68歳, 男性。全身皮膚の蚕痒を伴った色素沈着と疣贅を主訴として来院。初診時, ほぼ全身の皮膚は黒色化し, 所々に乳頭腫状増殖が見られた。特に, 顔面, 下背部から臀部, 肛囲は色素沈着が著明で, 粗造な皮野が認められた。四肢と両口角には角質増殖が著しく, 舌には亀裂が生じていた。患者は初診より8カ月前に胃癌の診断のもとに胃全摘術及び脾臓摘出術を受けていたことにより, acanthosis nigricans malignaと考えられた。入院後, 胃癌の転移部位の検索を行なうと同時にetretinate内販による皮疹に対する治療を始めた。etretinateは最初, 体重1kg, 1日あたり1mg, 2週目より同じく0.5mgを投与した。投与後2週目から皮疹は著明に改善し始め, 乳頭腫状増殖も表皮とともに剥離するに至った。口唇炎, 脱毛以外, 肝機能障害等の副作用は見られなかった。
抄録全体を表示