多重発生を包含反応として眺めた時,その極限的振舞については,スケーリングや極限解離の仮説等をもとにして,多くの議論がなされてきた。しかし,最近の実験事実は,多くの点で従来の理論的模型の予言とも異なっており,多重発生の力学的機構については,ますます分らなくなったといえよう。我々は,分布の極限的振舞のみならず,それに到る過程や排他反応等から,実験を整理しなおし,新らしい観点から眺めなおす必要がある。数年前, Van Hoveは縦位相空間分析法を提案し,生成された粒子の縦運動量分布から,回析的励起過程が重要な役割をはたしているとの結論を得た。しかし,多粒子状態の運動量分布を直接議論するのは大きな困難を伴い,この方法は,生成粒子数が大きい時は余り有効であるとは思われない。我々は,多重発生の力学的機構を簡単に探るのに有用で,しかも粒子数が大きい場合にも有効と考えられる概念として,量子数の流れ(Quantum Number Flow, QNFと略す)を提案する。
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