高齢者が摂食しやすい米菓の物性と嗜好性を明らかにし, 新たに開発した米菓 (以後開発型) がこれらの特性を満たす米菓かどうかを明らかにする目的で, 米菓の物性測定, 咀嚼筋の筋電図測定および官能評価を行った.対照試料として硬い順に草加型, おかき型, 新潟型, ベビー型の市販品を用いた.
得られた結果は以下の通りである.
1.高齢被験者にとって, 米菓の摂食可否を決める主な要因は「硬さ」であった.
2.米菓の硬さ (見かけのヤング率) は, 草加型> おかき型> 新潟型> 開発型=ベビー型の順であり, 若年被験者 (N=66) の「咀嚼時の硬さ」における官能評価結果と一致していた.
3.開発型とベビー型は見かけのヤング率8.56×106N/m以下であり, 高齢被験者でも摂食可能であった.
4.見かけのヤング率平均値 (x) と咬筋総活動量平均値 (y) にはy=0.15x+1.52 (R2=0.83) の関係がみられ, 硬い米菓ほど咬筋活動量が増加していた.
5.硬い米菓ほど咀嚼回数が増加し, その結果, 咀嚼時間と咬筋総活動量が増加していた.
6.高齢被験者にとって, 米菓の硬さは主に捕食時に問題となり, 硬いものほど咬筋の活動時間を延長させ, 咬筋初回活動量を大きくする傾向があった.
7.「食感」が, 米菓の嗜好性で最も重要な項目であった.
8.嗜好性を評価した全項目で, 若年被験者, 高齢被験者ともに開発型をベビー型より高く評価した.
以上の結果から, 開発型は高齢者の嗜好性を満たし, かつ食べやすい物性の米菓であることが明らかとなった.
抄録全体を表示