皮膚の科学
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8 巻, 3 号
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カラーライブラリー
症例
  • 天野 博雄, 山中 正義, 安部 正敏, 石川 治
    2009 年 8 巻 3 号 p. 297-302
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    重症,最重症アトピー性皮膚炎患者を対象にシクロスポリンマイクロエマルジョン前濃縮物(Cyclosporin micro-emulsion pre-concentrate,以下シクロスポリン-MEPC)短期内服療法の臨床症状およびそう痒に対する効果,さらに治療薬物モニタリング(Therapeutic Drug Monitoring,TDM)を含めて検討した。シクロスポリン-MEPC3.0mg/kg/日を1日2回朝食後および夕食後に1週間のみ内服した結果,シクロスポリン-MEPCは,臨床症状およびそう痒を明らかに改善させた。トラフ値は5例すべてが110ng/mL以下であり,AUC0-4(area under the concentration-time curve)はすべての症例で2000ng・hr/mL以上であり,Cmaxは700~1500ng/mLであった。シクロスポリン-MEPC短期内服療法は,重症のアトピー性皮膚炎患者治療において臨床症状と痒みを改善する効果の高い薬剤であると考えられた。
  • 渡辺 智久, 立松 美穂, 神谷 受利
    2009 年 8 巻 3 号 p. 303-307
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    87歳,女性。2006年6月頃から下腿に紫斑が出現した。初診時に皮膚生検を行い壊死性血管炎の所見を得た。MPO-ANCAが陽性であり,急速進行性糸球体腎炎も発症したことから,顕微鏡的多発血管炎と診断した。16日後の再診時まで無治療で経過を見たところ,紫斑は自然消褪した。その後,腎機能悪化により透析導入となったが皮疹の再燃はなかった。顕微鏡的多発血管炎に伴う皮膚症状は初発症状としての出現率は高くなく,自然消褪する場合があり,一般的に全身ステロイド療法によく反応するため,機会を逃すことなく皮膚生検を行うことが診断確定のため重要と考える。
  • 原田 潤, 羽白 誠, 桑江 朝二郎
    2009 年 8 巻 3 号 p. 308-312
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    症例は45歳の男性。帯状疱疹出現後にバラシクロビルとカルバマゼピンによる治療を開始したところ,約10日後に帯状疱疹に罹患した神経支配領域とその周囲を避けて播種状紅斑丘疹が出現した。帯状疱疹の消退時に行った皮膚生検では,帯状疱疹罹患部位は播種状紅斑丘疹部位と比較して炎症細胞の集簇は軽度であった。また,Langerhans細胞の減少も認められなかった。帯状疱疹罹患部位のLangerhans細胞数については様々な報告がある。帯状疱疹ウイルス感染によりLangerhans細胞における免疫機能が変化するとの報告もあり,自験例でもこれらの機序によって炎症反応が抑制された可能性がある。
  • 吉見 宣子, 夏秋 優, 山西 清文
    2009 年 8 巻 3 号 p. 313-317
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    症例は24歳,女性。ヘリコバクター・ピロリ除菌療法としてランサップ®を開始した。内服4時間後より両大腿にそう痒を伴う紅斑が出現し,その後全身に広がったため来院した。初診時,顔面を除くほぼ全身にびまん性の紅斑を認めた。プレドニゾロン20mg/日の内服加療を開始し,10日間で略治した。原因検索のために施行したパッチテストではランサップ®の構成薬(タケプロン®,クラリス®,アモリン®)のうちアモリン®(10%pet,30%pet)のみで24時間後,48時間後で陽性所見を得たが,薬剤リンパ球刺激試験はすべて陰性であった。以上より,自験例をランサップ®に含まれるアモキシシリンによる紅皮症型薬疹と診断した。
  • 大川 智子, 池澤 優子, 広門 未知子, 山根 裕美子, 猪又 直子, 相原 道子, 小川 英幸, 池澤 善郎
    2009 年 8 巻 3 号 p. 318-324
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    75歳,男性。既往歴に糖尿病と慢性閉塞性動脈硬化症がある。急性冠症候群,胆嚢炎,肝膿瘍にて入院中に心室細動を併発して心肺停止となり,CCUにて人工呼吸管理を受けていた。イミペネム・シラスタチン投与開始20日目に紅斑が出現したため同薬剤を中止し,メロペネム(MEPM)が開始された。その後も皮疹が拡大したため,MEPMを中止したが第7病日には全身の皮膚に広範囲にNikolsky現象を伴う浮腫性紅斑と水疱を認め,しかも皮膚生検によりextensive apoptosisによる表皮全層の壊死が認められたため中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis;TEN)と診断した。第7病日からステロイドパルス療法を行ったが皮疹の軽快をみず,第11病日から単純血漿交換療法(Plasma exchange:PE)を2日間連日で施行したところ,2日目終了後より皮疹は著明な改善を認めた。本症例のようなハイリスクのTEN患者においても,ステロイドパルス療法で軽快をみない場合には早期のPEの施行が有用であると思われた。
  • 林 真帆, 鈴木 聡, 橋本 隆, 堀口 裕治
    2009 年 8 巻 3 号 p. 325-330
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    81歳,男性。脳梗塞治療中の誤嚥性肺炎に対して塩酸バンコマイシンを投与した12日後に口腔粘膜を含むほぼ全身に融合傾向を持つ浮腫性紅斑が多発し,その中に大小の水疱が多数生じた。組織学的に表皮下水疱であり,蛍光抗体直接法で表皮基底膜部に沿って線状のIgAの沈着がみられ,1M食塩水剥離皮膚を用いた蛍光抗体間接法では表皮側に反応するIgA自己抗体が検出された。免疫ブロット法ではIgA抗体は230kDの分子量のタンパクに反応した。バンコマイシンにより誘発された線状IgA水疱性皮膚症と診断し,同薬剤の投与を中止してステロイド剤の内服を行ったところ,皮膚病変は速やかに消退した。本邦既報告6例のまとめをあわせて報告した。
  • 兪 明寿, 落合 宏司, 森脇 真一, 清金 公裕
    2009 年 8 巻 3 号 p. 331-335
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    60歳,女性。13歳頃より左肩部に存在していた弾性硬の皮疹が,3年前より拡大してきたため当科を受診した。初診時,左上腕外側から左肩部にかけて光沢のある幅2cmまでの帯状の硬化がみられ,左肩部には35mm×25mm,暗赤色で弾性硬の結節を認めた。血液検査では著変をみとめなかった。病理組織学的に真皮中層から下層にかけて,膠原線維の増生と血管周囲の炎症細胞浸潤がみられた。外傷の既往がないことと臨床像,病理組織像から本症例を線状強皮症と診断した。Blaschko線との関連について考察を加えた。
  • 太田 安紀, 水野 可魚, 岡本 祐之
    2009 年 8 巻 3 号 p. 336-339
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    57歳,女性。初診の3ヵ月前に左肘頭部の皮疹に気付いた。左肘頭部に直径約6mm大と4mm大の常色から淡紅色の可動性のよい結節を2個認めた。外傷の既往はなく,血液検査では脂質系を含め異常値はなかった。病理組織像では真皮内に肉芽腫性の病変があり,内部には紡錘形や円形の裂隙形成が見られ,それを巨細胞が貪食している像を認めた。偏光顕微鏡では重屈折性の板状結晶を認めた。以上より皮膚コレステリン肉芽腫と診断した。本疾患はこれまで自験例を含めて12例の報告があるが,肘頭部などの外的刺激を受けやすい部位での発症が多い。外的刺激により変性した組織から析出したコレステリン結晶に対する異物反応と考えられているが,現在のところ発症機序は明らかではなく,今後の症例の集積が期待される。
  • 加藤 威, 藤井 紀和, 永田 佳子, 古田 未征, 藤本 徳毅, 植西 敏浩, 田中 俊宏
    2009 年 8 巻 3 号 p. 340-344
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    56歳,男性。左鼠径リンパ節の腫脹があり,陰部Paget癌の転移と診断されて当科を受診した。病理検査と全身検索よりT3N1M1stageIVの陰部Paget癌と診断した。原発巣は2cm離して切除し,切除標本を用いてCD-DST(collagen gel droplet embedded culture drug sensitivity test)法による抗癌剤感受性試験を行った。術後,試験結果に基づいた化学療法と放射線療法の併用療法を行い,反応は良好であった。これまでの統計では,抗癌剤感受性試験で感受性がある薬剤が臨床で効果があるとは限らないが,感受性がない薬剤のほとんどは臨床でも効果がない事が示されている。抗癌剤感受性試験は,進行期皮膚癌に対し時には有用な検査であると考えた。
  • 松井 佐起, 種村 篤, 高橋 彩, 山中 隆嗣, 谷 守, 吉良 正浩, 片山 一朗, 田所 丈嗣, 磯ノ上 正明
    2009 年 8 巻 3 号 p. 345-350
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    悪性腫瘍の手術治療は現在縮小傾向にあり,合理的なリンパ節郭清の根拠としてセンチネルリンパ節生検(sentinel lymph node biopsy;以下SLNB)の有用性が提唱されている。近年,外科領域において蛍光色素法を用いたSLNBが行われるようになっており,今回我々は背部中央原発の悪性黒色腫において色素法と蛍光色素法(インドシアニングリーン;以下ICG)を併用しSLNBを試みた。症例は51歳,女性。約30年前より背部中央に小指頭大の黒色斑をみとめ,半年前より急速に増大,隆起し,初診時一部にびらんを伴ったドーム状の紅色結節と周囲の黒褐色小結節をみとめた。臨床的に背部原発の悪性黒色腫と診断し,拡大切除術を施行した。同時に蛍光色素法を用いたSLNBを行い,両側腋窩への微小転移を同定し得た。同リンパ節は青色色素では染色されておらず,蛍光色素法は比較的手技が簡便であり,放射線被曝のないSLN同定法として有用であると考えた。
  • 千代丸 康治, 錦織 千佳子
    2009 年 8 巻 3 号 p. 351-354
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    48歳,女性。約20年前に子宮頸癌に対し広範囲切除術,化学療法および放射線療法を施行された。2007年11月末頃から右大陰唇に常色から淡紅色の小丘疹が出現し,次第に増大して数も増加してきた。病理組織像では真皮乳頭層から浅層にかけて1層の内皮細胞で縁取られる拡張した管腔の増生を認めた。管腔壁の細胞はリンパ管内皮細胞の特異的なマーカーであるD2-40によって染色されたことにより,後天性リンパ管拡張症と診断した。本邦では過去35年間で調べ得た限り,自験例を含め74例の報告がある。比較的希な疾患であるため報告した。
  • 平野 亜由子, 岡崎 愛子, 福本 隆也, 浅田 秀夫, 釜本 智之, 山田 佳世, 樋口 万緑, 吉岡 章
    2009 年 8 巻 3 号 p. 355-360
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    新生児,女児。生下時より体幹と四肢に丘疹がみられ,翌日には水疱と痂皮が出現した。初診時,体幹と四肢に散在性に淡褐色痂皮を伴う丘疹を認めた。生検組織で真皮上層に腎臓型の核をもつ組織球様単核球が密に浸潤していた。免疫染色でS-100蛋白とCD1a,langerinが陽性であり,特異な皮疹からCongenital self-healing reticulohistiocytosisを疑ったが,画像上,胸腺腫大と肺病変を認めLangerhans 細胞組織球症多臓器多発型(Langerhans cell histiocytosis multi-system multi-site type)と診断した。プレドニゾロンを投与後,皮疹と肺病変は消退したが,胸腺腫大は変化を認めなかったため,生後4ヵ月から多剤併用化学療法を施行した。胸腺は一旦縮小傾向にあったが再増大し,再寛解導入療法を行ったところ現在は寛解状態を維持している。
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