皮膚の科学
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総説
  • 荒金 兆典
    2025 年24 巻4 号 p. 345-355
    発行日: 2025/10/06
    公開日: 2026/03/18
    ジャーナル 認証あり

    アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis,AD)は代表的な慢性再発性のアレルギー性皮膚疾患であり近年その治療法の進歩が目覚ましい。その代表例が近年「新たに」導入された生物学的製剤の普及であろう。その臨床効果や有害事象などの臨床データはリアルワールド試験の結果として蓄積,公開され,これが使用拡大の原動力となっている感がある。この論文においては AD という未だ全体像が完全には明らかではない多因子疾患におけるサイトカインの役割,とりわけ重要な治療標的の一つであるインターロイキン13に関しての免疫病理学的役割について総説した。さらに少なくとも臨床皮膚科においては,「デコイ」受容体と呼ばれその機能の詳細があまり注目されていない感のあるインターロイキン13受容体 α2 の生物学的機能と皮膚科学的役割に関して詳述した。(皮膚の科学,24 : 345-355, 2025)

症例
  • 鈴木 玲奈, 村田 光麻, 南 祥一郎, 吉岡 友梨香, 石原 朋典, 横山 聡子, 渡辺 奈津, 林 秀樹, 和田 吉弘, 井上 裕香子, ...
    2025 年24 巻4 号 p. 356-362
    発行日: 2025/08/06
    公開日: 2026/03/18
    ジャーナル 認証あり

    症例は70歳,男性。6年前から四肢に紅斑や丘疹が出現していた。2年前から前額部の暗赤色紅斑が出現し増悪した。初診時,前額に脳回状の浸潤局面,鼻根部に浸潤性紅斑,後頸部や体幹部は皺を避けるような苔癬化と暗赤色斑を認めた。鼻根部の皮膚生検で異型リンパ球や表皮向性を認めず,成人発症アトピー性皮膚炎ないし湿疹続発性紅皮症と診断した。デュピルマブを投与したところ皮疹は急激に増悪し,末梢血に27%の異型リンパ球を認めた。セザリー症候群を疑ったが,末梢血の TCRβ 鎖遺伝子再構成,フローサイトメトリーにおいて単クローン性を認めず否定的であった。デュピルマブを中止すると,異型リンパ球は検出されなくなり,皮疹は改善したものの紅皮症状態は続いた。ナローバンド UVB 療法の追加により寛解が得られた。自験例は病理組織学的証拠を欠くが,異型リンパ球の出現を伴う皮疹の一過性の増悪は2023年に報告された,「デュピルマブに対する反応性リンパ球増殖」と類似した病態と考えた。(皮膚の科学,24 : 356-362, 2025)

  • 香川 奈菜, 中嶋 千紗, 臼居 駿也, 加藤 麻衣子, 大塚 篤司
    2025 年24 巻4 号 p. 363-368
    発行日: 2025/08/06
    公開日: 2026/03/18
    ジャーナル 認証あり

    83歳,女性。初診の4年前,他院にて右大腿の疣贅状腫瘤を有棘細胞癌と診断され,腫瘍切除術と全層植皮術が施行された。経過は良好であったが,初診の1 年前より植皮部周囲に浸潤を伴う紅斑と紅色丘疹が出現し,副腎皮質ステロイド外用剤治療に抵抗した。紅斑部からの生検により皮膚サルコイドーシスが疑われ,当科へ紹介となった。当科でも紅斑部の再生検を行い,類上皮細胞性肉芽腫を認めたため皮膚サルコイドーシスと診断した。さらに,他院における初回腫瘤部の病理組織標本を再検討したところ,表皮の偽上皮腫性過形成と乾酪壊死を伴わない類上皮細胞性肉芽腫が認められ,有棘細胞癌ではなくサルコイドーシスであった可能性が示唆された。皮膚サルコイドーシスは臨床像が多彩であり,疣贅型や過角化型を呈する場合,真皮浅層のみの生検では有棘細胞癌との鑑別が困難となることがある。本症例は,反応性偽上皮腫性過形成を伴う疣贅型皮膚サルコイドーシスが有棘細胞癌と鑑別が困難になり得ること,また術後の植皮部に紅斑が出現した際にはサルコイドーシスも鑑別に挙げるべきことを示す症例と考えた。(皮膚の科学,24 : 363-368, 2025)

  • 山下 達也, 西谷 恒星, 辻花 光次郎, 十一 英子
    2025 年24 巻4 号 p. 369-372
    発行日: 2025/07/10
    公開日: 2026/03/18
    ジャーナル 認証あり

    41歳,女性。X年4月,九州地方で外泊中に右足底の色素斑に気付いた。近医皮膚科を受診したが,診断困難のため,当院紹介受診となった。右足底に 10×10 mm の褐色斑を認め,ダーモスコピー所見は parallel ridge pattern であった。病理組織学的所見でメラノサイトの増加やメラニンの沈着は認めなかった。2週間後の再診時には自然消退しており,特徴的な臨床経過からカメムシによる皮膚障害と診断した。カメムシによる皮膚障害は体内から分泌されるアルデヒド類が角質に沈着することで形成され,足底の角質のターンオーバーは約16日のため,その間に色素斑は消退すると考えられる。足底に出現した parallel ridge pattern を示す色素斑をみた際には,カメムシによる皮膚障害の可能性を考慮し,悪性黒色腫など他疾患との鑑別のために2週間程度で自然消退するか経過をみることが有用と考えた。(皮膚の科学,24 : 369-372, 2025)

  • 山科 茉由, 岡本 千明, 小林 里佳, 津田 真里, 寺井 沙也加, 槇村 馨, 鈴木 健司, 清原 隆宏
    2025 年24 巻4 号 p. 373-379
    発行日: 2025/07/14
    公開日: 2026/03/18
    ジャーナル 認証あり

    78歳,男性。初診1年程前に左腹部の皮疹を自覚した。徐々に拡大し,初診8ヶ月程前から部分的に隆起を認めるようになった。初診時,左胸腹部に 20×11 cm 大,表面凹凸のある褐色局面があり,局面上に大小の隆起性結節を伴っていた。病理組織学的に,真皮では storiform pattern,fascicular pattern,一部に herring-bone pattern を示す線維肉腫様増殖領域を認めた。皮下脂肪織では honeycomb-like pattern を伴っていた。免疫組織化学染色では,線維肉腫様領域を含めて CD34 陽性であった。腫瘍細胞の10%が p53 を発現していた。病理組織学的所見より,線維肉腫様領域においても CD34 陽性であった線維肉腫型隆起性皮膚線維肉腫(FS-DFSP)と診断した。PET-CT では,所属リンパ節や他臓器転移を示唆する所見は認めなかった。画像検査にて腫瘍は皮下脂肪織レベルにとどまっていると判断し,側方は 1 cm マージン,深部は筋膜下レベルで全摘出術を施行した。FSDFSP では線維肉腫様領域で CD34 発現が減弱することが多いが,CD34 陽性例も多数報告があり必ずしも CD34 陰性とは限らない。FS-DFSP は通常の DFSP よりも悪性度が高く,CD34 の発現率にかかわらず,今後も慎重に局所再発や遠隔転移について観察が必要と考える。(皮膚の科学,24 : 373-379, 2025)

  • 奥山 智香子, 小泉 滋, 朱 樹李, 稲福 和宏, 細木 卓明
    2025 年24 巻4 号 p. 380-384
    発行日: 2025/07/14
    公開日: 2026/03/18
    ジャーナル 認証あり

    77歳,女性。6ヶ月前に左下腿に皮膚潰瘍が生じ,近医内科で保存加療を受けていた。同症状と発熱を主訴に救急搬送された。左下腿に 10×10 cm 大の穿掘性潰瘍を認め,壊死性軟部組織感染症や皮下膿瘍を否定し得ず,壊死組織のデブリードマンを行い,同時に皮膚生検を行った。病理組織学的所見では大小不同の核を有する異型リンパ球の浸潤を認め,免疫染色で CD3,CD56,granzyme B,EBER in situ hybridization が陽性であった。以上のことから節外性 NK/T 細胞リンパ腫,鼻型と診断とした。Prednisolone(PSL)30 mg,etoposide(VP-16)25 mg の内服および放射線療法を併用したが,全身の病勢のコントロールはつかず永眠した。節外性 NK/T 細胞リンパ腫,鼻型は比較的稀な疾患であり,しばしば診断に難渋する。難治性皮膚潰瘍をみた場合には,積極的な皮膚生検が望まれることを再認識した。(皮膚の科学,24 : 380-384, 2025)

  • 長尾 愛, 小倉 香奈子, 塩入 桃子, 望月 亮佐, 田井 志正, 長野 徹
    2025 年24 巻4 号 p. 385-390
    発行日: 2025/07/14
    公開日: 2026/03/18
    ジャーナル 認証あり

    皮膚筋炎様の皮疹を呈した成人 Still 病の47歳,女性症例を経験した。皮膚科受診時には頚胸部に浮腫性紅斑,背部に scratch dermatitis 様皮疹,手指に角化性紅斑を認めた。皮膚生検では表皮上層に個細胞壊死が散見され,液状変性は軽度であり,真皮の血管周囲には好中球,リンパ球を主体とした炎症細胞浸潤を認めた。Yamaguchi らの分類基準に基づき,成人 Still 病と診断した。治療抵抗性であり,ステロイドパルス療法,トシリズマブ,シクロスポリンを併用した。成人 Still 病の非定型疹は,persistent pruritic eruptions(PPE)と呼ばれる。蕁麻疹様,苔癬様,皮膚筋炎様など多様な臨床像を呈し,本症例の病理所見は,PPE の特徴と一致した。特に皮膚筋炎様 PPE は,治療抵抗性や予後不良因子となる可能性が指摘されている。成人 Still 病の診療において,定型的皮疹のみならず非定型疹とその病理組織学的特徴の理解が重要である。皮膚筋炎様皮疹を認めた際には,皮膚筋炎だけでなく成人 Still 病も鑑別疾患として考慮する必要がある。(皮膚の科学,24 : 385-390, 2025)

  • 川部 僚子, 竹原 友貴
    2025 年24 巻4 号 p. 391-397
    発行日: 2025/07/14
    公開日: 2026/03/18
    ジャーナル 認証あり

    33歳,女性。5年前から右頬部に痤瘡様の皮疹が出現し,その後,赤い発疹が持続した。初診時,右頬部に境界明瞭な紅斑を認めた。病理組織学的には表皮と毛包周囲に grenz zone があり,真皮上層から深部にかけて好中球や好酸球,形質細胞や組織球の浸潤,膠原線維の増加を認め,顔面肉芽腫と診断した。タクロリムス軟膏を外用したが,効果が乏しく,ジアフェニルスルホン 25 mg/day 投与を開始した。内服は有効だったが,皮疹は残存したため,100 mg/day まで漸増したところ,軽快傾向を示した。顔面肉芽腫は,臨床所見のみからの診断率は低く,診断に病理組織学的所見が重要である。治療法は未だ確立されていないが,ジアフェニルスルホンは治療選択肢の一つとなると考える。(皮膚の科学,24 : 391-397, 2025)

  • 矢野 花佳, 竹上 智也, 米倉 慧, 野村 尚史, 田中 諒, 吉田 和恵, 新関 寛徳, 椛島 健治
    2025 年24 巻4 号 p. 398-403
    発行日: 2025/10/27
    公開日: 2026/03/18
    ジャーナル 認証あり

    何らかの原因で皮膚が肥厚し,脳回転状の皺襞を示す状態を脳回転状皮膚という。今回われわれは,皮膚肥厚をきたす基礎疾患を認めない男性の頭部に,緩徐に進行する脳回転状皮膚を認め,原発性と診断した2例を経験したので報告する。症例1: 38歳,男性。7,8年前から後頭部の皺襞を自覚。顔面の皮膚肥厚やばち指はなかった。長管骨のレントゲン写真で骨膜性骨肥厚はなかった。頭部 MRI で下垂体腺腫は認めず,先端巨大症は否定した。HPGD 遺伝子,SLCO2A1 遺伝子に病的変異はなく肥厚性皮膚骨膜症は否定した。以上から原発性頭部脳回転状皮膚と診断した。症例2: 33歳,男性。3年前に頭頂部に皮膚皺襞を自覚。顔面の皮膚肥厚やばち指はなかった。長管骨のレントゲン写真で骨膜性骨肥厚はなかった。尿中プロスタグランジンE主要代謝産物が軽度上昇していたが,喫煙者で上昇するため病的意義はないと考えた。血液検査にて成長ホルモン(GH),ソマトメジンC(インスリン様増殖因子-1,IGF-1)は基準値内であり先端巨大症は否定した。HPGD 遺伝子,SLCO2A1 遺伝子に病的変異はなく肥厚性皮膚骨膜症は否定した。以上から原発性頭部脳回転状皮膚と診断した。原発性頭部脳回転状皮膚に特異的な所見はなく,診断に当たっては肥厚性皮膚骨膜症と先端巨大症などの続発性脳回転状皮膚を鑑別する。本報告では二次性脳回転状皮膚の原因について文献的に考察し,原発性頭部脳回転状皮膚の鑑別方法についてまとめた。(皮膚の科学,24 : 398-403, 2025)

  • 中泉 瞳, 福岡 美友紀, 清水平 ちひろ
    2025 年24 巻4 号 p. 404-409
    発行日: 2025/09/08
    公開日: 2026/03/18
    ジャーナル 認証あり

    症例1,54歳女性。初診数日前に左奥歯の疼痛を自覚し,その後左下口唇から下顎部,左耳前部や耳介にかけて紅暈を伴う水疱の集簇を認めた。左三叉神経第3枝領域の帯状疱疹の診断で入院し,アシクロビルの点滴治療を開始した。1週間後に退院したが,帯状疱疹発症から約3週間後に右顔面神経麻痺を発症した。症例2,73歳男性。初診2日前に左側頭部と下顎部から頚部にかけて水疱と紅斑が出現した。近医皮膚科にて帯状疱疹の診断を受け,バラシクロビルの内服治療が開始となったが,その後体幹・四肢にも皮疹が広がり,汎発性帯状疱疹として当科に紹介となった。入院後アシクロビル点滴治療を開始したが,その1週間後に右側優位の両側性顔面神経麻痺を発症した。両症例ともに Hunt 症候群の診断でプレドニゾロンによる治療が開始となり,いずれの症例も麻痺は2ヶ月以内に完全に回復した。通常,頭頸部帯状疱疹に伴う顔面神経麻痺は同側に出現することが多いが,ごくまれに対側に麻痺がみられることがある。この機序には,脳脊髄液を介する説,血行性・リンパ行性の伝播説,複数の神経節での再活性化説が提唱されている。特に症例2では汎発性帯状疱疹であったためウイルス血症が生じ,血行性にウイルスが伝播し,健側にも顔面神経麻痺が生じた可能性が考えられた。(皮膚の科学,24 : 404-409, 2025)

  • 佐藤 祥奈, 片岡 葉子
    2025 年24 巻4 号 p. 410-415
    発行日: 2025/08/18
    公開日: 2026/03/18
    ジャーナル 認証あり

    25歳,女性。顔面に浮腫性紅斑が出現し,約4ヶ月間複数の皮膚科でステロイドの内服・外用加療をうけたが悪化し当科を紹介受診。初診時,両眼瞼から頬部にかけて表面に融合性の膿疱をともなう境界明瞭な浮腫性紅斑を認め,前腕や手背にも小型の環状紅斑が散在していた。真菌直接鏡検では陰性であったが,頬部皮疹からの真菌培養により Microsporum canis(M. canis)を同定し,ITS 領域の遺伝子解析により確定診断に至った。皮膚生検では角層内に菌体と膿疱形成を認め,表皮基底層の液状変性,真皮血管周囲にリンパ球,形質細胞の浸潤を認めた。イトラコナゾール 200 mg/日2ヶ月間の内服加療によりすべての皮疹は治癒した。長期間飼育している患者宅の猫3匹に病変はなく,発症の1週間前に短時間接触した多数の脱毛斑や浸出液を伴う皮膚病変を有する野良猫が感染源と推測された。M. canis は動物好性の皮膚糸状菌であり,人間にとっては異種病原体であるため,感染により強い免疫反応を惹起しやすい。そのため,白癬に気づかれずステロイド加療が誤用され宿主の免疫反応が修飾され,異型白癬を呈することが少なくない。多様な臨床像と診断の難しさを十分に認識し,直接鏡検陰性であっても繰り返し鏡検や,真菌培養,皮膚生検を含む適切な検査に基づく正確な診断および早期治療を行うことが求められる。(皮膚の科学,24 : 410-415, 2025)

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