包丁技術は反復練習によって,いわゆる熟練に至る技術である.そのため,習熟者本人であっても,初学者に対して明確な指摘をすることが難しいと考えられる.本研究は,このような熟練の技術と初学者の違いを明確に捉えるために,モーションセンサーを用いて,両者の包丁操作を比較した.その結果,両者の違いは大きく分けて 2つの特徴があることが見出された. 1つは,包丁の安定性である.初学者は包丁を的確な力・向きで保持することが難しく,持ち手が大きくブレるが,習熟者では接触による抵抗を受けてもブレることなく状態回復を行なっている様子が見られた.もう1つは,習熟者はピッチ軸の回転 運動が大きく,包丁を前方に送り出すが,初学者はそれが小さい傾向が確認された.そして,その原因が,「切る操作への意識」の違いにあることが,予想された.
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