社会技術研究論文集
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3 巻
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特集
研究論文
  • 大森 良太, 堀井 秀之
    2005 年 3 巻 p. 1-10
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    東アジアのエネルギー危機問題を事例として,シナリオ・プランニングに基づく科学技術戦略の構築支援研究を実施した.本手法は多分野の専門家の協働に基づき,対象とする問題領域の俯瞰・構造化,未来の不確実性に対処するロバストな科学技術戦略の構築,科学技術の多面的価値の明示化に有効と考えられる.本研究では,東アジアのエネルギー安定供給および日本の安全・繁栄の実現に対するリスク要素の総合的検討,中国の将来像をシナリオ軸とする未来シナリオ-「資源争奪シナリオ」と「極東の島国シナリオ」-の作成, 各シナリオに基づく科学技術戦略の視点の抽出と研究開発課題例の意義の検討を行った.
  • 日本にとっての示唆
    鈴木 達治郎, 城山 英明, 武井 摂夫
    2005 年 3 巻 p. 11-20
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    原子力安全規制において、産業界の自主規制(保安)の重要性が注目を浴びている。米国では、79年のTMI事故を契機に産業界の自主規制機関として原子力発電運転者協会(INPO)が設立され、80~90年代を通じて大きな成果を挙げたといわれる。また、政府との調整などを行う原子力産業協会(NEI)、自主安全基準を設定する米国機械学会(ASME)などの民間機関も重要な役割を果たしてきた。日本においても、東京電力データ改ざん事件などを契機に、自主保安体制の強化を進めてきている。本論文は、米国における原子力自主保安体制等民間機関とその運用実態について、現地における聞き取り調査に基づき分析を行い、日本にとっての示唆をまとめたものである。主な論点としては:自主規制体制の(1)安全情報公開のあり方(2)企業のコミットメントとインセンティブの確保策(3)自主基準決定プロセスと民間第三者機関の役割と運用、等である。
  • 大林 厚臣
    2005 年 3 巻 p. 21-30
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    問題解決型の知識生産が普及しない理由の一つは,成果を評価する基準が,ディシプリンの内的論理で展開する従来の知識生産と異なることである.短期で終了する問題解決型のプロジェクトでは,問題解決に最善であっても,ディシプリンで評価されにくい知識生産を行うことは,研究者のキャリア形成の上で不利になる.また問題解決の評価基準は,学術的な評価基準より多元的であり,研究者にとっての評価リスクを生む.問題解決型の知識生産を促進するためには,研究者にとっての評価リスクとキャリア形成リスクを低減させる必要がある.そのためには,問題解決型の知識生産が評価される仕組みと,関連したテーマで問題解決のプロジェクトを継続させて,研究者のキャリア・パスを作る必要がある.
  • 中谷 洋明, 堀井 秀之, 村山 明生, 山口 健太郎
    2005 年 3 巻 p. 31-46
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    本論文では,複雑化したリスク特性とリスクガバナンスの問題を議論するための枠組みを考察する.リスク問題の問い立てや処方箋の対象とする社会構造の見方を考えるにあたっては,社会におけるリスク問題の解決の支援を志向しているため,リスクに晒されると同時に市民社会の主役でもある市民の集合体 (the public) の視座を主にとる.既存の知見に基づいて記述子を構成し,リスク特性の類型からリスクガバナンス構造の類型への写像が存在するかどうかを検討する.分野横断的にリスク特性やリスクガバナンス構造を明示することで,問題の存在を早期に発見し,社会的に納得可能な問題解決が期待できる.
  • 選択肢と考慮事項
    城山 英明, 村山 明生, 山本 隆司, 廣瀬 久和, 須藤 長
    2005 年 3 巻 p. 47-59
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    安全法制度設計における原情報収集に関する論点として,原情報の収集・解析・提供主体の選定に係る論点,原情報提供を任意とする場合の原情報提供者へのインセンティブ手法整備に係る論点,原情報提供を強制とする場合の法的整合性確保に係る論点の三つについて,制度設計上の選択肢を抽出し,各々,非法的考慮事項,一般法上の考慮事項の二つの視点から,選択・評価にあたっての考慮事項を検討した.
  • 選択肢とその評価
    城山 英明, 村山 明生, 山本 隆司, 川出 敏裕, 舟木 貴久
    2005 年 3 巻 p. 60-78
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    安全法制度設計に関する論点として,ペナルティの制度設計を取り上げ,全体的・総合的視点からの原因究明実施への影響という観点,及びペナルティ規定としての本来の機能の発揮という観点から,刑事ペナルティの問題点を既存文献をもとに洗い出した.次に,対策オプションを検討する前提として,刑事ペナルティ,行政ペナルティ,民事ペナルティの具体的手法,各手法の機能の整理,整備状況,各手法の機能の比較・整理を行い,行政ペナルティ,民事ペナルティについては,刑事ペナルティへの代替・補完可能性を評価した.その上で,刑事ペナルティの問題点の対策オプションを提示し,実現可能性,有効性の観点から評価した.
  • 身崎 成紀, 城山 英明
    2005 年 3 巻 p. 79-89
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    損害保険制度は,民間の保険会社単独で運用されるもの,公的関与がなされているもの,国際的な再保険取引が必要なものなど,リスクの性質に応じて様々な形態・方式で運用されている.また,料率設定の方針も多様である.事故・災害分野ごとの性質・実態や今後の社会・経済状況の変化に応じて,損害保険が国民生活の安定と安全な社会の構築に資するために,保険制度について,財源確保,法制度・規制との連携も念頭に置きつつオプションを整理し,保険制度・施策を適切に選択するための評価軸を構築することを試みた.
  • 中島 貴子
    2005 年 3 巻 p. 90-101
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    乳児用粉ミルクに工業廃棄物由来のヒ素化合物が混入して大規模な被害が発生した森永ヒ素ミルク中毒事件は,今年2005年8月24日,公式発表から50年目を迎える.しかし,事件の全体像は今なお把握されていない.被害者に対する恒久救済機関の運営実態への疑問の声もある.被害者の現在を正視すると同時に,事件史の教訓を徹底的に整理する必要がある.病因物質が市場に流通してから恒久救済機関が発足するまでの約20年を振り返ると,食中毒事件における疫学と事故調査の独立性の必要が指摘できる.また,事後対応における行政と専門家の関係についての課題も指摘できる.本格的な歴史研究のためには本事件に関連する一次資料の収集・保存が必要である.
  • 尾暮 拓也, 中田 圭一, 古田 一雄
    2005 年 3 巻 p. 102-110
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    リスクを伴う様々な科学技術の賛否について社会的な合意を形成するためにはリスクコミュニケーションの促進が必要であるが,これを阻む大きな要因として専門用語や専門的概念の特殊性と難解さが挙げられる.本研究ではこの問題の解決策として情報検索の観点から専門家の概念体系を明示化して利用する手法を提案する.具体的には専門家の概念体系をコミュニティオントロジーとして定義し,検索質問に対する文書の適合度を計算するために用いる特徴ベクトルをオントロジーベクトルとして定式化する.そして実験を通じて提案する手法の検索性能の評価を行い,考察においてこの技術が市民に提供される場合の効果を論考する.
  • 有職者を対象としたサンプリング調査から
    上瀬 由美子, 下村 英雄, 今野 裕之, 堀 洋元, 岡本 浩一
    2005 年 3 巻 p. 111-117
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,組織における違反の背景に職業威信を位置づけ,職場風土,職業属性,個人属性と合わせて関連を検討することを目的としている.サンプリングによって抽出した501人の成人男女の回答を分析した結果,不正かばいあいの違反経験は,違反を抑制する雰囲気のある職場であるほど少なくなっていた.その一方,自分の職業について社会的責任が高いと考えている回答者ほど,違反を経験する傾向のあることが明らかとなった.
  • 消防官をサンプルに用いた検討
    堀 洋元, 鎌田 晶子, 岡本 浩一
    2005 年 3 巻 p. 118-127
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    ある職業に就く人それぞれが職業に感じている誇らしさを主観的な職業威信といい,主観的な職業威信を高く保つことによって組織内の違反防止が促進されると考えられる.本研究では,消防官を対象として取り上げ,彼らの主観的な職業威信について検討した.研究1では消防官の主観的な職業威信を探索的に検討し,一般市民との結びつきが誇りの高さに影響を与える可能性を示した(n = 73).研究2では,消防官の主観的な職業威信の構造が一般有職者のものとは異なることを示し,さらに,主観的な職業威信の高さが組織におけるPro-social行動(組織のためになる行動)と関連することを示した(n = 187).これらの結果から,高邁な職業意識が違反防止に活用可能であることを提言する.
  • 道路整備事業を題材として
    濱谷 健太, 堀井 秀之, 山崎 瑞紀
    2005 年 3 巻 p. 128-137
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    近年,価値観の多様化や問題の複雑化により解決が困難となっている社会問題の1つにインフラ整備などにおける沿線住民との合意形成の難航がある.本研究では,この合意形成を円滑にするための手法として,沿線住民の事業に対する意識構造の全体像を把握するためのモデルを構築することで,個々の対策方法の影響評価を可能にすることを目的とした.インタビュー調査により得られた沿線住民の意識変化過程から反対運動に参加するまでの意識変化構造を扱った「住民行動選択モデル」と反対運動を通じて満足感が形成されていく要因を規定した「満足度形成モデル」を構築した.この各モデル内のパス係数を比較することで対策の効果比較が,要素の順序をみることで適切な実施順序を推測することが可能となった.
  • 堀 宗朗, 犬飼 洋平, 小国 健二, 市村 強
    2005 年 3 巻 p. 138-145
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    地震時の緊急避難を予測するため,マルチエージェントシミュレーションのプロトタイプを開発した.KISS原理に則り比較的簡単なルールが設定されているが,混雑によって低下する群集の速度を再現することができる.人の運動という力学現象の制約も考慮したことで,物理シミュレーションとしても相応に合理的なものである.地震動と構造物応答のシミュレーションと連成させ,損傷を受けた構造内での緊急避難シミュレーションを行った.応答計算に使われる構造物モデルから避難経路モデルが作られ,一連のシミュレーションがシームレスに実行できるようになっている.避難行動のシミュレーション結果の妥当性の検証は難しいものの,定性的には納得できるものである.
  • 福田 隆文, 深澤 秀司, 杉原 英和, 渡辺 幸夫, 小山 富士雄, 稲垣 健二, 甲斐 雅行, 加藤 洋, 松岡 俊介, 小島 直樹
    2005 年 3 巻 p. 146-154
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    化学工場は外部に影響を及ぼす事故の可能性があるので,住民に不安感があることは事実である.したがって,安全・安心な工業社会の確立に向け,工場のリスクに関するコミュニケーションが重要であり,そこでは住民が望んでいる情報の提供が必要である.本研究では,工場と住民の間のリスクコミュニケーションを円滑に進めるため,住民が望んでいる情報,提供の方法などを,化学産業が比較的多く立地している都府県の1,500人を対象としたweb方式アンケート調査によりまとめた.その結果,住民は化学的・技術的情報より,事故防止策や発災時の行動に関する情報を求めていること,被害としては後遺症となるものを懸念していることがわかった.また,情報は工場から直接入手したいと考えていることもわかった.
  • 木質バイオマスの導入事例を手掛かりに
    青木 一益, 本藤 祐樹
    2005 年 3 巻 p. 155-164
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,再生可能エネルギーを用いた技術システムの形成が,それに関与する諸アクターによる集合的意思決定過程によって,いかなる影響を受けるのかを実証的に検証することにある.本研究の分析のための素材は,わが国の地方自治体において取り組まれた,木質バイオマス・エネルギーの導入プロジェクト2つを対象とした事例調査から得た経験的知見である.本稿では,木質バイオマスを用いたエネルギー技術システムの特性を念頭に,多様なアクターの利益やインセンティブがいかにコーディネイトされ,アクターによる適切なコミットメントがいかに確保され得るのかを分析した.
  • 巻町と北海道の発電所立地事例研究
    寿楽 浩太, 大川 勇一郎, 鈴木 達治郎
    2005 年 3 巻 p. 165-174
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    本稿は原子力政策の是非を問うものではないが,その立地問題に関する地方自治体での新しい意思決定プロセスの事例研究を通して,エネルギー技術導入に関する意思決定プロセスの質の向上に貢献することを目的としたものである.事例には,新潟県巻町の立地中止事例と北海道の発電所増設事例を取り上げた.分析の結果,(1)法や制度による「公式」のプロセスと,そうでない「非公式」プロセスの全体をとらえることの重要性,(2)最終的な意思決定に至るまでの「中間プロセス」における選択肢の評価,社会的学習,課題設定の更新などの役割への注目,(3)「手続き的公正」の重要性,(4)プロセスの目的や方法についての共通了解の重要性,(5)意思決定の「場」の設定のあり方への注目,などの知見と示唆が得られた.
  • 鈴木 隆志, 石原 透, 阪本 大祐, 伊津野 和行, 土岐 憲三
    2005 年 3 巻 p. 175-185
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    文化遺産を自然災害から守り後世に継承することは,社会科学の一つの大きな使命である.想定される自然災害から文化遺産を守るためには,まずそのもの自身の持つ性能を正しく評価することが必要である.本研究では,文化遺産の一つである懸造形式を有する伝統木造建築物の耐震性能に関する研究の一環として,国宝清水寺本堂を研究対象とした構造特性の研究を行った.本研究は,当該建物の建物調査及び文献調査に基づく構造図作成に始まり,作成した構造図を基にした固有値解析と,地盤と建物に対する常時微動測定の実施を通じて,対象建物の振動特性の定量的把握を行った.さらに,目視経年変化調査及び含水率測定を行うことで,当該建物の現状の経年変化状況を把握した.
  • 山口 健太郎, 白戸 智, 堀井 秀之
    2005 年 3 巻 p. 186-195
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    社会問題の解決策立案の際,「既に蓄積されている知識や経験を,それらのもつ(地域性や技術的専門性等の)固有性に囚われることなく,いま対象としている問題に沿う文脈で読み替える」ための統一的な手法が存在すれば,解決策の立案にかかる負荷の軽減と,最終的に提示される解決策の実効性の向上が期待できる.本研究では,社会問題とその解決事例の統一的な分類手法と,その分類に基づいた分野横断的な知識活用の手法を提案した.具体的には,既存の42の問題解決事例を精査することにより,15の問題特性と40の解決特性を抽出し,それらの間の関係性を導出した.さらに,導出された関係性に基づいて日本のテロ対策をレビューすることにより,解決策立案のポイントが効率的に抽出可能となることを確認した.
  • 橋口 猛志, 林 同文, 興梠 貴英, 真鍋 一郎, 永井 良三
    2005 年 3 巻 p. 196-204
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    社会技術研究ミッションプログラムI医療安全研究グループにおいては,大学医学部附属病院における理論構築環境(研究)と,技術実装環境(大学医学部附属病院)を活用して,他の研究グループと連携を図りつつ,医療安全向上を目的とした包括的,かつ多層的なアプローチで研究を行った.その中でも,社会技術としては,医師-患者間,医師間,医療機関間において,臨床判断に資する情報共有,コミュニケーションを促進するツールとしての診療ナビゲーションシステムを開発し,東京大学医学部附属病院循環器内科において実装した.
  • 経済学的アプローチ
    金野 和弘
    2005 年 3 巻 p. 205-213
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    本稿は,デジタル著作権管理(DRM)が生み出す経済的便益を研究する.DRMは,デジタルコンテンツに関する様々な権利を保護し,その流通を円滑化し,制作者および供給者が正当な対価を回収できる仕組みを提供するなど,デジタルコンテンツ流通を促進するために不可欠な基盤技術である.他方,DRMの導入により,利便性の低下,死重損失,参入障壁などの問題が生じることに注意しなければならない.そこで本稿では,DRMの導入による社会的な便益とコストを挙げ,それぞれに関して経済学の視点からの検討を試みる.
  • 関東圏交通政策を事例とした分析
    加藤 浩徳, 城山 英明, 中川 善典
    2005 年 3 巻 p. 214-230
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,広域交通政策・計画の立案を事例として,関係する主体の問題認識の把握を通じて,問題全体を構造化し,政策立案のための課題を抽出するための手法を検討するものである.関東圏の交通政策を事例として選定し,関係主体に対するインタビューを通じて,各主体の認識を図示化し,その上でそれらを総合することによって,関東圏における交通問題の構造を分析する.次に,インタビュー結果から,問題の主要要素と今後重要になると考えられる環境条件を抽出し,それに基づき問題構造を分析した上で,今後検討すべきと考えられるイシューのリストアップを試みた.また,関係主体間の相互認識,利害関係の比較と主体間関係分析を行った.最後に,これらの分析結果を関係者によるワークショップの場にフィードバックし,課題抽出の契機の支援を試みた.
  • 特に事故報告制度を中心に
    畑中 綾子
    2005 年 3 巻 p. 231-240
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    医療機関は,安全で質の高い医療を提供すべく,日々努力している.しかし,その努力は,なかなか社会に認知されることなく,医療事故やミスといった報道ばかりが目に付く.本研究は,昨年10月より新たに始まった医療事故の強制報告制度を通じて,医療現場の具体的場安全対策や取組みを,法学研究者の視点からインタビューをもとに記述することを目的とする.医療現場の複雑さは,医療資源の配分問題や診療報酬制度など法制度の仕組みとも深い関係がある.この研究によって,医療現場の取組みを評価し,現場と法制度のよい方向への連関を提言していきたい.さらに,将来的な医療政策への提言にもつなげていきたいと考える.
  • 馬場 健司, 木村 宰, 鈴木 達治郎
    2005 年 3 巻 p. 241-258
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    近年急速に導入が進んでいる大規模風力発電所(ウィンドファーム)の立地に際して,しばしば環境論争が発生している.文献調査とヒアリング調査により,全国的な論争の推移とそのパターンを分析し,その中からプロセスと結果において対照的であった2つのケースを対象とした詳細な比較分析を行った結果,以下が明らかとなった.制度に基づく公式プロセスにおける課題設定は,制度そのものの性格,非公式プロセスで得た情報,当該課題の公共性・公益性の定義に影響されている.論争の主な要因は,環境影響評価法の対象外となっていること,地域の野鳥・野生生物の生態系に係わる情報や認識の不足である.今後の社会意思決定プロセスとしては,戦略的環境アセスメントによる中央と地方の相互補完的な多層レベルの制度化や,総論と各論というように段階的に論点を配分する参加型手法の適用などが考えられる.
  • 高橋 清, 加藤 浩徳, 寺部 慎太郎, 高野 裕輔
    2005 年 3 巻 p. 259-268
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    近年の日本における交通安全分野の状況は,各関係諸機関において様々な交通事故対策を実施してきた効果により,経年的な事故死者数における減少傾向が窺える.しかし,本質的な安全性の向上を目指したとき,事故死者数の減少に隠れている事故発生件数・事故負傷者数の多さは楽観できるものではない.こうしたことから,交通事故発生の抑制を図る上で,何故に思うような事故対策を施せていないという問題点を明らかにして,改めて解決策を検討する必要性は高い.そこで本研究は,事故対策における実施体制について関係主体相互の協働・連携をキーとして,新たな方向性について検討する.
  • 早期警戒と事前対応型リスクマネジメントに向けて
    水野 敏明, 中井 克樹, 池田 三郎
    2005 年 3 巻 p. 269-278
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,国内外で問題が顕在化している外来生物リスクに関する,市民のリスク認知について社会調査を行った.早期警戒と事前対応型リスクマネジメントにむけた,社会的ガバナンスの要件を明らかにするために2つのタイプの社会調査を主に20代の若者を対象として行った.インターネットによる全国を対象とした調査結果から,外来生物リスクの影響がどのようなものなのか,知られていない場合も多いことが明らかとなった.また,三重大学における調査結果から,リスク認知の程度の違いが,通報などのリスク対応に違いをもたらす要因であることが明らかとなった.これらの結果から,科学教育や,専用のホットラインの構築などが外来生物リスクの社会的ガバナンスに必要な要件であると考察した.
  • 前田 洋枝, 広瀬 幸雄, 杉浦 淳吉, 柳下 正治, 松野 正太郎
    2005 年 3 巻 p. 279-289
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    「市民参加による循環型社会の創生に関する研究」で行なった循環型社会フォーラム「市民会議」に対する参加者による会議評価を,会議終了後の質問紙調査により検討した.本稿における主な分析対象は,参加による経験としてエンパワーメント評価と今後同様の参加の機会があった場合の参加意図の関連である.エンパワーメントのうち,有能感や有効感の評価が高いほど,今後の参加意図も高いという関連が見られた.
  • 中野 有紀子, 西田 豊明
    2005 年 3 巻 p. 290-297
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    安心・安全な社会を作るうえで,専門家と市民との間での共通認識の構築が重要であり,そのためのコミュニケーションチャンネルの確立が求められている.本論文では,専門家と市民とのコミュニケーションを活性化することを目的とした没入型仮想会話環境IPOCを提案する.IPOCでは,背景画像を知覚的な共有情報としながら,専門家のアドバイスをより具体的に伝えるインタラクション機能と,市民からの現場情報をよりリアリティの高いものにするためのコンテンツ作成支援機能が装備されており,専門家と市民との双方向的なコミュニケーションの実現に貢献することが期待される.
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