼ全例痒み VAS の改善を認めた。食べ過ぎ群では全例,食事摂取から服薬までの時間差が150分以上であった。患者は食事量が増えるとビラスチン内服までのタイミングが食後から長くなる傾向にあった。患者は食事摂取量に応じて適切にビラスチンを空腹時に投与したことが,痒み VAS の改善に繋がった可能性がある。普通群では食事摂取から服薬までの時間差が長いほど,痒み VAS が改善した。一方,腹八分群では食事摂取から服薬までの時間差にかかわらず,痒み VAS が改善した。食事摂取量が多い場合,ビラスチンの効果は食事の影響をより強く受ける可能性があり,食事摂取から服薬までの時間差を患者に提示した方がよいと考える。食事摂取量が少ない時は,患者の空腹感に合わせてビラスチンを内服しても治療効果を認める可能性がある。ビラスチンの有効性を上げるには食事摂取量に応じて食事と服用の時間差を適切に決定することが重要であると考える。 (皮膚の科学,19 : 97-105, 2020)

症例
  • 岡村 玲子 , 井階 幸一 , 塩山 久美 , 澤井 孝之 , 田久保 康隆
    2020 年 19 巻 2 号 p. 106-110
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/03
    ジャーナル 認証あり

    症例は74歳,男性。既往歴として50歳頃より重症筋無力症,68歳より胸腺腫があり,ステロイド剤と免疫抑制剤の内服治療を受けていた。69歳ごろより体幹などに瘙痒感の乏しい紅褐色斑を認めていたとのことであった。初診時には体幹,鼠径部に褐色調の鱗屑を伴う境界鮮明な類円形の紅褐色斑を認めた。KOH 直接検鏡で菌糸が確認された。皮疹の生検では角層内,角層下に真菌の菌糸が確認され,好中球よりなる膿疱が見られた。これらの皮膚症状より慢性汎発性浅在性白癬と診断し,ケトコナゾールクリームの外用を開始したところ皮疹は改善した。その後真菌学的検索により真菌はEpidermophyton floccosumE. floccosum)と同定された。E. floccosum は表皮菌属の糸状菌で人の体幹,鼠径部に落屑性紅斑を呈することを特徴とする。以前には集団発生を生じた報告もあったが現在は激減しており,報告は稀である。しかし依然として免疫抑制患者への感染には注意すべき菌である。本症例はステロイド剤等により免疫抑制状態にある患者に E. floccosum による汎発性浅在性白癬を生じたことが特徴である。 (皮膚の科学,19 : 106-110, 2020)

  • 植木 瑶子 , 植田 郁子 , 久米 典子 , 山﨑 文和, 神戸 直智 , 岡本 祐之 , 森勢 諭 , 中村 正孝
    2020 年 19 巻 2 号 p. 111-116
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/03
    ジャーナル 認証あり

    80歳,女性。免疫低下をきたす基礎疾患なし。右上肢と右腰背部の発疹を主訴に前医を受診。帯状疱疹の診断でファムシクロビル内服治療を受けたが,内服開始後 3 日目に食思不振・倦怠感が出現したために当科を紹介受診した。発熱や意識障害はなく,右肩から上腕の C4C5 領域と右腰部のTh10 領域に紅斑と小水疱の集簇があり,対側に散布疹を認めた。複発性帯状疱疹と診断し,入院の上アシクロビルの点滴加療を開始したが,皮疹は痂皮化したものの全身倦怠感は改善せず,右半身筋力低下と両側 C3 以下の温痛覚障害が出現した。髄液検査で髄液細胞数が増加し,頸椎造影 MRI で延髄∼C34 レベル頸椎にかけて高信号域を認めた。経過より水痘帯状疱疹ウイルスによる脳脊髄炎と診断し,アシクロビル倍量投与を合計 7 日間とステロイドパルス療法を合計 3 クール施行し,筋力・温痛覚は改善傾向を示した。しかし経過中の造影 MRI にて造影効果の増強がみられたため,アシクロビル倍量投与を再開し,ステロイドパルス療法を 1 クール併用した。アシクロビルは合計34日間投与後中止し,リハビリ目的に転院した。現在は近医で右上肢挙上困難と右肩の拘縮に対するリハビリを継続している。帯状疱疹性脊髄炎は免疫低下を引き起こす基礎疾患がなくても発症することがある。また脊髄炎による運動神経麻痺は神経予後が悪く,慎重な病状説明をする必要がある。 (皮膚の科学,19 : 111-116, 2020)

  • 久米 美輝 , 神谷 智, 猿喰 浩子
    2020 年 19 巻 2 号 p. 117-121
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/03
    ジャーナル 認証あり

    線状 IgA 水疱性皮膚症は,水疱性類天疱瘡と比較し悪性腫瘍合併率が高いことが知られているが,機序は不明である。我々は,声門上癌の経過中に線状 IgA 水疱性皮膚症を合併した症例を経験したので報告する。症例は76歳,男性。病期Ⅳの声門上癌に対し,放射線化学療法,リンパ節郭清術が行なわれた。術後約 5 ヶ月後に全身に水疱びらんが出現し,当科紹介となった。病理学的には表皮下水疱を認め,水疱内と真皮上層に好中球浸潤を伴っていた。また,免疫蛍光抗体法で表皮基底膜部にIgA C3 の沈着を伴っていた。以上より線状 IgA 水疱性皮膚症と診断した。プレドニゾロンとジアフェニルスルホン内服でびらんは上皮化したが,声門上癌のため永眠した。本症例はプレドニゾロンとジアフェニルスルホン内服にて加療した点と悪性腫瘍が発症に先立っていた点が特徴的であった。 (皮膚の科学,19 : 117-121, 2020)

  • 園村 真美 , 兪 明寿 , 大塚 俊宏, 谷崎 英昭, 黒川 晃夫 , 森脇 真一
    2020 年 19 巻 2 号 p. 122-126
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/03
    ジャーナル 認証あり

    症例は76歳,男性。数年前,右頬部に微小な紅色病変を自覚した。そのまま放置していたが,徐々に増大傾向を示したため当科を紹介となった。初診時,右頬部に径 3×4mm,高さ 4mm,疣状の紅色小結節を認めたため全摘出術を施行した。病理組織学的には表皮と連続して異型性に乏しい小型の腫瘍細胞が真皮内に増殖し,腫瘍内には小管腔が散見された。以上の臨床所見,病理組織学的所見より本症例を Pinkus 型のエクリン汗孔腫と診断した。1968年から2019年の間に本邦で報告された顔面発生のエクリン汗孔腫は,自験例を含め41例であった。顔面はエクリン汗孔腫の発生には比較的まれな部位ではあるが,顔面に発生した紅色隆起性病変をみた場合には,エクリン汗孔腫も念頭に入れて積極的に皮膚生検を実施すべきと考えた。 (皮膚の科学,19 : 122-126, 2020)

  • 田代 康哉 , 渡辺 秀晃 , 末木 博彦
    2020 年 19 巻 2 号 p. 127-132
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/03
    ジャーナル 認証あり

    症例 1 68歳,女性。透析歴19年。受診 1 ヶ月前より右下腿に掻破による潰瘍があることを自覚。 前医での外用治療で改善しないため当科を受診。右下腿に胡桃大の表面に血痂を付着した潰瘍を認め強い疼痛を伴っていた。潰瘍が徐々に増数・増大し calciphylaxis を疑い生検を行った。病理組織では脂肪織の細動脈に円心状の石灰沈着を認め同症と診断。症例 2 48歳,女性。原疾患は IgA 腎症。 透析歴18年。他院皮膚科で同症と診断。加療目的に当院腎臓内科に入院。両大腿に手拳大の潰瘍を認め強い疼痛を伴っていた。いずれもカルシウム(Ca)・リン(P)の調整,チオ硫酸ナトリウムの投与,外用療法を行い,症例 2 はデブリードマン後に人工真皮を貼付した。両症例とも上皮化を認めた。自験例では両症例とも血清 CaP の調整とチオ硫酸ナトリウムの静注が効果的であった。症例 2 は近位型であったが病変が限局的であり,十分なデブリードマンを行えたため軽快させることが出来たと推測した。 (皮膚の科学,19 : 127-132, 2020)

  • 岡本 麻希 , 塚田 鏡寿 , 森 ひとみ , 石井 英輔, 池上 徹栄 , 金井 美馬 , 金子 ゆき , 鈴木 利宏 , 濱﨑 洋一郎 ...
    2020 年 19 巻 2 号 p. 133-137
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/03
    ジャーナル 認証あり

    65歳,男性。約 3 年前に急性心筋梗塞を発症し経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention : PCI)を施行された。その後も 2 回の冠動脈造影検査を施行され,照射量は計 28 Gy であった。左上背部被曝部に急性放射線皮膚炎を生じたが,ステロイド外用治療等で治癒した。約 6 ヶ月前より同部位に軽度の瘙痒を伴う紅斑が出現し,15 cm 大の黄色壊死を伴う潰瘍へと進展した。慢性放射線皮膚炎として外用治療を受けるも改善はなかった。全身麻酔下に潰瘍と周囲の色素沈着が認められる部分を含めて浅脂肪織レベルでデブリードマンを施行したが,より広範囲な皮膚欠損となったことに加えて組織の血流が乏しく線維化が強かったため陰圧閉鎖療法を開始した。デブリードマン後の第21病日に分層植皮術を行い生着は良好であり再発もなかった。慢性放射線皮膚炎に対する治療の選択肢として陰圧閉鎖療法は有効であり,植皮術や皮弁形成術などの再建手術を組み合わせることで,治療成績の向上に繋がると考えた。 (皮膚の科学,19 : 133-137, 2020)

使用試験
  • 古橋(秋田) 茉里子 , 船本(財木) 香里 , 仲尾次 浩一 , 濱田 和彦 , 吉田 康弘 , 千葉 真美
    2020 年 19 巻 2 号 p. 138-143
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/03
    ジャーナル 認証あり

    乳幼児の皮膚は,成人と比較してバリア機能が未熟で乾燥しやすいため,保湿剤による日常的なスキンケアが必要である。そこで今回,両イオン性の両親媒性キトサン誘導体である部分ミリストイル化カルボキシメチルキトサン(PMCMC)を配合した O/W 型乳液を開発し,乳幼児28名を対象とした 4 週間の使用試験を実施した。皮膚所見(ドライスキンスコア),角層水分含有量は,試験開始時に比べて有意に改善し,対照として用いた W/O 型乳化製剤のヘパリン類似物質配合製剤と同等以上であった。被験者の保護者を対象としたアンケート調査でも両群の保湿関連項目の評価は高かった。 一方,使用感に関する項目ではヘパリン類似物質配合製剤に比べて PMCMC 配合乳液の評価が高かった。以上のことより,PMCMC 配合乳液は,高い保湿効果と優れた使用感を有し,乳幼児の長期的なスキンケアに用いる保湿剤として有用であることが示唆された。 (皮膚の科学,19 : 138-143, 2020)

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