日本の組織は変っていると思われがちであるがいかなる面でどの程度変っているかは明確でない.それを明確化するべく三国において組織構造の独立変数と考えられている変数でマッチされたサンプルを同一尺度で組織の数々の側面を測定する研究が行われた.この論文はその研究結果の一部を発表している.すなわち,日本の組織構造は特殊でもユニークでもない.そして国という変数は組織構造の独立変数としては非常に弱力であるとする結果が紹介されている.
日本の経営の特殊性を把握するのは,外国の理論で日本を裁断してきた日本人学者にとっては容易ではない.その困難を自己の頭脳で独自に乗り越えてこられた代表的な諸業績,佐藤慶幸,津田真澂,岩田龍子,間宏等諸教授の理論の位置と意味について,勝手な妄語を加えさせていただいた.どれほど肯綮に当っているだろうか.
最近,「日本的経営」の研究についての方法的自覚にとって注目されるのは,比較経営論であるが,その各国の企業経営の国際比較のための主要な接近法である経済的,生態的および行為的接近法のそれぞれの意義と限界を検討することによって,これらを統合的に活用することが要請され,このことは,在来,行為的接近法を中心として展開されてきたともいえる「日本的経営」の研究について根本的反省をせまるとともに,新しい研究方向を示唆するものである.
本稿は,日本経営の基礎的説明単位と考えられる職場集団の特質を,ブルーカラー,ホワイトカラーそれぞれについて分析し,その行動的意味と役割をあきらかにする.
その上で次回において,日本経営における職場集団一般の基本的属性をあきらかにし,これと一定の関連において,日本経営における意思決定の型を,個人的意思決定-集団的意思決定,トップ・ダウンとボトム・アップの検討を通してあきらかにする.本稿全体の目的は,日本経営の行動様式に関する仮説の探索にあり,仮説検証にはない.
わが国の経営組織の高齢化は仕事能力の低下をもたらすという俗説に挑戦する.年とり心理学の最近の研究によれば,心身諸機能の年とり効果は能力の発揮方式の変化となってあらわれる.したがって若もの向きの仕事と年より向きの仕事とを区別した職務の再編成と,その上に立つ新しい組織設計の原理とを模索する.同時に組織原理としての能力主義のもつ意味を再検討して,わが国の組織風土に適合し,年とり能力開発を可能にする人事管理の構想を試みる.
組織の行動はふつう,種々さまざまな組織との競争,対立,および協力を通してすすめられる.公害,消費者問題,労働争議などにみるごとく,組織は実際,ごく稀にしか個人や集団を直接相手にしたがらない.ただ,組織論において従来なぜか組織と組織の間でくりひろげられる現象が組織内部や対境関係にくらべて不遇な地位に甘んじてきた.経済学の寡占理論はあまりに狭い企業像にとらわれすぎた.ただ決定理論がゲームやチームの展開をめぐりわずか気をはいたが,もちろん組織間関係の要となる政治過程を正面からとりあげようとはしない.われわれは以下数少ない組織間学派の業績であるWarrenの協調モデルにそって,利害の異なる諸組織が一致協力の決定に到達するまでの過程を描いてみたい.このささやかな企てがようやく注目を浴びつつある組織間現象の研究にたいして万分の一ぐらいの貢献でもなしうれば幸いに思う.