近年,在宅療養を支える介護者に目を向けた研究が増加し,これらの成果を具体的に適用・実施する動きがみられ始められている.しかし,それらのなかには実用化には至らないものも多い.その原因として,看護・介護される側の立場からの検討が未だ十分に行われていないことが指摘される.本稿では,看護・介助される側に焦点をあて,介助行為が起因して,被介助者の負担や事故につながっていると考えられる,起立介助時の起立性低血圧(orthostatic hypotention)について,その原因と予防策を,著者のこれまでの研究成果を交えながら解説した.内容は,起立性低血圧を予防する起立介助の工夫として,介助時には,できるだけ被介助者本人が起立しようとする自発的な意志を促すこと,さらに障害の程度に配慮した「本人の自力による立ち上がり」を支援する配慮が求められることを示唆した.このことを前提に,起立介助機器などの設計においては,ボタン操作やレバー操作のような,本人の意思が介在して自律神経系の反応を促すような工夫などが求められる.
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