皮膚の科学
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3 巻, 4 号
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カラーライブラリー
綜説
  • 笹川 征雄
    2004 年 3 巻 4 号 p. 343-349
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/07/13
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    シックハウス症候群と化学物質過敏症が同義語とされたり,シックハウス症候群を化学物質過敏症に包括する概念があったりして混乱を招いている。混迷した状況で情報が発信され,臨床診断,基礎研究にまで深刻な影響を及ぼしている。両疾患の歴史的な経緯や概念を比較し,関連研究論文や自験例の総括から,住環境との因果関係,室内の揮発性有機化合物と症状に関する量-反応関係,症状や症状の再現性,病態・発症機序の違いなどから,両疾患は明確に区別される。化学物質過敏症の発症には,社会心理学的要因が関与し,心因性や精神科疾患の関与が深いと考えられる。シックハウス症候群の定義を,「住環境による健康障害である」とした。
研究
  • 高井 利浩, 池田 哲哉, 山本 哲久, 長野 徹, 近藤 眞史, 林 一弘, 上田 正登, 市橋 正光, 錦織 千佳子
    2004 年 3 巻 4 号 p. 350-355
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/07/13
    ジャーナル 認証あり
    我々の施設で1999年以降,センチネルリンパ節(SLN)の同定,生検を試みた皮膚悪性黒色腫患者18症例のまとめを報告した。原発巣は下肢が15例,上肢2例,背部1例であった。18例中16例で,SLNが採取できた。術前のシンチグラフィによるRI法の併用例はまだ少数にとどまるが,生検時の侵襲の軽減や,複数の所属リンパ節が予想される例での部位の決定に有用であった。しかし,より確実な同定,生検のためには我々が施行し得ていない術中ガンマプローブ法の併用が望ましい。SLNを転移陰性と判定した後,所属リンパ節や中枢側のリンパ節転移が出現した例は,現在までのところ経験していない。
  • 石野 章博, 浜田 千加, 龍田 周
    2004 年 3 巻 4 号 p. 356-361
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/07/13
    ジャーナル 認証あり
    健常女性37名の眉,上口唇および下腿の毛成長について,ビデオマイクロスコープを用い非侵襲的に観察した。成長速度が0.05mm/day未満の毛の比率は,眉53.7%,上口唇58.2%,下腿46.5%を占めていた。成長速度が0.05mm/day以上の毛を成長期とし,平均成長速度を解析した結果,眉0.16mm/day,上口唇0.09mm/day,下腿 0.16mm/dayであった。これらの結果を頭髪と比較すると,成長速度は遅く,かつ部位により差が認められた。また,欧米人の成長速度と比較すると,眉は同程度であるが下腿は低値を示し,人種差があることが示唆された。
症例
  • 麻生 和雄
    2004 年 3 巻 4 号 p. 362-373
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/07/13
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    良性黒色表皮腫では仮性黒色表皮腫をふくめて,いずれの病型でも,インスリン抵抗性が見られ,その高インスリン,高インスリン様発育因子により皮膚ケラチノサイトが増殖してpapillomatosis,すなわち黒色表皮腫を発症する。仮性黒色表皮腫では肥満と伴うことを特徴とする。肥満でのインスリン抵抗性はよく知られている。著者は仮性黒色表皮腫10症例を報告すると共に,そのインスリン抵抗性を仮性黒色表皮腫を伴わない肥満症例14症例と比較した。インスリン抵抗性はHOMA指数及び75gOGTT,前30分,120分後の血清インスリン値を測定した。IRは前者で明らかに後者より高い。仮性黒色表皮腫は体重減少と共に皮疹は消失する。したがって仮性黒色表皮腫ではその肥満により増幅されたIRが関与することは明らかで,ある場合は仮性黒色表皮腫患者での潜在性インスリン伝達系異常が肥満のIRによって顕現性となり発症することもありうると推定された。
  • 渡邉 理枝, 島田 洋子, 浜口 太造, 宋 寅傑
    2004 年 3 巻 4 号 p. 374-377
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/07/13
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    35歳,女性。発症時期不明。2002年9月,婦人科で肛門周囲の丘疹を指摘され当科へ依頼された。初診時,肛門周囲に径3mmまでの扁平隆起性白色丘疹が多発集簇。融合傾向はなく時々そう痒感を伴っていた。組織所見は,表皮内裂隙と裂隙内への棘融解細胞の出現を認め,円形体を含む異常角化細胞が多数出現。本症をDarier病と診断した。外用剤にて治療。経過中,夏季に増悪傾向を示した。自験例は限局性でありながら,左右対称性に皮疹が出現していた。
  • 藤井 啓子, 宗 弘, 荻野 慶太郎, 藤原 亨, 田辺 敏明, 岡本 真道, 弓削 堅志, 今泉 正仁
    2004 年 3 巻 4 号 p. 378-383
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/07/13
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    1歳5ヵ月女児,第1子。生下時より躯幹,四肢に米粒大から小豆大の小水疱・膿疱が散在性にみられた。外観上明らかな奇形はなかった。網膜下出血が生後3ヵ月間認められたが,自然消退した。小水疱の病理組織所見は表皮内水疱で,水疱内の主たる浸潤細胞は好酸球であった。水疱は生後10日過ぎまで増加し,末梢血好酸球数もピークとなった。生後1ヵ月には疣状苔癬部を認め,生後2ヵ月には色素沈着となった。本家系内に血族結婚はない。曾祖母,祖母世代5姉妹のうち3女,4女,5女およびその子,孫の4世代にわたり9人に本症発症を認めたが,重篤な眼,中枢神経,筋・骨格の合併症はなかった。祖母,母の姉,母,患児の頭頂部に脱毛を認めた。
  • 吉田 衣里, 前澤 明子, 福田 均, 若槻 真吾
    2004 年 3 巻 4 号 p. 384-387
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/07/13
    ジャーナル 認証あり
    56歳,男性。約20年前より両下腿に自覚症状を伴わない結節を認めていたが放置していた。急性心不全にて当院内科に入院した時に,甲状腺機能亢進症と診断され,皮疹の精査を目的に当科を受診した。両下腿に2倍手掌大,脳回転様の外観を呈する,指圧痕を残さない皮膚病変を認めた。皮膚生検にて真皮の膠原線維間に酸性ムコ多糖の沈着を認め,脛骨前粘液水腫と診断した。
  • 中井 菜美, 甲斐 裕美子, 井上 千津子
    2004 年 3 巻 4 号 p. 388-390
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/07/13
    ジャーナル 認証あり
    30歳,女性。12歳頃より右上肢に紅色の点状皮疹が出現し,緩徐に拡大した。自然消退はみられなかった。病理組織像では,真皮乳頭層に著明な毛細血管拡張像を認めた。炎症所見および出血所見は伴わなかった。臨床像および病理組織学的所見から,Angioma Serpiginosumと診断した。本症は稀な疾患であり,本邦では31例しか報告されていない。今回われわれは,典型的と思われる1例を経験したので,ここに報告する。
  • 池田 大助, 藤原 美智子, 東 耕一郎, 草壁 秀成, 清金 公裕
    2004 年 3 巻 4 号 p. 391-395
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/07/13
    ジャーナル 認証あり
    51歳,男性。左上腕伸側に直径10cm×8cm,高さ7cm,表面凹凸不整で一部にびらんを伴い,石灰化沈着物が付着した有茎性腫瘤を認めた。MRI像では浸潤傾向が強く,脂肪層を巻き込みながら一部筋膜を超えて浸潤する像を認め,腫瘍生検の病理組織所見では腫瘤は主に好塩基性細胞と陰影細胞で構成されており,好塩基性細胞巣には核異型や核分裂像も散見された。以上よりmalignant pilomatricomaと診断し,拡大切除術及び術後化学療法を施行した。Malignant pilomatricomaは特に初期の段階では悪性,良性の診断が困難で,過去の報告でも再発や転移によって初めて悪性と診断された例も少なくない。良性と診断し,単純切除した後も長期間経過観察し,再発するものには十分な拡大切除が必要である。
  • 松永 亜紀子, 高井 利浩, 上田 正登, 錦織 千佳子, 大林 千穂, 伴 政雄
    2004 年 3 巻 4 号 p. 396-400
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/07/13
    ジャーナル 認証あり
    46歳,女性。18年前,他院にて上口唇の皮膚腫瘍を切除。15年前から同部位に黄白色結節が再発し,増大した。初診時,上口唇中央部に15mm大の弾性硬の結節を認めた。病理組織学的には腫瘍は類上皮細胞,粘液産生細胞,その中間型の細胞より構成され,管腔形成や嚢腫形成を示した。mucoepidermoid carcinomaと診断し,外科的に切除した。皮膚科領域での本症報告は少ないが,口唇部の腫瘍の1つとして鑑別診断すべき重要な疾患である。
  • 涌田 あすか, 江川 形平, 門田 匡史, 西村 陽一, 本田 えり子, 松吉 徳久, 立花 隆夫, 香月 奈穂美, 奥野 知子, 鷹巣 晃 ...
    2004 年 3 巻 4 号 p. 401-406
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/07/13
    ジャーナル 認証あり
    57歳,女性。平成13年9月頃より左下腿外側に表面平滑な弾性硬の淡褐色腫瘤が出現し,徐々に増大した。臨床的に良性腫瘍と診断して国立京都病院で切除術を受けたが,病理組織所見より悪性黒色腫が疑われたため当科紹介となった。病理組織検査では真皮内に紡錘型細胞が充満しており,一部の細胞内にメラニン沈着を認めた。また,免疫染色所見でS-100(+),HMB45(-),Vimentin(+),Cytokeratin(-),CD34(-),Desmin(-),EMA(-),Factor XIIIa(-)であったことより,desmoplastic malignant melanomaと診断した。入院後のsentinel lymph node biopsyでは転移を認めず,全身検索においても異常を認めなかったためstage IIB(pT4aMoNo(sn),tumor thickness 7mm, no ulceration, UICC 2002)と診断し,拡大切除術および化学療法を施行した後,経過観察している。
  • 宮田 明子, 夏秋 優, 小倉 千香, 松本 晴子, 山西 清文
    2004 年 3 巻 4 号 p. 407-410
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/07/13
    ジャーナル 認証あり
    46歳,男性。平成15年3月下旬に,ホタルイカの生食をした。同年4月上旬より前胸部左側にそう痒感を伴う移動性の紅斑が出現してきたため,当科を紹介され受診した。初診時,前胸部左側に不整形で不規則な線状の浮腫性紅斑が存在し,一部に浸潤と紫斑を認めた。移動性紅斑の先端と紫斑部を皮膚生検したところ,紅斑先端部では旋尾線虫幼虫の虫体を認め,紫斑部では軽度の血管炎を認めた。皮膚生検後,皮疹は著明に改善した。
治療
  • 沼尻 敏明, 西野 健一, 石田 敏博, 松木 圭子, 貴島 顕二, 張 永紅, 奥田 良三
    2004 年 3 巻 4 号 p. 411-417
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/07/13
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    新設形成外科においてレーザー外来を開始したので外来患者の成績につき集計を行った。年齢,性別,部位,疾患,効果率,副作用につき検討を加えた。対象は106名でQスイッチアレキサンドライトレーザーにて治療した。内訳は,solar lentigines 31名(29%),外傷性刺青18名(17%),扁平母斑16名(15%),異所性蒙古斑13名(12%),太田母斑12名(11%),色素性母斑12名(11%),などであった。有効以上の成績を示したものは,solar lentiginesで58%,外傷性刺青72%,扁平母斑25%,異所性蒙古斑54%,太田母斑50%であった。また副作用の発現は16.4%で,内訳は色素沈着が9.1%,色素脱失が7.3%であった。
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