地殻変動連続観測に現われる気象擾乱を調べるために,地殻を気象要素や地下水の変化が入力であり,ひずみ変化が出力であるような2入力1出力の線形システムであるとみなして,六甲鶴甲断層運動観測室(以下,「六甲鶴甲」と略す)における地殻変動連続観測記録が解析された.とくに,低気圧や高気圧の通過に関連する1~10日付近の周期帯の現象が注目された.また,六甲鶴甲は,六甲山地域の代表的な活断層の1つである大月断層を横切って設けられており,断層破砕帯の内外での地殻ひずみ変化への気圧変化の影響の現われかたの相違が調べられた. 入力の組みあわせを変えて,気象要素や地下水の時間変化と地殻ひずみ変化との偏関連度関数が調べられた結果,組みあわせによらずつねに地殻ひずみ変化と高い相関を示したのは気圧変化であった.さらに,気圧変化と地殻ひずみ変化との偏関連度関数は,季節変動を示した.すなわち,多雨期(5~8月)には偏関連度関数は小さく,乾期(10~1月)には大きくなる傾向がある.乾期における周期3日および7日の伝達関数は,主断層粘土を跨いで設置されている伸縮計で得られた地殻ひずみ変化では,その他の伸縮計で得られたものに比べて約2倍大きい振幅応答を示した.主断層粘土を跨がない伸縮計によって得られた地殻ひずみ変化の場合,振幅応答は破砕帯の内外にほとんど関係なく約0.3×10
-8/hPaであった.また,位相の遅れについては,破砕帯の外部では10~45°,破砕帯の内部では100~270°であった.
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