バイオメカニズム学会誌
Print ISSN : 0285-0885
27 巻, 1 号
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解説
  • 大渕 修一
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 27 巻 1 号 p. 2-5
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/02/27
    ジャーナル フリー
    高齢者の転倒は, 寝たきりを引き起こす主要な原因の一つに上げられ, 要介護率の低下のため, その防止に期待が高まっている. ところが転倒は, 多くの因子が関わり合った現象であるために, そのメカニズムの解明と予防法の確立は困難な状況にある. こうした中で筆者は, 転倒の起因として最も多い, つまずき·すべりに注目し, これらをシミュレートする機器を開発し, つまずき·すべりに起因する転倒の予防法を検討している. また, 大まかに高齢者といっても地域在住高齢者と施設入居の高齢者では身体機能, 環境要因に大きな違いがあることが考えられ, より対象を明確にした特異的な転倒のメカニズムの解明と, 介入方法の開発の必要性を指摘した.
  • 石原 治
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 27 巻 1 号 p. 6-9
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/02/27
    ジャーナル フリー
    高齢者の認知に関する研究は老年心理学において活発である. ここでは高齢者の認知機能に密接に関わる3つの認知心理学の研究分野について概説する. 第1に, 感覚·知覚の研究を紹介する. 第2に, 注意を概説する. そこでは, 選択的注意と注意の分割という2つの機能に焦点を絞り, 説明する. 第3に, 記憶研究を紹介する. まず, 実験的アプローチによって得られた記憶モデルを概説する. たとえば, 数秒の間記憶すると同時に認知的な処理を行う作業記憶では, 加齢の影響が顕著であり, 記憶が低下する. ところが一方, 誰でもが知っている知識に関する意味記憶では, 加齢の影響がみられず, 高齢者と若年者で違いがみられない. さらに, より実際的な日常記憶研究も概説する.
  • —大洋村研究プロジェクトからベンチャー企業の設立へ—
    久野 譜也, 石津 政雄
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 27 巻 1 号 p. 10-14
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/02/27
    ジャーナル フリー
    高齢社会を迎えた我が国において, 単なる疾病予防のみならず, 積極的に生活機能の増大を目指していく仕組みづくりが, 地域において必要とされている. その仕組みは, evidenceを基に構成され, さらに具体的な目標値がきちんと定められる必要がある. また, 健康を科学することは複合科学であるべきであり, 生活機能, 精神機能などに加えて, 昨今医療経済的な視点も重要となってきている. さらに, 高齢者研究は個人差が非常に大きいので, 相当数のデータベースが必要であり, またその個人差に対応できるシステム作りが急務と考えられる. 地域における具体的なシステムの受け皿として, 平成14年度に筑波大学発ベンチャー企業である(株)つくばウエルネスリサーチが設立された.
  • —骨の老化—
    岩本 潤
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 27 巻 1 号 p. 15-17
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/02/27
    ジャーナル フリー
    骨の老化において特徴的なのは骨量の減少と易骨折性である. 加齢に伴う骨量の変化には男女差がみられる. 男女とも30歳代で最大骨量に達した後, 男性では加齢に伴い骨量は緩やかに減少するのに対し, 女性では特に閉経後に骨量は数年の間著明に減少した後, 緩やかに減少する. 加齢に伴う骨量の減少は, 長管骨の皮質骨よりも, 脊椎の海綿骨の方が著明である. 高齢者では加齢に伴う海綿骨量の減少量に男女差はないものの, 女性では骨形成の低下よりも骨吸収の増加が著明なため, 主として骨梁が穿孔されることにより骨梁の連結性が失われるのに対し, 男性では骨吸収の増加よりも骨形成の低下が著明なため, 主として骨梁幅が減少する. 長管骨の皮質骨では, 加齢により内骨膜面と皮質骨内ハバース管での骨吸収の増加により骨髄腔は拡大し, 皮質骨内部の粗鬆化もみられる. 高齢者では加齢に伴う内骨膜面での骨吸収は男女ほぼ同程度であるにも関らず, 外骨膜面での骨形成は男性より女性の方が少ないことから, 加齢に伴う皮質骨量の減少量は男性より女性の方が大きい. したがって, 海綿骨と皮質骨の両者を含めた骨量の減少は男性より女性の方が大きい. 脊椎·長管骨とも, 生理的な老化に伴う骨量減少を基盤に, カルシウムの摂取不足および吸収の低下, ビタミンDの吸収および産生の低下, 二次性副甲状腺機能亢進症, ホルモンの分泌低下, 運動量の減少, 老化遺伝子などの多元的な要因が加わることにより骨粗鬆化が進行し, 骨量がある程度まで減少すると軽微な外力で骨折が生じる.
  • —機能的側面とサクセスフル·エイジング—
    稲垣 宏樹, 権藤 恭之
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 27 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/02/27
    ジャーナル フリー
    著者らが行った東京百寿者研究の結果を中心に, 百寿者の認知及び身体機能の状態と機能維持のための要因を検討した. 多くの百寿者では全般的な認知機能の低下が示され, 従来加齢の影響を受けにくいとされる結晶性知能についても低下が認められた. 身体機能も全般的に低下しており, 特に移動能力において低下が顕著であった. また, 百寿者の特徴として, 認知機能が身体機能の状態と強く関連していた. これらの機能的側面の低下は, 生理的な加齢に強く影響されており, 免れ得ないものである. 超高齢期のサクセスフル·エイジング達成には, 低下した機能を補完する方向での多方面からの積極的介入が重要であると考えられる.
研究
  • 中園 嘉巳, 田中 久弥, 井出 英人
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 27 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/02/27
    ジャーナル フリー
    指タッピング法を用いて, 予測ボタン押し動作における予測精度を測定した. 被験者には, ブザー音が周期的(インターバル: 0.8, 1.1, 1.3, 1.9秒)に繰り返し呈示され, a)音を聞きながら, あるいはb)音に合わせてボタンを押しながら, 最後のブザー音の後に予測したインターバルの経過を待って, 指でボタンを押すように指示された. ボタンが押されるまでの時間が予測時間として, インターバルの実時間との差が予測誤差として測定された. 結果, 被験者15名において, インターバルの長さと予測誤差の大きさとに相関が認められた. その内9名では, インターバル1.9秒において予測時間が実時間より10%を越えて有意に減少した. 音に合わせたボタン押し動作を伴った場合b), 対照例a)と比較して, 予測時間の変動係数(CV)が有意に減少した. つまり, 周期的運動を行うことによって予測時間の精度が向上した. この結果は, 心理学的時間知覚と生理学的周期運動との連関を示唆する.
  • 倉林 準, 持丸 正明, 河内 まき子
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 27 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/02/27
    ジャーナル フリー
    関節中心位置の推定方法は, 特に検証をされないまま用いられてきた. 本研究では, 日本人健常成人男性43名の骨盤部MR画像を用いて, 臨床歩行分析研究会, Davis, Vaughanによる股関節中心位置の推定方法について検証を行った. 推定誤差は股関節中心位置のMR画像からの実測値と推定値の距離で定義した. オリジナルの方法の推定誤差平均値は, 上記3手法で, 順に, 17.1mm, 13.4mm, 32.0mmであった. オリジナルの方法論の数式を変えずに, パラメータのみを日本人男性用に最適化し, 実測可能なパラメータのみで実用的に構成した修正版での推定誤差平均値は, 順に9.9mm, 24.8mm, 19.8mmであった.
ショート・ペーパー
  • 湯 海鵬, 豊島 進太郎, 星川 保, 川端 昭夫
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 27 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/02/27
    ジャーナル フリー
    本研究は, 介護作業の中で, 最も体に負担の大きいと言われる車椅子への移乗動作を三次元的撮影し, 映像データに基づいて介護者の重心の変位, 関節角度および身体エネルギーを算出した. 理学療法士(PT)と社会福祉学専攻学生の介護動作との比較検討を行い, 車椅子への移乗動作の特徴を明らかにした. 学生に比べPTの作業時間と作業距離が短かった. 身体の姿勢については, PTはできるだけ腰への負担を軽減するために, 大腿の筋群を主に用いて被介護者を抱き上げ, 腰掛けさせるという動作になっている. このような動作は, 身体の上下動が大きく, 力学的仕事の量も多くなる可能性はあるが, 腰の保護と腰痛の予防には有効な動作と考えられる.
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