条件理論は一般理論の追求という従来の方向が現実問題からの遊離を招来したことに対する反省と焦慮を背景に,状況モデルを条件とする組織モデルの構築により,抽象と具象の中間レベルで現象問題への理論的接近を試みようとするものである.しかし,多変量的分析方法への過信から,余りに野心的な総合モデルの構築をもくろむ傾向が出てきた.これはかえって当初の問題意識を薄れさせ,理論の意義や限界を忘れさせるものといえよう.
本稿の目的はコンティンジェンシー理論の構造特性を検討し,現在までに展開された主要なコンティンジェンシー理論の概観を通じて組織論におけるその意義を明らかにすることである.コンティンジェンシー理論は,組織レベルの組織-環境関係理論としてとらえる時に,動態的構造理論とマクロ的視角からの統合理論の枠組を生みだした点においてその意義が最も典型的に把握される.
日本の企業,4社(注文生産1,大量生産2,装置生産1)について,その課業環境と経営組織の適合関係を,主として,P.RローレンスとJ.Wローシュのコンティンジェンシー・セオリーの枠組に依拠して調査したところ,この理論の仮説を概して支持する方向の結果が得られた.その内容を紹介するとともに,この理論のもつ限界とその拡張を必要とする点,および,調査方法の問題点とその改善の方向について述べる.
リーダーシップ研究の最近の傾向は,リーダー行動ないしリーダー特徴と集団の業績ないし成員の満足度とを直接結びつけるのではなしに,この両者の問に課題の性質,リーダーと成員の人間関係,集団の構造,成員の特徴など,さまざまな状況諸変数を置くところにある.フィードラーのコンティンジェンシー・モデルやハウスの通路―目標理論などいま注目を集めている諸理論を手掛りとし,リーダーシップ研究の動向を探る.
社会=技術システムのアプローチは,オープンシステム理論の枠組を使って,組織の技術体系と社会体系の要求を同時最適化(joint optimize)することを目ざす.この同時最適化によって達成しようとする具体的な目標は,まず第一に,変動の激しい組織環境への適応力を高めることであり,第二には,労働の人間化を実現する,ということである.
組織はインプット-変換-アウトプットという形で,資源を環境と交換するオープンシステムである.本稿ではこのような視点から,今日問題となっている「状況適合理論」の現状を紹介・整理する.特に技術と組織構造の関係を統一的に理解するための一つの視点を提示する.こうして,技術革新・環境変化の激しい現代における組織の動態を,全体的に把握するための概念的枠組の可能性を検討する.
現代企業の大規模化とともにその組織も大規模化してきた.巨大組織はもはや集権的組織としてでは機能しえなくなっている.そこでかかる組織を分権化して再構築することが現代組織の課題となっている.この課題に答えようとする事業部制組織には生産システムからの制約があるとはいえ,それをのり越えて分権的組織の現実的形態としなければならない.もとよりそれは企業の利潤追求のための管理的組織戦略などであってはならない.