国土地理院による第4回(1962~1968),第5回(1968~1975),第6回(1975~1981)全国水準点改測データを用いて,この間の北海道および離島を除く日本全国の地殼上下変動を,輪島験潮場を不動と仮定して求めた.変動量の計算方法は,まず日本海側の8験潮場(仮屋,萩,田後,三国,輪島,柏崎,鼠ケ関,男鹿,浅虫)の輪島に相対的な変動量を平均海水面の変動から求め,それを用いて輪島も含めた9験潮場の標高を与件とした網平均計算を行う方法を採用した.これは,日本列島が細長い弧状であり,水準測量の系統誤差や人為的な地盤沈下等の影響が累積するのを防ぐためである.このようにして求めた日本の地殼変動の特徴は,次のとおりである.(1)日本列島は,全体として沈下域の面積が広い.(2)東北の太平洋岸は,大きな速度で連続的に沈降している.(3)関東以西の太平洋岸の広い地域で,第4回から第5回測量までの期間沈降を示したが,第5回から第6回にかけては隆起に転じている.(4)四国西部では,継続的に隆起している.(5)(3)と(4)に述べた変動は,KATOが海水位変動から求めた地殼の変動と一致しない.
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