バイオメカニズム学会誌
Print ISSN : 0285-0885
28 巻, 1 号
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解説
  • 平崎 鋭矢
    2004 年 28 巻 1 号 p. 2-7
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/08/13
    ジャーナル フリー
    サル(霊長類)のロコモーションを調べる実験研究の多くは,直立二足歩行というヒト独自のロコモーション様式の進化と適応に関する手がかりを得ることを目的として行われてきた.研究は大きく2つに分けられ,ひとつは二足歩行へ至る進化と適応を探るもの,もうひとつは二足性獲得後の歩行の進化と適応に関する手がかりを得ようとするものである.筆者は,前者に関連して,直立二足歩行の獲得に大きな影響を与えたとされている木登り運動の分析を,後者に関連して高度に二足訓練されたサルの歩行分析を行っている.それらの具体例を通して,霊長類ロコモーションの実験的研究の実状について簡単に紹介する.
  • 西井 淳
    2004 年 28 巻 1 号 p. 8-12
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/08/13
    ジャーナル フリー
    ウマなど多くの多足歩行動物が移動速度に応じて歩容を変化させることは古くから多くの研究者の注意をひき,観察に基づく詳細な分類が行われて来た.一方で歩容が変化する理由についても多くの議論がなされながら,十分な説明はなされてこなかった.歩容の遷移の他にも,移動速度の変化に伴った脚の運動周期の変化等,多くの多足歩行パターンの特徴が様々な動物に共通に観察されている.このことは多足歩行パターンの選択において動物によらない共通の戦略が存在することを意味する.本稿では,多くの動物に共通に観察される多足歩行パターンの特徴を紹介し,それらが消費エネルギーの最小化という基準によって説明しうることを解説する.
  • 中島 求
    2004 年 28 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/08/13
    ジャーナル フリー
    魚・イルカの遊泳運動に関する研究を紹介する.まず高速遊泳動物に見られるマグロ・イルカ形の遊泳に関して推力発生の原理を説明する.次に,ダイナミクスをより詳細に解析するため著者らが提案した解析モデルおよびその解析結果について述べる.さらに著者らが開発した3機のイルカロボットを紹介する.1号機および2号機は直進遊泳性能を調べるために開発され,それぞれ最高推進速度1.15 m/s, 1.9 m/s を達成している.また3号機は機動性能を研究するために開発され,現在,胴体全長の約半分の回転半径で水中宙返り運動が可能である.
  • 水谷 賢史, 岡 浩太郎
    2004 年 28 巻 1 号 p. 18-21
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/08/13
    ジャーナル フリー
    動物の周期的行動の形成機構を解明するために,体節毎に繰り返し構造をした単純な神経系を有する環形動物ミミズを用いて行った我々の研究を解説した.ミミズ這行は,central pattern generator(CPG)と呼ばれる神経回路により形成されているが,神経細胞は小さく細胞内記録が困難であるため,その研究は従来進んでいなかった.そこで我々は,イメージング技術と細胞外電位記録技術を併用し,容易かつ網羅的にCPG活動を把握することを試みた.その結果,這行に用いられる運動神経細胞およびCPGに含まれる細胞の一部が明らかになった.また,CPG活動は,運動神経細胞の活動に同期した活動と,それに先んじる活動に2分されることがわかった.
  • 田中 玲子, 高松 敦子
    2004 年 28 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/08/13
    ジャーナル フリー
    真正粘菌変形体というアメーバ様の多核単細胞生物は,一見「単純」な生物にみえるが,実は局所的に得られた情報を細胞全体に伝達して行動するなど,複雑な情報処理や作業を行っている.単純な構造をもつ粘菌が,どのようにして複雑な情報処理を実現しているのかを理解することは,生物学,物理学,または工学の立場から見ても興味深く,我々が粘菌から学ぶべきことはまだまだ多い.しかし,生物であるがゆえに,その扱いは難しく,観測される現象は複雑である.そこで,この複雑な生物現象を系統的に扱う方法が必須となる.本稿では,その一例として,マイクロ加工技術を用いて粘菌結合振動子系を構成する方法を示し,その系の示す美しい数理的世界である,非線形振動が織りなす時空間パターンを紹介する.
研究
  • 久本 誠一, 樋口 雅俊, 三浦 範大, 森本 一成, 黒川 隆夫
    2004 年 28 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/08/13
    ジャーナル フリー
    世代横断的な健常被験者約1000名程度を対象とし,非医療専門家を検者とした上肢下肢の関節発揮トルク計測実験の準備段階として,Hand-held Dynamometer(HHD)による肘関節等尺性屈曲トルク(EF)及び肘関節等尺性伸展トルク(EE)データの妥当性を,筋力評価装置(Torque machine : TM)との比較によって検証した.被験者は20~50歳代の健常男女24名とした.その結果,信頼性の観点からは,HHDで取得したEF及びEEデータのセッション内変動は妥当な値(変動係数は0.01~0.08)を示し,セッション間変動及び検者間変動に統計的有意差はなく高い相関(相関係数は0.915~0.959)を示し,TMとの比較において十分な妥当性(相関係数は0.813~0.950)を有することが確認された.
  • 平崎 鋭矢
    2004 年 28 巻 1 号 p. 34-40
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/08/13
    ジャーナル フリー
    健常被験者7名が120cmの半径で円周歩行する際の頭部と眼球の運動を計測した.横断面内では,頭部は歩行周期と関連するyaw rotation(回旋)を示し,その平均角度位置は歩行軌跡の接線方向よりも円の中心側を向いた.また,位相は歩行軌跡の角度変化に先行していた.眼球には水平眼振が生じ,その緩徐相速度と頭部の動きから求めた視線速度はほぼゼロとなった.これらは,円周歩行中に頭部運動と眼球運動が協調的・予測的に働き,視線の安定を維持していたことを示す.前額面内においては,頭部平均角度位置は歩行速度の増加に応じて円の中心側に傾いた.この側屈は重力慣性軸(GIA: Gravito-Inertial Acceleration Axis)の傾きによると示唆された.ただし傾きはGIAのそれよりも小さかった.
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