1937年から1958年までの22年間におけるDataについて調べてみた. 目的は日本における大地震のとき,または1941年のLisbon地震のときのように地震前に平均海水面の著しい変化があるかどちかを調べることであつた.海水温度等のDataがないのでLisbonのときと同様に22年間の各月に対する平均を計算してその年変化曲線をつくつた.(Fig.1.).この曲線の模様は日本やLisbonなど北半球のものとは異なつて,むしろ南半球のものと似ているのは不可解である.この曲線からのdeviation, ΔL'をとつて12ヵ月の平均を年平均値とした,この値のprobable error,εを計算してみると,ε=±5.8mmとなつた.それ故に一次近似としては海水密度,気圧その他の影響はとれているものと考えられる. つぎに,この永年変化曲線(Fig.2)の上に大地震の起つた年を書き入れてみると,1943年のM=7.6, d=600kmという地震前には連続した著しい変化を見たがその他の場合には左程著しくはないが1943年から1957年までの15年間に7つという大地震が頻繁に起つているので年平均海水面もそれに応じて頻繁に変化しているのが見られる. 最後に日本の場合と同様に大地震の12ケ月前と6ケ月後の月平均海水面変化を調べてみたが,日本の場合の約100個の地震に対して僅かに7ケであったが,日本の場合と同様に大地震の5ケ月前に極大,2ケ月前に極小という結果を得たことは面白いと思う.(Bull. Earthq. Res. Inst.38,1960参照).このときの平均誤差は±(12~20)mmであるが地震の起つた月の値を参考までにあげると, ΔL'=(64±13)mmである.(Fig.4).
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