組織の国際比較研究は,組織現象の根幹となる「人間素材」の文化人類学的認織と社会学的分析を前提としなければならない,というのが本稿の主題である.これまでの欧米(主としてアメリカ)の組織研究の紹介と模倣は,人間素材共通論を暗黙の前提としていたといってよい.文化差の無視は,したがって,理論と現実のギャップの拡大として顕在化した.文化のレベルでのマクロ比較組織論の展開について論述する.
日本の企業の経営組織,労務管理から,労使関係まで特色づけている終身雇用制は,従来まで一般に「経営家族主義」の理念によって本質づけられてきた.しかし,はたしてそれでよいであろうか.日本経済の低成長への移行とともに,終身雇用制も大きな適応的変化が要求されてきているとき,終身雇用制の本質を見直してみることは,意味があるように思われる.
近年,管理能力のアセスメントということが,米国の企業においても,日本の企業においても重要な課題になってきている.しかし,それが必要とされるに至った背景情況やその課題への取組み方には,日米両国にかなりの違いがみられる.この相違がまた,アセスメントの方法や結果のとらえ方,活用の仕方などに違いを生じさせている.
本稿は,日米における管理能力アセスメントがどういう点で異っているか,その比較分析をおこなっている.
わが国の雇用制度は国際的にみて特殊性が強いので,日本企業が海外で経営する場合には専ら現地慣行への順応を心がけるべきだという論調が多い.本稿は日本多国籍企業の海外子会社の雇用関係を実地調査した結果にもとづいて,日本的雇用システムの特殊性と普遍性を識別しようという試みである.日本の雇用制度は国際性に乏しい特殊な側面をもっていることはたしかだが,海外に「輸出可能」な積極的側面もあわせもっているといえよう.
米国には職務充実の必要性が痛感される現実がある.わが国にもそれが求められる基本的背景は醸成されつつある.が,現実には必要性は然して表面化していない.職務充実の型もわが国と米国とでは異なる.こうしたわが国の実態が何故かを,企業外的な状況的要因と企業内的な組織的要因とから解明しようとする.組織的特質として,わが国では職務充実が実質的に実現されている面があり,またそれが必要に至らないでいる面がある.
ソ連企業の経営組織について,資本主義公企業との比較を試み,民主集中制と民主能率制,全面的経営参加制と限定的経営参加制,単独責任制と複数責任制などのちがいを指摘するとともに,全面的経営参加制の具体的内容と実際をしめすことによって,ソ連経営組織の体制的特殊性を明らかにした.