低咬合力の危険因子を明確にするために, 噛み応えスコアという指標を導入した.この指標は, 摂取した食品の噛み応えのレベルの平均として定義される.ここで食品の噛み応えのレベルは, その食品を咀嚼する際の咀嚼筋活動量によりI (噛み応え低い) からV (噛み応え高い) までに分類される.
被験者は, 岐阜市内の女子大学生 (18-23歳) のボランティアのうち, 歯科検診により左右の第一大臼歯の対咬関係がAngle分類1級であった学生189名である.歯科医による歯科検診の後, 被験者のBMIと最大咬合力を測定した.食物摂取状況調査により, 被験者の1日当たりの食物摂取量と噛み応えスコアを推定した.
最大咬合力の値により, 被験者を正常咬合力群と低咬合力群とに分類し, 両群の間のBMI, 健全歯数, 処置歯数, 齲歯数, 欠損歯数, 運動歴の有無, 噛み応えスコア, 1日当たりの食物摂取量とを比較した.ロジスティック回帰分析の結果, 低咬合力の危険因子は, 齲歯数が多いこと, 運動歴がないこと, および噛み応えスコアが低いことの3つであった.また, 正常咬合力群の被験者が1日当たりに摂取するレベルVの食品数は, 低咬合力群のそれに比べて有意に多かったが, レベルIV以下の摂取食品数に関しては, 両群の被験者の間で有意な差はなかった.これらの分析結果は, 噛み応えスコアの高い食事を毎日摂ることが, 咬合力を高めるのに重要であることを示唆する.
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