バイオメカニズム学会誌
Print ISSN : 0285-0885
41 巻, 4 号
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解説
  • 小野 誠司
    2017 年 41 巻 4 号 p. 158
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
  • 小髙 泰
    2017 年 41 巻 4 号 p. 159-164
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
    我々ヒトを含む霊長類は中心窩(fovea)と呼ばれる超高解像度の部分を持ち,両眼視することによって詳細な情報を得る事ができる.中心窩に投影される光軸方向を視線と呼び,両眼で視覚対象を捕らえる時,無限遠の対象を見る時には視線はほぼ並行となり,それより近い視覚対象を見る時には左右の視線がお互い内向き(鼻向き)に調節される.これを輻湊眼球運動と呼び,この時の内向きの角度を輻湊角という.ヒトにおける両眼中心距離(Inter ocular distance:IOD)は,個人差があるものの成人でおよそ6.5 cm 程度であることから,数 m より遠方の距離に対する輻湊角の変化はとても小さい値となりその差を検出する事ができなくなる.ヒトの奥行や距離の認知は,主に視覚的な情報を手掛かりにしていると考えられており,心理物理実験からも,視覚的手掛かりが優先されて処理されていることが示唆されている.一方で,空間移動を感じさせる視覚や前庭刺激を与えると,輻湊眼球運動が誘発されることから,輻湊眼球運動は,脳内における空間移動の認知を客観的に知る手掛かりになるのではないかと考えられる.
  • 梅本 峻矢, 三木 俊太郎, 山本 雅也, 平田 豊
    2017 年 41 巻 4 号 p. 165-170
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
    我々の身体運動制御は,視覚をはじめとする種々の感覚フィードバックにより高い精度を実現する.しかし,感覚フィー ドバックの遅れ時間は150 ms 以上に及び,スポーツや楽器演奏など,迅速な運動の遂行時には有効に機能しえない.そのため,様々な運動制御系は感覚フィードバックに頼らない予測性制御も行っている.本稿では,そうした生体における予測性制御の中でも,スポーツ選手のパフォーマンスにも大きく寄与することが示唆されている眼球運動制御系と,それに付随して機能する焦点調節制御系および瞳孔制御系について解説する.
  • 加藤 明
    2017 年 41 巻 4 号 p. 171-175
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
    他の運動系に比べ比較的シンプルな制御回路を持ち,入出力の定量性に優れている前庭動眼反射(vestibulo-ocular reflex:VOR)は,空間認知能力を支える重要なシステムの1 つとして多くの脊椎動物に備わっている. VOR は単純な運動系でありながら,トレーニングによりその動特性を適応的に変化させる運動学習機能を有することから,運動学習の基本メカニズムにアプローチする優れた解析系として,実験動物を用いた多くの研究が行なわれている.本稿では,VOR の適応性変化を引き起こす中枢メカニズムにアプローチする古典的な研究を概観し,そこで提唱されたモデルをさらに深く追及する最新の知見の一部について概説する.
  • 久代 恵介, 山本 真史
    2017 年 41 巻 4 号 p. 177-182
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
    ヒトは上肢を巧みに制御することにより高度な文明を築いてきた.上肢を動かし環境にはたらきかけ目的の行為を達成 させるためには,重力空間の正確な知覚とそれにもとづく精細な運動制御が不可欠である.本稿では,ヒトが重力環境を知覚して運動を出力させる一連の機構について概説する.我々が普段何気なくおこなっている運動行動が中枢の感覚運動制御システムによる洗練された情報処理の結果として表出されている様子について解説する.
  • 佐々木 亮
    2017 年 41 巻 4 号 p. 183-188
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
    ヒトが空間内を自由に動きまわり,同時に動く物体を知覚し,判断するとき,脳は実に複雑な計算処理にさらされることになる.網膜から入力される視覚情報に基づく脳神経細胞の活動を,いかにして知覚,判断へと結び付けているのだろうか.本稿では,物体の動きに関する座標表現について取り上げ,視覚-前庭情報統合の神経基盤について,覚醒行動下のサルの空間物体運動知覚を対象とした,心理行動,神経生理及び計算論的アプローチから得られた総括的な知見を基に解説する.
  • 小野 誠司
    2017 年 41 巻 4 号 p. 189-193
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
    3 次元空間における動作には,自己と空間との相対的関係の認知が不可欠となる.この空間認知には,視覚からの入力 に加えて,前庭感覚や固有受容器による体性感覚からの入力が必要とされ,空間における対象物と自己との位置座標を再現している.さらに,対象物や観察者が移動する場合には,視覚入力と眼球運動,前庭感覚による頭部の運動を統合したgaze(注視点)の制御が重要な役割を果たしている.本稿では,gaze の空間的(絶対的)位置の変化と自己との相対的なgaze の変化に関与する制御特性について,眼球運動とgaze の制御に関連する大脳皮質および脳幹のニューロン活動に注目し,神経生理学的研究から得られた知見に基づいて解説する.
研究
  • 万野 真伸, 真伸 卓哉, 阿部 友和, 新川 拓也, 藤川 智彦
    2017 年 41 巻 4 号 p. 195-203
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/28
    ジャーナル フリー
    本研究は踵を接地点とする体幹を安定させる着地において,ヒト下肢大腿部の筋配列を最も単純化したモデル,すなわ ち,股関節の拮抗一関節筋ペアと膝関節の拮抗一関節筋ペア,さらに,股関節と膝関節に同時に関与する拮抗二関節筋ペアを装備した二関節リンクモデルを提案し,それを基準に動作筋電図学的解析とロボット工学的理論解析をおこなった.その結果,動作筋電図学的解析において,踵着地時に大腿部の拮抗二関節筋ペアである前面の大腿直筋と後面のハムストリングスが同時放電することが明らかになった.この同時放電はロボット工学的な理論解析より,着地点である踵に発生する力と弾性を同時に調整することにより,着地時の姿勢安定性に大きく貢献していることが明らかになった.
  • 河野 由, 小笠原 一生, 水村(久埜) 真由美
    2017 年 41 巻 4 号 p. 205-212
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/28
    ジャーナル フリー
    バレエにおいて上肢の動きは,豊かな表現を実現する上で欠かせない.しかし,表現を伴う上肢動作の3 次元的な運動学的特徴を報告した研究はなく,表現に必要なスキルの詳細は不明である.そこで本研究では,白鳥の羽ばたきを模した上肢動作の3 次元的な運動学的特徴を明らかにすることを目的とした.バレエ熟練者5 名とバレエ未経験者9 名に白鳥の羽ばたきを模した上肢動作を実施させ,その際の肩,肘,手関節角度および各関節運動の運動範囲と,上肢挙上または下降局面の肩,肘,手関節角度の極値が出現する時間差を算出した.その結果,バレエ熟練者は,バレエ未経験者よりも前額面の運動および上肢の回旋運動が有意に大きく,上肢挙上局面では肘関節が肩関節や手関節に先行して動き,上肢下降局面では上肢が近位部から遠位部へとしなるように動くことが示された.
  • 山本 征孝, 島谷 康司, 長谷川 正哉, 村田 拓也, 岡村 和典, 栗田 雄一
    2017 年 41 巻 4 号 p. 213-219
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/28
    ジャーナル フリー
    本研究では様々な底屈制動力を持つ短下肢装具を使用した歩行を,筋骨格モデルと装具モデルを用いて筋活性度と筋力推定を行った.健常成人2 名を対象として装具なしと底屈制動を4 段階に調整した短下肢装具を使用した歩行を行い,筋活性度推定と筋力推定を行った.筋電図にて計測した筋活動と解析した筋活性度の相関は,前脛骨筋,腓腹筋内側頭,大腿二頭筋,大殿筋において中等度から高い相関を示した.また,短下肢装具条件においても筋活性度は類似した値を示した.筋力推定ではすべての短下肢装具の条件で前脛骨筋の筋力は装具なしの条件と比較して減少する傾向を示した.腓腹筋内側頭の筋力はすべての短下肢装具の条件で,装具なしの条件よりも増加する傾向を示した.
  • 大島 徹, 藤川 智彦, 本吉 達郎, 小柳 健一
    2017 年 41 巻 4 号 p. 221-229
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/28
    ジャーナル フリー
    近年,脚ロボットの発展には目を見張るものがある.いくつかの脚ロボットは,ヒトの脚の一関節筋と二関節筋による筋配列を模倣することで,安定した歩行運動を実現している.しかし,筋配列とその運動制御の関係を詳細に調べ,その結果 を直接ロボットの運動制御に生かした例はほとんどない.この研究は,筋肉配列に基づいた脚ロボットを試作し,二関節筋が立位における静的な安定性におよぼす影響について実証した.ロボットの剛性特性と倒立振子モデルの関係を用いて,立位静的安定性に対する解析と実験をおこなった.立位静的安定性は,複雑なコンピュータ制御を必要とせず,二関節筋のもつ機能によって改善できることが示された.
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