電気式人工喉頭は,喉頭癌などの理由によって喉頭を失った人々の重要な発声補助機器である.しかし,従来の電気式人工喉頭は全て海外からの輸入品であり,国産の製品は存在しなかった.また,電気式人工喉頭で発声した音声は声質が悪く不自然であったため,その改善が長い間望まれていた.本解説では,このような状況を背景にして開発が進められた,国産初の電気式人工喉頭「ユアトーン」の開発過程を紹介する.本開発は,九官鳥の発声メカニズムに関する大学の基礎研究に端を発し,地域産学官の共同開発を経て1998年に製品化に至ったもので,既に約2千台の製品が国内で利用されている.製品化された電気式人工喉頭はマイクロコンピュータを内蔵し,抑揚のある自然な発声が可能であるほか,音程のデータを利用して歌を歌うこともできる.本稿では,抑揚制御機能を備えた新型電気式人工喉頭の概要と開発過程について,また,購入者の評価や今後の課題などについて述べる.
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