沖ノ鳥島はフィリピン海プレートの中央部にあってフィリピン海プレートの運動の監視には極めて重要な点である. この島の護岸に設置された一等三角点において1989年以来GPS観測が繰り返し実施された. これらのうち1992年6月,1994年6月,1995年3月,同年5月,及び1996年4月の観測データを解析した. 本土側で観測された点のうち,つくば(GS15)を基準点として基線解析を行い, 沖ノ鳬島の観測点の変位速度を算出した. 解析に際してはITRF93基準座標系を用い,国際GPSサービス機構(IGS)から精密暦を入手して基線解析を行った.得られた結果から直線近似で沖ノ鳥島の変位速度ベクトルを求めたところ,(Vns,Vew)=(1.08±0.81,-2.77±1.04)cm/yrとなった. これに,Heki(1996)によって求められているつくばのユーラシアプレート安定地塊に対する変位速度を考慮したところ(Vns,Vew)=(3.00±0.84,-5.17±1.06)cm/yrとなった.これはSenoetal.(1993)によって地震のスリップベクトルから求められているユーラシアに対するフィリピン海プレートのEulerベクトルから算出された(Vns,Vew)=(2.87,-5.81)cm/yrに極めて近い. このことから, 沖ノ鳥島が最近少なくとも数百年間は定常的に運動していると考えてよいと思われる.
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