組織の動態化は,通常変革の過程における人間的側面の顕在化に顕著な特徴があると解されている.しかしそのような現象的事実にもかかわらず,組織過程における個々人の率直な感情表出やコンフロンテーションそのものが,適応的組織に至る途だと考えることは危険である.むしろ対処行動における個人差に応じて,各人に自我統合の方法を示すことができるような,状況的に適合した行動の諸規則が定式化されることがきわめて大切である.
経営組織の実践の世界での政策・方策構築の特徴というものは,理論構築の思考と異質なるがゆえに理論では捉えにくいものとなる.従来の理論構築の思考には盛り込みにくい要因を,すぐに持ち込むことは不可能としても,それを許容する他の理論の存在を予想することによって一面性を克服することができよう.たとえばいまなぜわが国経営で“活力”が重視されるか,といった,学問になじまないようなテーマもこうした位置づけのどこかに置いておくべきである.
近年,日本企業の中でもマトリックス組織の導入が考えられている.しかし,その導入については慎重でなければならない.マトリックス組織はこれまでの伝統的な組織原則とは根本的に対立するものであるからである.このマトリックス組織が有効に機能するには必要十分な条件があり,またその運営には構造や経営システムもさることながら組織カルチャーが大切である.とりわけ,日本的経営との適合関係性も十分考慮されねばならない.
企業の研究所を,現実の産業社会のなかのオープン・システムとして捉え,研究所の内的・外的環境からの影響力を分析し,これらの諸力に対する研究所の適応・対応の最近の動向について述べる.この適応・対応のなかに,研究所における組織開発と人材開発の基本的な考え方をみることができるであろう.
また,今後の研究所の運営において,創造性の求められる領域・創造性の新しい担い手についての展望を行っている.
代替エネルギーのように複雑な技術を開発する組織では,開発のポリシーを決定することと,そのポリシーを実現できるように組織能力を高めることが最も重要である.この課題に答えるためには,従来の事業部と戦略的事業ユニット(SBU)の他に,政策立案システム(PGS)を加えた三重のマトリックス・システムが必要となる.1980年代の産業組織はPGSを媒介として,環境変化に適応し新しい価値を創造することに成功するであろうか.
日本の企業は今後自主技術開発に格別の努力を傾注せざるをえないと考えられている.しかし,そうなると従来の研究開発に比べて成功確率や経済効果の低下を招く公算が大きい.そこで,研究や開発の組織を活性化し,人間の考える権利が抑制されない,創造性が促進されるような組織環境をつくりだしてゆかねばならない.
そのためには組織の生態学的研究と研究ならびに開発の組織的情況の見直しが必要だ.