皮膚の科学
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症例
  • 荒金 布真 , 坂井 浩志 , 藤本 学
    2024 年 23 巻 2 号 p. 87-92
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/06
    ジャーナル 認証あり

    67歳,男性。当科初診の 1 ヶ月前より右下腿に瘙痒を伴わない小結節が出現。原因不明の感染症が疑われ当院血液腫瘍内科より当科紹介となった。初回診察時,右足は暗赤色調に腫脹し,潰瘍を伴う小結節が散在し排膿がみられた。また,右下腿から右大腿にかけて同様の小結節が散在していた。併存するネフローゼ症候群に対してシクロスポリン 75 mg/日とプレドニゾロン 3mg/日を長期内服中であった。初診時,右足背の潰瘍部分のぬぐい液を細菌培養検査に提出し,右大腿部の結節を生検した。病理組織学的所見にて,真皮浅層に好中球や組織球を含む軽度の炎症細胞浸潤を認めた。一方真皮深層には肉芽腫が見られ,好中球を主体とする密な炎症細胞浸潤による膿瘍形成と多核のLanghans 型巨細胞が散見された。乾酪壊死像は認めなかった。さらに Grocott 染色,PAS 染色が共に陰性であった。皮膚病変部の抗酸菌培養検査により培養 4 週目に細菌の増殖を認め,遺伝子塩基配列分析により Mycobacterium haemophilum と同定し,最終的に同菌による皮膚非結核性抗酸菌症と診断した。治療としては抗菌剤の 3 剤内服療法が著効し(クラリスロマイシン 800 mg/日,シプロフロキサシン 400 mg/日,リファンピシン 450 mg/日), 3 剤内服開始 3 ヶ月後には右大腿,下腿の潰瘍が消失し,17ヶ月後に右足背の潰瘍もすべて消失したので内服を終了した。Mycobacterium haemophilum 感染症は稀に遭遇する疾患であるが,免疫抑制作用を呈する薬剤が頻用される現在において念頭に置くべき疾患と考えた。 (皮膚の科学,23 : 87-92, 2024)

  • 明石 愛子 , 織田 好子 , 後藤 彩 , 八木田 隼啓 , 永井 宏, 矢内 勢司 , 久保 亮治
    2024 年 23 巻 2 号 p. 93-96
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/06
    ジャーナル 認証あり

    症例は54歳,女性。右乳癌の術前薬物療法として約 9 ヶ月間,アロマターゼ阻害薬であるレトロゾールを投与し右乳房全切除術を行った。術後薬物療法としてレトロゾールの内服を再開したところ,開始10日後から両手掌足底に約 1cm大までの水疱を形成し,その後四肢・体幹に target lesion を多数認めたため,当科紹介となった。37.3度の微熱を認め,眼瞼結膜は充血していたが偽膜形成や角膜上皮欠損はなかった。紅斑の病理組織では表皮基底層の液状変性と表皮下水疱,個細胞壊死を認めた。レトロゾールの内服を中止し,同日よりプレドニゾロン 1 mg/kg/day の内服を開始したところ,皮疹は徐々に消退した。プレドニゾロンを漸減し44日目で投与終了した。プレドニゾロン内服開始 5 日目に行ったレトロゾールの薬剤リンパ球刺激試験は陽性であった。臨床所見及び各種検査結果よりレトロゾールによる多形紅斑重症型と診断した。乳癌に対する治療はレトロゾールからアナストロゾールに変更されたが,内服後に手掌に皮疹が出現したとの訴えがあったため中止し,現在はタモキシフェンクエン酸塩で治療中である。アロマターゼ阻害薬は非ステロイド型とステロイド型に分類され,レトロゾールは非ステロイド型である。アロマターゼ阻害薬による薬疹は稀であり,代替薬選択について考察を加え報告する。 (皮膚の科学,23 : 93-96, 2024)

  • 葉山 友紀 , 窪田 泰子 , 加藤 敦子
    2024 年 23 巻 2 号 p. 97-102
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/06
    ジャーナル 認証あり

    症例 1 30歳女性,美容師。ヘアブリーチ中に顔面腫脹,蕁麻疹,呼吸苦,嘔吐,下腹部痛が出現した。プリックテストにて持参ブリーチ剤の as is10aq1 aq で陽性,過硫酸ナトリウム・過硫酸カリウム・過硫酸アンモニウムの 1 aq0.1aq で陽性であった。ヘアブリーチ剤の過硫酸ナトリウム,過硫酸カリウム,過硫酸アンモニウム成分によるアナフィラキシーと診断した。症例 2 40歳女性。ヘアブリーチ中に手足・前額部・耳部・頚部に瘙痒性皮疹,呼吸苦が出現した。プリックテストにて,持参ブリーチ剤の as is10aq で陽性であり,ヘアブリーチ剤によるアナフィラキシーと診断した。症例 1 は美容師であったが,ブリーチ剤との接触を避けるよう指導し,エピペンを処方することで,現在も仕事を続けられている。ヘアブリーチ剤による接触蕁麻疹・アナフィラキシーは,本邦において論文 3 例,会議録 5 例と少数であるが,近年ブリーチ剤の使用が増えており,今後さらに報告が増えていく可能性がある。ブリーチ剤による接触蕁麻疹やアナフィラキシーについて注意を要するとともに,啓発活動を要すると考える。 (皮膚の科学,23 : 97-102, 2024)

  • 小林 里佳 , 岡本 千明 , 藤本 友紀 , 伊藤 眞未, 寺井 沙也加 , 槇村 馨 , 細川 宏 , 清原 隆宏
    2024 年 23 巻 2 号 p. 103-109
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/06
    ジャーナル 認証あり

    55歳,男性。初診の半年前から背部に痒みを伴う黒色斑を自覚した。前医の皮膚生検によりメラノーマが疑われ,当科紹介受診となった。当科初診時,背部中央やや左側に 10×8mmの濃淡不整な黒色斑を認めた。前医および当科での皮膚生検では異型母斑かメラノーマかの確定診断が困難であった。全体像の評価目的で,残存病変に対して 5mmマージンで全摘出術を施行した。CTPET-CT では明らかな転移所見は認めなかった。全摘標本の病理組織では基底層から有棘層にかけて紡錘形あるいはパジェット細胞様の異型メラノサイトが個別性に増殖していた。表皮突起は不規則に延長癒合し,真皮には炎症性細胞浸潤や線維化を伴っていた。腫瘍細胞は S100 蛋白,HMB45MelanAPRAME で陽性,p16 は部分的に欠失していた。Ki-67 index は約30%であった。BRAF V600E 変異を認めた。生検標本では異型母斑との鑑別が困難であったが,全摘標本にて表在拡大型黒色腫の診断が可能であった。術後11ヶ月現在において,再発転移を認めていない。 (皮膚の科学,23 : 103-109, 2024)

  • 岡本 拓希, 金久 史尚 , 宮下 文
    2024 年 23 巻 2 号 p. 110-114
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/06
    ジャーナル 認証あり

    50歳,女性。新型コロナウイルスワクチン(コミナティ筋注R Pzer/BioNTech 社) 4 回目の接種 5 日後に四肢に紅斑が出現した。その後,紅斑は全身に拡大し,ワクチン接種から 9 日後に 38°C 台の発熱を認め,当科を紹介され受診した。四肢・体幹部に融合傾向の浮腫性紅斑と下腹部や腋窩に非毛孔性の微小な膿疱を認め,血液検査では好中球優位の白血球増多と CRP の亢進を認めた。膿疱部の培養,血液培養検査とも陰性であった。下腹部膿疱部の病理組織では角層内から角層下に好中球を中心とした炎症細胞浸潤と真皮浅層の浮腫,血管周囲と間質に炎症細胞浸潤を認め,好酸球が散見された。新規開始薬剤が無かった事から,COVID-19 ワクチンによる急性汎発性発疹性膿疱症(acute generalized exanthematous pustulosis,以下 AGEP)と診断した。入院後,ステロイドパルス療法とプレドニゾロン内服療法を行い,皮疹は膜様落屑を伴って速やかに消退した。第14病日に退院し,プレドニゾロン内服終了後も再燃は認めていない。COVID-19 ワクチン接種後に AGEP を発症した症例は国内外から複数例報告されており,本症例もワクチンが発症に関与したと考えた。 (皮膚の科学,23 : 110-114, 2024)

  • 藤本 萌 , 益田 知可子 , 小林 佑佳, 原田 潤 , 藤森 なぎさ , 小澤 健太郎
    2024 年 23 巻 2 号 p. 115-119
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/06
    ジャーナル 認証あり

    62歳,女性。 1 年前からの左示指後爪郭の結節を主訴に当院を紹介受診した。初診時,左示指後爪郭に 6mm×2mmの色調不均一な不整形黒褐色結節を認め,ダーモスコピーでは irregular pigment networklinear arrangement of brown dotshomogeneous pigmentation を認めた。皮膚生検にて色素性ボーエン病と診断し,切除術・人工真皮植皮術を施行した。手術標本では腹側後爪郭断端で腫瘍細胞が確認されたため,追加切除術を施行し,以降 4 年間再発なく経過している。色素性ボーエン病はボーエン病の稀な亜型であり,ボーエン病全体の 2 %程度とされる。発症部位は手指や陰部が多く,ヒトパピローマウイルス感染症との関連が報告されている。色素性ボーエン病はその臨床所見が悪性黒色腫などの色素性病変と類似しているため,診断に苦慮することが多いが,ダーモスコピーが診断の手がかりとなる。手指に発生した黒色病変では,頻度はまれであるが,色素性ボーエン病を念頭にダーモスコピーを含めた詳細な観察を行う必要がある。 (皮膚の科学,23 : 115-119, 2024)

  • 沼田 礼良 , 大郷 真理子 , 中村 敬
    2024 年 23 巻 2 号 p. 120-124
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/06
    ジャーナル 認証あり

    72歳,女性。20XX3 月頃から特に誘引なく右上眼瞼の自覚症状を伴わない発赤腫脹が出現。近医で加療されるも改善せず, 4 月に当科紹介受診。初診時,右上眼瞼に限局する軽度の浸潤を触れる浮腫性紅斑を認めた。血液検査にて,抗核抗体が弱陽性。数年来内服中のロスバスタチンカルシウムが DLST 陽性。皮膚生検では,真皮網状層に主に血管周囲,軽度ではあるが付属器周囲にも軽度のリンパ球浸潤,真皮全層にムチン沈着を認めた。光線テストでは MEDMRD の低下はみられなかった。以上より,本症例を lupus erythematosus tumidus(以下,LET)と診断した。ステロイド外用薬に対し抵抗性。遮光指導,およびロスバスタチンカルシウムの他剤への変更後,半年ほどで消退した。LET は皮膚エリテマトーデスの中でも比較的珍しい病型の 1 つである。薬剤に起因するLET は非常にまれとされ,本症例はロスバスタチンカルシウムの関与が疑われたため,文献的考察を加えて報告する。 (皮膚の科学,23 : 120-124, 2024)

  • 木村 優香 , 益田 知可子 , 阿古目 純, 坂本 幸子 , 片岡 葉子 , 石田 裕
    2024 年 23 巻 2 号 p. 125-133
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/06
    ジャーナル 認証あり

    28歳,女性。初診 7 ヶ月前から手指の紅斑,びらんが出現し増加,更に顔,前胸部,腰背部の紅斑,口唇の有痛性びらんが出現し,当科紹介となった。血液検査では白血球減少とリンパ球減少,補体の低下を認め,抗核抗体1,280倍,抗 Sm 抗体陽性であった。皮膚病理組織検査にて表皮真皮境界部に強い空胞変性を認めた。2019ACR/EULAR の分類基準に従い全身性エリテマトーデス(SLE)と診断した。プレドニゾロン内服治療を開始したが皮膚粘膜症状の改善に乏しく,アニフロルマブの投与を行った。投与14日後には皮膚粘膜症状はほとんど消退し,アニフロルマブが皮膚症状に対し効果を示したと考えられた。しかし同時期に不眠の持続,自殺企図,精神症状が出現し他院膠原病内科へ転院し,ループス精神病と診断された。経過途中でこのような精神症状を呈した場合,ループス精神病を考慮に入れる必要がある。 (皮膚の科学,23 : 125-133, 2024)

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