埼玉県立自然の博物館研究報告
Online ISSN : 2433-8508
Print ISSN : 1881-8528
12 巻
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原著論文
  • 楡井 尊
    2018 年 12 巻 p. 1-16
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/06/14
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    鶴ヶ島市の2地点で得られた花粉分析資料を再検討し,推定される古植生変遷から約2万年前以降の花粉生層序を設定し,古植生から推定される古気候変遷とグローバルな気候変動と対応を考察した. IK-F帯は亜寒帯針葉樹林が優勢な寒冷気候を示すが,冷温帯落葉広葉樹の一定の拡大が認められ,下位のIK-E帯よりは寒冷の程度が低い.このことは,約19,000年前の最終氷期最盛期以降,最初の融氷水増加イベント(19kaイベント)に対応する.IK-E帯では,亜寒帯針葉樹林が優勢で,冷温帯の落葉広葉樹は極めて少ない.古気候はもっとも寒冷だった.この帯の中にハインリッヒイベント1と呼ばれる,寒冷化イベントに相当する層準が,含まれる可能性がある.IK-D帯はコナラ亜属を主とする冷温帯落葉広葉樹林が拡大し,ベーリング期~アレレード期にあたる.IK-E帯とIK-D帯の境界での急激な温暖化は,融氷水パルス1A(MWP-1A)と呼ばれる約1,4万年前の温暖化イベントに対応する.IK-B帯,TS-B帯では中間温帯のモミ・ツガ林が拡大する.特にTS-B-2亜帯は,約3.5~2千年前の,いわゆる弥生の小海退に対応する気候変動が認められる. このように,中部日本の後期更新世から完新世の内陸部の古植生変遷は,グローバルな古気候変動に応答している.
  • 須田 大樹
    2018 年 12 巻 p. 17-24
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/06/14
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    関東各地の博物館に所蔵されているナラガシワ標本の再検討を行うとともに,その主な自生地において生育立地・生育状況の調査を行い,関東地方のナラガシワの分布について改めて整理した.その結果,ナラガシワとされてきた標本の多くが他種あるいは他種間の雑種の誤同定であり,関東地方におけるナラガシワの分布は極めて少ないこと,また,ナラガシワの自生地は,沖積低地の河畔林や山地下部の沢沿いが中心であることが明らかとなった.縄文時代には関東平野に広く分布していたナラガシワであるが,現在は極めて隔離的な分布,残存林的な生育状況を示していることから,河川沿いに分布の中心をもつナラガシワが撹乱頻度の低下や開発の影響などにより減少し,現在は遺存的な分布となっていると考えられた.
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