原子核の大振幅集団運動を記述するために,多体fermion空間から少数個の変数で表わされるmaximally-decoupled collective subspaceを決定できるmicroscopicな理論の確立が求められている。maximally-decoupled collective subspaceというのは,Hamiltonianにおける集団運動と他の自由度とのcouplingが小さいという条件を満たすもの,すなわちHamiltonianのinvariant subspaceである。そのような部分空間を定義するために,時間に依存するSchrodinger方程式のInvariance Principleと呼ばれる形でのmaximul-decoupling conditionを定式化したSelf-consistent Collective Coordinateの方法(SCCM)が提唱された。TDHFの枠内で考える場合,系の時間発展はsymplectic TDHF manifold内の軌道として記述できるから,Invariance Principleの幾何学的構造というものが考えられる。そのことからInvariance Principleに基づくSCCMが,大次元のTDHF manifoldからmaximally-decoupled collective manifold(hypersurface)を,集団運動に対応する軌道がhypersurface上に出来るだけ正確に再現される様に抜き出す方法を与えるものであることがわかる。従ってSCCMで得られたhypersurfaceは,maximally-decoupled collective subspaceの古典的表現であるintegral surfaceと見なせる。またhypersurfaceを定めるパラメータは,maximally-decoupled collective subspaceを定める集団運動のboson演算子に対応するc-数と見なせる。このことから,maximally-decoupled collective subspaceを決める方法として,集団運動パラメータが集団運動bosonに対応するc-数として用いられるTDHFの枠組を使う代わりに,boson空間の概念がexplicitに使われるMarumori-Yamamura-Tokunaga(MYT)型のboson mappingの枠組を用いて,時間に依存するSchrodinger方程式のInvariance Principleを定式化する方法が考えられよう。そして得られるboson空間は,maximal-decouplingを実現した集団運動部分空間である。以下では,この方法及びSCCMに基づいて提唱されたmaximally-decoupled collective motionに関する量子論とmaximally-decoupled boson mappingの理論との関係について議論する。
抄録全体を表示