広義に運動といえば,未組織の集合行動も組織された社会運動も含まれる.運動論の系譜は大別して,社会の構造的対立と闘争を重視する発想と,イノベーションと制度化に焦点をおく発想とがあり,今日,それらの批判的総合がもとめられている.スメルサーの集合行動論とトゥレーヌの社会運動論の紹介を通して,筆者は運動総過程論を提唱する.
大都市の住民運動を都市社会学的文脈でのコミュニティ形成のモデルでとらえると,どういう課題と,視角がみいだされるのか.すでにコミュニティ・モデルは,大都市新郊外を典型としたコミュニティ=新中間層的価値理念の図式では包摂できない,地域社会的パースペクティブを要請されている.住民運動じたい70年代中期にまちづくり運動としての性格を濃くするなかで,地域社会的パースペクティブとまちづくり運動の内部構造との整合関係が,意図した課題となる.
本稿は,運動次元における「組織」の問題を,参加主体の“集団性をもつ主体性の構造化”の問題としてとらえ,住民運動を一つの素材としてとりあげる.そして,住民運動の成立・展開から,運動の主体性=組織化の過程を素描し,他方で,組織化のあり方がいかなる諸類型にわけられうるかを明らかにし,<日常の媒体組織への連繋型>,<日常の媒体組織からの離脱=独立型>,<日常の媒体組織の再編=強化型>の類型の検討をする.
現代社会における相互依存性の増大と市民社会的自由の強調とを背景として,さまざまな社会的コンフリクトがもたらされている.多くの住民運動や消費者運動の根底にはこのような社会的コンフリクトが横たわっている.本稿は,このような社会的コンフリクトの発生の背景を探り,その性格による分類を試みるとともに,諸運動のはたす役割をコンフリクト解消プロセスとの関連において明らかにし,評価しようとしたものである.
住民運動とは,地域住民が自らの生活を守るために,行政や企業の行動を批判しその変質を求める運動である.しかもこの運動の動機はその本質においてきわめて高い緊急性を持ち,かつその運動体は既存の組織や制度から自由であるという特質を持つ.さらに多くの住民運動はさまざまな側面で,いわゆる少数者の立場に立たされていることから,現在の民主主義的な制度のあり方に対して根本的な批判を持つ運動へと転化していく要因も秘めている.
昭和40年代に,日本の企業組織に起こった一連の変革の動き――目標による管理,組織動態化,創造性・感受性開発訓練,人間尊重の経営理念の標榜等を,新組織運動と呼ぶ.日本の企業組織は,この運動によって組織と人間性との関係に本質的な変革を遂げるかに見えた.が,現在この運動は急速に後退しつつあり,組織は混迷状態にある.これらの動きを概観し,現混迷状態の本質を追求して,今後の方向検討に当っての留意点を指摘する.
現代の企業が対応を迫られている環境の有力特徴として,余暇社会や福祉社会から受ける影響の問題がある.企業の人件費対策は,その支払のための財務能力の観点からだけではなく,余暇や福祉の充実による,労務者の人間性尊重にもとづく働きがい感醸成の視点からも,その体系の近代化をはからなければならない.職能給的要素導入の意義を,そうした角度から吟味してみることに,もっと積極的であってよい.