測地学会誌
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41 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 福田 洋一
    1995 年 41 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2011/07/05
    ジャーナル フリー
    This paper reviews the precise determination of a geoid in and around Japan. Recent developments in space technology have provided new observations of the Earth's gravity field. The figure of a marine geoid has been determined from satellite altimetry, and the combination of GPS, SLR and VLBI with conventional leveling survey has provided a centimeter geoid for the land area. An important problem today is to obtain a geoid by combining all these heterogeneous gravity field data. The Least Squares Collocation (LSC) method has great advantage for solving the problem. LSC is an approximation method for harmonic functions in a reproducing kernel Hilbert space, and the philosophy behind it is quite different from the Stokes integral. A practical application of the method to the problem is given, and recent progress of geoid studies, especially those related to GPS/Leveling and sea surface dynamic topography, is discussed.
  • 駒澤 正夫
    1995 年 41 巻 1 号 p. 17-45
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2011/07/05
    ジャーナル フリー
     阿蘇火山およびその周辺域について重力データの収集と補間測定を行ない,阿蘇火山の微細なブーゲー異常と密度構造を明らかにした.カルデラ構造を不鮮明にしている表層の火砕物や堆積物の効果をはぎ取るために,上方接続残差分散比較法(CVUR法)を提案する.その方法を適用した結果,阿蘇火山の表層密度は2.2~2.39/cm 3と妥当な値を得た. 測点数が増したことにより,阿蘇カルデラが漏斗型(倒立円錐状)の構造をもった単純な「低重力タイプのカルデラ」ではなく,5つの低重力異常域が南北に並んでいることが判明した.また,個々の低重力異常域はカルデラ壁の内側で急勾配をもつが,低重力異常の中心部では底が平坦であることもわかった. カルデラ内の湖性堆積物や火砕堆積層の層厚の見積もりのモデルとして,表層上面と基盤面(表層下面)にそれぞれ面的に密度変化を与え,その両面を2次式で接続させるものを想定し,その構造に基づく3次元解析法を新たに提案する.その結果,重力基盤構造は,カルデラ内で急傾斜で500mほど陥没し,カルデラ内の5つの低重力異常域に対応してさらに200~400mほどの陥没があり,底は平坦である.重力基盤構造からは,阿蘇カルデラが濁川カルデラのように巨大な爆裂による「漏斗型カルデラ」とは読み取れず,大規模な陥没を伴ったValles-typeといわれる「ピストン・シリンダー型」に類似する構造が配列することがわかった.また,中央火口丘からその北側には,周辺域より0.1g/cm 3ほど密度の小さい基盤が推定され,深部との連続性とともに,陥没域には,強溶結した溶結凝灰岩や火砕流の存在が考えられる.
  • 辻 宏道
    1995 年 41 巻 1 号 p. 47-73
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/09/07
    ジャーナル フリー
     国内4ヶ所のGPS追跡局で得られた非Pコード型受信機による連日測定データを,ジェット推進研究所(JpL)の解析ソフトウェアGIPSYと,JpLが全世界追跡データから決定した精密暦を用いて,自動処理するシステムを構築した.1,000km基線に対する測定誤差は南北成分が5mm,東西成分が20mm,上下成分が25mmとなり,10-8レベルの高い測位精度を達成している.筑波(TSU)局を基準とする1992年7月から1994年9月までの約2年間にわたる基線解析から.テクトニクスに関する次の知見を得た.1993年7月の北海道南西沖地震の際に,震源の東北東約200kmにある新十津川(STK)局が南に1cm,西に3cm変位した.これは断層モデルによる予測値と一致する.VLBI測定で求められたTSU局の北米(NA)プレートに対する運動を仮定し,GPS測定で得られた各局のTSU局に対する運動を最新のプレート運動モデルと比較したところ,ユーラシア(EU)プレート上の鹿屋局(KNY)およびフィリピン海(PH)プレート上の父島(CCJ)局では,実測値と予測値は1cm/年程度で一致した.CCJ局のわずかな残差速度はCCJ局西方のIzu-Bonin Arcの拡大が測定にかかるほど大きくないことを示唆している.九州南部にあるKNY局は,南南東に0.5cm/年程度の残差速度を持っが,この運動はVLBI測定で指摘されている上海の東進と調和的である.
  • 佐藤 忠弘, 渋谷 和雄, 田村 良明, 金尾 政紀, 大江 昌嗣, 岡野 憲太, 福田 洋一, 島 伸和, 名和 一成, 神沼 克伊, 井 ...
    1995 年 41 巻 1 号 p. 75-89
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/09/07
    ジャーナル フリー
     1993年3月22日,南極・昭和基地(69.0°S,39.5°E)において超伝導重力計(GWR社,モデルTT70,SCG#016)を用いた重力連続観測が開始された.超伝導重力計の汎地球観測網のデータを用いて,流体核共鳴,コアアンダートーンやシュリヒターモードの検出ができるのではないかと期待され,南半球高緯度に位置する昭和基地の役割は大きい.昭和基地においてはラコステD型重力計,STS-1型広帯域地震計による連続観測も継続されており,IDA網標準記録との対応や超伝導重力計の地震計としての特性比較などが可能である.1年間(1993年3月22日一1994年3月21日)の重力潮汐記録解析によると,従来の3ヵ月記録から求められたδ ファクターとほぼ同様の結果が得られ,半日周潮のδ ファクターがDehant-Wahr理論より10%大きいことが再確認された.BAYTAP-G解析により抽出されたドリフト率は0.06Fugal/dayである.モード出力の典型的な雑音レベルは5-20ngalで,北海道南西沖地震(1993年7月12日,マグニチュード7.8)やマリアナ沖地震(1993年8月8日,マグニチュード8.2)による地球自由振動の良質な記録を捕らえており,昭和基地データが今後の地球中心核研究に威力を発揮することが期待される.
  • N. Ananga, R. Coleman, C. Rizos
    1995 年 41 巻 1 号 p. 91-97
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
     この論文の量的は,オーストラリア南部の海岸に沿う検潮儀用水準点(三角点を含む)の安定性を決定することである.一連の水準点が,南オーストラリアのGPS繰り返し観測により,モニターされた.それらの点の変位が三次元網平均を用いて決定された,12ヵ所の検潮用を含む17ヵ所の水準点が2回の観測期間における網平均に含まれている.水準点の間の基線の長さは178kmから365kmまでの範囲であった. 1日ごとの解が最初に決定された.これらの解は,結合され,同時に,拡張された自由網拘束の条件をパラメーターにあてはめて調整された.水準点の相対的な上下方向の高さが見積もられ,比高の精度は4.2cmの範囲であることが解析からわかった.
  • 李 輝, 竹本 修三, 山本 剛靖, 大塚 成昭
    1995 年 41 巻 1 号 p. 99-109
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2010/09/07
    ジャーナル フリー
     潮汐ひずみに及ぼす流体核共鳴効果は,重力や傾斜の潮汐変化の場合とは異なる様相をもっている.われわれは,まず最初に,潮汐ひずみに及ぼす流体核ダイナミック効果を評価する方法を考え,それに基づいて,観測室の緯度と基線方位によって変化する効果の空間および方位依存性を計算した.計算の結果によれば,六甲・高雄観測室のレーザーひずみ計について理論的に予測される流体核ダイナミック効果は,K1分潮で一20%,Ψ1分潮で+80%にも達しうる. 次に,われわれは,六甲・高雄のレーザーひずみ計で得られた1989年3月から1991年2月までの2年間の観測データにベネディコフの調和解析法を適用し,解析を行った.調和解析で得られた結果を理論的な予測値と比較すると,調和解析の結果の精度は,流体核ダイナミック効果を探すのに十分であることがわかった.解析の結果,六甲・高雄のレーザーひずみ計で得られたひずみの潮汐定数の周波数依存性は,:気象影響によって擾乱を受けているS1分潮を除いて,理論的な予測値とかなりよい一致を示した.
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