日本咀嚼学会雑誌
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15 巻, 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 幼児から高齢者までの調査から
    吉野 陽子, 神山 麻子, 張替 信之, 鈴木 正成
    2005 年 15 巻 1 号 p. 2-10
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    咀嚼力が基礎体力, ならびに食習慣とどのような関係があるかを調べることを目的とした.調査対象者は女性1, 337名, 男性767名の計2, 104名であり, 年齢は3~97歳であった.咀嚼力は, チューインガム法による糖溶出量を指標とした.咀嚼力と基礎体力の指標の一つである握力との関連を調べた.また, 男性21名, 女性36名の計57名による3日間の食物摂取状況調査により, 咀嚼力と食習慣の関連を調べた.
    咀嚼力と握力との間では有意な相関性が認められた (男性: r=0.492, p<0 .001, 女性: r=0.481, p<0.001).また, 咀嚼力と運動習慣の有無との関係を調べたところ, 運動習慣のある人はない人に比べて有意に咀嚼力が高かった (男性: p=0.05, 女性: p=0 .001).
    食習慣との関係では, 3日間の食物摂取状況調査から朝食, 昼食, 夕食の各々における摂取食品数と1日の総食品数を調べた.また, 1日に摂取した食品中に占める硬い食品の摂取割合を調べ, これらが咀嚼力とどのように関係しているかを検討した.その結果, 朝食の食品数と咀嚼力の間には弱いながらも相関が認められた (r=0.364, p<0.05) が, 昼食と夕食との間には関連性がみられなかった。また, 硬い食品の摂取割合と咀嚼力の間には関連性がみられなかった.
    これらの結果から, 咀嚼力は食習慣よりも基礎体力や運動習慣のほうが相関性は高いことがわかった.したがって, 今後は咀嚼力の向上や改善には運動指導をも取り入れる必要性があるのではないかと考えられる.また, これまでに硬い食品を摂取することが強調されてきたが, 今回の調査により朝食の食品数と正の相関性が認められたことから, こうした要素も重要であることが示唆された.
  • 吉田 悦子, 小比類巻 美穂
    2005 年 15 巻 1 号 p. 11-23
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    著者らは1990年より, 当院において口腔筋機能療法Myofunctional Therapy (以下MFT) を行ってきたが, 小児期に舌癖があり, 誤った嚥下パターンをもちMFTの対象となるような患者が, 適切な訓練やアドバイスを受けずに成長するとどうなるのか疑問をもつようになった.
    そこで, 健常者に対し, 一般の診療所で簡便にできる水飲みテストを考案し, 2000年11月からの1年間に当院に来院した患者から無作為抽出し, 健常者に誤った嚥下パターンをもつ者がどの程度存在するのか統計調査を行った.
    その結果, 以下の通り被検者数662名の健常者において, 各年代に誤った嚥下パターンをもつ者がいた.
    ・4~9歳68 .3%, 10~19歳42.7%, 20~29歳41.4%, 30~39歳36.3%, 40~49歳36.0%, 50~59歳49.2%, 60歳以上56.8%
    また, 誤った嚥下パターンをもっているとQOLの低下を招くこともわかった.
    今後は, 健常者に対しても, 誤った嚥下パターンもつかどうかスクリーニング検査を行い, 必要な場合は, 正しい嚥下パターンを獲得し, 正常な咀嚼・嚥下ができるようMFT等のリハビリテーションを行う必要があると考えられる.
  • Ikuo ISHIYAMA, Masato SUZUKI
    2005 年 15 巻 1 号 p. 24-36
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    This study was designed to clarify the effect of mastication on the autonomic nervous system, and to determine the distribution of dominance between the sympathetic and the parasympathetic nerve activation.
    We measured heart rate (HR), systolic and diastolic blood pressure (SBP, DBP), blood flow volume of the common carotid artery (BFVcc) with the ultrasound Doppler method as the parameter for cerebral blood flow, tympanic membrane temperature (Tty), cardiac output (CO), power spectrum (Total power, LF, HF) and other parameters during and after mastication of food. Eleven. healthy males (age, 20 to 39 yrs) participated as volunteer subjects. The masticatory exercise (Mas -ex) was carried out with 5 pieces of kamaboko (25g apiece) and konjac, which was masticated continuously for fifteen minutes by Mas-ex with the usual rhythm respectively in the supine position. Konjac was used as the control food.
    HR, blood pressure, CO, BFVcc and total power, VLF, LF, HF of power spectral data increased and PW decreased with Mas-ex. HR, SBP and DBP, BFVcc, CO were correlated with total power, VLF, LF in Mas-ex during kamaboko and konjac.
    Mastication of kamaboko and konjac stimulated the whole autonomic nervous system, hence not only the sympathetic nerves, but also the parasympathetic nerves were activated simultaneously during Mas-ex. These results reveal that blood flow under Mas-ex might shift to recruit blood into the brain and the digestive organs under conditions of peripheral vasoconstriction and cardiac work. Since Mas-ex increases cerebral blood flow, masticatory stimulation immediately could affect the whole body.
  • 塩澤 光一, 神山 かおる, 柳沢 慧二
    2005 年 15 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    米飯咀嚼時の食塊物性変化を調べるために, 咀嚼の中間期 (M), 第1嚥下誘発時点 (L), および第1嚥下までに要した咀嚼回数の20%余計に咀嚼した時点 (+20%) の米飯食塊をそれぞれ口腔内から回収してその物性を解析した.8名の成人被験者に6gの米飯試料を咀嚼させた.米飯食塊物性の測定はtexture profile analysisに従って行った.食塊の硬さは, 咀嚼の中間期 (M) から嚥下直前 (L) になると有意 (p<0.05) な減少を示したことから, 食塊の硬さの減少は嚥下誘発にとっての必要条件であることが考えられる.食塊の付着性は咀嚼の進行に従い有意 (p<0.01) な減少を示した.これに対し, 凝集性は有意な変化を示さなかった.これらの結果から, 米飯食塊の付着性が嚥下閾値まで減少することで嚥下が誘発される可能性が示唆された.
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